女性会計士の奮闘記 【第30話】 「ようやくスタートラインへ」 公認会計士・税理士 小長谷 敦子 〈部門別損益表〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 〈ノビ株式会社の業務フロー〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ◆ワンポントアドバイス◆ 会社の状況は、実際にお金を使って、業務に携わっている人が一番よく分かっています。 部門別損益表の数字の記入は会社の方に任せましょう。 社内売買のようなデリケート金額は、まず社長自らが自分の考えを明らかにして、決めていただく方がよいでしょう。 (了)
《速報解説》 公認会計士・監査審査会より、監査事務所に対して実施した検査結果等の 第三者への開示に関する取扱い情報を公開 ~被監査会社等からの開示要請への対応を示す~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年6月11日、公認会計士・監査審査会は「検査結果等の第三者への開示について」として、次のものを公表した。 日本公認会計士協会の監査基準委員会報告書260「監査役等とのコミュニケーション」は、公認会計士法上の大会社等の監査などに関して、次のことを規定している(15-2項、A22-2項。アンダーラインは筆者が記載)。 日本公認会計士協会の会員に向けて、「監査基準委員会報告書260の改正に伴う監査役等への品質管理レビューの結果の伝達に関する留意点」も公表されており、監査役においては、これについても参考になるものと考えられる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 基本的な取扱い 公認会計士・監査審査会が検査を実施した監査事務所に対して交付した検査結果通知書については、非公表である。 検査結果及び検査関係情報(以下「検査結果等」)の監査事務所以外への第三者への開示については、次の場合を除いて、審査会の事前承諾が必要となる。 2 審査会への事前承諾 検査結果等の第三者への開示の事前承諾については、検査先から審査会に対して、所定の事項を記載した申請書を提出することにより行う。 ただし、近時、被監査会社や被監査会社以外から、監査事務所の品質管理のシステムの整備・運用状況を確認するツールの1つとして、審査会の検査結果等の開示要請が増加してきていると考えられるとして、審査会への開示承諾申請については、次の区分ごとに行うとしている(開示承諾申請書の記載例が設けられている)。 3 Q&A 「検査結果等の第三者への開示に関するQ&A」として、第三者の範囲などについて回答が示されている。 例えば、次のQ&Aがある。 (答) 監査役等が、監査事務所より伝達された検査結果等を伝達された範囲内で、被監査会社の取締役等に対して、その職務の一環として報告等することについては、第三者への開示には該当しないものと考えられます。 (了)
プロフェッションネットワーク主催の税理士 笹岡 宏保氏による【1日で理解する】セミナーシリーズ。 8月4日(火)開催のお申込み受付を開始しました! 前回に続き、笹岡氏の著書『平成27年3月改訂 これだけはおさえておきたい 相続税の実務Q&A』が特別割引でご購入いただけるお得なセットお申込みプランがございます! ★セミナー内容の詳細やお申込方法など、くわしくは下記からご覧ください。
《速報解説》 国税庁より「国境を越えた役務の提供に係る消費税制度」の 関連通達及びQ&Aが公表 ~改正対応の申告書・届出書様式も明らかに。 「特定課税仕入れがある場合の課税標準額等の内訳書」が新設~ アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩 はじめに 平成27年度の税制改正により、平成27年10月1日以降に行われる国境を越えた役務の提供に係る消費税につき課税関係の見直しが行われたが、5月29日に国税庁ホームページにおいて、この規定に関連する基本通達の改正及び関連事業者へのパンフレットが、さらに6月3日には『国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A』がそれぞれ公表された。 今回公表されたものは次のとおり。 これらの発表により、本規定が適用される具体的な取引内容、この取引を行った場合における各事業者の取扱い、申告書等への記載方法、経過措置などに関する本規定の詳細が明らかになった。 本稿では、この公表により明確になった本規定の取引内容や留意事項について、以下の項目を解説していく。なお、規定の詳細については、各パンフレットや改正通達、Q&Aで確認されたい。 改正の概要については以下の拙稿をご覧いただきたい。 1 電気通信利用役務の提供に該当する取引の具体例 〔問2〕 電気通信利用役務の提供に該当する取引は、対価を得て行われる以下のようなものが該当する。 2 電気通信利用役務の提供に該当しない取引の具体例 〔問2〕 電気通信利用役務の提供に該当しない取引は、通信そのもの、若しくは、その電気通信回線を介して行う行為が他の資産の譲渡等に付随して行われるもので、具体的には以下のようなものが該当する。 なお、電気通信利用役務の提供に該当しない取引については、従来と同様に国内取引の判定を行い、消費税の課税対象となる場合には、これらの資産の譲渡等を行った事業者に納税義務が課されることとなる。 3 事業者向け電気通信役務の提供の意義 〔問3、問20〕 「事業者向け電気通信利用役務の提供」とは、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものが該当することとされているが、具体的には、以下のような取引が該当する。 電気通信利用役務の提供が、その役務の性質から事業者向けであると判断できるもの以外については、取引条件等から判断することとなる。したがって、当該取引における契約書や契約過程の連絡文書等により確認することとなる。 4 消費者向け電気通信役務の提供の意義 〔問4〕 「消費者向け電気通信利用役務の提供」とは、電気通信利用役務の提供のうち、上記3の「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当しないものをいい、具体的には、対価を得て行われるもので、消費者も含め広く提供される以下のような取引が該当する。 ただし、このような役務の提供であっても、インターネット上のデータベース等を企業内で広く活用するために、当該役務の提供を受けている事業者と利用範囲、利用人数、利用方法等について個別に交渉を行って、一般に提供されている取引条件等とは別に、当該事業者間で固有の契約を締結しているようなものなど、その取引条件等から事業者間取引であることが明らかな場合には、事業者向け電気通信利用役務の提供に該当する。 5 国内事業者の留意点 (1) 内外判定の留意点 〔問9~12〕 平成27年10月1日以後に行われる電気通信利用役務の提供については、経過措置(8参照)が適用される場合を除き、役務の提供を受ける者の住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地が国内であれば、その役務の提供を行う事業者の役務の提供に係る事務所等の所在地にかかわらず国内取引となる。 なお、内外判定については、以下のような点に留意する必要がある。 (2) 納税義務の留意点 〔問15〕 国内事業者の納税義務については、従来と同様に基準期間における課税売上高(課税資産の譲渡等の対価の額から計算した課税売上高)により判定することとなるが、この計算上、特定課税仕入れ(※)に係る支払対価の額は含まれないのであるから留意する。 特定課税仕入れは、その事業者の仕入れであって、課税資産の譲渡等ではないことから、特定課税仕入れに係る支払対価の額を課税標準として消費税の申告・納税を行っていたとしても、事業者免税点制度や簡易課税制度が適用されるか否かの判定における課税売上高には、特定課税仕入れに係る支払対価の額は含まれないこととなる(消法9①、改正消基通1-4-2(注)4)。 (3) リバースチャージ方式の留意点 〔問5、問17〕 事業者が平成27年10月1日以後に国内において行った課税仕入れのうち、国外事業者から受けた事業者向け電気通信利用役務の提供については、その役務の提供を受けた国内事業者が、その役務の提供に係る支払対価の額を課税標準として、消費税及び地方消費税の申告・納税(リバースチャージ方式)を行うこととなる(消法5①、28②、45①一)。 なお、事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合においても他の課税仕入れと同様に、役務の提供を受けた事業者において仕入税額控除の対象となる(消法30①)。 ただし、上記の取扱いは、一般課税により申告する事業者(簡易課税制度を適用している事業者を除く)で、その課税期間における課税売上割合が95%未満の事業者に限る。 このリバースチャージ方式により計算する際の留意点は、以下のようなものがある。 ① 免税事業者から提供を受けた特定課税仕入れ 〔問24〕 国外の免税事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合であっても、その提供を受けた事業者が、一般課税により申告する事業者で、その課税期間における課税売上割合が95%未満の場合には、リバースチャージ方式により申告を行うこととなる。 ② 免税事業者が提供を受けた特定課税仕入れ 〔問27〕 国内事業者の納税義務が免除されている課税期間中に、事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合には、その特定課税仕入れについて消費税の申告を行う必要はないことに留意する。 ③ 特定課税仕入れに係る消費税の課税標準 〔問18〕 特定課税仕入れに係る消費税の課税標準は、特定課税仕入れに係る「支払対価の額」となる。 特定課税仕入れに係る「支払対価の額」とは、対価として支払い、又は支払うべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額をいう。 なお、特定課税仕入れについては、その特定課税仕入れを行った事業者に納税義務が課されていることから支払った対価の額には消費税等に相当する金額は含まれていない。したがって、課税資産の譲渡等の対価の額のように108分の100を乗じて税抜計算をする必要はなく、支払った(支払うべき)金額がそのまま課税標準額となる。 ④ 特定課税仕入れに係る消費税の仕入税額控除 〔問19〕 課税標準額に対する消費税額から控除する特定課税仕入れに係る消費税額は、特定課税仕入れに係る「支払対価の額」に100分の6.3を乗じて算出した金額となる。 特定課税仕入れについては、その特定課税仕入れを行った事業者に納税義務が課されていることから、支払った対価の額には消費税等に相当する金額は含まれていない。 したがって、特定課税仕入れ以外の課税仕入れのように108分の6.3を乗じて計算することにはならないので注意しなければならない。 ⑤ 課税売上割合に準ずる割合が95%以上である場合のリバースチャージ方式 〔問23〕 課税売上割合に準ずる割合が95%以上であっても、課税売上割合が95%未満であれば、特定課税仕入れがなかったものとされる経過措置(8参照)の適用はない。したがって、その課税期間に特定課税仕入れがあればリバースチャージ方式による申告を行うこととなる。 なお、課税売上割合に準ずる割合を適用して計算することとしている場合には、その特定課税仕入れに係る仕入控除税額の計算においても、承認を受けている課税売上割合に準ずる割合に基づいて計算する。 ⑥ 特定課税仕入れがなかったものとされた課税期間における特定課税仕入れの仕入税額控除 〔問25〕 一般課税で、かつ、課税売上割合が95%以上の課税期間で、特定課税仕入れについてリバースチャージ方式による申告の必要がない場合における特定課税仕入れに係る消費税額については、仕入税額控除を行うことはできないので注意が必要である。 ⑦ 特定課税仕入れに係る帳簿及び請求書等の保存 〔問28〕 課税仕入れ等の税額が特定課税仕入れに係るものである場合には、以下の事項が記載された帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を受けることができる。なお、(ホ)の特定課税仕入れに係るものである旨の記載については、例えば、帳簿に特定と付記するなど、事後にその課税仕入れが特定課税仕入れに該当することが確認できる表示であれば差し支えない。 ⑧ 特定課税仕入れがある場合の課税売上割合の計算方法 〔問29〕 課税売上割合の計算については、原則として、その事業者の資産の譲渡等及び課税資産の譲渡等の対価の額により計算することから、課税売上割合の計算において、その事業者の資産の譲渡等及び課税資産の譲渡等ではない特定課税仕入れに係る金額は考慮する必要はない。 また、国外事業者においても、課税売上割合を計算する際の資産の譲渡等及び課税資産の譲渡等からは特定資産の譲渡等(事業者向け電気通信利用役務の提供及び特定役務の提供)が除かれているので、特定資産の譲渡等を除いたところで課税売上割合の計算を行うこととなる。 ⑨ 特定課税仕入れに係る支払対価の返還等を受けた場合の取扱い 〔問35、問36、問37〕 リバースチャージ方式により納税義務が課された特定課税仕入れにつき、その対価の返還等を受けた場合には、特定課税仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の消費税額の控除の規定により課税標準額及び仕入税額控除から控除することとなる。 なお、課税売上割合が95%以上の課税期間や簡易課税制度が適用される課税期間において、経過措置により、特定課税仕入れがなかったものとされた課税期間以後の課税期間において、値引き等により当該特定課税仕入れに係る支払対価の額の一部の返還等を受けた場合には、仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例(消法32条)、特定課税仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の消費税額の控除(消法38条の2第1項)の規定は適用されないのであるから留意する。 また、免税事業者であった課税期間において行った特定課税仕入れについて対価の返還等を受けた場合においても、上記と同様に仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例、特定課税仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の消費税額の控除の規定は適用されない(改正消基通12-1-8、14-1-12)。 (4) 消費者向け電気通信利用役務の提供の仕入税額控除 ① 具体的内容 〔問30〕 国外の事業者から提供を受けた消費者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合の仕入税額控除については、当分の間、仕入税額控除の適用は認めらない(改正法附則38①、改正消基通11-1-3(注)2)。 ただし、登録国外事業者から受けた消費者向け電気通信利用役務の提供については、帳簿及び請求書等の保存を要件として仕入税額控除の適用が認められる(改正法附則38①ただし書)。 帳簿及び請求書等の記載事項については、他の課税仕入れに係る記載事項に加えて、帳簿については登録国外事業者に付された「登録番号」、請求書等については、「登録番号」と「当該役務の提供を行った事業者において消費税を納める義務があること」の記載が要件とされている(消法30⑦~⑨、改正法附則38②)が、具体的な記載事項は次のとおりである。 (※) 下線部が、他の課税仕入れに係る請求書等の記載事項と異なる部分 なお、消費者向け電気通信利用役務の提供という取引の性質を鑑みて、取引相手から交付される請求書等の保存については、紙によるものに代えて、法令に規定された記載事項を満たした電子的な請求書等の保存によることができる。また、登録国外事業者は、取引相手からの求めに応じて当該請求書等を発行する義務がある。 