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《速報解説》 馬券訴訟の最高裁判決を受け所得税基本通達の改正パブコメが公表~雑所得に該当する場合の詳細な要件を通達34-1に追加~

《速報解説》 馬券訴訟の最高裁判決を受け所得税基本通達の改正パブコメが公表 ~雑所得に該当する場合の詳細な要件を通達34-1に追加~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   1 はじめに 競馬の馬券の払戻金に係る所得区分については、去る3月10日の最高裁判所判決により、争点となった馬券の購入の態様から、営利を目的とする継続的行為から生じたものであり、雑所得に該当すること、必要経費についてはすべての外れ馬券の購入金額が対象となることが確定した。 判決の確定を受けて、国税庁は、翌11日、「最高裁判所判決(馬券の払戻金)に係る課税の概要等について」と題するリリースを発表し、裁判で争点となっていた所得税基本通達の改正予定を明らかにした。 〔追記:2018/3/5〕上記国税庁ホームページは公開が終了しています。 次いで、国税庁は、3月25日、パブリックコメントを求める手続きを公示した。 本稿では、所得税基本通達改正に向けた国税庁のリリース内容及び改正案について、検討したい。 なお、最高裁判所3月10日判決については、4月2日に本誌No.113掲載予定の拙稿「租税争訟レポート」【第22回】で取り上げる予定である。   2 「最高裁判所判決(馬券の払戻金)に係る課税の概要等について」 国税庁は、3月11日に公表した当リリースにおいて、「今後の対応」として、次のように記述している。 ここでは、基本通達の改正を行うことが明言されているうえ、同様の課税処分を受け、あるいは争訟となっている納税者に対する救済(リリース上は「是正」)についても言及されているので、全文を引用したい。   3 パブリックコメントの公示(3月25日) 基本通達改正のリリースから約2週間後の3月25日、「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(競馬の馬券の払戻金に係る所得区分)に対する意見公募手続の実施について」と題されたパブリックコメントの募集手続が公示された。 (1) 所得税基本通達改正(案)の内容 現行の所得税基本通達34-1(一時所得の例示)の(2)に掲げられている「競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等」の後に、以下(下線部)のような括弧書きと注書きを加えるというのが、改正案の内容である。 (2) 改正(案)に対する国税庁の解説 上記の所得税基本通達改正(案)について、公示の際のリリースには、以下のような解説が記載されている。 (3) 改正(案)の検討 改正(案)を一読して感じることは、馬券の購入を「営利を目的とする継続的行為」と認定させるためには、相当に高いハードルがあるという点であろう。 通達は(注)1として、適用要件を詳細に規定したうえで、さらに、「一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合」としており、馬券の払戻金が「雑所得」であると認定することをできるだけ制限したいという国税庁の考えがうかがえるところである。 今回の改正(案)については、競馬の馬券の払戻金が「営利を目的とする継続的行為から生じたもの」であるとする取扱いを認めることが明確に規定されたのは一歩前進であると評価できるが、そのための要件が細かく、また、「客観的に明らか」という課税庁・調査担当者の恣意性が介入する余地のある規定が入れられていることは、課税の公平の面からは問題があると言わざるを得ないところである。 パブリックコメントとしてどのような意見が集まり、それを受けて、国税庁長官が基本通達をどのように改正するかについて、今後も注視したい。なお、パブリックコメントの受付締切は、4月24日とされている。 (了)

#No. 112(掲載号)
#米澤 勝
2015/03/30

プロフェッションジャーナル No.112が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年3月26日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.112が 公開されました。 プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布中!   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/03/26

