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《速報解説》 税効果会計に係る「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」が公表~意見募集期間は平成27年7月27日まで~

《速報解説》 税効果会計に係る 「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」が公表 ~意見募集期間は平成27年7月27日まで~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成27年5月26日、企業会計基準委員会は、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第54号)を公表し、意見募集を行っている。 繰延税金資産の回収可能性に関する取扱いについては、現行、日本公認会計士協会の「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(以下「監査委員会報告第66号」という)に基づいて判断されているが、これを見直し、企業会計基準委員会に移管するものである。 意見募集期間は、平成27年7月27日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容(会社分類関係) 1 会社分類 監査委員会報告第66号における企業の分類に応じた取扱いの枠組みを基本的に踏襲しており、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等に基づいて繰延税金資産の回収可能性を判断する際に、要件に基づき企業を(分類1)から(分類5)に分類し、当該分類に応じて、回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定することを提案している。 (分類1)から(分類5)に係る分類の要件をいずれも満たさない企業は、過去の課税所得又は税務上の欠損金の推移、当期の課税所得又は税務上の欠損金の見込み、将来の一時差異等加減算前課税所得の見込み等を総合的に勘案し、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類する。 2 「経常的な利益(損益)」から「臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得」 監査委員会報告第66号では、(分類2)及び(分類3)を行うに際して、「経常的な利益(損益)」という会計上の利益を用いている。 公開草案は、「臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得」に基づく要件に変更することを提案している。 3 (分類2)におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異 監査委員会報告第66号では、(分類2)に該当する企業においては、スケジューリング不能な将来減算一時差異について、一律に繰延税金資産を計上することができないとする取扱いとなっている。 公開草案は、(分類2)に該当する企業においては、原則として、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産については、回収可能性がないものとしている。ただし、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを合理的に説明できる場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとすることを提案している。 4 (分類3)における将来の一時差異等加減算前課税所得の合理的な見積可能期間 監査委員会報告第66号では、(分類3)に該当する企業においては、「将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)内の課税所得の見積額を限度」とする規定となっている。 公開草案は、(分類3)に該当する企業においては、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを合理的に説明できる場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとすることを提案している。 5 (分類4)に係る分類の要件を満たす企業が(分類2)又は(分類3)に該当する場合の取扱い 監査委員会報告第66号では、「重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社等」であっても、 とされている。 公開草案は、過去(3年)又は当期において重要な税務上の欠損金が生じていること等により(分類4)に係る分類の要件を満たす企業においては、重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積もる場合、将来において5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることが合理的に説明できるときは(分類2)に該当するものとして取り扱い、将来においておおむね3年から5年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることが合理的に説明できるときは(分類3)に該当するものとして取り扱うことを提案している。   Ⅲ その他 注記事項に関して、以下の事項が検討されており、意見募集が行われている。 Ⅳ 適用時期等 適用時期等について、以下の提案がなされており、意見募集が行われている。 (了)

#No. 121(掲載号)
#阿部 光成
2015/05/28

プロフェッションジャーナル No.121が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年5月28日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.121が 公開されました。 プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布中!   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/05/28

山本守之の法人税“一刀両断” 【第11回】「役員退職金をめぐる最近の判決」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第11回】 「役員退職金をめぐる最近の判決」   税理士 山本 守之   1 判決とその内容 この連載の【第1回】で取り上げた事例ですが、役員の退職金について、分掌変更の支給の場合の支給遅延については、平成27年3月3日の東京地裁の判決で次のようになり、第2回目の支払分の損金算入が認められました。国側は控訴を断念しましたので、納税者勝訴が確定しました。 役員退職金については、次のような2つの通達があります。 〔第一通達〕では、役員の退職給与は、会社法361条の適用を受けるので、株主総会の決議を経てはじめて具体的な退職給与請求権が確定するのでそのように書かれたものです。 法人税の取扱いにおいても、株主総会等で退職給与の額が具体的に確定した日の属する事業年度で損金の額に算入するのが原則となっています。ただ、株主総会等における支給決議を退職後いつまでに行わなければならないかを定めた規定は存在しません。 一般的には退職後最初に開催される株主総会等で退職給与の支給決議が行われるでしょうが、決議時期について特段の規定がない以上は、退職後長期間を経てから支給決議をしても、税務上これが容認されるべきだとする考え方がなくもありません。 しかし、特段の事情がないにもかかわらず、支給決議を必要以上に遅らせることを税務上容認すれば、これが利益操作の具として使われ、恣意的に役員退職給与の損金算入時期が決定され、課税上の弊害が生じます。 また、合理的な理由がないのに退職後相当期間を経ても退職給与の支給決議がないのは、退職給与を支給しないことで解決済みとの見方もできます。 こうなると、退職後いつまでに株主総会の決議が行われれば税務上容認されるかが問題となりますが、課税庁の解説書では次のように述べています(東京国税局調査第一部調査審理課『法人税実例集成』(税務研究会、308頁)。 ただ、課税庁のなかには〔第一通達〕では完全退職の場合に適用され、分掌変更の場合は特例である〔第二通達〕によるとの考え方がありますが、これは誤りで、訴訟(平成27年3月3日判決)でも否認されています。 ところで、〔第二通達〕(法基通9-2-32)に関し、支払遅延があった場合について、国税不服審判所の裁決(平成24年3月27日)では次のように述べています。 つまり、代表取締役から非常勤取締役となった次の事業年度に支払った1億2,500万円は、退職給与とならないとすると一般の役員給与となり、法人税法34条1項の1号から3号に該当しなければ、原則損金不算入の規定の適用を受けるというのです。 現行法の法人税法34条は、1項の1号~3号以外については原則損金不算入となりますから、退職給与とはならなければ、そのまま損金不算入となるのです。 (※) 1号~3号は「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」です。 この点について国税不服審判所の裁決では としています。 つまり未払分や1年後支払分は一時的未払ではないから退職給与といえない――その他の給与だから法人税法34条の3要件(定期同額給与等)ではなく、賞与の性格であるとしているのです。 定期同額給与等の3要件に入らない給与は損金不算入であるというのです。   2 〔第二通達〕のただし書き この訴訟では、〔第一通達〕のただし書き(→支給額を支給日の属する事業年度で損金経理する)は、完全退職の場合にだけ認められ、分掌変更の場合は適用できない特例であるとしている国側に対して、 と反論しています。 ともすれば、〔第一通達〕本書きは完全退職の場合に適用し、ただし書きは分掌変更の場合に適用できず、分掌変更で適用できるのは〔第二通達〕だけであるとする課税庁、審判所の考え方の誤りを指摘したのです。 この点は税理士が〔第一通達〕は完全退職の場合だけ適用し、〔第一通達〕ただし書きは分掌変更の場合は適用できず、分掌変更で適用されるのは〔第二通達〕だけと思い込んでいたとすれば、その誤りは正さなければならないでしょう。   3 なぜ退職給与にこだわるのか 法人税法34条1項による損金不算入は次のようになっています。 【図表2】によれば、退職給与は法34条1項の損金不算入の適用はないので、課税庁が損金不算入としたい場合は退職給与ではないと主張するのです。 裁判所は退職給与を次のように考えています。 また、次のように判示しています。 また、〔第二通達〕は特例であるとする国側の主張については、租税法律主義(課税要件法定主義)に反するとしています。 注意したいのは、〔第二通達〕は課税要件を規定しており、租税法律主義に反しますが、税理士や学者はこれに疑問を持たず容認してきました。 この背景には、〔第二通達〕は特例であるとの理由から、決議後1年も経て支給しても退職給与とはされず、法34条1項(定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与以外は損金不算入)が適用されるとしたのです。 しかし、通達で「課税要件」を定め、これを特例とするのは租税法律主義に反するものだとする納税者の主張を認め、〔第一通達〕のただし書きを適用するとした判決の意義は大きいのです。 〔第二通達〕は節税屋税理士が利用したものですが、国税不服審判所及び原処分庁では、これは特例であるとしています。判決では法人税基本通達9-2-28のただし書を適用すべきものとして として法34条1項の適用はできないとしています。 この判決は租税法律主義(課税要件法定主義)を重視するもので、通達を頼りにしている税理士や学者に反省を求めるものです。 (了)