また、消費者向け電気通信利用役務の提供を受けた消費者は、役務の提供を行う国外事業者が納税義務を負うため何ら影響することはない。 ② 登録国外事業者の確認方法 〔問32〕 登録国外事業者については、当該事業者の氏名又は名称、登録番号及び登録年月日等を国税庁ホームページで公表されることから、国税庁ホームページにて確認することとなる。 ③ 登録日以前の消費者向け電気通信利用役務の提供の仕入税額控除 〔問33〕 国外の事業者が登録国外事業者となる登録日の前日までにその事業者から受けた消費者向け電気通信利用役務の提供については、仕入税額控除を行うことができない。 ④ 登録番号の記載のない請求書等 〔問34〕 消費者向け電気通信利用役務の提供を国外事業者から受けた場合において、どの事業者から電子メールで届いた請求書に登録番号の記載がなかったときは、上記①の請求等の記載事項を満たしていないため仕入税額控除を行うことはできない。したがって、仕入税額控除を行うためには、要件を満たした請求書等を請求し、保存する必要がある。 6 国外事業者の留意点 (1) 国外事業者の意義 〔問6〕 本規定における国外事業者とは、所得税法第2条第1項第5号に規定する非居住者である個人事業者及び法人税法第2条第4号に規定する外国法人をいう(消法2①四の二、改正消基通1-6-1)。したがって、国内に支店等を有する外国法人についても、国外事業者に該当することとなるので注意しなければならない。 なお、国外事業者が電気通信利用役務の提供を行った場合において、事業者向け電気通信利用役務の提供については、役務の提供を受ける事業者が消費税の納税義務を負うことから、消費者向け電気通信利用役務の提供についてのみ国外事業者が消費税の納税義務を負うこととなる。 (2) 国外事業者の納税義務 〔問13、問14〕 消費税の納税義務の判定については、国外事業者であっても、他の事業者と同様に判定することとなるため、その基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合には、免税事業者となる。また、他の納税義務の免除の特例規定(9条の2から第12条の3)についても適用される。 なお、基準期間における課税売上高については、その期間中に国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額に基づいて計算することから、特定資産の譲渡等に該当するものは除いて計算することとなる。 したがって、例えば、電気通信利用役務の提供のみを行っている国外事業者で、事業者向け電気通信利用役務の提供と消費者向け電気通信利用役務の提供を国内に提供している場合には、消費者向け電気通信利用役務の提供に係る対価の額のみで計算することとなる(特定期間における課税売上高の計算も同様)。 また、国外事業者の平成27年10月1日を含む課税期間等における納税義務の判定については、経過措置があるので注意が必要である(下記8(2)参照)。 (3) 事業者向け電気通信利用役務の提供を行った場合の国外事業者の手続き 〔問21、問22〕 国内において事業者向け電気通信利用役務の提供を行う国外事業者は、当該役務の提供に際し、あらかじめ、「当該役務の提供に係る特定課税仕入れを行う事業者が消費税を納める義務がある旨」を表示しなければならない。 この場合における表示方法とは、例えば、インターネット等において役務の提供の内容等を紹介している場合には、その規約や価格表示されている場所など、また、カタログ等を発行している場合にはそのカタログなどの取引相手が容易に認識できる場所に、「日本の消費税は役務の提供を受けた貴社が納税することとなります。」や「日本の消費税のリバースチャージ方式の対象取引です。」などの表示をすることとなる。 また、対面やメール等で取引内容等の交渉を行うのであれば、当該交渉を開始する段階において取り交わす、書類やメールなどにこれらの文言を明記する必要がある。 いずれにしても、取引の相手方が、あらかじめ当該取引が自身に納税義務が課されるものであることが認識できるような表示を行う必要がある(消法62、改正消基通5-8-2)。 なお、事業者向け電気通信利用役務の提供を受ける際に、「当該役務の提供に係る特定課税仕入れを行う事業者が消費税の納税義務者となる旨」の表示がない場合であっても当該表示の有無は納税義務の成立に影響を及ぼすものではないことから、その役務の提供が特定課税仕入れ(例えば、事業者向け電気通信利用役務の提供)に該当するものであれば、仕入れた事業者において消費税の納税義務が課されることとなる。 (4) 登録国外事業者の登録 ① 登録国外事業者の意義 〔問31〕 「登録国外事業者」とは、消費者向け電気通信利用役務の提供を行う課税事業者である国外事業者で、国税庁長官の登録を受けた事業者をいう。 なお、国外事業者から受けた消費者向け電気通信利用役務の提供については、登録国外事業者から受けたもののみが仕入税額控除の対象となるので注意しなければならない。 また、登録国外事業者については、その登録後、国税庁ホームページで、当該事業者の氏名又は名称、登録番号及び登録年月日等について公表することとしている。 ② 登録国外事業者の申請 〔問40〕 消費者向け電気通信利用役務の提供を行おうとする国外事業者が登録国外事業者の登録を受けるには、以下の(イ)又は(ロ)の要件を満たしている場合で、納税地を所轄する税務署長を経由して国税庁長官に申請書を提出しなければならない(改正法附則39⑤)。 なお、登録国外事業者の登録の申請は、平成27年7月1日から行うことができる。 上記(イ)又は(ロ)のいずれの事業者も納税管理人(税務代理人が兼ねることもできる)を定めなければならない場合には、納税管理人を指定しておく必要がある。 ただし、次のような事業者は、登録を受けることはできないので注意が必要である。 ③ 登録国外事業者の納税義務 〔問40〕 登録国外事業者として登録された事業者は、登録を受けている課税期間において、消費税の納税義務の免除規定の適用がないので注意しなければならない。 したがって、例えば、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下となった場合であっても消費税の納税義務が課されることとなる。 ④ 登録国外事業者の発行する請求書等への記載事項 〔問42〕 登録国外事業者から提供を受けた消費者向け電気通信利用役務の提供についても他の課税仕入れと同様に帳簿及び請求書等の保存が要件とされており、登録国外事業者は、取引相手からの求めに応じて請求書等を発行する義務がある(上記5(4)①参照)。 ⑤ 事業者向け電気通信利用役務の提供のみを行っている場合 〔問43〕 事業者向け電気通信利用役務の提供のみを行っており、消費者向け電気通信利用役務の提供を行う予定がない事業者については、登録国外事業者の登録を行うことはできない。 7 本規定が適用される申告書等の記載方法 冒頭で紹介した「消費税法基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」には「消費税関係申告書等の様式の制定について(法令解釈通達)」の一部改正が含まれており、本改正に対応した各申告書・届出書の様式が明らかとなった。 具体的には、特定課税仕入れがある場合には、「特定課税仕入れがある場合の課税標準額等の内訳書」(新設)を記載して提出することとなる。また、付表1、付表2、付表2-(2)についても一部見直しが行われ、特定課税仕入れに関する欄に記載した上で計算することとなる。 なお、国内の事業者が、登録国外事業者から消費者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合には、その対価の額(税込)を他の仕入税額控除と同様に課税仕入れとして処理することとなる。 (1) 【新設】「特定課税仕入れがある場合の課税標準額等の内訳書」(申告書別表)の記載方法 この内訳書は、課税標準額の内訳として、課税資産の譲渡等の対価の額を②欄、特定課税仕入れに係る対価の額を③欄に記載し、その合計額を③欄に記載する。なお、上記の課税資産の譲渡等の対価の額又は特定課税仕入れに係る対価の額について、適用税率ごとにその内訳を記載する。 