山本守之の法人税“一刀両断” 【第9回】「税制改正とその問題点」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第9回】 「税制改正とその問題点」   税理士 山本 守之   1 2段階の法人税改革 政府は法人税改革として2段階に分けて法人税率を引き下げることにしています。 まず、第一段階(平成27年度~29年度)では実効税率を改正前34.62%から平成27年度32.11%、平成28年度に31.33%とし、(以後は明らかではない)、第2段階は平成30年度、31年度はさらに引き下げ、ドイツ(29.59%)並みにするようです。 第二段階では、次のような改正を見込んでいます。   2 定額法一本化の目的 このうち、減価償却(定額法に限定)や事業税(損金不算入)についてはドイツの2000年改正でも行われたものです。わが国の政府税調では「定率法は節税効果や所得操作の可能性がある」等不合理な発言をしていますが、「定率法も定額法も理論的ですが、税率引下げの財源として定額法に限定します」と言った方が正直です。 また、協同組合等の事業分量配当金は経済的性格が売上割戻しと同じだから損金算入を認めているので、決して過剰支援ではありません。税調はもう少し勉強したらどうでしょうか。 これらを廃止し、協同組合等の法人税等の引下げを行わず所得計算で財源措置を適用すると、これらの法人の所得が増加して公益法人等や協同組合等か普通法人の税率引下げの犠牲となってしまいます。 (注) 財務省では、私のこの指摘に配慮し、平成28年度改正で協同組合の税率を19%から17%~18%に下げるという検討をしているようです。   3 実効税率に関する議論の問題 「日本の法人税は高い、日本の企業の国際競争力向上のためにも法人税の実効税率を引き下げて」という考え方で、平成27年度から数年かけて実効税率を20%台に引き下げることにしています。 「実効税率」は、次のように法人税率と事業税の表面税率をプラスしたものに過ぎません。 (※) 実効税率の計算は、地方税については標準税率ベースで計算している。 税負担は税率に課税ベース(課税所得)を足したものですから、税負担を比較する場合には、表面税率(実効税率)の引上げ・引下げだけで検討すべきでありません。 わが国の税制調査会でも、かつては次の①のように述べていました。 しかし、昭和61年以降は②のように態度を変えました。 しかし、「差し当たり」としてから30年も経過しており、日本の学者の不勉強を示しています。 ②の後、平成8年11月の法人課税小委員会報告では③のように指摘しています。 日本の「実効税率」に事業税率を含めて「高い」としていることにも問題があります。 日本の事業税は本来収益税ですから、収益を生む客体に対しても課税するものですから、たまたまその課税客体を課税標準とするときに所得金額にしているため、税の性格に反して「実効税率」の計算に組み入れられています。これが日本の実効税率を高くしている要因となっているのです。 この計算には「課税標準は所得金額だから所得のうちから支払われるもの」との考え方があるのかもしれません。 しかし、事業税の所得計算上の扱いは物税たる性格に着目して損金の額に算入されており、一般には、製品原価を構成する費用となっています。製造原価に含まれていれば、事業税を負担するのは企業ではなく消費者ですから、企業の実効税率に含めるのは理論的ではありません。 法人税実務では、事業税を原価に含めるか否かは企業の意思に委ねています。これは、 という考え方に基づくものでしょう。 これらの計算のあり方について、日本の学者は意見を述べていません。 今次の税制改正でも、減価償却が定額法に限定され、事業税を損金不算入として所得金額が増加するので、かえって増税になるところもあります。 このように、税負担を検討すべきときに実効税率だけを取り上げるのは誤りなのですが、日本の有識者(学者)や政治家はこれに気付いていません。   4 実効税率に反映されない政策減税 大企業は租税特別措置による政策減税で法人税負担が少なくなっていますが、これは実効税率に反映されていません。政策減税が特定の大企業に集中し、法人税の仕組みに欠陥があるからですが、これも考慮されていません。 平成25年度の研究開発減税は6,240億円で、前年に比べて5割以上増えました。これはトヨタ自動車など大手製造業や製薬業界が研究開発への投資を増やしたためです。上位10社の適用額が全体の4割を占めています。 売上額に占める研究開発費の大きい企業の減税は適用額の9割が上位10社(267億円)という状態です。 利用の偏りという意味では、肉用牛の売却益への減税(222億円)があり、船舶の特別償却(267億円)では、適用額の5割が上位10社です。これらに対してアベノミクスによる賃上げ促進税制は630億円の減収を見込んでいましたが、実際の適用分は420億円だけです。設備投資の税額控除は想定の半分しか利用されていませんでした。 租税特別措置にメスを入れないままに実効税率だけを比較し、税率の引下げをするのは単純な発想です。   5 相続税の基礎控除をめぐる問題 マスコミ論調は「相続税増税」「大変だ、相続税対策が急務」となっています。 これは、相続税の基礎控除が次のように引き下げられたからです。 〈相続税の基礎控除〉 実は、このように改正したのは、過去の税制改正を的確に行っていなかったのを反省したからです。それまでの改正は、昭和58年を100とした場合の地価は平成3年で336.8(三大都市の公示地価、全国の公示地価では199.3)となって「相続税が払えない」という資産家の声を反映して基礎控除を引き上げてきました。 分からないのは、地価がかなり下がった平成6年以降も基礎控除を上げ続けたことです。平成24年時点では、地価は昭和58年を100とした場合に70.0(三大都市地価表示)、84.8(全国地価公示)となっても手を付けていなかったのです。 さらに、地価が上がったため相続税の基礎控除を安易に引き上げると、金融資産を多額に保有している者の相続税負担を不当に減少させてしまうという筆者の意見を無視してきた立法当局の態度がこのような現象を生んでしまったといえます。 相続税の負担には耳を貸すが、勤労による所得によってマイホームを手に入れ、多額の住宅ローンを抱える庶民の所得税負担を無視してきたのも問題です。 〈地価と基礎控除額の推移〉 (財務省ホームページより)  さて、相続税の基礎控除が引き上げられると、「大変だ」という声につられて安易な相続税対策が行われるようになりました。 銀行から数億円の借金をして不用な土地を立地を買い漁り、借入金と土地の相続税評価額の差額を使って相続資産の評価額を下げて「節税」しようとしています。 (了)