#No. 121(掲載号)
#山本 守之
2015/05/28

「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税非課税特例」の活用ポイント 【第1回】「制度の概要について」

「結婚・子育て資金の一括贈与に係る 贈与税非課税特例」の活用ポイント 【第1回】 「制度の概要について」   税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良   はじめに 平成27年度税制改正において、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税非課税特例(以下「結婚・子育て資金贈与特例」)が創設された。一方、平成27年1月1日以降に他界した場合の相続税につき、基礎控除の引下げが行われ、相続税が課税される対象者が拡大し、相続税に対する関心が高まっている。 このため、結婚・子育て資金贈与特例は、相続税対策という観点からら顧客へ説明する機会も増加すると考えられる。 本連載では、結婚・子育て資金贈与特例につき、 を説明していくこととしたい(※1)。 (※1) 本連載では、原稿執筆時点(平成27年5月19日)で公表されている以下のものに基づき、説明を行う。 なお、租税特別措置法通達、財務省立法担当者解説(「税制改正の解説」財務省HP)は執筆時点では公表されていないため、その内容については解説を割愛する。   1 制度の概要 平成27年4月1日から平成31日3月31日までの間に、20歳以上50歳未満の個人(以下「受贈者」)が、結婚・子育て資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、受贈者の直系尊属(父母、祖父母など。以下「贈与者」)から下記による贈与を受け結婚・子育て資金口座の開設等を行った場合、信託受益権又は金銭等の価額のうち1,000万円までの金額に相当する部分の価額については、金融機関等の営業所等を経由して結婚・子育て資金非課税申告書を提出することにより、贈与税が非課税となる。 信託受益権を付与された場合 書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合 書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合   2 受贈者の要件 結婚・子育て資金贈与特例が適用される受贈者は、20歳以上50歳未満の個人に限られる。 20歳以上50歳未満であるかは、結婚・子育て資金管理契約の締結日を基準として判断される。   3 結婚・子育て資金とは 「結婚・子育て資金」とは、以下の金銭をいう。 ① 受贈者の結婚に際して支出する費用で次の費用に充てられる金額 受贈者の婚姻の日の1年前の日以後に支払われる婚姻に係る婚礼(結婚披露を含む)のために要する費用で一定のもの 受贈者又はその配偶者の居住の用に供する家屋の賃貸借契約(受贈者が締結するものに限る)であって、婚姻の日の1年前の日からその婚姻の日以後1年を経過する日までの期間に締結されるものに基づきその締結の日以後3年を経過する日までに支払われる家賃、敷金その他一定のもの 受贈者が、受贈者及びその配偶者の居住の用に供するための家屋に転居(婚姻の日の1年前の日からその婚姻の日以後1年を経過する日までの期間にする転居に限る)をするための一定の費用 ② 受贈者又はその配偶者の妊娠、出産及び育児に要する費用で次の費用に充てられる金銭 受贈者又はその配偶者の不妊治療のために要する費用又は妊娠中に要する費用で一定のもの 受贈者又はその配偶者の出産の日以後1年を経過する日までに支払われるその出産に係る分べん費その他の費用で一定のもの 受贈者の小学校就学前の子の医療のために要する費用で一定のもの 幼稚園、保育所等を設置する者に支払う受贈者の子に係る保育料その他の費用で一定のもの   4 贈与者の要件 結婚・子育て資金贈与特例が適用される贈与につき、贈与者は受贈者の直系尊属(父母、祖父母など)に限られる。したがって、義理の父母から贈与を受けた場合には、贈与者は受贈者の直系尊属に該当しないため、結婚・子育て資金贈与特例は適用できない。   5 非課税限度額 結婚・子育て資金贈与特例の非課税限度額1,000万円(結婚に際して支払う金銭については、300万円が限度)は、受贈者ごとに判定する。したがって、祖父及び祖母からそれぞれ1,000万円を贈与された場合であっても、結婚・子育て資金贈与特例は合計1,000万円までしか適用できない。 なお、直系尊属(同一個人)から複数にわたって結婚・子育て資金の贈与を受けた場合には、他の要件を満たしている前提で、その合計額が1,000万円までは結婚・子育て資金贈与特例の適用が可能である。   6 結婚・子育て資金管理契約の期間中に贈与者が死亡した場合 信託等があった日から結婚・子育て資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合には、当該死亡の日における非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額については、受贈者が贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなして、当該贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算する。   7 結婚・子育て資金管理契約の終了 次に掲げる事由に該当した場合には、結婚・子育て資金管理契約は終了する。 上記イ又はロに掲げる事由に該当したことにより結婚・子育て資金管理契約が終了した場合において非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額があるときは、これらの事由に該当した日に当該残額の贈与があったものとして受贈者に贈与税を課税する。 「父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」(国税庁) (了)

