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山本守之の法人税“一刀両断” 【第16回】「砂利採取地の埋戻し費用」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第16回】 「砂利採取地の埋戻し費用」   税理士 山本 守之   A社は砂利採取業者です。同社はB社の所有する土地から砂利を採取して建材業者に砂利を販売し、採取後はB社との契約でその土地を埋め戻して返還することになっていました。 このように契約に基づいて砂利採取地の跡地を埋戻すことを義務付けられていましたので、法人税基本通達では、砂利採取の進行に応じて埋戻し費用を見積り、これをその採取した砂利の取得原価に算入することを認めることとしています(法人税基本通達2-2-4)。 法人税基本通達2-2-4は次のようになっています。   1 算式の考え方と適用対象 毎期末の現状に基づき、かつ、既往の見積違いを当期以後の採取量にチャージする形で修正しながら毎期の見積計上額を算定します。 なお、この通達の適用は、「他人の所有地から砂利の採取を行う場合」に適用され、自己所有地からの砂利採取については適用されないとされています。 その理由について課税庁では (『税経通信』(Vol.35、No.11、1980年)478頁、戸島利夫国税庁法人課税課課長補佐(当時)) と説明されています。 しかし、最近のように環境問題が厳しい時期には、自己所有地についても地方公共団体等から埋戻しについて誓約書等を提出するよう行政指導がされています。ここでは、埋戻しを「国民の一般抽象的義務の範囲」と決め付けるわけにはいかないでしょう。 法人も社会的存在である以上は、埋戻しについて罰則を覚悟してこれを怠ることは許されません。国税庁もこのような社会情勢の変化に即応した解釈上の改正をすべきだと考えています。 したがって、砂利採取地が他人の土地ではなく、自己の土地でも法人の社会的義務として採取跡地の埋戻し義務があると考えられますので、埋戻し費用の見積りはできると考えています。   2 課税庁の考え方とその検討 この通達は、公共の河川敷から砂利を採取することに代えて河川敷以外の民有地から砂利を採取する場合を想定して定められたものです。 ここでは、砂利採取者は土地の所有者等との間で契約を締結し砂利採取に伴う対価を支払う一方において、採取後の跡地を埋戻して土地を原状に復することを約している例がほとんどです。 ところで、埋戻しは砂利採取が終わった後に行われますから、砂利採取による益金と埋戻しの場合の損金は別個の問題ですから、埋戻し費用は一種の事後費用という考え方もなくはありません。 しかし、一般にこのような場合の跡地の埋戻し費用は、相当多額になるはずであり、砂利採取業者は当然そのことを見越して砂利の販売価額等を定めることになるでしょう。埋戻し費用を見積ってその取得原価として計算することが収益・費用対応の関係から見て、より合理的であることは言うまでもありません。 このような意味から、法人税基本通達2-2-4では、民有地から砂利の採取を行う場合に、契約に基づいてその跡地の埋戻しをすることが義務付けられているときは、砂利採取の進行に応じて埋戻し費用を見積り、これをその採取した砂利の取得原価に算入することを認めているのです。 また、この通達は民有地から砂利を採取する場合に限定しているように見えますが、この取扱いは、河川敷等の公有地から砂利を採取する場合でも、その跡地の埋戻しが契約上義務付けられている場合には同様に取り扱われることになっています。   3 自社所有地から砂利を採取する場合 法人税基本通達2-2-4は、他人の所有する土地から砂利を採取する場合について定めていますが、自己所有地から砂利を採取する場合には、次のように埋戻し費用の見積計上は認めていません。 (『法人税基本通達逐条解説』税務研究会出版局) しかし、地方公共団体では砂利採取地をそのままにしておくことを許していません。砂利採取跡地には大きな穴があき、そこに雨水などがたまると池のようになり、危険だからです。そこで、地方公共団体では、条例等により埋戻し義務を課しています。 通達では、地主との契約に基づく埋戻し義務に配慮して見積り計上を許しているのですが、自己の土地の場合は契約ではなくても、条例に基づく埋戻し債務についても配慮すべきでしょう。 通達の解説では「埋戻し義務が確定していない」という理由で埋戻し費用の見積り計上を許していませんが、これは条理に反しますので、条例による埋戻し義務がある場合も見積り計上を許すよう、課税庁を説得すべきでしょう。   4 組織再編成の場合 砂利等の採取中に組織再編成が行われた場合には、その砂利等の取得価額の計算をどのように行うのかが問題です。 この点、平成13年度の税制改正により整備された組織再編成に係る税制においては、適格組織再編成により資産等の移転を行った場合には、その移転資産等を帳簿価額により引き継ぎ、又は帳簿価額により譲渡したものとすることにより譲渡損益の計上を繰り延べることとされています。 このため、砂利等を2以上の事業年度にわたって採取する場合のその砂利等の取得価額の計算にあっても、適格組織再編成により資産等の移転を行ったときには、その計算を引き継ぐことが実態にあったものと言えます。 そこで、法人税基本通達2-2-4の(注)3において、この適格組織再編成が行われた場合の合併法人等における通達の適用については、被合併法人等の通達による計算を引き継ぐものとすることが明らかにされています。   5 引当金との差異 企業会計原則では、 (企業会計原則、注解18) としています。 ここでは、引当金設定の要件を次のように整理することができます。 税法上引当金の損金算入が認められたのは、シャウプ勧告(昭和25年)によって貸倒準備金を設けたのが最初です。それまでは、費用の認識を債務確定によっており、費用収益対応の考え方が軽視されたためでしょう。 次いで、昭和27年には「・・・発生主義は、権利義務の発生というごとき立証手順のみに依存するものではなくて、一層強く会計的事実として一般に認められる内部証拠に準拠するものである」(税法と企業会計原則との調整に関する意見書)とされ、退職給与引当金、特別修繕引当金等の損金算入を認め、費用収益対応の原則を重視することとなりました。しかし、現在では、税法上の引当金は極力制限され、ほとんど認められていません。 アメリカでは所得控除をもたらす負債の存在を確定する全事象(all the events)が発生し、その負債の金額が合理的正確さをもって決定できる課税年度に差し引かれるという税務会計上の原則があり、この原則における全事象の確立は1926年の連邦最高栽判決(United States VS .Anderson)で、引当金計上の否認は、1934年の連邦最高裁判決(Brown vs. Helvering)で確定しています。 このため、アメリカでは総資産平均残高5億ドル以下の小規模金融機関に貸倒引当金を認めている以外は、税務上の引当金を認めていません。 日本で引当金の制限をしたのは平成10年の改正以後で、当時の税制調査会では平成10年度の改正で法人税率引下げの財源として、貸倒引当金、返品調整引当金以外の引当金を廃止したのです。 つまり、日本では、アメリカのように課税標準と引当金の性格を検討するという理論ではなく、法人税率引下げ財源探しという目的に過ぎなかったのです。 企業会計上はともあれ、課税所得の計算上引当金の損金算入を認めるか否かは、期間損益を重視するか、企業の恣意的計算を排除し、課税事象の明確性を求めるかという価値観の問題でもあります。 砂利採取跡地の埋立費用の見積り計上は、ほぼこれと同じ考え方ですが、法律の定めではなく、収益費用対応の考え方から通達で定めています。 このような定め方がいいのか否かは検討されるべきでしょう。 (了)