#No. 112(掲載号)
#山本 守之
2015/03/26

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例24(法人税)】 「収用換地等の場合の所得の特別控除の適用が受けられたにもかかわらず、その適用をせずに申告してしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例24(法人税)】   税理士 齋藤 和助   《事例の概要》 東京都より立ち退きによる移転補償金2,000万円を収受したが、移転補償金は収用換地等の場合の所得の特別控除(以下「収用等の特別控除」という)の適用が受けられないと判断し、その適用をせずに申告をした。しかし、その内容は特別控除の適用がある借家人補償金であった。これにより法人税額等につき過大納付が発生し、賠償請求を受けた。   《賠償請求の経緯》 平成X4年10月11日 東京都より立ち退きによる1回目の移転補償金を収受。 平成X5年2月5日 東京都より立ち退きによる2回目の移転補償金を収受。 平成X5年5月31日 平成25年3月期の法人税を「収用等の特別控除」を適用せずに申告。 平成X6年8月 関連会社が東京都より立ち退きによる移転補償金を収受。 平成X6年11月21日 関連会社の申告において「収用等の特別控除」の適用が受けられたことから、平成X5年3月期の申告につき確認を求められ、ミスが発覚。 平成X6年11月26日 関与先に報告し、賠償請求を受ける。   《基礎知識》 ◆収用換地等の場合の所得の特別控除(措法65の2) 法人の有する資産につき土地収用法等の規定により資産を譲渡した場合において、その事業年度のうち同一の年中に収用換地等により譲渡した資産のいずれについても圧縮記帳又は特別勘定の適用を受けていないときは、譲渡益の額と収用換地等により取得した補償金の額のうち5,000万円に達するまでの額とのいずれか低い金額を、当該譲渡の日を含む事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができる。 ◆補償金等の種類と課税上の取扱い(措通64(2)-1~2) 収用換地等の場合の課税の特例の適用が受けられる補償金等は、名義のいかんを問わず、原則として資産の収用換地等の対価たる金額に限られる。 ◆対価補償金等の判定(措通64(2)-3) 法人が交付を受けた補償金等のうちにその交付の目的が明らかでないものがある場合には、当該法人が交付を受ける他の補償金等の内容及びその算定の内訳、同一事業につき起業者が他の収用等をされた者に対してした補償の内容等を勘案して、それぞれ対価補償金、収益補償金、経費補償金、移転補償金又はその他補償金たる実質を有しない補償金のいずれに属するかを判定する。   《税理士の落とし穴》   《税理士の責任》 依頼者は東京都の再開発事業に伴い入居していたビルからの立ち退きを余儀なくされ、立ち退きによる移転補償金2,000万円を収受した。移転補償金は原則として「収用等の特別控除」の適用はないが、例外として建物の収用等に伴い借家人が転居先の建物の賃借に要する権利金に充てるものとして交付される借家人補償金には適用がある。しかし、被保険税理士は補償金を雑収入に計上しただけで、特別控除の適用をしなかった。 その後、依頼者の関連会社が同様の移転補償金を収受した際、「収用等の特別控除」の適用が受けられたことから、依頼者から平成X5年3月期に収受した移転補償金についても「収用等の特別控除」の適用が受けられたのではないかとの指摘を受け、はじめて特別控除の適用が受けられたことに気づいている。補償金を収受した段階で、その内容を確認していれば特別控除の適用は受けられたことから、税理士に責任がある。   《予防策》 [ポイント①] 思い込みに注意する。 本事例は「収用等の特別控除」は対価補償金以外は対象にならないとの思い込みから生じたものである。上記《基礎知識》にも記載したように、例外があること、及び、名義のいかんを問わず補償の内容で適用を判断することを再認識し、場合によっては起業者に確認すること。 [ポイント②] チェックリストを活用したダブルチェック体制の構築 申告時のミスは、期中処理と違い、ある程度は申告書自体をチェックすることで防げる。したがって、申告時のチェックリストを作成して、担当者だけでなく、所長税理士又は有資格者等によるダブルチェック体制を構築することが必要である。 (了)

#No. 112(掲載号)
#齋藤 和助
2015/03/26

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第2回】「同一書式で記載方法により課否が異なる場合」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第2回】 「同一書式で記載方法により課否が異なる場合」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   当社は百貨店です。 時計宝飾等を修理加工等のために顧客から預かった際に下記の「お預り証」を交付しますが、同じ文書であっても課税文書に該当したり、しなかったりする場合があるとのことですが、その取扱いについて教えてください。 (書式)   時計宝飾等の修理加工依頼を受けた場合に交付する文書には、承り票、引受票、修理票、引換証、預り証、受取書等、作成者によって様々な名称が付けられており、その文書に記載される内容についても、預かる内容等によって様々である。 そこで、上記「お預り証」を基に印紙税の取扱いについて検討することとする。   (記載例1) (記載例2) (記載例3)   ▷ ま と め 修理・加工の依頼を受けた際に交付する文書のうち、標題が承り票、引受票と称するものは、標題から修理・加工を引受けた旨が明らかであり、請負契約の成立を証明するものとなる。 また、修理票、引換証、預り証、受取書等と称するもので、仕事の内容(修理、加工箇所、方法等)、契約金額、期日又は期限のいずれか1以上の事項の記載のあるものも同様に請負契約の成立を証明するものといえるであろう。 (了)

#No. 112(掲載号)
#山端 美德
2015/03/26

贈与実務の頻出論点 【第4回】「相続人以外の贈与で効果的な節税を」

贈与実務の頻出論点 【第4回】 「相続人以外の贈与で効果的な節税を」   税理士法人チェスター   解 説 [1] 生前贈与加算(相法19) 相続または遺贈により財産を取得した者がその相続開始前3年以内にその相続に係る被相続人から贈与により取得した財産は、相続税の課税価格にその贈与により取得した財産の価額を加算します(この規定は暦年贈与を対象にしており、相続時精算課税を適用している場合には、別の規定により相続税の計算上加算されます。以下同じ)。 加算される贈与財産に対して過年度に贈与税の支払いがされている場合には、その支払った贈与税については、相続税の計算上控除します。 相続税の生前贈与加算は、相続または遺贈により財産を取得した者に限られるため、相続または遺贈により財産を取得していない者への生前贈与は、加算されません。 相続税で適用される最高税率が贈与税の実効税率よりも高い場合には、積極的に生前贈与を行ったほうがいいのですが、贈与後3年以内に相続が発生してしまっては意味がなくなってしまいます。相続人以外への贈与を行うことで、効果的な生前対策をすることができます。 下の図表では、毎年500万円の贈与を行っていて相続が発生した場合、相続人である子に贈与を行ったときと相続人でない孫への贈与を行っていたときを比較したものです。相続開始時の相続財産が3億円、相続人が子2人であることを前提としております。 相続人ではない孫に生前贈与をしていた場合には子に生前贈与をしていた場合と比べて454.5万円の節税、さらに孫2人に分散して贈与をしていた場合には516万円節税となっています。 〈相続人以外への生前贈与の効果〉 *1 上表は年間500万円生前贈与、相続開始時の相続財産3億円相続人子2人の場合 *2 ③のケースでは、孫1人につき250万円(計500万円)贈与した場合で計算しています。 *3 生前贈与加算を考慮して相続税を計算した場合と生前贈与加算を考慮しなくていい場合との相続税の差額を計算しております。 課税価格300,000,000円+15,000,000円=315,000,000円 算出相続税額 75,200,000円    贈与税額控除970,000円 納付相続税額 74,230,000円 3億円の財産に対して課税される相続税額   69,200,000円 生前贈与1,500万円が加算されたことによる増差税額             74,230,000円−69,200,000=5,030,000円 [2] 相続税に加算される贈与財産・加算されない贈与財産(相基通19‒1、19‒3、19‒4、19‒8) (1) 加算される贈与財産 相続税に加算される贈与財産は、相続または遺贈により財産を取得した者がその相続に係る被相続人から相続開始前3年以内に贈与により取得した財産です。また、相続税で加算する贈与財産の価額は贈与の時における価額です。 加算される贈与財産は、暦年贈与で贈与税を申告した財産はもちろん、贈与税がかかっていない基礎控除以下(110万円以下)の財産及び相続開始の年に贈与された財産も含みます。 (2) 加算されない財産 相続開始前3年以内の贈与で相続税に加算されない贈与財産は次のとおりです。 贈与を受けた者が相続開始した時に無制限納税義務者に該当したとしても、贈与時に贈与税の課税財産とならないものについては、相続税の計算上加算しません。 (了)

