《速報解説》 日税連「税理士のためのマイナンバー対応ガイドブック」を公表 ~「マイナンバーガイドライン」に沿い、税理士事務所の業務対応を網羅 Profession Journal編集部 来年1月に開始するマイナンバーの利用開始に先立ち、日本税理士会連合会は、4月7日に「税理士のためのマイナンバー対応ガイドブック~特定個人情報の適正な取扱いに向けて~」を取り纏め同会のHP(会員専用)に公表した。 「税理士のためのマイナンバー対応ガイドブック」は、基本的に先に公表された特定個人情報保護委員会による「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」を踏襲して作成されているが、税理士の業務では、マイナンバーを日常的に取り扱うという特殊性があるため、同ガイドラインを踏まえて、税理士特有の取扱いを解説するものとなっている。 全168頁にのぼるガイドブックは、大きく次の4章で構成されている。 それぞれの章では、税理士が個人番号を取り扱う事務を適正に遂行するとともに、顧問先企業等への適切な指導を行えるよう、個人番号等の利用が開始されるまでに行うべき準備作業から、必要となる事務手続の具体的手順や留意事項について、税理士事務所における業務を中心に取り纏められている。 ガイドブックでは、税理士事務所で個人番号を取り扱う事務には、次のようなものがあるとしている。 ガイドブックは、印刷のうえ、4月下旬に全会員宛てに郵送される。 (了)
《速報解説》 国税庁、調査課所管法人を対象とした 「申告書確認表」「大規模法人における税務上の要注意項目確認表」を公表 ~会社事業概況書には「活用の有無」欄を新設~ 税理士・社会保険労務士 上前 剛 1 概要 平成27年3月31日に国税庁は、調査課所管法人向けに「申告書確認表」と「大規模法人における税務上の要注意項目確認表」(以下、確認表)をホームページ上に公表した。 「調査課所管法人」とは、原則資本金1億円以上の法人をいい、管轄は税務署ではなく、国税局となる(調査査察部等の所掌事務の範囲を定める省令)。 確認表の内容は非常にオーソドックスであり、特に「大規模法人における税務上の要注意項目確認表」は、中小企業にもあてはまる項目が大半を占める。 なお、確認表の活用は任意であり、確認表を活用した場合であっても、税務申告書へ添付する必要はない。平成27年4月1日以後終了事業年度分の会社事業概況書には、確認表の「活用の有無」欄が設けられる。 国税局は、税務調査等の機会に意見を聴取し、活用状況の確認をする(図表1参照)。 図表1 「申告書確認表」と「大規模法人における税務上の要注意項目確認表」の概要 (出典:国税庁リーフレット) 2 他の施策との比較 確認表は、税務コンプライアンスの維持・向上の施策である。 税務コンプライアンスの維持・向上の施策としては、既に「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」(以下、税務CG)と「自主点検チェックシート」があるが、確認表との違いを図表2にまとめた。 まず、国税庁が実施する税務CGは、特別国税調査官所掌法人(資本金40億円以上)を対象としており超大企業が対象であるため、対象法人数は少ない。税務CGは、国税局が税務調査の際に税務に関するコーポレートガバナンス確認票の記入を依頼し、経営者と意見交換をするなど直接的に企業に働きかける取組である。一定の場合には、税務調査の間隔が延長されることがある。この点は、税務CG特有である。 次に、法人会・納税協会が作成・配布する「自主点検チェックシート」は、内部統制面や会計経理面が発展途上にある中小企業を対象としている。それゆえ、自主点検チェックシートには、税務の項目以外の項目も含まれる。税務の項目は「大規模法人における税務上の要注意項目確認表」と内容が重複する項目が多く、運用方法は確認表と同じである。 図表2 他の施策との比較 (了)