#No. 141(掲載号)
#山本 守之
2015/10/22

消費税の軽減税率を検証する 【第10回】「軽減税率の導入という選択」

消費税の軽減税率を検証する 【第10回】 (最終回) 「軽減税率の導入という選択」   税理士 金井 恵美子   連載の最終回にあたって、「軽減税率の導入という選択」の是非について、筆者なりの結論を出しておこう。   Ⅰ 8%の軽減税率 平成26年4月の税率引上げ時には、「簡素な給付措置」すなわち、臨時福祉給付金の給付が行われた。臨時福祉給付金は、住民税の均等割りが非課税となる世帯を給付の対象としており、その額は、「消費税率の引上げによる1年半分の食料品の支出額の増加分を参考に、給付対象者一人につき1万円とする」(※1)と説明されている。また、10%への引上げが延期されたことを受けて再び実施された平成27年度の臨時福祉給付金は、平成27年10月から平成28年9月までの1年間を対象とし、6,000円とされた(※2)。 (※1) 厚生労働省簡素な給付措置支給業務室「簡素な給付措置支給業務に関する全国説明会資料(平成25年11月21日(木))」1頁。 (※2) 厚生労働省特設ホームページ「2つの給付金」 「簡素な給付措置」は、5%であった消費税の税率を引き上げるにあたり、低所得者に対する恒久的な施策を実現するまでの暫定的及び臨時的な措置である(税制抜本改革法7条1号ハ)。 そうすると、「恒久的な低所得者対策」としての軽減税率は、あくまでも5%からの増税による負担を補てんするものとして検討するのが筋だということになる。 つまり、8%の軽減税率を提唱した時点から、軽減税率導入の議論はすでに混迷しているのである。 その理由は、所要財源だ。 「簡素な給付措置」のために計上された予算は、3,420億円(給付費3,000億円、事務費420億円)であった。これに対し、5%の軽減税率を設けた場合の減収額は、一桁大きくなる。 「消費税の軽減税率に関する検討について」によれば、「酒を除く飲食料品」の税率を5%軽減した場合には3兆1,500億円の減収となり、全体では8.4%の単一税率にした場合と同じ税収となる(【第5回】参照)。しかも、それに係る行政コストは未知数である。 税率の引上げと軽減税率の導入とは、政策論として激しく矛盾する。   Ⅱ 痛税感の緩和 筆者は、【第8回】を、「『日本型軽減税率制度』プログレス論の最後のボトルネックは、『痛税感の緩和』かもしれない」と結んだ。 近時、軽減税率を導入せず負担感が残れば消費税への信頼が薄れる、あるいは、税率引上げに際しては低所得者に優しい軽減税率を入れるべき、といった主張がしばしばなされる。 「低所得者に優しい」とは、日常生活において支出額の増加が少ないことであると思われるが、その意味では、軽減税率は高所得者に対してより優しい。また、「負担感」や「通税感」、「消費税への信頼」といったものは、人々の感情の問題であり、経済活動に対する中立性や施策の効果と影響といった制度構築の基本的な議論ではない。 結局のところ、軽減税率の導入は、消費税率の引上げにあたってはそれに対する抵抗感を和ら げる緩衝材が欠かせないから、という理由に尽きるだろう。   Ⅲ 逆進性の緩和 「骨太方針2015」(※3)は、 としている。 (※3) 「経済財政運営と改革の基本方針2015~経済再生なくして財政再建なし~」41頁(2015年6月30日) これのもとになっているのが、リタイア世帯に受益が多く優遇税制が偏っていて、若い人たち、現役世代の受益が少なく、負担が大きいという現状の分析である。これは単に高齢者世帯の税負担を重くして、若い人を助けたいということではなく、富裕層が負担をして、貧困層のためにそれを使うという考え方であろう。 所得再分配の効果は、所得に対して直接課税する税によって、あるいは社会保障という手段によって確保し強化することができるものである。税と社会保障の枠組みに囚われず、より良い全体のデザインを描くことこそが、社会保障・税一体改革の趣旨であったはずである。 少なくとも、税の負担者の所得を把握する術を持たない消費税という税目の枠内に、逆進性緩和の措置を置くべきとするのは、木を見て森を見ない議論である。   