また、売上げに係る対価の返還等をした場合又は特定課税仕入れに係る対価の返還等を受けた場合には、控除税額の内訳として、売上げの返還等対価に係る税額を⑤欄、特定課税仕入れの返還等対価に係る税額を⑥欄に記載し、その合計額を④欄に記載する。 (2) (確定)申告書の記載方法 (確定)申告書については、特定課税仕入れがある場合の課税標準額等の内訳書の③欄(課税標準額)の金額を①欄、④欄(返還等対価に係る税額)の金額を⑤欄に転記する。 また、特定課税仕入れがある場合の課税標準額等の内訳書の提出を行う場合には、申告書の「参考事項」に「〇」を記載する。 ⇒該当通達はこちら (3) 付表1の記載方法 特定課税仕入れがある場合には、特定課税仕入れに係る対価の額を①-2欄に適用税率ごとに記載し、特定課税仕入れに係る対価の返還等を受けた場合には、特定課税仕入れの返還等対価に係る税額を⑤-2欄に適用税率ごとに記載して計算する。 ⇒該当通達はこちら (4) 付表2の記載方法 特定課税仕入れに係る支払対価の額を⑩欄に記載し、その特定課税仕入れに係る消費税額(⑩×6.3%)を⑪欄に記載して計算する。 ⇒該当通達はこちら (5) 付表2-(2)の記載方法 特定課税仕入れに係る支払対価の額を⑩欄に適用税率ごとに記載し、その特定課税仕入れに係る消費税額(⑩×6.3%)を⑪欄に適用税率ごとに記載して計算する。 ⇒該当通達はこちら 8 本規定の経過措置 (1) 本規定の適用除外 〔問5、問17〕 事業者が、事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合であっても、次の①又は②に該当する課税期間については、当分の間、事業者向け電気通信利用役務の提供はなかったものとされ、リバースチャージ方式による申告を行う必要はない。また、この場合には、仕入税額控除についても行うことができないので注意しなければならない(改正法附則42、44②)。 (2) 国外事業者の納税義務 〔問16〕 ① 平成27年10月1日を含む課税期間の取扱い 新消費税法の適用日である平成27年10月1日を含む課税期間において、旧法に基づいて計算した場合に免税事業者となる事業者が、あらためて、新消費税法がその基準期間又は特定期間の初日から施行されていたもの(内外判定基準が改正されたもの)として課税売上高を計算し、その計算の結果、当該課税売上高が1,000万円を超えている場合には、平成27年10月1日以後の納税義務は免除されない(改正法附則36①)。 なお、これまで国外取引とされていた電気通信利用役務の提供の売上高については、消費税が課税されていないことから、課税売上高を計算する場合における平成27年9月30日までの消費者向け電気通信利用役務の提供の対価の額については、108分の100を乗じて税抜計算をする必要がないことに留意する(下記②及び③も同様)。 ② 平成27年10月1日の翌日以後に開始する課税期間の取扱い 平成27年10月1日の翌日以後に開始する課税期間において、その課税期間に係る基準期間又は特定期間の開始の日が新消費税法適用日(平成27年10月1日)前である場合には、新消費税法がその基準期間又は特定期間の初日から施行されていたもの(内外判定基準が改正されたもの)として課税売上高を計算しなければならない。 その計算の結果、当該課税売上高が1,000万円を超えている場合には、免税事業者とはならず、課税事業者に該当することとなる(改正法附則36②)。 ③ 基準期間又は特定期間の課税売上高を計算することが困難な場合の取扱い 基準期間又は特定期間の初日が平成27年9月30日以前である場合において、その基準期間又は特定期間に電気通信利用役務の提供に該当する資産の譲渡等を行っていた事業者が、例えば、その基準期間又は特定期間で電気通信利用役務の提供を事業者向けとそれ以外に区分していなかった場合や日本国内向けの提供とその他の国向けの提供を区分していなかった場合など、当該基準期間又は特定期間の課税売上高を計算することに困難な事情があるときは、新消費税法が施行されていたものとして計算した平成27年4月1日から6月30日までの期間における課税売上高に、4を乗じて計算した金額を基準期間における課税売上高とし、2を乗じて計算した金額を特定期間における課税売上高とすることができる(改正法附則36③④)。 (3) 継続的電気通信利用役務の提供に関する経過措置 〔問38〕 国外事業者が平成27年3月31日までに締結した電気通信利用役務の提供で、平成27年10月1日前から同日以後引き続き行う電気通信利用役務の提供については、改正前の消費税法が適用されることに留意する。 例えば、データ保存等を行うクラウドサービスについて、平成27年3月31日までに、平成27年4月1日から平成28年3月31日までの1年間の利用契約を締結していた場合などは、改正前の内外判定基準が適用されることから、国外事業者が国外から提供するものであれば、平成28年3月31日までは、国外取引となり消費税は課税されないこととなる(改正令附則2)。 なお、平成27年4月1日以降に対価の額について契約内容等の変更が行われた場合には、契約内容等の変更が行われた以降の取引については、経過措置の適用はない。 (※) 月ごとに更新するものや、月ごとに自動継続するようなものなど、月ごとに役務の提供を了している、又は、月ごとに契約を更新しているものと認められるものは、平成27年4月1日以後に毎月契約を行っていることとなるため経過措置の適用はない。 (4) 消費税簡易課税制度選択届出書に関する経過措置 〔問39〕 消費者向け電気通信利用役務の提供を行っている国外事業者が経過措置により、平成27年10月1日を含む課税期間の同日以後に行う課税資産の譲渡等について納税義務が生じる場合には、その課税期間中に消費税簡易課税制度選択届出書を所轄税務署に提出することにより、当該課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができる経過措置が設けられている(改正令附則4)。 なお、簡易課税制度の適用を受けるためには、当課税期間の基準期間における課税売上高が5,000万円以下でなければならない。 9 芸能・スポーツ等の役務提供 (1) 具体的内容 〔問44〕 平成27年度の税制改正により、国外事業者が行う、映画若しくは演劇の俳優、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の役務の提供を主たる内容とする事業として行う役務の提供のうち、その国外事業者が他の事業者に対して行うものを特定役務の提供(不特定かつ多数の者に対して行う役務の提供を除く)といい、その特定役務の提供を受けた事業者は、特定課税仕入れとして申告・納税(リバースチャージ方式)を行うこととなった。 なお、この特定役務の提供については、平成28年4月1日以後に行われる課税資産の譲渡等及び課税仕入れから適用される。 (2) 特定役務の提供の範囲 〔問45〕 「特定役務の提供」とは、国外事業者が行う以下の役務の提供が該当する。なお、国外事業者が個人事業者で、その個人事業者自身が行った役務も含まれる。 例えば、国外事業者であるプロスポーツ選手が、映画やCM等の撮影を国内で行って、その演技、出演料等を受領する場合も上記①に含まれる。また、国外事業者がアマチュア、ノンプロ等と称されている者であっても、スポーツ競技等の役務の提供を行うことにより報酬・賞金等を受領するものであれば、上記③に含まれることとなる。 (3) 特定役務の提供から除かれるもの 〔問46、問47〕 「特定役務の提供」とは、国外事業者が他の事業者に対して行うものであって、国外事業者が不特定かつ多数の者に対して行う役務の提供については、対象とならない。 したがって、例えば、国内においてコンサート等を開催する事業者に対して、所属する音楽家等を出演させる行為は、特定役務の提供に該当するが、国内の事業者がコンサート等を開催し、直接、不特定かつ多数の者に対して役務の提供を行うものは、特定役務の提供に含まれず、その国内事業者において消費税の納税義務が生じることとなる。 なお、仮に、このようなコンサートの観客の中に、国内の事業者が事業に関連して購入したチケットにより来場した者がいたとしても、これら費用についてリバースチャージ方式による申告は必要なく、これまで同様に役務の提供を受けた事業者の仕入税額控除の対象となる。 また、国外の音楽家に国内で演奏してもらうために、その音楽家を仲介する国外の事業者に仲介手数料を支払った場合におけるその対価は、特定役務の提供の対価には該当しない。この場合におけるその音楽家又は音楽家を雇用等している国外事業者に対して支払う演奏に対する対価は特定役務の提供の対価に該当する。 (了)