#No. 112(掲載号)
#税理士法人チェスター
2015/03/26

法人税に係る帰属主義及びAOAの導入と実務への影響 【第10回】「内国法人の法人税①」

法人税に係る帰属主義及び AOAの導入と実務への影響 【第10回】 「内国法人の法人税①」   税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦   3-2 内国法人の法人税 前節までは、外国法人の日本に所在するPEの課税に関する改正内容を解説してきたが、本節では、内国法人に関する改正点について解説する。 3-2-1 外国税額控除の改正 3-2-1-1 国外源泉所得 (1) 改正の概要 《改正前》 内国法人の外国税額控除に係る控除限度額の計算における国外源泉所得は、外国法人課税における国内源泉所得の概念を借用し、国内源泉所得以外の所得をいうとされていた(旧法法69①、旧法令142③)。 《改正後》 帰属主義の採用に伴い、国外源泉所得を積極的に定義した(法法69④)。 (2) 各種国外源泉所得の内容  具体的には国外源泉所得を次の①から⑯に掲げる16種類に区分して定めた。 (3) 国外事業所等帰属所得への該当性の優先 上記②から⑬まで及び⑯に掲げる所得には、上記①に掲げる所得は含まれないとされている(法法69⑤)。つまり、「国外事業所帰属所得」はその他の種類の所得には該当しない。 (4) 租税条約に異なる定めがある場合 租税条約に上記(2)と異なる定めがある場合には、租税条約の定めるところによる(法法69⑦)。 (5) 単純購入非課税の扱い 内国法人の国外事業所等が単純購入非課税の定めのある租税条約相手国に所在する場合には、国外PE帰属所得の計算において、単純購入非課税の取扱いが行われる。つまり、当該PEが本店等のために商品の買付けのみを行っている場合、帰属所得はないものとされる(法法69)。 (6) 複数の国外事業所等を有する場合の取扱い 国外事業所が複数ある場合には、事業所ごとに帰属所得を計算する。一の外国に複数の事業活動の拠点がある場合には、1つの拠点として認識し計算することとされている(法基通16-3-9の2)。 (了)