Ⅳ 低所得者対策 所得税の課税を強化して税制全体の累進性を高めても、もともと所得税が非課税となる所得層には、直接の救済とならない。したがって、それとは別に、消費税の負担増により最低生活の維持を脅かされる所得層に配慮した施策が必要となろう。 税制抜本改革法において、複数税率制度又は給付付き税額控除制度の導入は、「低所得者に配慮する観点から」検討するものとされており、「逆進性緩和のため」の施策とは表現されていない。もちろん、有効な低所得者対策は、結果的に逆進性緩和の効果を持つことになる。 軽減税率の適用によって、生活必需品が安く提供されれば、低所得者の救済につながる。しかし、軽減税率が適用された商品が現実に安く提供されるかどうかはわからないし、そのために失うものが多すぎるのである。 低所得者対策は、消費税の税率を複数にすることではなく、社会保障によるべきである。生活困窮者対策に総合的に取り組む生活困窮者自立支援法が本年4月1日に施行され、平成28年からはマイナンバー制度の運用が始まる。内閣官房は、「社会保障がきめ細かくかつ的確に行われる社会」を実現する必要があり、マイナンバー制度によって、「真に手を差し伸べる者を見つけることが可能になる」(※4)としている。 (※4) 「マイナンバー社会保障・税番号制度概要資料(平成27年2月版)」(内閣官房社会保障改革担当室、内閣府大臣官房番号制度担当室) 低所得者対策は、それを必要とする者を直接救済する方法によるべきである。   Ⅴ 軽減税率は消費者の負担を増加させる そもそも消費税は、多くの議論を経て、税制全体のバランスの中で広い課税ベースと単一の税率によって、水平的公平、中立、簡素という税制の基本原則を維持しつつ、多くの税収を確保するという役割を担うものとして創設されたのである。単一税率であることこそが消費税導入の意義であった。 軽減税率の導入は、消費税の特長を大きく後退させるが、得られる逆進性緩和、低所得者対策としての効果は低い。軽減されるのは「痛税感」のみであって、税収の減少と執行のコストはさらなる標準税率の引上げを必要とし、事業者のコンプライアンスコストは商品の価格に組み込まれ、それらはすべて消費者の負担を増加させるものとなる。   Ⅵ おわりに 食料品等に広く軽減税率を適用する国の標準税率は20%程度が普通であり、標準税率が10%以下で食料品に軽減税率を適用している国は、スイス、オーストリアぐらいしかない。 日本が、10%の標準税率でわずかに低い8%の軽減税率を設定すれば、世界でも珍しい奇妙なデザインということになる。 軽減税率が失敗であることはEU諸国において証明されている。その教訓に学び、物品税を捨てた経験を想起すれば、「単一税率と高い効率性をもつ理想的な付加価値税」である日本の消費税が、「機能不全に陥ったオールドVAT」に倣って複数税率制度に移行するという選択はあり得ないだろう。 (連載了)

#No. 141(掲載号)
#金井 恵美子
2015/10/22

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例31(贈与税)】 「「相続時精算課税選択届出書」を別途送付としたため、期限後の提出となってしまい、贈与を錯誤として取り消した事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例31(贈与税)】   税理士 齋藤 和助   《基礎知識》 ◆相続時精算課税制度(相法21の9~相法21の18) 相続時精算課税制度とは、生前の贈与について、納税者の選択により、贈与時に贈与財産に対して一定の贈与税を支払い、相続開始時にその贈与財産を相続財産にプラスして相続税を計算し、支払った贈与税を精算する制度である。 ただし、特別控除額の2,500万円までは贈与税はかからず、さらに相続開始時にこれらの生前贈与財産をプラスしても相続税がかからない場合には、贈与税の負担なしで生前贈与が可能となる。 なお、相続時精算課税制度の適用を受けるためには、申告期限までに「相続時精算課税選択届出書」を所轄税務署に提出しなければならない。       (了)