#No. 121(掲載号)
#根岸 二良
2015/05/28

平成27年度税制改正における「受取配当等の益金不算入制度」の見直しについて 【後編】

平成27年度税制改正における 「受取配当等の益金不算入制度」の見直しについて 【後編】   辻・本郷税理士法人 税理士 安積 健   (5) 負債利子控除制度の見直し② 前回は、課税ベース拡大に伴う緩和策として負債利子控除制度の見直しがされたことを解説した。しかし、負債利子控除制度の改正はそれだけではない。 負債利子の計算方法には、「原則法」と「簡便法」がある。前者は総資産簿価按分法と呼ばれ、負債利子に期末の総資産価額に対する期末の株式等の帳簿価額の占める割合を乗じて控除される負債利子を計算する方法である。これに対して後者は、基準年度実績により控除される負債利子を計算する方法である。 原則法である総資産簿価按分法では、総資産の帳簿価額をもとに一定の調整を加えて計算を行う。この場合の一定の調整について改正が行われた。改正前は、次に掲げる5項目について調整を行うことになっていた。 これに対して、改正後は、上記(エ)及び(オ)については調整を行わないこととなった。既に述べた通り、改正後、負債利子を考慮するのは関連法人株式等に係る配当のみであり、また納税者の事務負担に配慮しての改正である。したがって、改正後は、法令上、上記(ア)から(ウ)までの調整を行うことになる。 (6) 負債利子控除制度の見直し③ 負債利子の計算方法のうち、簡便法についても改正が行われた。「簡便法」とは、基準年度において原則法で計算した場合の控除負債利子を基礎に算定した割合を用いて当年度の控除負債利子を計算する方法である。 ここで「基準年度」とは、『平成22年4月1日から平成24年3月31日までの間に開始する各事業年度』であるが、平成27年度税制改正により、『平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する各事業年度』に改正された。 前回述べたように、改正により負債利子控除を適用するのは関連法人株式等に係る配当等のみとなった。また、「関係法人株式等」から「関連法人株式等」に名称が変わり、その持株比率基準も見直された。 その結果、簡便法適用時の基準年度も見直されたものと思われる。 (7) 証券投資信託の収益の分配金に対する課税の見直し 公社債投資信託を除く証券投資信託については、株式だけでなく債券等にも運用されており、運用財産から株式等を抜き出し、これに係る収益の分配金を算定することは実務上困難であるところから、一種の割り切りとして、収益の分配金のうち2分の1相当額が株式等に係る配当等と考えて益金不算入制度の対象とされてきた。ただし、外国の株式や債券等で運用されている投資信託については4分の1相当額が益金不算入の対象となる。 平成27年度税制改正により、公社債投資信託を除く証券投資信託については、その全額が益金算入とされた。ただし、特定株式投資信託については、非支配目的株式等として、その収益の分配額の20%相当額が益金不算入とされる。 「特定株式投資信託」とは、信託財産を株式のみに対する投資として運用することを目的とする証券投資信託のうち、その受益権が金融商品取引所に上場されているものをいう。 特定株式投資信託は、株式等に投資していることと変わらないことから、改正前より、株式等と同等のものとして取り扱われてきた。改正後は、非支配目的株式等として収益の分配額の80%相当額が課税の対象となる。   3 適用時期 平成27年4月1日以後開始する事業年度から適用される。   4 改正の影響 受取配当等の益金不算入制度の改正の概要は上記の通りであるが、株式等の保有状況は法人により異なるため、改正の影響も一律ではない。 ここでは、改正項目についてどのような影響があるかを見ることとする。  (再掲) (※)下表の内容は前回を参照。 (1) 持株比率33%超100%未満の株式等に係る配当等 これは改正前は関係法人株式等として負債利子を控除した上で配当等の全額が益金不算入とされていたところ、改正後は関連法人株式等として負債利子を控除した上で配当等の全額が益金不算入とされる。したがって、負債利子がない場合には、改正前後で影響はない。 負債利子がある場合でも、考え方が改正前後で変わらないため、影響がないように見えるかもしれないが、控除負債利子を計算する場合の関連法人株式等の範囲が改正前の関係法人株式等の範囲と異なるため影響が生じることになる。 総資産価額が変わらないと仮定すると、分子に計上する関連法人株式等の範囲の方が、改正前の関係法人株式等の範囲よりも狭いことからすると、改正後の割合の方が低くなると考えられることから、課税所得が減ることになる。 (2) 持株比率25%以上33%以下の株式等に係る配当等 これは改正前は関係法人株式等として負債利子を控除した上で配当等の全額が益金不算入とされていたところ、改正後は負債利子を控除せずに配当等の金額の50%相当額が益金不算入とされる。したがって、負債利子がない場合には、改正後は課税所得が増えることになる。 しかし、負債利子がある場合には、配当等の金額と控除負債利子の額との比較により影響が決まる。具体的には、配当等の金額が(改正前の)控除負債利子の額の2倍を超えると改正後は課税所得が増えると考えられる。 (3) 持株比率5%超25%未満の株式等に係る配当等 これは改正前はその他の株式等として負債利子を控除した上で配当等の金額の50%相当額が益金不算入とされていたところ、改正後は負債利子を控除せずに配当等の金額の50%相当額が益金不算入とされる。 したがって、負債利子がない場合には、改正前後で影響はないが、負債利子がある場合には、改正後は課税所得が減ることになる。 (4) 持株比率5%以下の株式等に係る配当等 これは改正前はその他の株式等として負債利子を控除した上で配当等の金額の50%相当額が益金不算入とされていたところ、改正後は負債利子を控除せずに配当等の金額の20%相当額が益金不算入とされる。したがって、負債利子がない場合には、改正後は課税所得が増えることになる。 しかし、負債利子がある場合には、配当等の金額と控除負債利子の額との比較により影響が決まる。具体的には、配当等の金額が(改正前の)控除負債利子の額の3分の5を超えると、改正後は課税所得が増えると考えられる。 (5) 基準年度変更に伴う影響 控除負債利子の額を簡便法により計算する場合、基準年度が平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する各事業年度に改正された。 例えば、3月末決算法人の場合、平成28年3月期では、その期だけの数値を基に簡便法の割合を計算する。 したがって、平成28年3月期では、原則法と簡便法で計算結果が一致することになる。しかし、厳密には、簡便法で計算する場合の負債利子控除割合は小数点以下3位未満を切り捨てるため、簡便法が有利になると考えられる。 平成29年3月期以降は、平成28年3月期と平成29年3月期の実績をもとに負債利子控除割合を計算し、平成30年3月期以降は同じ割合を使用することになる。 (連載了)