2015年6月11日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.123が 公開されました。 プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布中! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第30回】 「「海洋掘削装置」は所得税法上の「船舶」に当たるか?(その3)」 ~同一税法内部における同一用語の解釈~ 中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 4 借用概念該当性 前述のとおり、所得税法161条3号にいう「船舶」が固有概念ではないとすると、次に、借用概念であるかどうか(前回のチャート図の④)という点が問題となるであろう。 東京地裁は、 とするが、このような理解は妥当なのであろうか。 そこで、「船舶」という用語を用いている他の法令について見てみたい。 ところで、借用概念論は、私法からの借用がその中心であり、公法はある特定の目的をもった法律であることから、公法からの借用という理解の仕方は消極的になされるべきである旨はすでに論じてきたところである(本連載第18回参照)。 そうであるとするならば、「船舶」という用語を用いている法令は多数あるが、まずは私法領域の概念を確認しておくべきであろう。海上企業活動の関係主体の利益を調整する立場から規制するものとして商法第3編《海商》に置かれた商法684条1項は、同法における「船舶」について、商行為をする目的をもって航海の用に供するものをいう旨を定めている。 これに対し、船舶の国籍、総トン数その他の登録に関する事項及び船舶の航行に関する行政上の取締り等を定めた公法である船舶法は、同法35条本文において、商行為をする目的を有さずに航海の用に供するものも同法における「船舶」に含まれることを前提に、これに商法第3編の規定が準用される旨を定めている。他方、船舶法施行細則2条は、推進器を有しないしゅんせつ船は船舶法における「船舶」とはみなさない旨を定めている。 東京地裁は、このような私法と公法における規定振りをみた上で、 とする。 東京地裁は、商法と船舶法との間に「船舶」の意義の統一性が見いだせないから、他の法令の規定を参照して所得税法上の「船舶」の意義を明らかにすることが困難であるというが、そのような場合には商法に従うべきという理解の仕方も十分にあるはずである。なぜなら、商法は私法であり船舶法は公法であるから、借用概念の統一説にいう一般的な理解に従えば、私法の理解に合致させるべきであるとする考え方があり得るからである。 ところで、商法第3編すなわち海商法は、船舶の範囲を画することによりその適用範囲を明らかにしている。すなわち、海商法は、その対象となる船舶について「商行為ヲ為ス目的ヲ以テ航海ノ用ニ供スルモノ」と定めているのであるが(商684①)、この規定からは、必ずしも「船舶」の意義が明らかであるとはいえない。 この点、海商法においては、「船舶」の意義は社会通念により決するものと解されている(箱井崇史「船舶衝突の意義に関する一考察―船舶の種別による海商法規定の適用関係を中心として―」早法87巻2号361頁)。すなわち、「船舶」とは、社会通念に従って、浮揚性を有し、機械力及び自力航行能力の有無は問わないが、水上航行の用に供される積載可能な構造物をいうとするのである。 このような理解から、海商法においては、引揚げ不能な沈没船や救助不能な難破船は船舶ではないとされている。このように、社会通念によって判断された「船舶」のうち、商行為を行う目的をもって航海の用に供する船舶(航海商船)が海商法の対象となるのである(中村眞澄=箱井崇史『海商法〔第2版〕』41頁以下(成文堂2013))。なお、海商法は、端舟その他のろかい船を同法の適用対象から除外している(商684②)。 海商法が「船舶」の意味を社会通念によって決するという態度を採っていることから、海商法における「船舶」概念は、一般概念として理解されていることが分かる。 そこで、所得税法161条にいう「船舶」の概念を商法(海商法)からの借用と考え、海商法にいう「船舶」が一般概念であるとするならば、その理解に沿って、所得税法上の「船舶」も一般概念として理解すべきというアプローチが考えられる。 このような理解の仕方は、法人税法22条《各事業年度の所得の金額の計算》4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準(公正処理基準)」が何を指すのかという議論と親和性を有するといえよう。つまり、法人税法22条4項の公正処理基準は、商法(会社法)のことを指すと考えた上で、次に、商法19条や会社法432条《会計帳簿の作成及び保存》が、「一般に公正妥当と認められる会計処理の慣行」、すなわち企業会計原則を中心とする会計上の諸規則に従うと規定していることから、法人税法における公正処理基準は企業会計原則を中心とする会計上の諸規則を指すものと考える理解と類似しているように思われる。 我が国の法制上「船舶」の語が用いられているものについて、それらの法令を分類すると、「船舶」そのものを定義しているもの(※1)、法令の適用を受ける「船舶」の範囲を規定しているもの(※2)、定義や範囲について規定していないものがある(※3)。具体的な例として、海上交通安全法2条2項1号及び海上衝突予防法3条1項では「『船舶』とは、水上輸送の用に供する船舟類(水上航空機を含む。)をいう。」と規定されている。 (※1) 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律3条1号、海上衝突予防法3条1項、海上交通安全法2条2項1号、商法684条1項、国際海上物品運送法2条1項、船舶の所有者等の責任に関する法律2条1号等。油濁損害賠償保障法2条4号は特定の用途に供されているものに限定して「船舶」を規定している。 (※2) 海上運送法43条、船舶法20条、船舶安全法2条2項、32条、船舶職員及び小型船舶操縦者法2条1項、船員法1条2項、水先法13条1項、内航海運業法2条1項、内航海運組合法2条1項等。なお、港則法3条1項では「雑種船」を定義し、「船舶」とは区別している。 (※3) 海上保安庁法、海難審判法、水難救護法、港湾運送事業法等。 本件において、東京地裁は、 と説示しているが、必ずしも上記のように海商法の「船舶」自体が一般概念であるという段階的な理解によるアプローチを採用したわけではなく、次図のように、「条文に定義なし→沿革からも判然としない→海商法・船舶法上の定義も不明確→一般概念による」というルートを採ったものと理解すべきであろう。 なお、本件事案では、所得税法161条3号にいう「船舶」の意義が争点となっているところ、東京地裁は、これと所得税法26条1項にいう「船舶」とは同義ではないと論じている。しかしながら、では、所得税法26条1項の「船舶」がいかなる意味を持つものと理解されるべきかについては争点外のため論じられていない点には注意が必要である。 あえて、本件東京地裁判決と整合的な形で所得税法26条1項にいう「船舶」を検討するとすれば、同項にいう「船舶」は固有概念として理解をした上で、所得税法161条3号にいう「船舶」を一般概念と理解するのがあり得る解釈として最も本件判決の考え方に近いかもしれない。そして、耐用年数省令別表第1にいう「船舶」は、「その他のもの」を含むとしており概念が明確ではないことからすれば、筆者の論じたアプローチに従って、商法(海商法)からの借用概念と捉え、結果的には社会通念で判断する一般概念と理解するのが、整理としては落ち着くのではないかと思われる。 (了)