#No. 141(掲載号)
#齋藤 和助
2015/10/22

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第37回】「非公開裁決事例⑧」

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第37回】 「非公開裁決事例⑧」   公認会計士 佐藤 信祐   今回、紹介する事件は、デット・エクイティ・スワップを行った際に、債務消滅益を計上すべきか否かについて争われた事件である。 本事件は、平成18年度税制改正前の事件であり、当時、非適格現物出資に該当するデット・エクイティ・スワップに該当するのであれば、債務消滅益を計上しないで済む余地があった。これに対し、本事件は、適格現物出資に該当したことから、やや複雑な事実関係となっている。   22 平成19年6月21日裁決(TAINSコード:F0-2-288) (1) 事件の概要 本事件の争点は以下の5つである。 本連載のテーマは組織再編・資本等取引であるため、【争点1】から【争点3】が該当することになるが、【争点2】は会社法施行により異なる理論構成になる可能性が高く、【争点3】はやや個別事案の色合いが強すぎることから、いずれも他の事案の参考になりにくいため、【争点1】のみを取り上げることとする。 (2) 原処分庁の主張 DESは、法人税法上、次の2つの事象として捉えられている。 ▷ 法人の債権者が、その債権を債務者である当該法人に現物出資することによる当該法人の資本の金額の増加 ▷ 現物出資された債権と対応する債務が同一人に帰属することによる当該債権及び当該債務の混同による消滅 請求人が本件現物出資債権を取得したことにより、本件現物出資債権と、本件元本債権に対応する債務である長期借入金のうち、本件現物出資債権の額に対応する金額は、同一人(請求人)に帰すことから、混同により消滅することとなるが、請求人が取得した本件現物出資債権の取得価額は上記Cのとおり162,000,000円であるところ、これと共に消滅した長期借入金の金額は430,442,435円であることから、その消滅した長期借入金の金額のうち、消滅した本件現物出資債権の取得価額相当額162,000,000円を超える部分の金額268,442,435円については、債務消滅益として益金の額に算入する。 なお、債務の消滅という企業の内部で生起した財産に影響を及ぼす事実については、それが混同によるものであっても、法人税法上は、法人税法第22条第2項の「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引」としてこれを認識することになる。 (3) 請求人の主張 DESは、債務が資本に振り替わる「債務の株式化」であり、旧商法にはDESについて直接これを定めた規定がないことから、現物出資の制度を借用しているにすぎず、DESは真正な現物出資とは別個のものである。 債務の消滅によって資本の増加が生じることから、DESは資本取引であり、損益取引である債務消滅益を生じる余地はない。 請求人が行った本件DES取引は、その全額が法人税法第22条第5項に規定されている資本等取引に該当するものであり、損益取引である債務消滅益の生ずる余地はない。 (4) 国税不服審判所の判断 債権者である■■■■■が、債務者である請求人に対する本件現物出資債権を、請求人に現物出資し、請求人が■■■■■に株式を交付するという取引が存在することに争いはなく、このことから、本件DES取引は現物出資に該当する。 現物出資に該当する以上、債権の現物出資という行為と、その結果生じる混同という事象を個々に認識するのは当然のことであり、出資は資本等取引に該当するのであるが、混同については出資された資産の額と消滅する負債の額が同額でない場合には、当然に差額が発生することになるから、損益取引が生ずることもあり得る。 (5) 評釈 本事件は、平成18年度税制改正前の事件であるとはいえ、適格現物出資に該当するDESについての結論は変わらないため、現在でも参考になる事件である。 平成17年改正前商法または会社法に規定されている現物出資の手続きによりDESを行う場合には、法人税法上も、適格現物出資に該当するか否かで処理が異なってくる。平成18年度税制改正前は非適格現物出資に該当する場合の処理について明確ではなかったが、平成18年度税制改正により、非適格現物出資に該当する場合には、券面額ではなく、時価で処理することとされたため、券面額と時価が異なる場合には、被現物出資法人において債務消滅益課税が生じることになる。 これに対し、適格現物出資に該当する場合であるが、会計上の処理にかかわらず、簿価で受入処理がなされることになる。すなわち、本事件のように、430,442,435円の債権を162,000,000円で取得した後に現物出資を行った場合には、以下の税務上の仕訳を行う必要がある。 【現物出資法人の仕訳】 【被現物出資法人の仕訳】 ① 現物出資による受入れ ② 混同による消滅 この取扱いは、平成17年7月に稲見誠一先生と共著で出版した『ケース別にわかる企業再生の税務』(中央経済社)130-134頁で解説した内容と整合的であり、本事件における国税不服審判所の判断は妥当なものであったと考えられる。 なお、本事件は、平成21年4月28日東京地裁判決、平成22年9月15日東京高裁判決でも同様の判断がなされ、最高裁で棄却されたことから判決が確定したが、本連載において、これらの裁判例の紹介も行う予定である。 以上、第30回から第37回(本稿)までは、TAINSに収録されている非公開裁決事例の解説を行った。次回以降は、最近の主要な裁判例について解説を行う予定である。  (了)

#No. 141(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/10/22

税務判例を読むための税法の学び方【71】 〔第8章〕判決を読む(その7)