《速報解説》 東京国税局より、「保険契約者と被保険者が同一人の場合において被保険者の死亡に伴い支払われる解約返戻金相当額の返戻金に係る支払請求権」をみなし相続財産はなく本来の相続財産とする文書回答事例が公表 税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良 平成27年3月2日付で東京国税局から「保険契約者と被保険者が同一人の場合において被保険者の死亡に伴い支払われる解約返戻金相当額の返戻金に係る支払請求権の相続税の課税関係について」(文書回答事例)が公表された。 本稿においては、当該文書回答事例のポイントについて解説することとしたい。 1 文書回答事例の内容についてのポイント 文書回答事例の照会者(生命保険会社)は、以下のような新しい医療保険の販売を予定している。 このような解約返戻金相当額が支払われた場合の税務上の取扱いにつき、事前照会が行われている。税務上の取扱いとしては、以下のように取り扱う旨で差し支えない旨、東京国税局審理課長名で回答が行われている。 本文書回答事例のポイントは、上記のような医療保険の解約返戻金が死亡後に支払われた場合、相続税法における「みなし相続財産」(死亡保険金、相続税法3①一)に該当するのか、本来の相続財産に該当するのか、という点にある。 「みなし相続財産」(死亡保険人)に該当するのであれば、一定額までは非課税となる可能性があり(相続税法12①五)、「みなし相続財産」に該当するか本来の相続財産に該当するかにより、相続税額に影響が生じる可能性がある。 この点、解約返戻金相当額が被保険者(保険契約者)の死亡により契約が消滅し、死亡後に解約返戻金相当額が支払われるため、「みなし相続財産」(死亡保険金)として判断される余地があるとも考えられる。 ただし、当該医療保険は被保険者(保険契約者)の死亡により契約が消滅するが、死亡と同時に被保険者(保険契約者)が解約返戻金相当額の請求権を取得し、その請求権を相続人が本来の相続財産を取得すると判断されるため、「みなし相続財産」(死亡保険金)には該当せず、本来の相続財産に該当する、と判断される。 2 実務上の留意点 死亡後に支払われる保険金がすべて「みなし相続財産」(死亡保険人)に該当するわけではない。本件のような医療保険の解約返戻金相当額は、本来の相続財産として判断される。 また、医療保険の給付金(入院給付金など死亡により支払われるもの以外)が死亡後に支給される場合があるが、これも「みなし相続財産」(死亡保険金)に該当するわけではなく、本来の相続財産(金銭債権)に該当すると考えられる。 「みなし相続財産」(死亡保険金)は、あくまで、被相続人の死亡により、相続人その他の者が取得する生命保険の保険金、又は損害保険契約の保険金(偶然な事故に基因する死亡に伴い支払われるものに限る)として定義される(相続税法3①一)ため、死亡後に支払われる保険金について、保険金支給通知書などで、その給付の要因を確認する必要がある。 (了)
《速報解説》 平成27年度税制改正の公布に伴う税効果会計の適用について ~平成27年3月決算会社は税率以外の改正項目についても注意~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 「所得税法等の一部を改正する法律」などが、平成27年3月31日の参議院で可決・成立し、3月31日付の官報特別号外第11号で公布された(以下「平成27年度税制改正」という)。 これにより、平成27年3月決算会社においては、改正後の法人税法などに基づいて税効果会計を適用することになる。 税効果会計の適用に関する法定実効税率の算定方法については、企業会計基準委員会が平成27年3月9日付で掲載した「第307回企業会計基準委員会の概要」のページ内に議事概要別紙として「平成27年度税制改正に伴う税効果会計の適用における法定実効税率の検討」(以下「議事概要別紙」)を公表している。 日本公認会計士協会からは、平成27年4月3日付で、「『税効果会計に関するQ&A』の改正について」(公開草案)が公表され、意見募集が行われている(別稿参照)。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 適用時期等 税率の変更に関する取扱いについては、「税効果会計に係る会計基準」第四、3及び4並びに「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第10号)18項などに規定されている。 同18項では、税効果会計上で適用する税率は決算日現在における税法規定に基づく税率であり、改正税法が当該決算日までに公布されて、将来の適用税率が確定している場合は改正後の税率を適用するとされている。 前述のように改正税法が3月31日付で公布されたことから、平成27年3月決算を前提にすると、改正後の税率を適用して次のように計算及び注記を行うこととなる。 Ⅲ 税効果Q&A 1 改正法人税法等の公布日と会計処理との関係 「税効果会計に関するQ&A」のQ12では、平成21年度税制改正により、外国子会社からの受取配当の益金不算入制度が導入された際の取扱いに関して、改正法人税法等の公布日と会計処理との関係については、税率変更に関する取扱い(個別税効果実務指針第18項及び第19項、連結税効果実務指針第11項)に準じることになると考えられると規定している。 