消費税の軽減税率を検証する 【第1回】 「軽減税率の検討に至る経緯」 税理士 金井 恵美子 Ⅰ 消費税軽減税率制度検討委員会の設置 「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」(以下「税制抜本改革法」という。)7条1号は、消費税率の引上げにより負担が増す低所得者に配慮する観点から、次の2つの施策について、様々な角度から総合的に検討するものとした。 「(イ)総合合算制度、給付付き税額控除等の施策の導入」は、税制抜本改革法成立当時の与党であった民主党が当初法案に掲げた施策であり、「(ロ)複数税率の導入」は、平成24年6月15日の民主党、自由民主党、公明の3党合意により加えられたものである。 両者は並列に扱われているが、法律制定後、平成24年12月の衆院選において3年余りの民主党政権は終了し、自由民主党、公明党が再び与党となって、具体的な検討が進められているのは、単一税率制度から複数税率制度への移行である。 すなわち、平成25年度与党大綱(※1)においては、「消費税率の10%引き上げ時に、軽減税率制度を導入することをめざす。」とされ、翌年の平成26年度与党大綱(※2)には、 と記された。 (※1) 平成25年度税制改正にあたっては、自由民主党と公明党が平成25年1月24日に公表した「平成25年度税制改正大綱」(平成25年度与党大綱)と平成25年1月29日に閣議決定された「平成25年度税制改正の大綱」とがある。平成25年度与党大綱は、「第一 平成25年度税制改正の基本的考え方」、「第二 平成25年度税制改正の具体的内容」、「第三 検討事項」からなり、このうち、「第二 平成25年度税制改正の具体的内容」の部分が「平成25年度税制改正の大綱」として閣議決定された。軽減税率に関する記述は、平成25年度与党大綱の「第一 平成25年度税制改正の基本的考え方」に見られる。平成26年度改正、平成27年度改正においても同様である。 (※2) 「平成26年度税制改正大綱」(自由民主党、公明党、平成25年12月12日)。 これを受け、与党税制協議会は、広く国民の意見を聞きながら検討していくための資料として、平成26年6月5日、「消費税の軽減税率に関する検討について」(以下「検討資料」という)を示した。 直近の平成27年度与党大綱(※3)においても、 とされ、平成27年1月26日に与党税制協議会の下に設置された消費税軽減税率制度検討委員会において、その具体的な内容が検討されている。 (※3) 「平成27年度税制改正大綱」(自由民主党、公明党、平成26年12月30日)。 Ⅱ 軽減税率と複数税率 読者は、上記において、税制抜本改革法で「複数税率」と呼んだものが、平成25年度与党大綱以後、「軽減税率制度」と呼び直されていることに気がつかれただろうか。 現状、割増税率を設定することは検討されていないので、「軽減税率制度」と呼んだ方が制度の内容をよりわかりやすく表現することになるのかもしれない。しかし、筆者は、「単一税率制度」に対する「複数税率制度」、「標準税率」(又は「普通税率」)に対する「軽減税率」という語を使用するべきではないかと考えている。 それは、「軽減税率制度」には、「日常生活への配慮」とか、「消費生活に優しい」とか、「経済的弱者への思いやり」とか、そういったイメージを連想させる心地良い語感があると感じられるからである。 消費税制度を大きく変える複数税率への移行は、税制全体における消費税の役割とこれまでの税制調査会での議論、複数税率を採用する国々の実態を踏まえ、制度構築上及び執行上の問題と消費者及び事業者が受ける影響等について、慎重かつ充分な議論を行ったうえで判断しなければならない。 意図したかどうかは別として、「複数税率」から「軽減税率」への言い換えが、制度に対する人々の期待感を煽り、その効果や影響についての冷静な議論の妨げになっているのではないかと考えられる。 Ⅲ 物品税から消費税へ 「検討資料」は、税率引上げ時の「痛税感を和らげる観点」から、軽減税率の適用範囲を検討するべきとしている。消費税は、もともと痛税感が大きい。それは為政者にとって決して好ましい特徴ではない。にもかかわらず、この税が導入された理由を考えてみよう。 消費税前の物品税は、いわゆる贅沢品に重く課税することにより間接税に累進課税の要素を求めるものであった。しかし、国民の消費態様の大きくかつ急激な変化に即応して的確に課税対象を選択しそれぞれに適切な税率を設定するということができず、税制の公平性、中立性の観点から問題が指摘されていた。 そこで、水平的公平を確保する観点から、すべての消費に広く薄く負担を求める一般消費税制度への転換が求められた。また、低い税率で多くの税収を確保する税収ポテンシャルの大きさが、個別消費税制度から一般消費税制度へ移行する力の源であったといえる。 税制改革法は、消費税創設の趣旨を としている(税制改革法10)。 Ⅳ 消費税による公平性の確保 (1) 水平的公平 消費税は、原則としてすべての消費を課税の対象としており、すべての課税取引に一律の税率を適用する単一税率である。 納税義務者である事業者や税の負担を予定する消費者の個別の事情には関係なく、すべての財とサービスに課税することを基本としており、したがって、制度は簡素であり、税務行政側と納税義務者側との両面でコストが少ないと評価される。 また、商品の価格が同一であれば同一の負担額となるので、商品やサービスの価格に中立であり、消費に対する選択にバイアスを生じさせる要因とならない。 (2) 世代間の公平 消費税は、「世代間の公平に優れた税」であると評価されている。 社会保障・税一体改革において消費税率の引上げを税制面における改革の柱に据える理由は、 と説明されている(『明日の安心 社会保障と税の一体改革を考える』(内閣官房、平成24年)17頁)。 ただし、世代間の不公平を是正するためには、税制のみならず、公的年金制度をいかにデザインするかという点が重要であろう。少子高齢化の中で、社会保険料の負担は、若い世代ほど大きく、世代間の受益と負担の収支の差は歴然としている。若者を搾取している、とまで表現されるこの状況に物価スライド制が拍車をかけている。 消費税率の引上げによる物価上昇は物価スライドに反映され、年金受給者の消費税率引上げによる負担増は、他に比べて相当程度減殺される。現行の物価スライド制においては、消費税の税率を引き上げることによって世代間の不公平を是正することは難しい。 (3) 消費税の逆進性 消費税には逆進性の批判がある。これについて、消費税創設当時の答申は、 としている(「税制改革についての中間答申」(税制調査会、昭和63年4月))。 平成2年の東京地裁判決も、消費税の逆進性は憲法14条の平等原則に違反するという納税者の訴えに対し、所得の再分配等による実質的平等実現のための政策は、税制全体、ひいては、各種社会保障等をも含めた総合的な施策によって実現されるべきものであるとして(※4)、答申の考え方を首肯した。 (※4) 東京地判平2・3・26税資176-194。 また、所得税は垂直的公平の要請によく応えるが、暦年課税であるため、長期間安定的に所得を獲得する場合と、一時期に集中して所得を獲得する場合とでは、生涯の所得が同じであってもその税負担に差異が生じる。比例税にはこれを緩和する効果があると評価することもできる。 (4) 消費税の役割 消費税には、すべての消費に均一に課税するという性質によって暦年による累進課税を行う所得税の弱点を補い、税制全体の中で水平的公平、中立、簡素の要請に応えつつ多くの税収を確保するという機能を発揮することが期待される。 むしろ、累進的でないという特徴をもつ租税であるからこそ、その存在に意味があり、その役割を果たすことができると考えられる。 (了)