#No. 121(掲載号)
#安積 健
2015/05/28

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例26(相続税)】 「更正の請求期限を分割確定後1年であるものと誤認したため、期限を徒過し、特例の適用が受けられなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例26(相続税)】   税理士 齋藤 和助   《事例の概要》 相続税の申告にあたり、遺産の範囲及び分割の方法について相続人間で分割がまとまらず、当初申告を未分割で行い、同時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出した。その後、遺産分割が調停に持ち込まれ、調停が成立したことから、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」を適用した更正の請求を行おうとしたところ、更正の請求期限を徒過したため、特例の適用が受けられなくなってしまった。 これにより、特例により減額できた金額につき損害が発生し、賠償請求を受けた。   《賠償請求の経緯》 平成X4年8月 被相続人死亡。 平成X5年6月 分割協議がまとまらず、未分割の相続税申告書及び「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出。 平成X6年10月 調停により遺産分割が成立。 平成X6年11月 調停の調書を受領。 平成X7年3月 更正の請求期限(請求失念) 平成X7年4月 依頼者より更正の請求期限が過ぎているとの指摘を受け、請求失念に気づく。 平成X7年5月 関与先に報告し、賠償請求を受ける。   《基礎知識》 ◆更正の請求の特則(相法32) 相続税について申告書を提出した者は、分割されていない財産について民法の規定による相続分の割合に従って課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格及び相続税額が過大となったときは、当該事由が生じたことを知った日の翌日から4月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額につき更正の請求をすることができる。 (※) 相続税法の特例に基づく場合 (1) 未分割財産について法定相続分による申告をしていた場合、分割が行われ当初の相続分による課税価格と異なることとなった場合 (2) 認知の訴え、相続人の廃除又はその取消し、相続の放棄の取消し等に関する裁判の確定により、相続人に異動が生じた場合 (3) 遺留分の減殺請求に基づき返還すべき、又は 弁償すべき額が確定した場合 (4) 遺贈に係る遺言書が発見され、又は 遺贈の放棄があった場合 (5) 条件付の物納許可が取り消され、その理由がその物納財産が土壌汚染等であることが判明した場合 (6) 上記の事由に準ずるものとして次の事由が生じた場合 ① 相続又は遺贈により取得した財産の権利の帰属に関する訴えの判決があった場合 ② 分割後に被認知者からの請求があったことにより、弁済すべき額が確定した場合 ③ 条件付又は期限付の遺贈について、条件が成就し、又は期限が到来した場合 (7) 裁判による特別縁故者への相続財産の分与が確定した場合 (8) 未分割財産が、申告期限から3年以内に分割されたことにより配偶者の税額軽減の適用ができることとなった場合 (9) 相続開始の年において、被相続人から贈与を受けた財産を贈与税の課税価格計算に算入していた場合   《税理士の落とし穴》   《税理士の責任》 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」は、未分割遺産については適用がない。ただし、申告書提出時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出すれば、3年以内に分割が整えば適用を受けることができる。その場合、分割が整ってから4ヶ月以内に更正等をする必要がある。 税理士は、期限内申告書提出時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し、調停が成立した直後に、調書を受け取っていた。しかし、更正の請求期限を分割確定後1年であるものと誤認し、依頼者からの指摘によりはじめて期限徒過に気づいている。 提出期限までに更正の請求を行っていれば上記特例の適用は受けられたことから、税理士に責任がある。   《予防策》 [ポイント①] 依頼者又は弁護士から定期的に連絡をもらう 毎年申告がある所得税や法人税と比べると、相続税の申告業務は、納税者たる相続人との関係が希薄であることが多い。 したがって、分割されるまで定期的に分割協議や調停等の進捗状況を確認する方法や、相続人から報告を受ける方法を決めておく必要がある。これにより、期限のある申請書や更正請求書の提出失念を防止することができる。 [ポイント②] 契約書等を取り交わす 相続税の申告のような、継続的な関与が行われない単独の業務を受任する場合には、口頭での約束だけで、契約書等の書面による契約を取り交わさないケースも散見される。 しかし、本事例のように、当初申告だけで完結せず、その後2年以上もの長期にわたり関与が続くような場合には、必ず契約書等を取り交わし、受任範囲を明確にしておく必要がある。 その際、具体的な受任業務の内容や提出期限、依頼者が税理士に対してすべきこと、及びその報告方法等も明記しておくと良い。さらに、依頼者から報告がなかった場合や報告が誤っていた場合の責任についても明記しておけば、その後の賠償請求を回避できる可能性もある。 (了)