そして、平成21年度税制改正による改正法人税法等は、平成21年3月31日に公布されたため、3月期決算会社においては、平成21年3月期において、改正法人税法等に基づき、留保利益及び繰越外国税額控除に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の計上額の見直しを行い、その影響額を法人税等調整額に計上することになると述べている。 このため、税率変更以外の平成27年度税制改正の項目についても、平成27年3月期決算の税効果会計において考慮することになると解される。 2 税率変更の注記 「税効果会計に関するQ&A」のQ14では、「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」などが公布された際の税率変更の注記について、改正による変更税率が適用されるのは、公布日を含む事業年度の翌期以降になることから、繰延税金資産又は繰延税金負債の金額の修正額として注記する額は、改正税法の公布日を含む事業年度の期末現在の一時差異及び税務上の繰越欠損金の残高に新税率と旧税率との差額を乗じて算出することになると規定している(個別税効果実務指針の「設例7」3参照)。 このため、平成27年度税制改正に関する税率変更の注記も、改正税法の公布日を含む事業年度の期末現在の一時差異及び税務上の繰越欠損金の残高に新税率と旧税率との差額を乗じて算出することになるものと解される。 Ⅳ 税制改正の内容 1 税率の改正 平成27年度税制改正が3月31日付の官報において公布され、法人税率は、平成27年4月1日以後開始する事業年度について、25.5%(改正前)から23.9%に引き下げられている。 このため、当該改正法に基づき、次のとおり税効果会計の適用に際して法定実効税率を算定することになる。 (※1) 事業税の標準税率 (※2) 各地方団体が条例で定めた事業税率(標準税率又は超過税率) 議事概要別紙では「事業税率(標準税率)の取扱い」及び「事業税率(超過税率)の取扱い」も記載されており、参考として、議事概要別紙に記載された方法により算定した法定実効税率(東京都の場合)として、次の図表が記載されている。 具体的な算定式については、議事概要別紙をお読みいただきたい。 (※) 年800万円超の所得 2 欠損金の繰越控除制度等 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度及び連結欠損金の繰越控除制度における控除限度額について、次のとおり、段階的に引き下げられている。 3 受取配当等益金不算入制度の見直し ① 益金不算入の対象となる株式等の区分及びその配当等の益金不算入割合 ② 公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配の額については、その全額を益金算入(改正前:収益の分配の額の2分の1(又は4分の1)の金額の100分の50相当額を益金不算入)とする。ただし、特定株式投資信託の収益の分配の額については、その受益権を株式等と同様に扱い、上記①の非支配目的株式等として、その収益の分配の額の100分の20相当額を益金不算入とする。 ③ 上記①のその他の株式等及び非支配目的株式等について、負債利子がある場合の控除計算(負債利子控除)の対象から除外する。 4 外形標準課税の拡大 ① 法人事業税の税率の改正 資本金の額又は出資金の額(以下「資本金」という)1億円超の普通法人の法人事業税の標準税率を次のとおりとし、それぞれ平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度及び平成28年4月1日以後に開始する事業年度から適用する。 (注1) 所得割の税率下段のカッコ内の率は、地方法人特別税等に関する暫定措置法適用後の税率。 (注2) 3以上の都道府県に事務所又は事業所を設けて事業を行う法人の所得割に係る税率については、軽減税率の適用はない。 ② 地方法人特別税の税率の改正 資本金1億円超の普通法人の地方法人特別税の税率を次のとおりとし、それぞれ平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度及び平成28年4月1日以後に開始する事業年度から適用する。 (了)
