税理士ができる 『中小企業の資金調達』支援実務 【第5回】 「具体的な資金調達支援の流れ(その2)」 ~融資の申し込みは2通り~ 公認会計士・中小企業診断士・税理士 西田 恭隆 前回は、「社長から融資の相談を受けた場合は下手なことは言わず、金融機関に相談に行くようすすめるのが良い」と述べた。 では、「相談に行くとして、どの金融機関を選べばよいのか?」というのは社長からたびたび受ける質問である。 中小零細企業の融資は、大きく分けて以下の2通りの申し込み方法がある。 本稿ではまず、日本政策金融公庫と信用保証協会について簡単に説明し、その後、金融機関の選択について述べる。 1 日本政策金融公庫 日本政策金融公庫の概要と特徴 日本政策金融公庫は、民間金融機関の補完を理念に掲げる金融機関であり、国が株式の100%を保有している。 その理念のとおり公的色合いが強く、中小零細企業の融資に積極的である。そのため、民間金融機関から借り入れが困難な場合でも、相談に乗ってもらえることがある。 日本政策金融公庫への申し込み方法と融資にかかるコスト 日本政策金融公庫への融資の申し込みは、会社の営業所在地を管轄する支店に行う。なお、融資にかかるコストは支払利息のみである。 2 信用保証協会 信用保証協会の概要と特徴 信用保証協会は、中小企業の資金調達を容易にするため、連帯保証サービスを提供する組織である。融資そのものは行っていない。都道府県等が出資する公的な組織で、全国各地に存在する。 連帯保証サービスとは、中小零細企業が借り入れを行う際にその連帯保証人となることで、企業が返済不能に陥った場合、信用保証協会が金融機関に返済を行うものである。 これにより金融機関は確実に債権を回収することができるので、信用保証協会から保証が得られれば、ほぼ確実に金融機関から融資を得ることができる。 中小零細企業が民間金融機関から融資を受ける場合、信用保証協会の保証付き融資がほとんどである。保証なし融資(プロパー融資)は、相当に業績が好調で、金融機関との取引実績がある企業以外は難しい。 信用保証協会への申し込み方法と融資にかかるコスト 信用保証協会への申し込みは、最寄りの金融機関で行う。各金融機関が信用保証協会への申し込み窓口になっている。信用保証協会に直接申し込むことも可能ではあるが、結局金融機関の窓口に行くことになるので、それならば最初から金融機関に行った方が効率的である。直接申し込むことに特に利点はない。 信用保証協会への申し込みに必要な手続は、地域によって異なる場合があるので注意する。都道府県等のあっせん書や、商工会議所で事前の相談が必要な場合など様々である。詳細については金融機関担当者に確認し、その助言に従って手続を進める。 なお、融資にかかるコストとして、金融機関に対する支払利息に加え、信用保証協会に対する保証料が発生する。また、サービスの提供形態上、融資交渉は金融機関と保証協会の両者に対して行うことになる。 3 相談する金融機関の選択 これまで解説してきたとおり、社長から「どの金融機関に相談に行けばよいか」という質問があった場合、日本政策金融公庫の支店か最寄りの金融機関に行くように回答する。しかし、「最寄りの金融機関」と言われても実際には金融機関は多種多様に存在し、どれに行けばよいのか判断に困るであろう。 そういった場合、以下の点に留意して相談する金融機関を選択する。 * * * 以上、今回説明した内容をまとめると、社長から「どの金融機関に相談に行けば良いのか」と質問を受けた場合、以下2通りの金融機関への相談を薦める、ということになる。 次回は、金融機関との相談の後、正式に融資を申し込むことになった場合の資料作成支援について述べる。 (了)
女性会計士の奮闘記 【第34話】 「デリケートな数値は慎重に」 公認会計士・税理士 小長谷 敦子 〈ノビ(株)部門別損益表〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ◆ワンポントアドバイス◆ 基本的には数字をオープンにすることが大切ですが、人件費などのデリケートな問題は慎重に計上しましょう。 その際も、どのような方法で計上しているかを明らかにし、全社員が人件費を削減して利益を出すため、どうすればよいのかを提案できるようにしましょう。 (了)