#No. 112(掲載号)
#小林 正彦
2015/03/26

貸倒損失における税務上の取扱い 【第39回】「法人税基本通達改正の歴史⑧」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第39回】 「法人税基本通達改正の歴史⑧」   公認会計士 佐藤 信祐   前回、解説したように、昭和54年度から昭和55年度の間には、法人税基本通達等の総点検が行われており、第三次分である昭和55年12月25日付直法2-15通達においては、貸倒損失についての通達が公表されている。 本稿では、昭和55年度の貸倒損失についての法人税基本通達の改正について解説を行う。   8 昭和55年度法人税基本通達改正における貸倒損失の取扱い 昭和55年度において改正された法人税基本通達のうち、貸倒損失に係る部分については、以下の通りである。 このうち、「容易に処分できない担保物がある場合における担保物の価額を超える部分の金額」について、貸倒損失ではなく、債権償却特別勘定として処理されることになったというのはひとつの大きな改正であり、平成23年度税制改正により、中小法人や金融機関等を除き、貸倒引当金の設定が認められなくなった現在に至っては、貸倒損失の適用範囲を考えるうえで、重要な論点であるため、以下ではその点について、私見を述べさせてもらいたい。 この改正の趣旨として、当時の国税庁法人税課係長である戸島利夫氏は、 として、そのようなトラブル防止のためであったと解説されている(*1)。 (*1) なお、金融機関については、「金融機関の貸倒金の取扱いについて(昭和25年直法1-42)」が廃止されておらず、「当該債権の担保に供されている資産がある場合において、当該担保に供されている資産について、担保権が実行されていないときにおいても、当該債権の額のうち担保物の価額をこえている金額が明らかに回収不能と認められる場合は、その回収不能と認められる金額について法人の計算を認めるものとする。」という規定が、平成9年度に同通達が課法2-10によって削除されるまで存続しており、部分貸倒れが可能であったとする考え方も存在する。 すなわち、かなり、事務的な理由により対応がなされており、「債権償却特別勘定として処理すれば実害は無いだろう」というご都合主義的なものも含まれていたように思える。言い換えれば、貸倒損失と債権償却特別勘定の間における厳密な境というものが存在していたのかどうかすら怪しい対応と言わざるを得ない。 現在のように、平成23年度税制改正により、中小法人や金融機関等を除き、貸倒引当金の設定が認められなくなった時代においては、過去の法人税法に遡ったうえで、「容易に処分できない担保物がある場合における担保物の価額を超える部分の金額」について、貸倒損失として処理することを容認されるのではないかという意見が出てきても不思議はない。 実際に、平成23年度税制改正後の論文や文献を見てみると、平成21年度税制改正により、法的整理等を行った場合において、金銭債権の評価損が可能となったことから、解釈論としての部分貸倒れに対する大きな障害が取り除かれることになったとする見解(金子宏『租税法(第18版)』331頁、野口浩『会計』第184巻第1号40頁、中井稔『税務弘報』VOL.60 NO.1・144頁)も存在しており、このうち、野口浩准教授は、平成23年度税制改正により中小法人や金融機関等を除き、貸倒引当金を設定することができなくなった影響についても触れられている。 この点につき、昭和39年度法人税基本通達の文言を見ると、「債務者から貸金等の一部について金銭等による弁済がある間」は適用されないことが明らかにされており、担保物以外に回収手段がないという特殊なケースについてのみ認められていた内容である。さらに、「担保物が特殊な専用機械、農地等であるため容易に処分できないもの」となっており、これまたかなり特殊なケースについてのみ認められていたものであるが、担保物の時価そのものは変動することから、当然のことながら回収不能見込額は常に変動することになり、担保物を処分するまでは貸倒損失が確定するということは考えにくい。 すなわち、昭和55年度改正前の法人税基本通達については、本来の法人税法では認められるべきでなかった貸倒損失について、通達により緩和を図ったという見方をすることも可能であり、債権償却特別勘定が貸倒損失として認められないものについて通達で緩和を図ったものであったという背景を考えると、そのような見方も決して不自然ではない。そうなると、担保物以外から回収することができず、かつ、担保物が容易に処分することができない場合であっても、担保物の処分が不可能であり、実質的に回収可能額が0円であると認定されるような特殊なケースを除き、貸倒損失として認識することはできないという整理の方が、現在の法体系からすると自然ではないかと考えられる。 ちなみに、現在の法人税基本通達11-2-8(1)においては、「担保物の処分によって得られると見込まれる金額以外の金額につき回収できないことが明らかになった場合において、その担保物の処分に日時を要すると認められる」場合には、個別金銭債権に対する貸倒引当金として処理することが明らかにされている。 次回においては、平成4年に公表された「認定による債権償却特別勘定の設定に関する運用上の留意点について(平成4年9月18日課法2-4、査調4-4)」について解説する予定である。 (了)

#No. 112(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/03/26

経理担当者のためのベーシック税務Q&A 【第25回】「役員給与」―届出額と実際の支給状況が異なる場合―