#No. 121(掲載号)
#齋藤 和助
2015/05/28

こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第27回】「事前確定届出給与から源泉徴収する所得税及び復興特別所得税の処理」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第27回】 「事前確定届出給与から源泉徴収する 所得税及び復興特別所得税の処理」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   当社の事業年度は、6月1日~5月31日です。代表取締役Aの役員報酬は、月額30万円です。また、平成26年6月に事前確定届出給与に関する届出書を税務署へ提出しており、平成27年5月31日に事前確定届出給与100万円を支給する予定です(下記様式参照)。 事前確定届出給与を支給する際、給与として源泉徴収するのか、賞与として源泉徴収するのかがわかりません。なお、代表取締役Aは他にも会社を経営しており、乙欄での源泉徴収になります。 事前確定届出給与から源泉徴収する所得税及び復興特別所得税の処理についてご教示ください。 〈事前確定届出給与に関する届出書・付表〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 事前確定届出給与は、賞与である。ただし、他に定期の給与を受けていない者に対し継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づき支給されるものは、給与とされる(所基通183-1の2(注))。 今回のケースにおいては、事前確定届出給与100万円は、賞与である。平成27年分源泉徴収税額表の賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表の乙欄の前月の社会保険料等控除後の給与等の金額30万円(241千円以上305千円未満)に対する所得税及び復興特別所得税の税率は、20.42%である。 以上より、事前確定届出給与から源泉徴収する所得税及び復興特別所得税は、次の通りである。 (了)

#No. 121(掲載号)
#上前 剛
2015/05/28

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第27回】「裁決例⑦」

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第27回】 「裁決例⑦」   公認会計士 佐藤 信祐   今回、紹介する事件は、請求人の行った営業譲渡は、法人税法第81条第4項所定の「営業の全部の譲渡その他これに準ずる事実」に該当するとして、原処分を取り消した事件である。本事件においては、営業譲渡の相手方が譲渡者のグループ会社であったことから問題となった事件である。 現在の法人税法においては、解散等の事実が生じた場合の欠損金額及び中小企業者等の平成21年2月1日以後に終了する各事業年度において生じた欠損金額を除き、繰戻還付の制度は凍結されていることから、とりわけ、大法人においては重要な裁決例であると考えられる。   12 昭和63年10月7日裁決 (1) 事件の概要 審査請求人(以下、「請求人」という)は、建設業を営んでいた同族会社であるが、昭和60年12月期の法人税確定申告書に欠損金額を4,326,616千円と記載して確定申告を行った。請求人は、昭和59年12月期の所得金額に対し欠損事業年度の欠損金額のうち238,240千円を繰り戻し、法人税の額103,157千円の還付請求を昭和61年9月12日にしたところ、原処分庁は、昭和62年2月28日付で本件還付請求には理由がない旨の通知処分をした。 原処分庁は、営業譲渡先が請求人のグループ会社であることを問題視し、営業譲渡の前と後において、実質的な営業の変化が存在せず、法人税法81条4項の適用がないものとしたが、国税不服審判所は、請求人の主張を認め、原処分を取り消した。 (2) 原処分庁の主張 請求人の場合は以下に述べるとおり、本件営業譲渡後においても実質的には営業が継続しているので、法人税法第81条第4項の規定の適用があるとは認められない。 (3) 請求人の主張 請求人がA社の発行済株式の全部を有しているからといって、本件営業譲渡後も請求人において営業が継続しているとはいえないし、請求人が本件営業譲渡の対象としなかった資産を今後において処分して累積債務の整理を行うとしても、それは営業の継続とはいえない。 営業譲渡対象外土地の時価は請求人の依頼した不動産鑑定士の鑑定評価によれば、約20億円と見積もられているが、実際には帳簿価額の1,409,469千円で譲渡することさえ不可能であるから、今後、営業譲渡対象外土地を処分しても多額の譲渡益が生ずる見込はなく、欠損金の繰越控除の規定の適用を受けることは困難である。 (4) 国税不服審判所の判断 請求人が欠損事業年度末に所有する土地のうち営業譲渡対象外土地の帳簿価額は1,409,469千円であり、請求人の依頼した不動産鑑定士の鑑定評価によれば、時価は約20億円と見積もられ、仮にこの見積額で譲渡できたとしても、欠損事業年度末における欠損金額が40億円を超えていることにかんがみ欠損金の繰越控除の規定の適用を受けるに足りるほどの所得の発生を見込むことは困難である。 営業譲渡の相手方が譲渡者の完全な支配下にある会社であるからといって、営業譲渡の効力が当然に無効であると解する根拠はないから、法人税法第81条第4項、同法施行令第156条の規定についても、当然適用がないとする根拠はないと解すべきである。 請求人とA社とは、法律上全く別個の法人格であり、かつ、所得金額の計算主体が異なるのであるから、請求人の営業とA社の営業とは、形式的にも実質的にも全く別個の営業であって、法律上は営業の継続性はないものと解される。 本件営業譲渡が直ちに営業の全部の譲渡に当たると認めることは困難である。なぜならば、請求人は、将来資産を処分し清算する意思を有していることは認められるものの、いまだ清算結了の明確な見通しは立っておらず、その間積極的な営業活動はしないまでも、今後もA社からの土地賃料収入のような経常的な収益の発生が見込まれる等の事情に照らすと、営業を廃止してしまったとまでは認められないからである。しかしながら、上記認定の本件営業譲渡直前の請求人の事業の実態から営業活動が建設業のみであったこと並びに本件営業譲渡の対象及び譲渡後の請求人の状況などからみて、本件営業譲渡が営業の重要部分の譲渡に当たることは明らかである。 (5) 評釈 繰越欠損金の繰戻還付の制度は、解散等の事実が生じた場合の欠損金額を除き、平成4年度から凍結されていたが、中小企業者等に限定して、平成21年2月1日以後に終了する各事業年度から復活している。 本事件は、凍結される前の制度ではあるものの、基本的な繰戻還付の制度については変わっておらず、現在の法人税法の解釈においても参考になる。 現行の法人税法80条4項においては、「内国法人につき解散(適格合併による解散を除く)、事業の全部の譲渡、更生手続の開始その他これらに準ずる事実で政令で定めるものが生じた場合」と規定し、同法施行令154条の3においては、 と規定されている。すなわち、本事件においては、事業の重要部分の譲渡であり、かつ、法人税法57条1項の規定を適用して繰越欠損金を十分に利用することができるだけの将来所得が見込まれないと判断がなされている。 本事件においては、営業譲渡の相手先がたとえグループ会社であったとしても、同法の適用の対象から除外されないということが示されたという意味で重要な裁決例であると考えられる。 (了)