《速報解説》 第6回 ACFE JAPANカンファレンス「会計不正、ふたたび」が開催 ~エンロン事件告発者シェロン・ワトキンス氏が緊急来日~ 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 一般社団法人日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)は、10月9日(金)、御茶ノ水のソラシティ カンファレンスセンターにおいて約300名の参加者のもと、第6回ACFE JAPANカンファレンスを開催した。 カンファレンスの開催概要、プログラムはこちら。 当初、ACFE JAPANは、エンロン社元CFO Andrew Fastow氏の招聘を公表していたが、外務省は氏の日本入国を認めず、代わりに登壇することになったのはエンロン社元Vice Presidentで、エンロン事件の告発者となったSherron Watkins氏であった。 Fastow氏はビデオ上映による基調講演を行うことになり、結果的には、事件の中心人物とその告発者の双方から話を聞くことができるという、非常に興味深いプログラムとなった。 まず、青山学院大学の町田祥弘教授による講演「エンロン事件の解説」が行われた。2001年12月、エンロン社は破産法の適用に至ったわけだが、その背景として、当時の経済環境や会計基準、監査制度が大きな問題を孕んでいたことが示唆された。 Fastow氏によるビデオメッセージのテーマは「規則対原則Rules Versus Principles」。ビデオ画像の氏は、穏やかな口調で、自らが犯した過ちについて語り始めた。 Fastow氏の口調はよどみなく、淡々と、時には微笑みを浮かべて語り続ける。禁固6年という刑期を終え、2,300万ドルを返還した後、法律事務所で訴訟サポート業務を行いながら、国連やFBIの主催する会議で基調講演などをこなしているからだろうか、私たちがイメージする「犯罪者」とは全く異質のように感じられた。 表面的には、犯した罪を真摯に反省しているように見えた。とはいえ、デリバティブなどの金融商品の発達や会計基準、法体系に不備があったことに責任を転嫁するかのような発言があったことも事実である。 そして、もちろん、Fastow氏がすべてを語っているわけではないという印象はあった。 それを決定的なものにしたのは、ビデオの後に登壇したWatkins氏であった。 開口一番、彼女はこう言った。 「Andiの行為は、明らかに法を犯しています。」 「Lessons from Enron’s Collapse:Rules vs Principle / Myth vs Facts」と題された講演において、そしてその後の青山学院大学教授八田進二氏との対談でも、彼女は厳しくエンロン社経営幹部への批判を繰り広げた。 彼女はまた、「裸の王様」の寓話を引き合いに、CEOだったKenneth Layを裸の王様に、COOのJeffrey SkillingとCFOのAndrew Fastowを見えない服地を仕立てあげた詐欺師であると断じてみせた。筆者たちCFEに対しては、有名なゆでガエルの話を交え、ぬるま湯に気づき、ぬるま湯を冷たい水に戻すことの必要性を、「不正に対してはゼロ・トラレンス」で臨まなければならない、と強調した。 彼女の準備したスライドの最後にあった文章を引用する。 後半のパネルディスカッションも興味深いものであった。 中では、パネリストの一人、日本CFO協会理事長・藤田純孝氏が繰り返し強調していた日本企業における不正の特徴について、引用しておきたい。 氏は、日本企業の特徴として、会社が共同体となり、これを終身雇用と年功序列が支えていることから、排他的とならざるをえないこと、社長に人事権が集中し、社長退任後も会長、相談役として長く会社に君臨し、かつ、後継者を自身で指名できることの2点を挙げ、「トップが私腹を肥やす不正は少なく、共同体・従業員を守るという意識が罪悪感を薄くする」結果となることを指摘していた。 ACFE JAPANが第6回カンファレンスのテーマを「会計不正」と決めたのは昨年秋であったということである。運よくといっては何だが、今年4月に発覚した東芝事件によって、あらためて「会計不正」が注目を集めることになったため、時宜を得た企画となった。 公認不正検査士Certified Fraud Examinerは「会計」、「調査」、「法律」、「犯罪学と倫理」という4つの分野に関する知識を習得した不正対策の専門家資格であり、現在世界150ヶ国に約7万人の会員を擁し、日本にも1,400人の会員(うち有資格者約900人)がいる。 (了) ↓お勧め記事↓