経理担当者のための ベーシック税務Q&A 【第25回】 「役員給与」 ―届出額と実際の支給状況が異なる場合―   仰星税理士法人 公認会計士・税理士 草薙 信久     1 法人税法における役員給与の取扱い 法人税法においては、いわゆる「お手盛り」や租税回避の弊害を防止するため、役員給与は原則として損金不算入となります(法法34)。ただし、「(ア)定期同額給与」、「(イ)事前確定届出給与」、「(ウ)利益連動給与」のいずれかに該当する給与額のうち、過大な部分の金額以外は損金の額に算入することができます(法法34②)。 具体的には、法人税法上の役員給与は次のように区分され、その内容や性質等に応じて損金算入または損金不算入の取扱いを受けます。 (※1) 債務の免除、経済的利益の供与を含みます。 (※2) 被付与者が、給与所得課税等が生じた日の属する事業年度にストックオプションの費用を損金算入します。 (ア) 定期同額給与 1ヶ月以下の一定期間ごとに支給される給与で、その事業年度における支給額が同額であるものをいいます(法法34①一)。 (イ) 事前確定届出給与 所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、事前に、支給時期や支給金額等の事項を記載した書類を税務署に届出をしたものをいいます(法法34①二)。 (ウ) 利益連動給与 利益に関する指標を基礎として算定される給与をいいます。なお、同族会社以外の法人であること等の要件があります(法法34③)。 以下、事前確定届給与の適用に際して、いくつかのポイントに分けて整理、検討します。   2 届出書の記載額と異なる支給をした場合の取扱い 実務上、事前に届け出た支給時期及び支給金額と、実際の支給時期及び支給金額が異なる場合があります。事前確定届出給与は、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する必要があるため、届出額と支給額が異なる場合や支給時期が届出と一致していない場合には、原則として、その支給額の全額が損金不算入となります(法基通9-2-14)。 事前確定届出給与が支給されることになっている役員のうちに届出書の記載額と異なる金額が支給された役員がいても、届出どおりに支給された他の役員の役員給与については、損金不算入となることはありません。なぜなら、法人税法第34条第1項第2号では、「その役員の職務につき・・・支給する給与」と規定されており、個々の役員単位で届出額と支給額の判定をすれば足りると解されるからです。もちろん、届出通りに支給されなかった役員の役員給与は損金不算入となります。 お尋ねのケースでは、5名の役員に対して事前確定届出給与を支給していますが、届出額と支給額が一致している役員と一致していない役員が混在していますので、個々の役員単位で届出額と支給額の判定をする必要があります。 B専務は届出額よりも職務執行期間の実際の支給額が多く、逆に、C常務及びE取締役は届出額より職務執行期間の実際の支給額が少なくなっています。このように、1円でも届出額と支給額に差異がある場合には、実際支給額が届出額よりも少なかったとしても支給額全額が損金不算入となりますので、B専務、C常務及びE取締役に対する支給額の全額が損金不算入となります。   3 定めどおりに支給されたかどうかの判定 事前確定届出給与を支給している場合で、資金繰りの都合がつかなくなったため、届出していた支給時期に支払いがなされず、一時的に支給額の全部または一部が未払いとなる場合であっても、役員給与未払金が債務として確定したものであれば、損金の額に算入すべき金額の計算の通則に従い、支給したものとして取り扱われます。したがって、届出した支給時期に未払いであることを理由として損金不算入になることはありません。 なお、あらかじめ未払いになることを前提に役員給与を決定し、事前確定届出給与の届出をしたようなケースでは、未払いとなることが見込まれる金額が含まれており、支給額が事前に確定しているとは言えないため、その実質により判断することになります。 お尋ねのケースでは、支給時期に計上したA社長の役員給与未払金は債務として確定しており、また、その未払金は翌月には支払っていますので、6月の支給時期における支給額は未払金を含めた額となり、届出書の記載額とおりに支給されたものとみなされます。   4 2回以上の支給がある場合の定めどおりに支給されたかどうかの判定 一般的に、役員の職務執行期間は定時株主総会から次の定時株主総会までの1年間で、2事業年度に跨ることになりますが、役員の職務執行期間内に複数回の支給がある場合には、それぞれの支給がどちらの事業年度で行われたかにかかわらず、原則として、そのすべての支給が届出どおりに行われたかどうかにより判定します。ただし、最初の事業年度に行われた支給がすべて届出どおりに行われている場合には、当該事業年度の支給額はすべて損金算入することができ、翌事業年度に行われた支給については別途判定することができます。 反対に、最初の事業年度に行われた支給のうちの1回でも届出どおりに行われていない場合には、原則に戻って、たとえ翌事業年度に行われる支給がすべて届出どおりに行われていても、当該事業年度及び翌事業年度の支給額はすべて損金不算入となります。 例えば、3月決算法人が、X年6月26日からX+1年6月25日までを職務執行期間とする役員に対し、X年12月とX+1年6月に役員給与を支給することとし、所轄税務署長に届け出ている場合に、X年12月の支給が届出どおりに行われていれば、X+1年6月の支給が届出どおりでなくても、X+1年3月期の課税所得に影響を与えるものではないことから、X年12月の支給額はX+1年3月期に損金算入することができます。 お尋ねのケースでは、役員の職務執行期間中に支給された2回の役員給与(平成26年6月と12月の支給)は、同一の事業年度に支給されていますので、それぞれの役員について原則どおりに判定を行います。その判定結果は、上記2の項で説明したとおりです。 (了)