《速報解説》 JICPAより、平成27年度税制改正に対応した 「税効果会計に関するQ&A」の改正(公開草案)が公表 ~「外国子会社配当益金不算入制度の見直し」の影響等を記載~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年4月3日(ホームページ掲載日)、日本公認会計士協会は「『税効果会計に関するQ&A』の改正について」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、平成27年度税制改正に係る改正法の公布等に対応するものであり、Q12とQ14の改正について提案している。 意見募集期間は、平成27年5月8日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 外国子会社配当益金不算入制度(Q12) 「税効果会計に関するQ&A」のQ12では、平成21年度税制改正について述べており、外国子会社からの配当が外国子会社の所在地国において損金算入されている場合であっても、その配当の額の95%が益金不算入として取り扱われていた。 平成27年度税制改正では、次のように改正されている。 このため、内国法人が外国子会社から受け取る配当等の額の全部又は一部が外国子会社の本店所在地国の法令において損金算入することとされている場合における、外国子会社から受け取る配当等の額に関する親会社の個別財務諸表における税負担額は、受け取る配当等の額に親会社の実効税率を乗じた額になるものと考えられると述べられている。 「税効果会計への影響」では、連結財務諸表上の取扱いについて、詳細に述べられている。 2 復興特別法人税の1年前倒しの廃止(Q14) 「税効果会計に関するQ&A」のQ14では、「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」などの公布に関する実効税率などについて記載されている。 当該Q14を削除する提案がなされている。 (了)
《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(平成26年7月~9月)」 ~注目事例の紹介~ 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 国税不服審判所は、平成27年3月28日、「平成26年7月から9月分までの裁決事例の追加等」を公表した。今回追加されたのは表のとおり、全10件の裁決と、件数としては少なめとなっている。今回の公表裁決では、国税不服審判所によって課税処分等が全部又は一部取り消された事例が5件、棄却又は却下された事例が5件であった。税法・税目として所得税法関係と国税通則法が各3件、国税徴収法が2件、相続税法関係、法人税法関係が各1件であった。 【公表裁決事例平成26年7月~9月の一覧】 ※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された10件の裁決事例のうち、注目される事例を紹介したい。なお、毎回のことであるが、論点を簡素化するため、複数の争点がある裁決については、その一部を割愛し、複数の請求人が存する事例についても、請求人が単独であるかのように表記させていただいていることを、あらかじめお断りしておきたい。 1 無申告加算税(更正又は決定の予知)・・・① (1) 請求人の主張 請求人は以下の2点を主張し、賦課決定処分の取消しを求めた。 (2) 審判所の判断 これに対して、審判所は以下のように判示して、請求人の主張を斥けた。 まず、通則法66条5項の調査については、 と規定し、原処分庁職員の一連の行為は、課税庁が行う課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程であると認められることから、通則法第66条第5項に規定する「調査」があったと認められる。 次いで、税務代理権限証書について、 としたうえで、税理士と請求人の間では、少なくとも、平成25年5月28日の時点において、税務署での面接において、請求人に代理又は代行して応答し、当該面接の内容を請求人に報告するという内容の委任契約が成立していたものと認められるため、面接の際に税務代理権限証書を提出していないから面接時には税理士が請求人に代理して質問検査権の行使を受けたことにならないという請求人の主張には理由がない、と結論づけた。 2 更正通知書の理由附記・・・③ (1) 争点 争点は次の4つであるが、本稿では、これらのうち、審判所が請求人の主張を認めた、争点(2)「更正処分の理由附記の不備」について、審判所の判断を確認したい。