《速報解説》 措置法施行規則等の改正により、 本人へ交付する源泉徴収票等への個人番号記載は不要に 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 平成27年10月2日付け官報号外第227号において、租税特別措置法施行規則等の一部を改正する省令が公布された。 今回の改正により、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下、「番号法」という)の施行後も、本人へ交付する源泉徴収票等に個人番号を記載する必要はないこととされた。 (1) 改正の概要 平成28年1月に、番号法が施行される。それに伴い、租税特別措置法施行規則等においては、源泉徴収票等を本人へ交付したり、税務署等へ提出するときに、それらの書類に個人番号を記載することが求められていた。 しかし、この取扱いに対しては、本人へ交付する源泉徴収票等に個人番号を記載すると、情報漏えいや情報流出のリスクが高まるという指摘がなされていた。 このような指摘に配慮し、今回の改正では、本人へ交付する源泉徴収票や支払通知書等には個人番号の記載を行わないこととされた。 (2) 個人番号の記載が不要となる書類 改正により個人番号の記載が不要となる税務関係書類は、次のとおりである。 個人番号の記載が不要となるのは、給与等の支払いを受ける本人に対して交付するものに限られる。税務署等へ提出するものについては、個人番号の記載が必要となる。 なお今回の改正に合わせ、国税庁の「国税分野におけるFAQ」や特定個人情報保護委員会の「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」に関するQ&A等、関係資料についても追加・更新が行われているため留意されたい。 (了)
《速報解説》 国税庁、「法人番号公表サイト」を開設 ~10/26夕刻以降、通知書送付分の「基本3情報」の検索・閲覧が可能に Profession Journal 編集部 国税庁は10月5日付、企業・団体等の法人に付与される「法人番号」とその法人の本店所在地等が検索・閲覧できる『法人番号公表サイト』を開設した。 法人番号の通知書は10月22日から地域ごとに順次発送されるが、10月26日の夕刻以降同ページにおいて、通知書が発送された法人等の分から、基本3情報(下記参照)の検索・閲覧ができるようになり、12月1日までに段階的に機能拡張される予定となっている。 〇法人番号を利用する場面は 13桁の数字で表される法人番号は、マイナンバー(個人番号:12桁の数字)と異なり利用範囲の制約がなく、誰でも自由に利用することができる。なお、複数の支店や事務所のある法人でも、付与される法人番号は1つである。 法人番号は9月に公表されたスケジュール(下記リンク参照)により、設立登記法人については登記されている本店又は主たる事務所の所在地へ書面(「法人番号指定通知書」)にて通知される。 (※) 設立登記法人については、10月22日から11月25日の間に、都道府県単位で7回に分けて発送される予定。 (※) 「法人番号指定通知書」のイメージは[こちら(国税庁ホームページ)]。 今回開設された「法人番号公表サイト」では、 「法人番号で法人の商号及び所在地などを調べる」 「法人の商号及び所在地などから法人番号を調べる」 ことが主な機能となっており、「基本3情報」といわれる ① 商号又は名称 ② 本店又は主たる事務所の所在地 ③ 法人番号 をそれぞれ連動させた検索が可能となっている。 このため、例えば 出張先で、自社の法人番号を確認したい 新たな取引先の法人番号を確認したい 取引先から提出された書類に記載された法人番号に間違いがないか確認したい といった場面で、同サイトを利用することが考えられる(スマートフォン・タブレット端末表示に対応)。 〇データファイルのダウンロード等も可能に なお、上記のほかに、次のように企業等が一定数の法人番号等のデータを一括して利用するケースについても想定されている。 法人番号等のデータを自社システムのデータベースに取り込む 法人番号をマーケティング(市場調査・開拓)等に活用する 法人番号を活用した取引先情報の維持管理における効率化 法人の名称・所在地の入力事務(システム操作)の省力化 このため、基本3情報はCSV形式やXML形式など、二次活用が容易なファイル形式でダウンロードにより取得することができる。 (※) 文字コードは「Shift-JIS(JIS第一・第二水準)」と「Unicode(JIS第一~第四水準)」の2種類。ファイル形式との組み合わせで3種類のファイルが用意される。 (※) 平成27年11月末時点の基本3情報のダウンロードは平成27年12月1日から利用可能。 なお、所在地(各都道府県及び国外の単位)別に全件データをダウンロードする方法と、新規に法人番号を指定した団体の情報のほか名称・所在地の変更や登記記録の閉鎖等の変更情報をダウンロードする方法とが選択できる。 また、これらの情報データを利用者から事前送付されたDVDに記録して返送するサービスもある。 さらに、平成27年12月1日以降は、利用者の保有するシステムからインターネットを経由して、簡単なリクエスト送信により、指定した法人番号の法人に係る情報や、指定した期間及び地域で抽出した法人の更新(差分)情報を取得できるWeb-API機能の利用も可能となる予定だ(利用にあたってはアプリケーションIDの発行手続が必要)。 その他、法人番号の公表機能の詳細は、この「法人番号公表サイト」内のほか、下記国税庁ホームページを参照されたい。 (了)