#No. 112(掲載号)
#草薙 信久
2015/03/26

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第15回】「関連当事者との取引の注記」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第15回】 「関連当事者との取引の注記」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 今回は、連結財務諸表作成会社を前提に関連当事者との取引の注記について解説する。 関連当事者とは、ある当事者が他の当事者を支配しているか、又は、他の当事者の財務上及び業務上の意思決定に対して重要な影響力を有している場合の当事者等をいい、具体的には、親会社、子会社、関連会社、会社の役員等をいう(企業会計基準第11号「関連当事者の開示に関する会計基準(以下、「基準」という)」5(3))。 会社と関連当事者が取引を行った場合、対等な立場で行われているとは限らず、会社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことがある。また、直接の取引がない場合においても、関連当事者の存在自体が、会社の財政状態や経営成績に影響を及ぼすことがある。そのため、会社と関連当事者との取引や関連当事者の存在が財務諸表に与えている影響を財務諸表利用者が把握できるように、関連当事者との取引の注記が求められている(基準2)。 また、関連当事者との取引の注記は、有価証券報告書では連結ベースで注記するのに対して、計算書類では個別ベースで注記を行う。そのため、有価証券報告書の場合と計算書類の場合で検討過程が異なるので留意が必要である。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (次ページ【STEP1】へ進む) (前ページ【はじめに】へ戻る) 関連当事者との取引の注記を行う上では、関連当事者の範囲を網羅的に把握する必要がある。具体的には、以下の順に関連当事者に該当するものがないか検討する。以下の(1)~(11)は、上から順に全て検討する。 また、関連当事者の範囲の把握にあたっては、経理部のみで網羅的に把握することが難しい場合もある。そのような場合、各部署の協力をもとに網羅的に把握できる体制を構築する必要がある。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。   (1) 連結財務諸表(計算書類)作成会社の主要株主及びその近親者 主要株主とは、自己又は他人の名義をもって総株主の議決権の10%以上を保有している法人及び個人株主をいう(基準5(6))。連結財務諸表(計算書類)作成会社の主要株主は関連当事者に該当する。また、主要株主が個人の場合で、近親者(2親等以内の親族。以下、同様)が存在する場合、その近親者も関連当事者に該当する(基準5(3)⑥)。   (2) 連結財務諸表(計算書類)作成会社の役員及びその近親者 連結財務諸表(計算書類)作成会社の役員は関連当事者に該当する。また、その役員に近親者が存在する場合、その近親者も関連当事者に該当する(基準5(3)⑦)。役員には、取締役、監査役、執行役等だけでなく、相談役、顧問、執行役員等で、その会社内における地位や職務等からみて実質的に経営に強い影響を及ぼしていると認められる者も含まれる(以下、同様。企業会計基準適用指針第13号「関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針(以下、「適用指針」という)」4)。 また、創業者等で役員を退任していても、役員の定義に該当するかどうかを実質的に判定する必要がある(以下、同様。適用指針4)。   (3) 親会社の有無 親会社が存在する場合、その親会社は関連当事者に該当する(基準5(3)①)。 親会社が存在する場合、(4)を検討する。存在しない場合は、(5)を検討する。   (4) 親会社の役員及びその近親者の有無 連結財務諸表(計算書類)作成会社の親会社の役員は関連当事者に該当する。また、その役員に近親者が存在する場合、その近親者も関連当事者に該当する(基準5(3)⑧)。   (5) 子会社の有無 子会社は関連当事者に該当する(基準5(3)②)。   (6) 重要な子会社の役員及びその近親者の有無 重要な子会社の役員とは、会社グループの事業運営に強い影響力を持つ者が子会社の役員である場合の当該役員をいう(基準21)。つまり、「重要な」は子会社ではなく、役員にかかっている。 そして、重要な子会社の役員が存在する場合、その役員は関連当事者に該当する(基準5(3)⑨)。また、その役員に近親者が存在する場合、その近親者も関連当事者に該当する(基準5(3)⑨)。   (7) 関連会社及び当該関連会社の子会社の有無 関連会社及び当該関連会社の子会社が存在する場合、これらの会社は、関連当事者に該当する。(基準5(3)⑤)。   (8) 連結財務諸表(計算書類)作成会社と同一の親会社をもつ会社(兄弟会社)の有無 兄弟会社が存在する場合、その兄弟会社は関連当事者に該当する(基準5(3)③)。   (9) 連結財務諸表(計算書類)作成会社が他の会社の関連会社である場合における当該他の会社(その他の関係会社)並びに当該その他の関係会社の親会社及び子会社の有無 その他の関係会社、当該その他の関係会社の親会社及び子会社が存在する場合、それらの会社は関連当事者に該当する(基準5(3)④)。   (10) 上記(1)、(2)、(4)、(6)の者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社の有無 上記(1)、(2)、(4)、(6)の者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社がある場合、これらの会社は、関連当事者に該当する(基準5(3)⑩)。   (11) 従業員のための企業年金の有無 従業員のための企業年金が存在する場合、その企業年金は関連当事者に該当する(基準5(3)⑪)。 なお、関連当事者に該当するのは、企業年金と会社の間で掛金の拠出以外の重要な取引を行う場合に限る(基準5(3)⑪)。例えば、退職給付信託を設定している場合で、年金資産の入替や返還を行うときで、これらの取引に重要性がある場合は、注記対象になると考えられる(基準23)。 (次ページ【STEP2】へ進む) (前ページ【STEP1】へ戻る) 関連当事者の範囲を把握したら、次に関連当事者との取引について把握する。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (1) 関連当事者との取引の網羅的な把握 関連当事者と行った取引について、金額の多寡に関係なく網羅的に把握する。ただし、有価証券報告書作成の場合と計算書類作成の場合で集計範囲が異なるため、別々に検討する必要がある。 取引の集計にあたっては、経理部のみで網羅的に把握することも難しい場合もある。この場合、各部署の協力をもとに網羅的に取引を把握できる体制を構築する必要がある。 ① 有価証券報告書における取引の集計 有価証券報告書の場合、連結ベースで注記するため、連結子会社は関連当事者に該当せず(基準5(3)なお書)、連結会社(連結財務諸表作成会社と連結子会社)と関連当事者の取引について集計する(基準34)。そのため、連結財務諸表を作成するにあたって相殺消去した取引は集計する必要はない(基準6)。 また、関連当事者に対する債権が貸倒懸念債権及び破産更生債権等に該当する場合、貸倒引当金・債務保証損失引当金等、貸倒引当金繰入額・債務保証損失引当金繰入額等、貸倒損失額(一般債権に区分されている場合において貸倒損失が生じた場合を含む)も注記対象(適用指針8、連結財務諸表規則15条の4の2①九)であるため、取引として集計する。 ② 計算書類における取引の集計 計算書類の場合、個別ベースで注記するため、計算書類作成会社と関連当事者の取引についてのみ集計する。 例えば、以下の取引については、集計する必要はない。 子会社同士の取引 子会社と関連会社の取引 また、以下のものは、計算書類では関連当事者に該当しないため、以下のものとの取引も集計する必要はない。 