「結婚・子育て資金の一括贈与に係る 贈与税非課税特例」の活用ポイント 【第2回】 「贈与者が他界した場合の取扱い」 税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良 前回は結婚・子育て資金贈与特例の制度概要を説明したが、今回は、結婚・子育て資金贈与特例を適用した場合に、贈与者が他界した場合の取扱いにつき説明を行う。 1 結婚・子育て資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合 信託等があった日から結婚・子育て資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合には、当該死亡の日における非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額については、受贈者が贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなして、当該贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算する。 (1) 非課税拠出額から結婚・子育て資金拠出額を控除した残額(管理残額) 非課税拠出額から結婚・子育て資金拠出額を控除した残額(管理残額)は、贈与者から受贈者が相続・遺贈により取得したものとみなして、相続税が計算される。 「非課税拠出額」とは、結婚・子育て資金非課税申告書又は追加結婚・子育て 資金非課税申告書に「結婚・子育て資金の非課税」の特例の適用を受けるものとして記載された金額を合計した金額をいう(1,000万円が限度)。 「結婚・子育て資金支出額」とは、取扱金融機関(受贈者の直系尊属又は受贈者と結婚・子育て資金管理契約を締結した金融機関等)の営業所等において結婚・子育て資金の支払の事実が確認され、かつ、記録された金額をいう。 つまり、結婚・子育て資金管理契約の期間中に、贈与者が死亡した場合、未使用残高は、贈与者から相続・遺贈により受贈者が取得したものとして相続税が計算されることとなる。 この点、「教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税非課税特例」(措置法第70条の2の2)の場合、非課税拠出額の残高については相続税に加算しないため、規定が異なることから注意しなければならない(詳しくは【第4回】参照)。 (2) 相続税の2割加算 相続・遺贈により財産を取得した者が被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の者である場合、その者に係る相続税額は、その2割を加算した金額とされる(相続税法18)。 結婚・子育て資金の受贈者が贈与者の孫である場合、結婚・子育て資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡したときは、管理残額を遺贈により、受贈者は取得したものとみなして相続税を計算する。 このように考えていくと、結婚・子育て資金の受贈者が贈与者の孫である場合、結婚・子育て資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡したときには、相続税の2割加算が適用されることとなるが、管理残額に対応する相続税額については、相続税額の2割加算は適用されないこととされている(措置法70の2の3⑩)。 (3) 相続開始前3年以内贈与財産の加算 相続・遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前3年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合、その者については、当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなして相続税を計算する(相続税法19)。 結婚・子育て資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡したときは、管理残額を相続・遺贈により、受贈者は取得したものとみなして相続税を計算する。 このように考えていくと、結婚・子育て資金の受贈者が相続開始前3年以内に贈与者から贈与を受けている場合、結婚・子育て資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡したときには、その贈与財産は相続税の対象に含められることとなる。 ただし、贈与者から相続・遺贈により管理残額以外の財産を取得しなかった受贈者については、相続開始前3年以内に被相続人から暦年贈与に係る贈与によって取得した財産の相続税の課税価格への加算の規定は適用されないこととされている(措置法70の2の3⑩)。 2 結婚・子育て資金管理契約の終了の日後に、贈与者が死亡した場合 ※下記〔追記〕を参照 結婚・子育て資金管理契約が終了した後に、贈与者が死亡した場合、租税特別措置法上、特段の規定はなく、原則通りの課税が行われると考えられる。つまり、贈与者が死亡した時点では、結婚・子育て資金管理契約は終了しており、当該契約に関連して贈与者から受贈者へ財産の移転は生じておらず、特段課税は生じないものと判断される。 なお、結婚・子育て資金管理契約終了時に、受贈者が50歳に達し、その結婚・子育て資金管理契約に係る非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額があるときは、その残額については、受贈者が50歳に達した日の属する年の贈与税の課税価格に算入される(措置法70の2の3⑫)ため、受贈者が50歳に達した日から3年以内に、贈与者が他界した場合、贈与者の相続税計算上、相続前3年以内贈与財産の加算(相続税法19)の適用の可能性が考えられる(贈与者が受贈者の子のケース)。 措置法70の2の3第12項では「・・・贈与税の課税価格に算入する。」と規定され、「・・・受贈者が贈与者から贈与により取得したものとみなして、相続税法その他相続税に関する法令の規定を適用する。」とは規定されていない。 この規定を文理解釈すると、あくまで贈与税の対象となるが、贈与者から受贈者が贈与により取得したとみなすとまでは規定されていないため、相続前3年以内贈与財産の加算規定(相続税法19)の適用はないものと考える。 これは、相続税法19条は、「相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前3年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合」に適用されるが、措置法70の2の3第12項は「受贈者が贈与者から贈与により取得したものとみなして、相続税法その他相続税に関する法令の規定を適用する。」と規定しているのではなく、あくまで「贈与税の課税価格に算入する。」とのみ規定しているためである。 (了)
こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第28回】 「非居住者に係る源泉所得税 及び復興特別所得税の納税証明書」 税理士・社会保険労務士 上前 剛 当社は、平成26年6月1日にニューヨーク在住のアメリカ人から運転資金として1,000万円を借り入れました。 このアメリカ人は、所得税法上の非居住者です。また、金銭消費貸借契約において、借入期間は1年、借入利率は2%、平成27年5月31日に元本と利子を一括で返済することになっていたので、平成27年5月31日に次の通りに返済しました。 上記③については、「租税条約に関する届出書」を税務署へ提出していないため、20.42%の税率にて源泉徴収し、平成27年6月5日に納付しました。 先日、アメリカ人より納税証明書を発行してほしいとの依頼がありました。 非居住者に係る源泉所得税及び復興特別所得税の納税証明書についてご教示ください。 非居住者又は外国法人は、居住地国の税務申告において外国税額控除の適用を受けるため、源泉所得税及び復興特別所得税の納税証明書の交付を受けることができる。 今回のケースにおいては、アメリカ人は会社経由で税務署へ次に掲げる書類を提出することにより、納税証明書の交付を受けることができる。 (了)