2015年10月8日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.139を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第34回】 「公正処理基準の形成過程と税務通達(その1)」 中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 法人税法は、益金に算入する金額や損金に算入する金額の計算について、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」(以下「公正処理基準」ともいう。)に従うこととしている(法法22④。企業会計準拠主義)。 こうした法人税法の構造がいかなる意味を持つのかを解明することは、同法を理解するにあたり極めて重要な意味を有するといえるだろう。 他方、この企業会計準拠主義が租税法律主義に反するのではないのかという問題も従来から議論されてきた。 もっとも、この点は、商法(会社法)にいう「一般に公正妥当と認められる(企業)会計の慣行」に準拠したものであると考えれば、租税法律主義に反するものではないといえるだろう。すなわち、法人税法は商法(会社法)に準拠しているのであって、その商法(会社法)が企業会計に委任をしているとの理解である。法人税法22条4項は企業会計に白紙委任をしたものではなく法的根拠を有する基準であると論じることができるだろう(中里実「租税法と企業会計(商法会計学)」商事1432号26頁)。 しかし、それでも、企業会計準拠主義には租税法律主義を脅かす問題が伏在しているのではないだろうか。以下では、この点について、組合課税における通達の機能と商法(会社法)における「一般に公正妥当と認められる(企業)会計の慣行」を素材として、これまでの議論とはやや異なる角度から検討を加えてみたい。 Ⅰ 問題点の所在 企業会計準拠主義を採用する法人税法22条4項における公正処理基準にかかる問題点について以下の2点に着目してみたい(金子宏『租税法〔第20版〕』318頁参照(弘文堂2015))。 企業会計原則や確立された会計慣行が、必ずしも公正妥当であるとはいい切れないとか、網羅的であるとは限らないということであれば、公正処理基準に依拠しようにも、その根底が揺らいでしまうことになりはしないだろうか。 なお、企業会計原則や財務諸表規則等の内容が抽象的である点や、わが国の場合、業界が自主的に具体的な会計基準を作成する動きが弱いことなどの理由から、租税行政庁がイニシアティブをとって通達を発遣し、健全な税務会計コンヴェンション(慣行)を導くべきであるという考え方もある(小宮保『法人税の原理』221頁参照(中央経済社1968))。 こうした考えによると、租税行政庁がイニシアティブをとって発遣した通達に基づく税務会計コンヴェンションが企業の会計実務として確立した場合には、当該通達は、先駆者としての機能を果たしたとして廃止すべきであるとされる。 要するに、企業会計が適切なルールを自主的に作成しないのであれば、租税行政庁主導の通達により会計処理の方法を示し、それが会計慣行として確立されたとき、当該通達は会計慣行確立により、その役目を終えるという考え方である。 しかし、こうした見解は妥当であろうか。いわば行政が主導するかたちで、通達等によりコンヴェンションを形成し、かかる会計慣行が成立すれば、租税法の理念である公平な課税の実現が担保できるという期待の下、公正処理基準に租税法的な意味が付与されるという点には肯定できるところもあるが、それでも本来の租税法律主義の見地からは強い躊躇を覚えるのである。 Ⅱ 税務通達と公正処理基準 1 租税訴訟にみられる見解 興銀事件控訴審東京高裁平成14年3月14日判決(民集58巻9号2768頁)は、税務通達と公正処理基準の関係性について次のように述べる。 どうやら、興銀事件において東京高裁は、国税庁の通達が会計処理の基準を補完するという意味で公正処理基準の一部を構成するものと捉えており、公正処理基準に租税法の観点を持ち込むことに肯定的な立場であるように思われる。 しかし、この考え方は、上告審最高裁平成16年12月24日第二小法廷判決(民集58巻9号2637頁)において否定されている。また、学説においても公正処理基準の中に租税法独自の観点を持ち込むような解釈を許すべきではないとの見解がある(例えば、山田二郎「法人税法上の貸倒損失」金判1134号2頁参照)。 