#No. 121(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/05/28

税務判例を読むための税法の学び方【61】 〔第7章〕判例の探し方(その8)

税務判例を読むための税法の学び方【61】 〔第7章〕判例の探し方 (その8)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   ((25) 『大審院判決録』) (承前) またCiNiiによれば、東京法学院発行のものとして九州大学図書にも、欠号があるが所蔵がある(下記リンク参照)。 大審院判決録(東京法学院) なお、CiNiiによれば、おそらく明治26年3月~明治27年12月の民事に関するものだけを編纂したものが、明治28年に博聞社から発売されており、現在、東京大学と九州大学の図書館に所蔵されている(下記リンク参照)。 大審院民事判決録(博聞社) また国立国会図書館ではデジタル資料化され、自宅からも閲覧できるようになっている(下記リンク参照)。 大審院判決録(国会図書館)   (26) 『大審院民事判決録』 明治28年下半期以降の大審院民事部の民事事件の判決の中から取捨選択して判決日付順に掲載したものである。 前回紹介したように、明治24年から28年6月分までは『大審院判決録』に民事と刑事を分けずに合わせて収録していたが、これを当初のように再び民事と刑事を分けて収録するようになったのである。 名称も前回紹介した明治8年からのものと同じであるが、この両者は別のものであり、巻数や号数も全く新しくなっている。なお最終の発刊は大正10年である。 CiNiiによれば、中央大学による発行のものが、現在9大学の図書館に所蔵されている(下記リンク参照)。 大審院民事判決録(中央大学) またCiNiiによれば、東京法学院発行のものが、現在62大学の図書館に所蔵されている(下記リンク参照)。 大審院民事判決録(東京法学院) またCiNiiによれば、昭和41年に刊行された新日本法規出版による縮刷版の復刻版が、現在75大学の図書館に所蔵されている(下記リンク参照)。 大審院民事判決録(新日本法規出版) また国立国会図書館では、「大審院判決録 民事編」として、マイクロフィルムによる保存となっており、館外からは閲覧できないようになっている。 大審院判決録 民事編(国会図書館) しかし先に、「大審院判決録」はデジタル資料化され、自宅からも閲覧可能な旨記したが、実は民事と刑事が分割された明治28年下半期以降の分についても、明治44年までの分については共に自宅からも閲覧可能となっている。 大審院判決録(国会図書館) なお明治31年以降の分については、抄録が法曹会により刊行されており、これについて国立国会図書館においてはデジタル資料化され自宅からも閲覧可能となっている。 大審院民事判決抄録(法曹会・国会図書館) 法務省図書館や裁判所図書館には、その発行が司法省や中央大学、新日本法規出版、東京法学院等様々なもののほとんどすべて所蔵されているようである(ただし前回紹介した同名の明治24年までのものと併せて検索結果で表示される)。 法務省図書館の「書名、著者名、出版者名等を入力して検索」欄に「大審院民事判決録」と入力して検索。 裁判所図書館蔵書検索頁の「フリーワード検索」欄に「大審院民事判決録」と入力して検索。   (27) 『大審院刑事判決録』 明治28年下半期以降の大審院刑事部の刑事事件の判決の中から取捨選択して判決日付順に掲載したものである。 上記したように、明治24年から28年6月分までは『大審院判決録』に民事と刑事を分けずに合わせて収録していたが、これを当初のように再び民事と刑事を分けて収録するようになったのである。 『大審院民事判決録』同様、名称も前回紹介した明治8年からのものと同じであるが、この両者は別のものであり、巻数や号数も全く新しくなっている。なお最終の発刊は大正10年である。 CiNiiによれば、中央大学による発行のものが、図書版として現在5大学の図書館に所蔵されている(下記リンク参照)。 大審院刑事判決録(中央大学) またCiNiiによれば、東京法学院発行のものが、現在70大学の図書館に所蔵されている(下記リンク参照)。 大審院刑事判決録(東京法学院) またCiNiiによれば、昭和44-45年に刊行された新日本法規出版による縮刷版の復刻版の図書版が現在22大学の図書館に、雑誌版が現在38大学の図書館に所蔵されている(下記リンク参照)。 大審院刑事判決録(新日本法規出版・図書) 大審院刑事判決録(新日本法規出版・雑誌) また国立国会図書館では、「大審院刑事判決録」として、新日本法規出版による復刻版が所蔵されている(下記リンク参照)。 大審院刑事判決録(新日本法規出版・国会図書館) しかし上記の民事分と同様、明治44年までの分については「大審院判決録」とともにデジタル資料化されたものが、自宅からも閲覧可能となっている(下記リンク参照)。 大審院判決録(国会図書館) なお、刑事分においては明治24年からの分と合わせて抄録が法曹会により刊行されており、これについて国立国会図書館においてはデジタル資料化されて自宅からも閲覧可能となっている。 大審院刑事判決抄録(法曹会・国会図書館) 法務省図書館や裁判所図書館には、その発行が司法省や中央大学、新日本法規出版、東京法学院等様々なもののほとんどすべて所蔵されているようである(ただし前回紹介した同名の明治24年までのものと併せて出てくる)。 法務省図書館の「書名、著者名、出版者名等を入力して検索」欄に「大審院刑事判決録」と入力して検索。 裁判所図書館蔵書検索頁の「フリーワード検索」欄に「大審院刑事判決録」と入力して検索。 またCiNiiによれば、民事分刑事分を合わせたものであるが、「大審院判決録總括目録」として、その目録が、大審院の編集ながら東京法学院から発行されており、現在7大学の図書館に所蔵されている(下記リンク参照)。 大審院判決録總括目録(東京法学院) 国立国会図書館においても、明治11年から明治33年分について民事分刑事分を合わせたものであるが(ただし明治19年から27年分は刑事集と民事集が分かれている)、「裁判粋誌:大審院判決例」として所蔵され、デジタル資料化されて自宅からも閲覧可能となっている(下記リンク参照)。 裁判粋誌:大審院判決例(国会図書館) (続く)