なお、他の争点については、審判所は、請求人の主張を認めず、本事案の所得は事業所得ではなく雑所得として区分され、調査手続の違法についても認められなかった。 (2) 原処分庁により更正処分等に附記された理由 裁決書に添附されている「別紙5 原処分庁が提示した更正の理由の要旨」から、審判所によって、不備があると指摘された平成21年分の旅費交通費が必要経費に算入されない理由と、不備を指摘されなかった。平成23年分の旅費交通費は必要経費に算入されない理由を引用したい。 【旅費交通費(平成21年分)】 【旅費交通費(平成23年分)】 (3) 審判所の判断――理由附記の不備 審判所は、上記の理由附記について、一部を必要経費と認める判断をした理由について不備を指摘する一方、すべてを必要経費と認めない理由については、不備としない判断を示した。 その判断については、以下のように説明している(一部括弧書き等を省略した)。 3 使途不明金(手数料処理)・・・⑦ (1) 事例の概要 請求人は、本件販売手数料を、j社において作成されたi社名義の請求書及び領収証を、i社の常務取締役が持参して、小切手と交換する方法で、i社に対する支払いとして処理してきたが、実際には、当該支払は、j社に対するキックバックであった。 原処分庁は、費途不明金であるとして法人税の更正処分を行うとともに、仕入税額控除の対象にならないとして消費税についても更正処分等を行った。 (2) 審判所の判断 原処分庁が主張する費途不明金について、審判所は以下のように定義した。 本事例では、審判所は、上記のとおり、「審判請求等において費途が明らかになった」として、費途不明金には該当せず、各事業年度において損金の額に算入することを認め、原処分庁による更正処分及び賦課決定処分の全部を取り消した。 一方、消費税については、仕入税額控除の要件として保存すべき帳簿及び請求書については、以下のように判断を示した。 そのうえで、請求人については、「真実の氏名等に基づかないi社名義の請求書及び領収証を保存していたと認められる」ことから、本件支出を消費税法上、各課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額として計算することはできないとしたうえで、請求人の行為は、通則法第70条第5項に規定する「偽りその他不正の行為」により消費税等の税額を免れたものであると断じて、原処分庁の更正処分及び賦課決定処分は適法であると判断した。 (了)
『結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置』について Q&Aや領収書等の確認事項・チェックツールなどを掲載した 制度解説ページを内閣府が公開 Profession Journal編集部 既報のとおり『結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置』に関しては措置法の政省令や関連する告示が公布されその全体像が明らかとなったが、このたび内閣府ホームページ内において、本制度に関するQ&Aや費目リスト、領収書等の確認事項やチェックツールなどが掲載された制度解説ページが公開された。 〇受贈者・贈与者の要件、他制度との併用に関するQ&A Q&Aでは、例えば受贈者が離婚した場合の対応について、以下のように述べられている(Q1-4)。 また契約終了前に贈与者が死亡した場合の取り扱いとして「贈与者が複数いる場合は、どのように取り扱われますか。」との問いに対しては とされている(Q5-3)。 さらに「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の特例と併用することはできますか。」との問いに対しては、併用は可能としつつも、以下の留意点が記載されている(Q1-10)。 〇具体的な費目に関するQ&A Q&Aでは、本制度が適用可能となる具体的な費目についても、以下の構成で解説が行われている。 例えば「① 婚礼に係る費用」として非課税となる費目について、以下の記述がある(Q4-1-1)。 上記のとおり広い範囲をカバーしているようであるが、「両家顔合わせ・結納式に要する費用」や「婚約指輪、結婚指輪の購入に要する費用」、「新婚旅行代」、さらにいわゆる「婚活費用」等については非課税として認められないとの記述があるため注意したい(Q4-1-2)。 既報のとおり本制度が適用される子育て費用として不妊治療に係る費目も含まれているが、「④ 不妊治療に係る費用」のQ4-4-1では非課税の対象となる費目として以下の記述がある。 〇適用となる「支払先」及び「領収書等」の記載事項に留意 なお上記①から⑨のいずれの費目についても、以下3点について解説するQ&Aがある。 このため本制度適用に際しては、その「支払先」が法令上認められたものであるのか、及び「領収書等」の記載事項等の確認については十分留意したいところであるが、解説ページではQ&Aの他に以下の資料が公表されているので、合わせてぜひ利用したい。 (了)