こうした見解は、税法基準以前に公正処理基準が存在することを前提としていると思われるが、公正処理基準に租税法独自の観点を持ち込むべきではないとするこれらの見方はどのように考えるべきであろうか。そこで、次に、公正処理基準が依拠するとされている商法(会社法)における「一般に公正妥当と認められる(企業)会計の慣行」について検証してみたい。 2 公正処理基準と商法(会社法) 法人税法22条4項の公正処理基準について、租税法の通説は、商法(会社法)を経由して、一般に公正妥当と認められる会計処理の「慣行」によると考える(金子宏『租税法〔第20版〕』316頁(弘文堂2015))。 したがって、公正処理基準を理解するためには、商法(会社法)にいう「一般に公正妥当と認められる(企業)会計の慣行」を確認する必要があるだろう。 商法1条《趣旨等》2項は、「商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法・・・の定めるところによる。」とし、同法19条は、「商人の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。」と規定する。また、会社法431条は、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」とし、同法614条は、「持分会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」と規定している。 では、商法(会社法)は、いかなるものを「一般に公正妥当と認められる会計の慣行」とか、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」と考えているのだろうか。 この点、長銀配当損害賠償事件第一審東京地裁平成17年5月19日判決(判時1900号3頁)は、次のように判示する。 この事件において原告は、「会計慣行」とは、既に行われている事実に限らず、新しい合理的な慣行が生まれようとしている場合には、それを含むと解すべきであると主張していたが、これについて東京地裁は次のように述べる一方、特段の事情がある場合に限って例外が認められる旨を示している。 ここでは、特段の事情のある場合には、新しい会計処理の方法によることも会計慣行に従った処理をしたことになる旨を判示している点に注目したい。 〔東京地裁の考える「公正なる会計慣行」〕 (続く)
〈直前対策〉 税理士事務所に必要な マイナンバー制度への対応と “おさえておきたい”ポイント 【第2回】 「誤解の多い論点と実務上の正しい対応」 税理士 特定個人情報保護委員会事務局 総務課上席政策調査員 鈴木 涼介 本連載では、いよいよスタートするマイナンバー制度に対し、「何をすれば良いのか分からない」等といった不安を解消させるため、税理士事務所としてどのような準備をすればよいのか、そして、「不要な個人番号を保有していたら即番号法違反になる」とか「情報漏えいを起こしたら即罰則が適用される」等といった誤解を解消させるために、実務上どのように対応すればよいのかについて解説している。 第2回目の本稿では、誤解の多い論点について、実務上の正しい対応を解説する。なお、本稿は、筆者の個人的見解に基づくものであり、特定個人情報保護委員会などの公式見解ではない点にご留意いただきたい。 1 廃棄のタイミング 個人番号は、個人番号関係事務などの事務を処理する必要がなくなった場合で、法令により定められている保存期間を経過した場合には、できるだけ速やかに廃棄又は削除しなければならない。 ここで問題となるのは、廃棄のタイミングである。 法令により定められている保存期間を経過した後に、個人番号を保管していると「直ちに違法」になるという誤解が多い。 マイナンバーガイドライン(※1)におけるQ&A(※2)では としている。 (※1) 「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」(特定個人情報保護委員会) (※2) 「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」及び「(別冊)金融業務における特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」 に関するQ&A」(特定個人情報保護委員会) 例えば、決算を終えて1年分の帳簿書類や資料を整理する段階で、必要なくなった過年度分の個人番号が記載された書類等を廃棄又は削除すればよいのである。 