税務判例を読むための税法の学び方【71】 〔第8章〕判決を読む (その7)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   (2 判決をみるポイント) (② 結果を左右した要素を見極める) ((3) 判決の示した「一般的法命題」は何か) (承前) ところで、この判決を左右した結果を見極めるためにも、事案の正確な把握は不可欠である。 そのためには、「下級審の判決をしっかり読む」ことが必要である。 前回紹介した判決において、原告が子会社の役員であるのみならず米国親会社の副社長でもあるが、そのことは第一審(東京地裁平成15年8月26日判決)にしか出てきていない旨記した。 このように、事案の判断に当たり大事な事実が、第一審の判決文にしか出てきていないケースがあるため、最高裁の判決について判断する場合においても、第一審や控訴審の判決を見る必要がある。 ③ 判例の射程を見極める 前回、「一般的法命題」をしっかり把握すべき点、説明した。 昨今、ある裁判例の「一般的法命題」が「判例」として信じられ、多くの裁判例において引用され判断基準とされてきたものが、下級審において「判例」ではないとされたうえ、最高裁においても「判例変更」と扱われず、上告受理申し立てが不受理とされた事案があった。 すなわち、最高裁昭和56年4月24日判決である。 この最高裁判決は、税法分野において非常に重要な判例とされ、これまで所得区分をめぐる争いの場合には必ずと言っていいほど参照され、その示された法命題により判断されてきた。 この中の同理由中、「同(上告代理人竹田章治の上告理由のこと。筆者記す。)第二点ないし第五点について」にある以下の部分である(下線は筆者による)。 この中の「事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意志と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」は、事業所得に関する判断基準「独立性要件」として、これまで多くの裁判例で機能してきたものである。 一方、「給与所得とは雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付」は、給与所得に関する判断基準「従属性要件」として、これまで多くの裁判例で機能してきたものである。 しかしながら以下の事案においては、この判決にあった「判断の一応の基準」という文言から、これが「一応の基準」にすぎず、判例ではないとして、この独立性要件及び従属性要件による判断の枠組みを否定したのであった。 この事案では、家庭教師や塾講師(以下「家庭教師等」とする)を派遣している会社に、家庭教師等として支払う報酬が給与所得として源泉徴収義務があるか否かが争われた。 すなわち、原告は、家庭教師等が「使用者の指揮命令」という従属性要件を満たさないことから給与ではなく源泉徴収義務はないと主張した。一方、国側は、家庭教師等の報酬は「非独立的な労務の対価」として給与に該当し、支払者に源泉徴収義務があると主張したのであった。 そして上記最高裁昭和56年4月24日判決で示された「従属性要件」は「判断の一応の基準」でしかないとされたのであった。 (続く)

#No. 141(掲載号)
#長島 弘
2015/10/22

商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用・申告のポイント 【第2回】「認定支援機関等からのアドバイスを受けた旨を明らかにする書類」

商業・サービス業・農林水産業活性化税制の 適用・申告のポイント 【第2回】 「認定支援機関等からのアドバイスを受けた旨を明らかにする書類」   税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 石田 寿行   商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、中小企業者等が、認定経営革新等支援機関や認定経営革新等支援機関に準ずる法人(以下「認定支援機関等」という)からアドバイスを受け、そのアドバイスの中で経営の改善に資する資産であるとして指導及び助言を受けた器具及び備品又は建物附属設備を取得、製作又は建設(以下「取得等」という)して、指定事業の用に供した場合に、認定支援機関等からのアドバイスを受けた旨を明らかにする書類の写しを納税申告書に添付することで、30%の特別償却又は7%の税額控除が受けられるものである。 そのため、適用を受けるためには、「認定支援機関等からのアドバイスを受けた旨を明らかにする書類」の写しを申告書に添付することが必要となる。今回はこの添付書類の作成に関する留意点について解説していく。   1 申告書に添付する書類の記載事項 添付書類には、以下のような事項が記載されていることが求められている。 なお、書類の作成は、税制措置の適用を受けようとする中小企業者等、認定支援機関等のどちらでも行うことができるが、②~⑤については認定支援機関等側での記載が求められている。   2 書類の書式 書類の書式については、上記1の記載事項があれば自由であり、特段形式が定まっているわけではないが、認定支援機関等の氏名、名称などの記載には必ず押印する必要がある。また、認定支援機関等が法人の場合の代表者氏名は、法人の登記上の代表者の氏名を記入する必要がある。 この場合の押印は、認定支援機関の支部組織等であれば、支部組織、部署名の名称の印でも問題ないが、必ず認定支援機関のどの機関に該当するかわかるようにする必要がある。例えば「A商工会議所B支部」の場合、「B支部」だけではなく、「A商工会議所」という名称も記載する必要がある。 また、取得等をしようとする設備、取得等をした設備の明細の記載については、申告時に、書類に記載されたものと、申告書に添付する明細書との整合、その設備が本税制措置の対象の設備となるかどうかのチェック等がされることになる。 そのため、認定支援機関等で設備の明細を書類に記載する場合、一般的な商品名(例えばパソコン、レジスター、冷凍ショーケースなど)に加えて、明細書に記載することになる「対象資産の種類等」の記載とそろえるため、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(耐用年数省令)を基にして、 などを記載する必要がある。加えて、取得等をしようとする設備が経営の改善に資することを書類上、明らかにする必要がある。 アドバイスを行った日が複数日にわたる場合に、例えば、平成27年6月1日、6月15日、6月30日にアドバイスをした場合、それぞれの日を併記することも、「平成27年6月1日から1ヶ月」のような記載も可能である。   3 その他の留意点 (1) アドバイス記録の管理 認定支援機関等は中小企業者等にアドバイスを行った後、アドバイスの記録を残す必要がある。特段、記録簿等を備えつける必要はないため、中小企業者等に渡した書類のコピーの保存でも可能である。法人税については9年間、所得税については5年間の更正期間があるため、それぞれの期間中はアドバイス記録を保存しておくことが望ましいと考えられる。 (2) 認定経営革新等支援機関が書類を発行する場合 認定経営革新等支援機関が記名押印した書類を発行する場合の、その書類における認定支援機関等の名称等については、経済産業局長等からの認定通知書に記載された名称等を記載する必要がある。   4 書類の記入例 書類の記入例を示すと以下のとおりである。なお書式イメージのワードデータについては中小企業庁ホームページ(こちら)から入手することができる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (追記2015/10/28) 上記記入例のうち、年度表記に誤りがありましたので修正いたしました。 (了)