《速報解説》 新住宅取得等資金贈与特例は“2度使い”可能も、 過去の適用者はNGに ~精算課税型資金贈与特例は贈与者年齢要件を60歳へ引下げ、受贈者に「孫」を追加~ Profession Journal 編集部 本誌(No.106)既報のとおり、平成27年度税制改正で一新した新住宅取得等資金贈与特例(措法70の2)は、①消費税率8%の契約締結期間(もしくは消費税課税から外れる者の取引)で住宅取得等資金贈与を受けて住宅を取得等した後に、②消費税率10%が課税される契約期間に締結した住宅を取得等した場合に、それぞれ非課税となる住宅取得等資金贈与特例が受けられるという特例の“2度使い”が可能となる。 しかし、本特例については、過去に同特例の適用を行った者による特例の“2度使い”は除外されることから留意したい。 ◆新住宅取得等資金贈与特例の概要 本制度を確認すると、以下のとおりである。 (*1) 消費税率10%で住宅購入を契約した者 (*2) 消費税率8%で住宅購入を契約した者及び個人間売買により中古住宅の購入を契約した者 (*3) 耐震住宅:耐震等級2以上又は免震建築物に該当する住宅 エコ住宅:省エネ等級4又は一次エネルギー消費量等級4以上(27年より追加)の住宅 新制度のポイントは、次のとおり。 ◆過去の適用者による再適用は不可に さて、本制度では特例の適用が可能となる上表(1)と(2)の2枠が設けられているが、周知のとおり、従来の制度では1つの適用枠しか用意されていなかった。 今回の2枠の設置について、財務省は現在の住宅市場の落ち込みへの配慮と、消費税率10%アップ時の住宅市場の冷え込みの対策の両方を満たすための措置と説明する。つまり、経済対策の一環という位置づけから、両枠の2度使いを可能としたとしている。 このように経済対策の観点が強い政策税制であれば、誰でも適用が可能かと思われるのだが、従来の適用要件のとおり旧制度の特例の適用を受けた者については、新制度の特例の適用ができないこととされているため注意したい(平27年度改正法附則97②)。 ◆精算課税型住宅取得等資金贈与特例も拡充 上記の住宅取得等資金の贈与特例と類似する制度が、精算課税型住宅取得等資金贈与特例(措法70の3)だ。本特例についても、昨年末の適用期限の到来に対応して平成31年6月30日まで延長するよう改正されている。 上記の改正については、税制改正大綱にも明記されていたが、実は本制度には、税制改正大綱に記されていない重要な改正事項があることが明らかとなった。 具体的には、下記の2点。 本改正だが、財務省は、本特例の基となる相続時精算課税(相法21の2)の平成25年度税制改正に連動した改正と説明する。本法でも同様の改正がなされていることから、その特例制度と位置づけられる精算課税型住宅取得等資金贈与特例も必然的に同じ内容の改正が行われた結果、というわけだ。 では、なぜ平成25年度改正時に本特例についても改正が行われなかったのかというと、本法制度の改正が平成27年1月1日以降の贈与が対象となるところ、その時点では、本特例は平成26年末までの時限立法とされていたため、それ以後の適用期限の延長を定める27年改正税法まで改正を待たなければならなかったという事情がある。 (了)
《速報解説》 会計士協会より「非上場株式等の贈与税・相続税の 納税猶予及び免除制度について」が公表 ~制度利用上の留意点や平成27年度改正事項にも言及~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年3月18日付で(ホームページ掲載日は、平成27年3月31日)、日本公認会計士協会は、租税調査会研究報告第30号「非上場株式等の贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度について~平成25年度以降の税制改正を受けて~」を公表した。 