扶養控除等申告書であれば7年間の保存義務が課されているが、7年を経過した翌日(7年と1日目)に即廃棄することを求めているわけではないことをしっかりと理解する必要がある。 2 管理区域の考え方 物理的安全管理措置として、「特定個人情報ファイルを取り扱う情報システムを管理する区域(管理区域)」と「特定個人情報等を取り扱う事務を実施する区域(取扱区域)」とを明確にして物理的安全管理措置を講ずることが求められている。 この場合の「管理区域」とは、一般的にはサーバー室が想定される。サーバーに保存されている情報については、一度に大量に引き出したり喪失させたりすることができることから、サーバー室の入退室の管理や機器等の持ち込み制限が重要となる。 この点、「税理士ガイドブック」における取扱規程等のひな型においては、特定個人情報ファイルを管理するキャビネットがあるスペースも管理区域に含めていることから、「キャビネットを事務作業スペースとは別の部屋に置く必要がある」とか「入退室管理をしなければならない」といった誤解が多い。 キャビネットのあるスペースを管理区域に含めるかどうかは、税理士事務所の保有する特定個人情報ファイルの量などに応じて判断すればよく、税理士ガイドブックにおいてもすべての事務所でキャビネットのあるスペースを「管理区域」に含めることを想定しているわけではないと考えられる。 また、サーバーに対する措置とキャビネットに対する措置とは全く性質の異なるものであることから、キャビネットのあるスペースを管理区域に含める場合であっても、サーバー室のような部屋を設けて管理するのではなく、例えばキャビネットの鍵の受払簿を備えて管理するなど、状況に応じた措置を講ずればよいと考えられる。 3 税理士による本人確認 マイナンバー制度の肝の1つとして「本人確認」がある。 この番号法における本人確認は、「特定の者」が「特定の者」から個人番号の提供を受けたときに必要となる。具体的には、「個人番号利用事務実施者又は個人番号関係事務実施者」が「本人又は代理人」から個人番号の提供を受けるときに必要となる。 例えば、事業者(個人番号関係事務実施者)が従業員(本人)から個人番号の提供を受けるときに本人確認が必要となる。また、税務署長(個人番号利用事務実施者)が税理士(税務代理人)から納税者(本人)の個人番号の提供を受けるときに本人確認(代理人に対する本人確認)が必要となる。 そのため、納税者の申告書に個人番号を記載するために、税理士(税務代理人)が納税者(本人)から個人番号の提供を受けるときには、マイナンバー制度における本人確認は不要である。 ただし、税理士が税務署長から行われる本人確認(代理人に対する本人確認)について、「本人の番号確認書類の写し」を提出する必要(e‐Taxで申告する場合は不要)があることから、税理士は納税者から番号確認書類(個人番号カード、通知カードなどのコピー)を取得する必要がある。 4 罰則の適用 番号法では、一般法である個人情報保護法等の同種の法律における罰則よりも加重された罰則が規定されている。 税理士に関係する罰則としては、以下のものが挙げられる。 この罰則の論点で誤解が多いのが、「過失に基づく情報漏えいがあった場合に、即罰則の適用がある」というものである。 刑法では、原則として、罪を犯す意思(故意)がない行為は罰しない(刑法38①本文)こととされている。ある行為が「過失」や「重過失」に基づく場合に処罰されるのは、法律に特別の規定がある場合である(刑法38①ただし書き)。 番号法に規定されている上記の罰則は、いずれも「故意」に基づく行為を処罰するものである。「過失」に基づく行為により情報漏えい等が発生した場合は、原則として、特定個人情報保護委員会から是正する措置をとるべき旨の勧告・命令がなされ、それにもかかわらず、故意にその措置をとらなかった場合などに罰則の適用があることになる。 また、罰則におけるもう1つの誤解は、「従業員が情報漏えい事件を発生させると、事業者も即罰則の適用がある」というものである。 事業者においては、両罰規定(上記⑦)というものがあり、従業員が故意に情報漏えい等を発生させた場合に、事業者にも罰金刑が科される可能性がある。 ただし、この両罰規定においても、「従業員における故意の情報漏えい=事業者に対する罰金刑」というわけではなく、事業者においては、違反行為を防止するために相当の注意及び監督が尽くされていたことを証明することになる。 以上のように、罰則については「強化された」といっても、善良なる事業者においては、取り立てて不安に思うことではないという点をしっかり理解する必要がある。 なお、情報漏えい等を発生させた場合に、罰則の適用がなかったとしても、本人から損害賠償責任などの民事上の責任が問われる可能性があることには注意が必要であるが、これはマイナンバー制度固有の問題ではなく、通常の個人情報の場合と同様である。 (連載了)