#No. 141(掲載号)
#石田 寿行
2015/10/22

こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第37回】「電算機計算の特例による場合の所得税及び復興特別所得税の処理」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第37回】 「電算機計算の特例による場合の 所得税及び復興特別所得税の処理」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   当社では、給与計算の際、平成27年分源泉徴収税額表により所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しています。平成27年分源泉徴収税額表によらず、電算機計算の特例により所得税及び復興特別所得税を源泉徴収できるそうですが、どのような特例なのかよくわかりません。 電算機計算の特例による場合の所得税及び復興特別所得税の処理についてご教示ください。   1 概要 電算機計算の特例とは、給与計算をパソコンなどの事務機械によって処理している場合には、下記2の者に対して支給する下記3の給与・賞与について、財務大臣が定める方法(財務省告示)により所得税及び復興特別所得税を源泉徴収できる特例をいう。 2 対象者 「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社へ提出している者(甲欄適用者) 3 対象になる給与・賞与 支給期が毎月、毎半月、毎旬又は月の整数倍の期間ごとと定められている給与 前月中に通常の給与を受けていない者に支払う賞与 前月中の通常の給与の10倍を超える賞与 4 計算方法 所得税及び復興特別所得税は給与計算ソフトにより自動計算される。具体例を用いて計算過程を解説する。 (1) その月の社会保険料等控除後の給与等の金額を計算する その月の社会保険料等控除後の給与等の金額=役員報酬700,000-(健康保険35,394円+厚生年金55,267円)=609,339円 (2) 第1表より、給与所得控除の額を計算する 給与所得控除の額=その月の社会保険料等控除後の給与等の金額609,339円×10%+100,000円=160,934円(1円未満切上) (3) 第2表より、配偶者控除の額、扶養控除の額、基礎控除の額を計算する 基礎控除の額:31,667円 (4) その月の課税給与所得金額を計算する その月の課税給与所得金額=(1)-((2)+(3))=416,738円 (5) 第3表より、源泉徴収する所得税及び復興特別所得税を計算する 源泉徴収する所得税及び復興特別所得税=その月の課税給与所得金額416,738円×20.42%-36,374円=48,720円(10円未満四捨五入) (出典:国税庁ホームページ「月額表の甲欄を適用する給与等に対する税額の電算機計算の特例について(平成27年分)」) 5 平成27年分源泉徴収税額表との差異 下記表によると、その月の社会保険料等控除後の給与等の金額609,339円、かつ、扶養親族等の数0人の場合、源泉徴収する所得税及び復興特別所得税は48,750円である。 上記4の48,720円と30円差異が生じるが、年末調整により精算されるため問題ない。 表 平成27年分源泉徴収税額表(一部抜粋) (出典:国税庁ホームページ「給与所得の源泉徴収税額表(平成27年分)」) (了)

#No. 141(掲載号)
#上前 剛
2015/10/22

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第38回】サンリン株式会社「社内調査委員会調査報告書(平成27年9月10日付)」