これは、中小企業の事業承継問題に関して、平成25年度税制改正施行後の「非上場株式等の相続税・贈与税の納税猶予及び免除制度」の解説、制度利用上の留意点などについて述べるものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 非上場株式等の贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度の概要 「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下「経営承継円滑化法」という)が平成20年10月に施行されており、平成25年度税制改正(平成27年1月施行)では、規制の緩和が行われている。 具体的には中小企業の後継者が、贈与又は相続により経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式等を先代経営者から一定数又は一定額以上取得し、その会社を経営していく場合には、その後継者が納付すべき贈与税又は相続税のうち、その株式等(発行済議決権株式数の2/3に達するまでの部分に限る)に対応する贈与税又は相続税の納税が猶予される制度である。 その後、贈与の場合には先代経営者の死亡等により猶予された贈与税が免除されるが、受け取った株式は相続税の対象となり、相続税の納税猶予に引き継ぐことができる。相続の場合には後継者の死亡等により、猶予されている相続税が免除される。 経営承継円滑化法は、平成20年10月1日に施行されたものの、その後の利用状況は芳しいものではなく、その理由として、適用要件の厳格性等が挙げられており、その後、様々な議論がなされ、平成25年度税制改正において要件等について大幅な見直しが行われ、平成27年1月1日に施行されている。 Ⅲ 主な項目 取り上げている主な項目として次のものがあげられる。 付属資料では、制度説明がなされており、平成27年度税制改正において改正が予定されている事項が記載されている。 (了)
「結婚・子育て資金の贈与税非課税特例」 措置法政省令・告示の公布により 非課税となる『結婚費用・子育て費用』の詳細が明らかに ~新居費用は賃貸借契約締結日以後3年経過日まで、人工授精等不妊治療費用も該当~ Profession Journal編集部 平成27年度税制改正では、更なる新世代への資産移転を目的とした「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」が創設され、子や孫(20歳以上50歳未満)の結婚・子育て資金の支払に充てるために直系尊属が金銭等を拠出し金融機関等に信託等をした場合には、信託受益権の価額又は拠出された金銭等の額のうち受贈者1人につき1,000万円(結婚に際して支出する費用については300万円限度)までは贈与税を課さないこととされた(平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に拠出されるものに限る)。 ところで、上記の「結婚・子育て資金」について、具体的にどのような費用が該当するのかという点が重要となるが、大綱では以下のように示されていた。 2月の税制改正法案が公表されたことで、本制度が租税特別措置法第70条の2の3《直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税》として規定されており、「結婚・子育て資金」は第2条第1号において以下の規定ぶり(政令委任)となることが明らかとなったものの、より詳細な要件が待たれていた。 そしてこのたび、3月31日の税制改正関連法令の公布で本制度に係る以下の政省令及び告示の内容が明らかとなったことにより、以下では「イ 結婚資金」と「ロ 子育て資金」に分けて、これらの法令・告示について、再構成を行った(色変えにより法令・告示を示している)。 なお、結婚資金として示されているもののうち、婚礼に関する費用については、受贈者の婚姻の日の1年前の日以後に支払われる婚礼費用である点(措令6項1号)、住居・引越に要する費用については家屋の賃貸借契約締結(受贈者の婚姻の日の1年前の日から婚姻以後1年を経過する日までの期間に締結されるもの)の日以後3年を経過する日までに支払われる家賃等である点(措令6項2号)など、期間が設けられている点にはまず注意したい。 また子育て資金には、健康保険適用外で高額治療となっている人工授精等の不妊治療に要する費用も示されており(告示4)、さらに、いわゆる「産後ケア」もこの費用に該当することから(告示5)、本特例の適用効果が期待できるかもしれない。 なお本特例における育児に関する費用は、受贈者の小学校就学前の子の医療のために要する費用(予防接種等)、幼稚園や保育所(措規及び告示に規定あり)の入園料・保育料などがこれに該当する。 (了)