消費税の軽減税率を検証する 【第9回】 「新聞、雑誌への軽減税率の適用」 税理士 金井 恵美子 Ⅰ 日本新聞協会等の主張 2013年12月13日、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日経新聞、産経新聞、東京新聞等の各紙は社説において、平成26年度税制改正大綱の公表に当たり、税率10%への引上げと同時に軽減税率を導入することを要求した。 日本新聞協会は、年に一度行う新聞大会の決議において、2012年、2013年、2014年の3年連続で軽減税率の適用を求めており、本年10月15日の大会でも、同様の決議が行われると予想される。 2013年1月15日の『新聞に消費税の軽減税率適用を求める声明』では、新聞に軽減税率を適用している国が多いことを挙げ、 と主張した。また、本年9月17日に公表した『消費税の軽減税率制度に関する声明』では、財務省が提示した『日本型軽減税率制度』(前回参照)について、「税制としてきわめて問題が多い」とし、 とした。 産経新聞9月8日の社説は「日本の消費税にあたる付加価値税が20%前後の欧州各国では、食料品や新聞などの生活必需品に軽減税率が適用されている」とし、読売新聞9月11日の社説においても「食料品をはじめ、活字文化の保護に欠かせない新聞や書籍が対象だ」とされている。 日本書籍出版協会等(※1)の主張も同様である。かねて共同声明として『文化を支える出版物に軽減税率が必要です』を発表しているが、『日本型軽減税率制度』(前回参照)の発案を受け、本年9月17日の『消費増税還付「財務省案」に反対し出版文化への軽減税率適用を求めます』という緊急声明において、 と主張している。 (※1) 日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会の4団体。 Ⅱ 諸外国の状況 イギリス、ベルギー、デンマーク、ノルウェーは、新聞にゼロ税率を適用しており、他の欧州諸国のほとんどが軽減税率を適用している。 その理由について、「新聞の公共性に関する研究会」の「新聞への消費税軽減税率適用に関する意見書」(2013年9月5日)は、次のように述べている。 しかし、違った評価もある。関西大学の矢野教授は、フランスでは、 と分析している(※2)。 (※2) 矢野秀利「消費税の政治経済学 第18回 軽減税率の適用とその問題点-フランスの事例からみる-」税経通信68巻4号9頁(2013年)。 また、税制調査会の『税制調査会海外調査報告』(2004年9月)では、次のように報告されている。 Ⅲ 新聞、雑誌、書籍への軽減税率の適用 上述した「新聞の公共性に関する研究会」の「新聞への消費税軽減税率適用に関する意見書」は、新聞は、ニュースや情報、多種多様な意見ないし評論の提供を行い、高い識字率を支え、学習指導要領にその活用が明記される「誇るべき日本の文化である」とし、安価で手軽に入手できる状態が維持されることが何よりも必要であり、購読部数の減少は零細な新聞販売店に悪影響をもたらすことにも配慮すれば、新聞への軽減税率適用が不可避である、と結論付けている。 新聞や書籍が安価で入手できることの意義は大きいと思われる。しかし、所得の高い層ほど、複数の新聞、多くの雑誌や書籍を購読しているであろう。新聞や雑誌に軽減税率を適用した場合には、食料品以上に、高所得者に与える恩恵の度合いが増すものと考えられ、「潜在的な経済能力の豊かな者がより好むと思われる商品(教育・書籍など)に高率で課税を行うべしとする諸説もある。」(※3)とする論考もある。 (※3) 馬場義久「スウェーデンの消費税-軽減税率の実際」税研29巻1号17頁(2013年)。 軽減税率の設定は、何を保護しているかというメッセージ性が高い。したがって、新聞への軽減税率の適用は、逆進性の緩和や低所得者対策としての効果はなくとも、知識、情報、文字文化に対する国の姿勢を示す、という点が重要なのであろう。ただし、そのために払われる犠牲との比較衡量で検討すれば、わざわざ税制において表明しなければならないことなのかという疑問が生じる。知識や教育が国を支えるということは、誰もが承知していることであって、消費税の課税があることをもって、これを否定するメッセージと受け止める必要はないだろう。 そして、ここにも線引きの問題が生じる。スウェーデンでは、本、雑誌、新聞は6%であるが、CD、ノート、カレンダー、地図、クリスマスカードは25%である。今日において一般化している新聞や書籍に代わるデジタル配信をどう取り扱うのか。日本新聞協会は、電子媒体を含めて軽減税率を適用すべきとするが、デジタルの世界では、文字、画像、音楽を区分することは難しい。 