重要な子会社の役員及びその近親者と計算書類作成会社との取引(会社計算規則(以下、「規則」という)112④) 重要な子会社の役員及びその近親者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社と計算書類作成会社との取引(規則112④)   (2) 役員に対する報酬等であるか (1)で集計した取引のうち、会社法第361条等の役員報酬(報酬、賞与及び退職慰労金の支払い)に該当する場合、注記の必要はない(基準9(2)、適用指針24)ため集計から除く。 なお、相談役や顧問等の場合、使用人兼務役員の場合、ストック・オプションの場合には、注記対象か否かは、以下のようになる。 ① 相談役や顧問等の場合 相談役や顧問等が関連当事者に該当する場合、これらの者への報酬は会社法上の役員報酬に該当しないため、関連当事者の取引として注記の対象となる。 ② 使用人兼務役員の場合 使用人兼務役員の場合で、従業員としての立場で行っていることが明らかな取引(例えば、使用人兼務役員が会社の福利厚生制度による融資を受ける場合など)は、注記の必要はない(適用指針5)。 ③ ストック・オプションの場合 役員へのストック・オプションの付与で役員報酬に該当する場合、注記は不要である。ただし、ストック・オプションの行使は、役員報酬ではなく、資本金等が増加する資本取引であるため、注記の対象となる。なお、相談役や顧問等へのストック・オプションの付与は、役員報酬ではないため、関連当事者の取引として注記の対象となる。   (3) 一般競争入札による取引であるか (1)で集計した取引のうち、一般競争入札による取引については、恣意性の介入の可能性がなく、会社の利益を損なうことがないため、注記の必要はない(基準9(1))。そのため、集計から除く。   (4) 預金利息及び配当の受取りであるか (1)で集計した取引のうち、預金利息及び配当の受取りについては、取引条件が一般の取引と同様であることが明白なため、注記の必要はない(基準9(1))。そのため、集計から除く。   (5) その他の取引で取引条件が一般の取引と同様であるか (1)で集計した取引のうち、(2)~(4)以外の取引で取引条件が一般の取引と同様である場合、注記の必要はない(基準9(1))。そのため、集計から除く。 例えば、公募増資は、取引条件が一般の取引と同様であるため注記の必要はない(基準28)。なお、第三者割当増資や自己株式の取得は注記の対象となる(基準28)。 (1)で集計した取引から(2)~(5)の取引を除いた取引について、【STEP3】で重要性の判定を行う。 (次ページ【STEP3】へ進む) (前ページ【STEP2】へ戻る) 【STEP2】で把握した関連当事者との取引について、全て注記するわけではない。関連当事者との取引のうち、重要な取引を注記する(適用指針12)。そのため、ここでは、重要性の判定について検討する。 有価証券報告書作成の場合と計算書類作成の場合で検討過程が異なるため、有価証券報告書作成の場合は(1)と計算書類作成の場合は(2)を検討する。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (1) 有価証券報告書作成の場合の重要性の判定 有価証券報告書作成の場合、法人グループと個人グループで重要性が異なる。そのため、まず、関連当事者を、法人グループと個人グループに分類する。その後に、重要性の判定を行う。 ① 法人グループ及び個人グループの分類 法人グループには、以下のものが該当する(適用指針13(1)~(3))。 個人グループとは、①の法人グループ以外をいう。具体的には、以下のものが該当する(適用指針13(4))。 なお、連結財務諸表作成会社の役員(親会社及び重要な子会社の役員を含む)若しくはその近親者が、他の会社の代表者を兼務しており、当該役員等がその会社の代表者として、連結財務諸表作成会社と行う取引は、法人間における商取引に該当すると考えられるため、法人グループとして取り扱う。一方、連結財務諸表作成会社の役員(親会社及び重要な子会社の役員を含む)若しくはその近親者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社との取引は、個人グループとして取り扱う。 法人グループに該当したものとの取引については、②を検討する。個人グループに該当したものとの取引については、③を検討する。 ② 法人グループにおける重要性の判定 連結損益計算書項目、連結貸借対照表項目等に分けて重要性の判定を行う。重要性の判定の結果、重要性がある取引については、【STEP4】(1)を検討する。重要性がない取引について、それ以上の検討は不要である。 重要性の判定は、各関連当事者との取引(類似・反復取引についてはその合計)ごとに行う。例えば、1つの取引について売上高は重要であるが、売掛金残高には重要性がない場合においても、売上高及び売掛金残高の両者の注記が必要となる(適用指針14)。 (ⅰ) 連結損益計算書項目における重要性の判定 連結損益計算書項目における重要性の判定は以下のとおりに行う(適用指針15(1)、17(1))。 ただし、「営業外収益、営業外費用」及び「特別利益、特別損失」の各項目に係る関連当事者との取引については、上記判断基準により注記対象となる場合であっても、その取引総額が、税金等調整前当期純損益又は最近5年間の平均の税金等調整前当期純損益(当該期間中に税金等調整前当期純利益と税金等調整前当期純損失がある場合には、原則として税金等調整前当期純利益が発生した年度の平均とする)の10%以下となる場合には、注記は不要である。 (ⅱ) 連結貸借対照表項目等における重要性の判定 連結貸借対照表項目に属する科目の残高及びその注記事項に係る関連当事者との取引、債務保証等の残高、担保提供・受入れ残高(連結貸借対照表項目等)における重要性の判定は以下のとおりに行う(適用指針15(2)、17)。 ③ 個人グループにおける重要性の判定 連結損益計算書項目及び連結貸借対照表項目等のいずれに係る取引についても、1,000 万円を超える取引については、注記を行う(適用指針16)。重要性の判定の結果、重要性がある取引については、【STEP4】(1)を検討する。重要性がない取引について、それ以上の検討は不要である。 重要性の判定は、各関連当事者との取引(類似・反復取引についてはその合計)ごとに行う。例えば、1つの取引について売上高は重要であるが、売掛金残高には重要性がない場合においても、売上高及び売掛金残高の両者の注記が必要となる(適用指針14)。   (2) 計算書類作成の場合の重要性の判定 計算書類における関連当事者との取引の注記においても、重要なものだけ注記する(規則112)。ただし、重要性の判断基準は有価証券報告書作成の場合(上記(1)参照)のように規則では規定されていない。 そのため、各社で重要性の基準を設けて注記が必要かどうかを判定する必要がある。実務的には、有価証券報告書作成の場合の重要性の判定と同様に行うことが多いと考えられる。 重要性の判定の結果、重要性のある取引については、【STEP4】(2)を検討する。重要性がない取引について、それ以上の検討は不要である。 (次ページ【STEP4】へ進む) (前ページ【STEP3】へ戻る) 有価証券報告書と計算書類において注記内容が異なるため、別に検討する必要がある。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (1) 有価証券報告書における関連当事者との取引の注記 有価証券報告書においては、原則として個々の関連当事者ごとに以下の注記が必要となる(基準10、適用指針7~9、連結財務諸表規則15条の4の2①十)。また、関連当事者との取引の注記は4つのグループ(【STEP3】(1)①(ⅰ)~(ⅳ))順に並べて注記する(適用指針13)。 (※) 下線部分は、計算書類では注記は求められていないが、有価証券報告書においては、注記が求められている箇所である。   (2) 計算書類における関連当事者との取引の注記 計算書類においては、個々の関連当事者ごとに以下の注記が必要となる(規則112)。 上記(1)の(※)のとおり、計算書類における注記は、有価証券報告書における注記よりも少ない。 *   *   * 以上、4のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 112(掲載号)
#西田 友洋
2015/03/26
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