組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第28回】 「裁決例⑧」 公認会計士 佐藤 信祐 今回、紹介する事件は、合併法人の繰越欠損金を被合併法人の所得に対する法人税額に繰り戻して還付することができないとした事件である。なお、類似の事件として、昭和51年2月28日裁決がある。 組織再編税制が導入され、適格合併に該当し、かつ、繰越欠損金の引継制限が課されない場合には、被合併法人の繰越欠損金を合併法人に引き継ぐことができることとなったが、本事件のように、合併法人の繰越欠損金を被合併法人の所得を利用して繰戻還付を行うことは、現在の法人税法においても認められておらず、本事件を参考にすることができると考えられる。 13 平成12年6月21日裁決 (1) 事件の概要 審査請求人(以下、「請求人」という)は、平成10年10月21日に破産宣告を受けた株式会社E(以下、「本件破産法人」という)の破産管財人であるが、民生用品電気機器製造業を営む本件破産法人の平成9年10月1日から平成10年9月30日までの事業年度において欠損金額417,462千円を生じたので、法人税法第81条第4項の規定に基づいて、被合併法人である旧株式会社Eの平成9年3月1日から平成9年9月30日までの事業年度の所得金額に繰り戻し、法人税額71,095千円の還付請求をする旨を記載した欠損金の繰戻しによる還付請求書を平成11年1月4日に提出した。 F税務署長は、これに対し、G国税局の職員の調査に基づき、平成11年7月2日付で本件還付請求に理由がない旨の通知処分を行ったため、請求人はこれを不服として、異議申立、審査請求を行った。 (2) 原処分庁の主張 本件被合併法人と本件破産法人とはそれぞれ別の法人格を有するから、これらの法人を同一の法人とみなすことはできない。 法人税法第81条は、内国法人の青色申告書である確定申告書を提出する事業年度において生じた欠損金額がある場合には、その内国法人は、当該欠損金額に係る事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度の所得に対する法人税の額のうち、所定の方法により計算した金額に相当する法人税の還付を請求することができる旨規定しているところ、この場合の「当該欠損金額に係る事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度」とは、当該内国法人の事業年度をいうのであり、当該内国法人とは法人格が異なる被合併法人の合併前の事業年度まで含むものではなく、また、ほかに被合併法人の法人税に対する繰戻しを認める規定は存在しない。 法人税法第11条は、法人税法の規定の適用上、資産又は事業から生ずる収益がいずれの法人に帰属するものとするかについて定めた規定であり、これを根拠として同法第81条に規定する欠損金の繰戻しによる還付につき、合併存続法人に生じた欠損金額を被合併法人の法人税に繰り戻すことができるものと解釈することはできない。 (3) 請求人の主張 本件合併は、本件被合併法人が近い将来に株式上場を計画していたため、K証券株式会社の指導の下、株式額面価額を50,000円から500円に切り替えることを目的とする技術的なものであるから、本件合併法人を法律上の存続法人としたのは形式的なものであり、実質的には本件被合併法人が休業中の本件合併法人を吸収合併したと評価できる。その証拠として、本件合併法人は、平成9年2月1日にI有限会社に印刷事業等の全部を営業譲渡したため、本件破産法人に引き継いだ資産負債は全くなく、かつ本件合併後直ちに商号を本件被合併法人と同一商号に変更するとともに、本件被合併法人の本店所在地に本店を移転し、本件被合併法人の営業形態、営業内容、役員及び従業員もそのままにして何ら変更することなく、事業の継続を行ってきたのであるから、その事業経営状態は、本件被合併法人と本件破産法人とは全く同一であって、継続性が保たれている。 我が国の税法においては、収益の帰属主体の名義のいかんにかかわらず、一貫して実質課税の原則がとられていることは、法人税法第11条《実質所得者課税の原則》等の規定に照らし明らかであるから、当該実質課税の原則における実質主義は、課税の場合のみならず、欠損金の繰戻しによる還付請求の場合でも適用されるべきことは税務行政の平等・公平の観点及びその恣意的運用の排斥の観点からしても至極当然である。そうすると、本件合併は、本件被合併法人と本件破産法人との間に実質的な同一性が完全に維持されていることが明白であるから、本件還付請求は、当然許されるべきであり、単に、本件被合併法人と本件破産法人が別法人であること及び本件合併法人を形式的に存続法人としたことをもって、一律に本件還付請求を認めないことは上記実質課税の原則にも反することになるから、本件通知処分は、失当というべきである。 法人税法第81条は、法人が各事業年度ごとに算定した所得金額を基礎として法人税を課税することになっている関係上、各事業年度を通算して所得金額を算定する場合と比して、法人税の負担が過重になる場合が生ずることから、欠損金を生じた法人を救済するための規定と解されるところ、本件合併は、本件被合併法人の株式額面価額の切替えを唯一の目的としたものであり、形式的に合併という行為が介在しているものの、本件被合併法人と本件破産法人との間に実質的、同一性が完全に維持されている場合には、同一法人格が継続事業を行っている場合と何ら異なるところはないのであるから、本件還付請求においても同条を適用して税負担の公平を図ることが、同条の趣旨に合致するものである。 (4) 国税不服審判所の判断 商法第103条《合併の効果》は、吸収合併の場合、合併存続法人が被合併法人の権利義務を承継する旨規定しているところ、この合併により合併存続法人が承継する権利義務は、被合併法人の私法上の実質的な積極的、消極的財産であって、計算上の数額である資本や各種準備金、あるいは単なる経理計算関係などはこれに該当するものではなく、また、被合併法人の公法上の権利義務が合併存続法人に承継されるかどうかは、当該公法上の権利義務の性質によって個別に検討されるべきものである。そして、法人税法第81条第1項の規定は、法人税は各事業年度ごとに所得金額を算定し、これによって課税する原則の例外として青色申告法人に限り欠損金の繰戻しの制度を認めているものであるが、前記のとおり計算関係にすぎない合併存続法人の欠損金が合併の効果として合併前の被合併法人に当然に及ぶと解することはできず、その繰戻しが認められるためには法人税法上、別段の根拠が必要であると解される。 請求人は、本件合併の目的及び本件破産法人と本件被合併法人の経営実態等からみて、実質的には両者は同一の会社であり、かかる同一性がある以上、実質課税の原則からして、当然に本件還付請求は認められるべき旨主張する。しかしながら、請求人主張の事実をもってしても、そのことから直ちに上記両者の法人格が同一であるということはできず、また、法人税法第11条に規定する実質課税の原則は、収益の法律上の帰属主体が単なる名義人である場合について定めたものであるから、この規定によって法人税法第81条の適用の前提として要求される会社の法人格の同一性が、実質的な同一性で足りることになるものでもない。 (5) 評釈 平成13年度税制改正が導入され、適格合併に該当し、かつ、繰越欠損金の引継制限が課されない場合には、被合併法人の繰越欠損金を合併法人に引き継ぐことができることとなった。そのため、適格合併に該当した場合には、合併法人の繰越欠損金を被合併法人の所得に対する法人税額に繰り戻して還付することができそうではあるが、平成13年度税制改正において、その点については改正がなされなかった。 立法論としては、そのような規定を入れることはひとつの考え方ではあるが、少なくとも解釈論としては、条文上、そのような規定がないことから、合併法人の繰越欠損金を被合併法人の所得に対する法人税額に繰り戻して還付することは、たとえ適格合併であったとしても認められない。本裁決にあるように、「計算関係にすぎない合併存続法人の欠損金が合併の効果として合併前の被合併法人に当然に及ぶと解する」ことは、条文に規定が存在しない限り、できないからである。 組織再編税制導入後であっても、合併法人の繰越欠損金を被合併法人の所得に対する法人税額に繰り戻して還付することができない理由を理解するうえで、重要な裁決であると考えられる。 (了)