また、有害図書、不健全図書は、軽減税率の対象から除外されるべきであろう。しかし、そもそも悪書とはいったい何を指すのであろうか。有害図書、不健全図書は、青少年保護育成条例等に基づいて都道府県知事が指定するが、問題は、それで解決できるほど単純ではない。 たとえば、2013年の松江市教育委員会による漫画「はだしのゲン」閲覧制限問題は、記憶に新しい。世界で5億部を発行したJ・Kローリングによる児童文学書『ハリー・ポッターシリーズ』は、魔法で人間をコントロールするような表現は子供の成長に悪い影響を与えるという理由で、オーストラリアの一部のクリスチャンスクールの図書室には置かれていない。 日本の新聞の中には、筆者の感覚では、電車内で広げるのを禁止してほしいと言いたくなるようなものもある。しかし、そうではないという考えもあろう。 これらの線引きは、芸術や文化、思想や教育についての価値観という根源的な問題を孕んでいると言える。 (了)
商業・サービス業・農林水産業活性化税制の 適用・申告のポイント 【第1回】 「平成27年度税制改正後の制度概要」 税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 石田 寿行 平成25年度税制改正において創設された中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額の特別控除(以下「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」(租税特別措置法42条の12の3(法人税)、10条の5の3(所得税)))については、平成27年度税制改正において所要の見直しを行った上で、適用期限が2年延長されている。 本連載では、商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用及び申告実務のポイントについて解説していく。なお以下の内容は、平成27年4月1日以後に取得又は製作若しくは建設をする経営改善設備に係る内容を前提としている。 1 税制の概要 商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、中小企業者等が、認定経営革新等支援機関や認定経営革新等支援機関に準ずる法人(※)(以下「認定支援機関等」という)からアドバイスを受け、そのアドバイスの中で経営の改善に資する資産であるとして指導及び助言を受けた器具及び備品又は建物附属設備を取得、製作又は建設(以下「取得等」という)して、指定事業の用に供した場合に、認定支援機関等からのアドバイスを受けた旨を明らかにする書類の写しを納税申告書に添付することで、30%の特別償却又は7%の税額控除が受けられるものである。 (※) 商工会議所、商工会、商店街振興組合連合会などをいう。 2 適用対象者 適用対象者は、青色申告書を提出する中小企業者等(ただし、認定支援機関等に該当する中小企業者等を除く)であり、具体的には次の個人又は法人である。 3 適用対象期間 平成25年4月1日から平成29年3月31日までの期間内に、適用対象となる設備の取得等をして指定事業の用に供することが必要となる。 4 対象設備 対象設備は、認定支援機関等から経営の改善に資する資産として、「経営の改善に関する指導及び助言を受けた旨を明らかにする書類」に記載された設備である。 ここで「設備」とは、減価償却資産の耐用年数等に関する省令・別表第一の「建物附属設備」で、一の取得価額が60万円以上のもの、器具備品で一台又は一基の取得価額が30万円以上のもののうち、経営の改善に資するために取得する以下の設備である。 5 指定事業 指定事業は、次に掲げる事業である。 なお、風俗営業に該当するものは ① 料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する飲食店業で生活衛生同業組合の組合員が営むもの ② 宿泊業のうち旅館業、ホテル業で風俗営業の許可を受けているもの 以外は指定事業から除かれる。 6 特別償却と税額控除 (1) 特別償却 特別償却の場合、償却限度額は、普通償却限度額に取得価額の30%の特別償却限度額を加えた金額となる。 (2) 税額控除 税額控除限度額は、取得価額の7%相当額となる。ただし、その税額控除限度額がその事業年度の税額の20%を超える場合には、控除を受ける金額は、その20%相当額が限度となる(税額の20%を超えているため、税額控除限度額の全部を控除できなかった場合には、1年間の繰越しが認められる)。 なお、税額控除は、資本金の額又は出資金の額が3,000万円を超える法人以外の法人、個人が適用対象となる。 7 その他の留意事項 (了)