#No. 121(掲載号)
#長島 弘
2015/05/28

〈検証〉IFRS適用レポート~IFRS導入企業65社の回答から何が読み解けるか?~ 【第3回】「システムへの対応」

〈検証〉IFRS適用レポート ~IFRS導入企業65社の回答から何が読み解けるか?~ 【第3回】 「システムへの対応」   デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 CFOサービスユニット シニアマネージャー 公認会計士 窪田 俊夫   金融庁より2015年4月15日に公表された「IFRS適用レポート」(以下、適用レポート)によると、IFRSの適用に際して多くの企業が連結決算システムと固定資産システムの導入または更新を実施したことが報告されている。 本稿では、IFRS導入に伴うシステムへの影響のうち特に導入または更新を実施したとの回答が多い連結会計システムへの影響および対応方法について、以下7項目について解説する。 なお、当該記事は執筆者の私見であり、執筆者が所属する組織の公式見解ではない旨、ご了承いただきたい。   1 目的とシステム対応 IFRS適用レポートによると、IFRS適用の目的の1つに「経営管理の強化」を挙げているケースが多い(【第1回】参照)。この場合、連結グループ全体をあたかも1つの会社として「みなしグループ経営管理」を行うため、各社の会計システムを統一することによって各社の単体レベルからIFRS対応する方法がある。 しかし、IFRSは連結財務諸表に適用され単体決算には適用されないことから、連結決算のみでIFRS対応する方法が成り立つことになる。この場合、システム対応においては、連結仕訳での調整中心の対応になることから、前者に比べてIFRS導入期間やコストがかからない。しかし、中長期的に、グループガバナンスの高度化や管理コストの低減を図ることを考えると、図表1に示すグループ経営管理基盤の統合を図ることも検討に値する。 【図表1 グループ統合管理システム統合イメージ】 【出所】 『新版 成功する!IFRS導入プロジェクト』176ページ(清文社 著者:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)   2 システム化検討のタイミング (1) システム化検討のタイミング グループIFRS会計方針(【第2回】参照)がある程度固まった段階で、それに対応するために業務・システムでどのような要件を満たす必要があるのかを整理する。 連結決算システムでの対応を中心にIFRS導入する場合でも、会計差異項目を確認し、IFRSへの修正仕訳をパッケージ化・標準化するなど、IFRS会計方針を明確化した上でシステム対応を行う方法により、手戻りなどを回避しコストの最小化・業務の適正化を図ることができる。 システム対応として何をどこまで改修・改善するかの決定は、IFRS対応を実現することのみならず、IFRS導入後の経理部門の業務負荷や会社にとっての付加価値を決めることになるため、十分な準備と検討が必要である。 【図表2 システム化方針の検討】 【出所】 『新版 成功する!IFRS導入プロジェクト』121ページ(清文社 著者:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社) (2) 他の関連プロジェクトに対する影響 社内ではIFRS導入のほかにも、業務改善やシステム刷新などさまざまなプロジェクトが実施または計画されている可能性がある。その場合、二重のシステム投資や作業の手戻り・重複を避けるために、IFRS導入に影響する可能性のある他のプロジェクトへの影響も考慮しなければならない。したがって、これら関係するプロジェクトと平仄をとって進めることが好ましい。   3 連結決算システム構築上の検討事項 IFRS導入を連結会計システムで対応する場合において、以下の連結決算システム構築上の検討事項について影響を把握しシステム対応する必要がある。 これらの検討事項はグループ共通の会計基盤を構築しIFRS対応する場合においても連結システムで対応する必要がある項目である。 【図表3 連結決算システム構築上の検討事項例】   4 連結決算システムの構え方 まず、既存の日本基準の連結決算で用いているシステム環境とIFRS適用で用いる連結決算のシステム環境をどのように構築するのかが問題となる。 日本基準の連結決算データに対してIFRSに組替・修正を加えることでIFRS連結決算を行うことは不可能ではない。この場合、日本基準とIFRSの連結決算で用いるデータのうち、共通のデータの再収集及び再入力の手間が省けるというメリットがある。 しかし、IFRS導入に際して、従来の連結決算で用いる勘定科目体系をIFRSに対応させる必要があること、およびグループ経営管理の観点から連結勘定科目体系の見直しをする必要がある。また、初度適用時の開始BSは従前のBS数値ではなくIFRSに準拠したBSに置き直す必要があることや、IFRSと日本基準でそれぞれ起票する連結修正仕訳の種類や内容が異なることが想定される。 