  〔会計不正調査報告書を読む〕 【第38回】 サンリン株式会社 「社内調査委員会調査報告書(平成27年9月10日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【調査委員会の概要】   【サンリン株式会社の概要】 サンリン株式会社(以下「サンリン」と略称する)は、1934(昭和9)年12月設立のエネルギー関連商社。連結売上高32,121百万円、連結経常利益1,134百万円(数字はいずれも平成27年3月期)。従業員数492名。本店所在地、長野県東筑摩郡。JASDAQ上場。   【調査報告書のポイント】 1 不正行為が発覚した経緯 8月3日付リリースによれば、不正行為は、監査法人による四半期レビューの過程において端緒が発見され、ヒアリング・裏付け調査の結果、発覚したものである。   2 調査委員会の構成 調査委員会の概要に記したとおり、サンリンは、従業員不正行為の調査にあたり、第三者委員会ではなく、社外監査役である弁護士を委員長とした社内調査委員会を組成している。この方針に関し、8月3日付けリリースは次のように説明している。   3 調査報告書により判明した事実 (1) 従業員による不正行為の手口 不正行為の当事者である従業員は、当初、自身の前勤務先であり、また、サンリンと取引関係にある、父親が経営する有限会社A商店(以下「A商店」という)の請求書と領収書を偽造することにより、請求代金を支店の手許現金から支払わせ、着服を繰り返していた。 支店には「買掛金諸口支払」という制度(サンリンの電算システムに仕入先コードを設けず、単発のスポット取引を処理する方法)を悪用したものではあったが、手口としては単純であり、また着服金額も比較的少額だった(平成21年9月~平成23年9月)。 (2) 巧妙化する不正行為の手口 平成23年10月以降、架空仕入の対象を小口の請負工事からリフォーム工事・太陽光発電設備工事へと広げ、着服金額も大きくなっていく。 その結果、サンリンが業績分析指標としている差益率(売上高に対する売上総利益の割合)が悪化するため、架空仕入を未完成の工事原価(棚卸資産)に計上して、売上原価の調整を図ることとなる。 しかし、この方法では棚卸資産残高が増加するため、架空売上を計上して架空の棚卸資産をその売上原価として処理し、架空売上に係る売掛金の回収には新たな架空仕入の計上により着服した金員を流用するようになり、一気に不正行為の金額が増加することとなった。 (3) 不正行為の全容   4 有価証券報告書の訂正報告書 9月11日に提出された有価証券報告書の訂正報告書には、訂正の経緯及び会計処理として、次のような記述がある。 訂正された平成27年3月期有価証券報告書によれば、連結貸借対照表関係の注記として、不正行為に関連して発生したものとして、「長期未収入金」が154百万円計上され、同額の貸倒引当金が設定されている。同じく、連結損益計算書に関する注記として、同期の貸倒引当金繰入額69百万円が営業外費用として計上されていることが記載されている。   5 再発防止に向けた改善策(調査報告書p.43以下) 調査委員会が指摘した改善策の概要は以下のとおりである。 とりわけ紙数を割いているのが、社内ルールの不備に対する提言である。 不正行為の当事者が行った架空仕入・架空売上の計上は、買掛金諸口支払制度が悪用され、内務担当者が郵送すべきであると定めた請求書郵送ルールの例外を認めてしまい、未整備であった新規口座開設ルールや未完成工事分棚卸資産の現地確認ルールの不備などが発覚を遅らせたものといえ、こうした原因に対処するための提言としては現実的なものとなっている。また、ルールの遵守状況に対するモニタリングについても、各部門の役割が記述されており、提言内容に沿った施策をとることは、再発防止に効果があるものと評価する。 それに引き換え、少し物足りなく感じるのは「リスクマネジメント体制の再構築」としてまとめられた項目である。 「監査等による不正行為把握の可能性(p.41)」の中で、調査委員会は、以下のように指摘している。 であるとすれば、なぜ、異常値が検知できなかったのか、異常値を検知するために監査部門はどうあるべきかといった視点での改善策が提言されるべきではないのか、というのが筆者の印象である。   6 調査報告書の特徴 (1) 厳しい責任追及(p.42) 不正行為の当事者については、調査の結果から、「単独犯行と断定」でき、「一義的には、全責任を当事者が負うべきものである」と断罪したうえで、社内規程により懲戒解雇処分とするとともに、可及的速やかに「業務上横領容疑にて刑事告訴を行う」こととしている。 当事者の上司である、現支店長、前支店長については監督責任を負う立場にありながら適切な管理を行わず、今回の事態を招いたとして、社内規程に基づき「降格」処分とすることが記されている。 さらに、支店および本社関連部署の関係者についても、 社内規程等諸規則の把握に努めるべきであったこと 支店等からの報告を含め計数管理を行う立場にあったこと にもかかわらず、適正な管理業務に関し、過失があったとして、社内規程による懲戒処分とすることが記されている。 なお、調査報告書は、取締役等の責任については触れていないが、9月10日付リリースでは、代表取締役以下取締役および常勤監査役は「経営責任を明確にするため」月額報酬の一部を自主返納することとしている。 (2) 自店内親族取引 調査委員会による再発防止策の中の「社内ルール事案に対する改善策(p.43)」には、 という、他社には見られない施策が提言されている。 不正行為の当事者が利用したのは、サンリン入社前に自らも勤務していたA商店であり、経営者は当事者の父であった。不正の手口で見てきたように、当事者は父の経営するA商店からの仕入を装って請求書を発行しあるいはA商店に対する売上を架空計上して棚卸資産残高の増加を防ぎ、不正の発覚を免れてきた。 サンリンの取扱品目がLPガスや石油製品の販売、リフォーム事業であることから、社員およびその親族との取引が発生することはやむを得ないことであろうが、少なくとも、社員の親族が経営する会社との取引に関しては何らかのルールを設けておくべきであった。 A商店の経営者が当事者の父であったことを当事者の上司である支店長が知っていたかどうかは報告書に記載がないので不明であるが、知らなかったということであれば、与信管理上問題であるし、知っていて放置していたとすれば、支店長としての任務を果たしていたとは言えないことになろう。 (3) ギャンブル依存症と不正 筆者が本事例に興味を持ったのは、「当事者」と称されている社員が、「競馬に対し、ギャンブル依存症というレベルまでのめりこんでいた」という調査委員会の評価をその一因としている。 競馬で借金がかさんだ挙句、平成20年3月には個人再生手続を裁判所に申し出て、平成23年8月に返済が完了した、ということもあり、彼のギャンブル依存症は、少なくとも、家族は知っていたのではないか、同僚のうちにも知っている人間がいたのではないかと思うのだが、そうした調査が行われたかどうかは不明である。 ギャンブルによる不正というと想起されるのは、大王製紙事件であるが、精神科医の帚木蓬生氏は、ギャンブル依存を次のように説明している、 (出典) 帚木蓬生『やめられない-ギャンブル地獄からの生還』(集英社、2010年) 調査結果によれば、「当事者」である社員の着服額は、平成25年から一気に増加している。これは、もしかすると、彼のギャンブル依存が進行し、少額の賭けでは満足できない精神状態に陥っていたことに起因しているのかもしれない。 そうした可能性が排除できないのであれば、社員のメンタルヘル対策として、提携した医療機関でカウンセリングを受けられるような仕組みを整えることも、再発防止策として有効なのではないだろうか。 早い段階、たとえば本事例の場合、平成24年までに、不正行為を発見するなり、彼のギャンブル依存症に気づくことができれば、懲戒解雇したうえで刑事告訴という最悪の結末は迎えなくても済んだのではないかという点から考えても、不正の早期発見のための施策は、会社の損失を防ぐためだけに必要なものではなく、従業員を守ることにもつながることを強調しておきたい。 (了)

#No. 141(掲載号)
#米澤 勝
2015/10/22

金融商品会計を学ぶ 【第13回】「時価のある有価証券の減損処理」

金融商品会計を学ぶ 【第13回】 「時価のある有価証券の減損処理」   公認会計士 阿部 光成   今回より、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)及び「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)に規定する「有価証券の減損処理」について解説する。 本稿では、「時価のある有価証券」の減損処理を対象とする。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 有価証券の減損処理 1 減損の用語 「有価証券の減損」とは、評価差額が純損益に計上される売買目的有価証券以外の有価証券に係る時価又は実質価額の著しい下落に伴って、当該時価又は実質価額を翌期首の取得原価とするために、取得原価を強制的に切下処理し、当該切下額を当期の損失として認識すべき場合を指す用語である(金融商品実務指針283-2項)。 2 減損処理の規定 金融商品会計基準及び金融商品実務指針は、有価証券の減損処理の会計処理について、次の図表のように規定している。 金融商品会計基準は、「時価が著しく下落した場合」の会計処理について、市場価格の有無に係わらせて、従来の考え方を踏襲して規定しているため、ここでのポイントは、時価のあるものかどうかにわけて理解するところにあると解される(金融商品会計基準83項)。 なお、社債その他の債券の会計処理については次回以降で述べる予定である。   Ⅱ 時価のある有価証券の減損処理 1 減損処理の規定 金融商品実務指針は、時価のある有価証券の減損処理について、次のように規定している(金融商品実務指針91項)。 上記によると、減損処理に関するポイントは次の事項である。 2 時価が著しく下落したとき 金融商品実務指針は、「著しく下落した」ときとは、必ずしも数値化できるものではないとしつつ、次のように規定している(金融商品実務指針91項)。 3 回復する見込みがあるとき 金融商品実務指針は、著しく下落した時価について、「回復する見込みがある」と認められる場合を次のように規定している(金融商品実務指針91項)。 回復する見込みがあると判断された銘柄以外の有価証券は、減損処理することになる(金融商品実務指針91項)。 上記によると、時価の回復可能性の判断のポイントは次の事項である。 4 株式の時価の回復可能性 株式の時価の回復可能性に関する判断のポイントは次のとおりである(金融商品実務指針91項、284項)。 上述の③は、通常回復する見込みが少ないと一般的に考えられる例示である。 このため、十分な根拠に基づいて反証することができ、その例示として次のことが挙げられている(金融商品実務指針284項)。 *  *  * 次回は「時価を把握することが極めて困難と認められる株式・債券」の減損処理について解説する。 (了)

#No. 141(掲載号)
#阿部 光成
2015/10/22

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第98回】外貨建取引⑦「在外子会社の換算」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第98回】 外貨建取引⑦ 「在外子会社の換算」   仰星監査法人 公認会計士 上村 治   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 決算時の米国子会社の財務諸表の換算結果は以下のとおりとなります。なお、収益及び費用の換算は期中平均為替レート(原則処理)によっています。 (※1) 収益、費用及び当期純利益は期中平均為替レートで換算 (※2) 親会社との取引は取引発生時の為替レートで換算 (※3) 円建金額の貸借差額 5,900+17,250-18,400-4,600=150 (※1) 資産及び負債は決算時の為替レートで換算 (※2) 親会社による株式取得時の為替レートで換算 (※3) 損益計算書で計算された当期純利益 (※4) 円建金額の貸借差額 24,000-7,200-10,000-4,600=2,200   〈会計処理の解説〉 1 在外子会社の換算手順 在外子会社財務諸表の換算の手順は以下のとおりです。 2 損益計算書の換算方法 収益及び費用については、会計期間を通して発生するものであるため、原則として期中平均為替レートにより換算します。ただし、決算時の為替レートにより換算することも認められています。 なお、親会社との取引による収益及び費用の換算については、親会社が換算に用いる為替レートにより換算します。これは、連結財務諸表を作成する際に取引高の相殺消去を行うためです。この場合に生じる差額は当期の為替差損益として処理します(外貨基準三.3.)。 事例では、親会社への売上があり、これについては取引時の為替レートは118円/ドルで換算し、その他の収益及び費用は期中平均為替レートである115円/ドルで換算(原則処理)します。換算する為替レートが複数あることから換算差額150円が生じ、この差額を為替差損とします。 3 貸借対照表の換算方法 資産及び負債については、決算時の為替レートにより換算します(外貨基準三.1.)。 純資産に係る項目は、取引発生時の為替レートで換算されます(外貨基準三.2.)。具体的には、親会社による株式の取得時における資本に属する項目については、株式取得時の為替レートにより換算し、親会社による株式の取得後に生じた利益剰余金は、利益剰余金の発生時の為替レート(当期純利益が発生した会計期間の損益項目を換算する為替レート)により換算します。 これにより生じた換算差額については、為替換算調整勘定として純資産の部に記載します(外貨基準三.4.)。 事例では、資産及び負債については決算時の為替レートである120円/ドルで換算し、資本金は設立時の為替レート100円/ドルで換算します。また、利益剰余金については、X1年3月期の損益項目を換算するレートである期中平均為替レート115円/ドルで換算します。 これにより貸借対照表の換算差額2,200円が生じますが、これを為替換算調整勘定とします。 (了) ※11月は1株当たり情報について取り上げます。

#No. 141(掲載号)
#上村 治
2015/10/22
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