このため、既存の連結決算の環境に影響させない形で、IFRS連結決算の環境を構築する場合が多い。   5 連結決算データの収集 (1) 収集データの正確性の担保 通常、IFRSにおいても個社から収集する個別財務諸表データをもとに連結決算を行う。連結決算の効率性や正確性は、いかにして正確な連結決算データを適時に収集できるかどうかにかかっている。開示項目の増加やIFRS組替情報(後述)など、個社から収集する連結決算データの種類および量の増加が避けられない。 このため、今まで以上に、連結決算データ間の整合性チェックを個社側に行わせる仕組みの構築が重要となる。 (2) 同一の尺度で管理する 一般的に、単体で用いる勘定科目体系より粒度が粗い連結勘定科目体系により連結決算が行われている。個別財務諸表データを親会社へ報告する際に、個社側で連結勘定科目体系に組替を行っており、親会社側でその組替について関与していないケースが多い。 このため、親会社への連結決算用に報告されたデータの内訳が不明であるため、異常値があった場合の原因追求などの際に個社とのコミュニケーションが難しくなっている。 IFRS会計方針書はIFRS勘定科目体系に基づき記載する。IFRS導入の目的として同一の尺度で経営管理することを指向する場合や、IFRS準拠の連結決算データの正確性を担保する場合、連結決算の勘定科目体系と個社の勘定科目体系の対応関係について「個社にお任せ」ではなく、親会社側で各社がどのように連結勘定科目に対応させているのかを可視化し管理することが推奨される。 連結決算システム上に、個社の勘定科目体系と連結勘定科目体系の対応関係が管理でき、個社の勘定科目体系で入力された財務諸表データが自動的にIFRS財務諸表に組み替えられる仕組みを構築することが1つの方法である。   6 IFRS組替情報の収集方法 (1) 連結パッケージ IFRS連結パッケージには、IFRSによる連結決算および開示を行うために必要な情報をすべて盛り込む必要がある。このため、従来の日本基準で用いていた連結パッケージにはない項目として「IFRS組替情報」がある。 IFRS組替情報を作成するには、日本基準からの「IFRS組替仕訳」の定義が必要となる。会計基準の差異項目について、使用する勘定科目と修正金額の算式の定義を踏まえて、連結パッケージに組み込むIFRS組替仕訳情報を検討することになる。IFRS組替シートのイメージは図表5(後掲)に示すとおりである。 【図表4 IFRS組替情報の定義と連結パッケージの作成タスク】 【出所】 『新版 成功する!IFRS導入プロジェクト』130ページ(清文社 著者:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社) (2) 組替仕訳の自動化 連結決算の効率化・早期化を図るには、定型仕訳の起票作業は極力自動化し、自動化される仕訳のチェックおよび分析作業に時間をシフトさせることが必要である。 IFRS組替仕訳の種類や対象となる個社の数は、会計基準差異の数に比例する。IFRS組替の仕訳は、定型化(借方貸方の勘定科目がルール化でき、組替仕訳の金額のみが毎期または拠点毎に違う)できる場合が多いと思われる。 IFRS組替の件数が少ない場合には、IFRS組替仕訳をマニュアル起票で対応することも考えられるが、その件数が多い場合には、個社から収集したIFRS組替情報をもとにIFRS組替の仕訳起票の自動化を図ることが推奨される。 従来、内部取引消去、投資資本の相殺消去等の連結固有の連結修正仕訳生成が自動化できる点をセールスポイントにしている連結決算システムベンダーが多いが、今後は、IFRSの調整仕訳を自動化する仕組みが装備され、さらに、将来のIFRSの改訂に対応するためにユーザー毎に柔軟に自動化ロジックを構築できることを可能にする機能の有無が連結決算システムを選定する際の評価項目に加わることになる。 【図表5 IFRS調整の組替シートのイメージ】 (※) 筆者作成   7 IFRS調整主体 IFRS導入にあたって、財務諸表をどの段階でIFRSベースに組み替えるかを検討する必要がある。 図表6に示すように、連結決算システムによりIFRS対応する場合でも、親会社の連結システムでIFRS組替を行う「親会社集中対応モデル」と、個社側でIFRS組替を行う「会社分散対応モデル」がある。 親会社集中対応モデルの場合、IFRS組替を親会社で行うことから親会社側の負担が重くなり、IFRS組替の検証が難しくなるのに対し、会社分散対応モデルの場合、子会社側の負担が重くなるが、IFRS組替の検証が行いやすくなるという特徴がある。 どちらの方法を採用する場合でも、個社側でIFRS組替の要否の判断や組替基礎データの収集の仕組みを構築する必要がある。 【図表6 IFRS対応パターン】 (※) 筆者作成 (了)

#No. 121(掲載号)
#窪田 俊夫
2015/05/28
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