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5%・8%税率が混在する消費税申告書の作成手順 【第8回】「簡易課税における確定申告書及び付表の作成(その2)」~2種類以上の事業を行っている場合~

5%・8%税率が混在する消費税申告書の作成手順 【第8回】 (最終回) 「簡易課税における確定申告書及び付表の作成(その2)」 ~2種類以上の事業を行っている場合~   アースタックス税理士法人 税理士 島添  浩 (監修) 税理士 小嶋 敏夫(執筆)   2種類以上の事業を行っている場合の確定申告書及びその付表については、みなし仕入率の原則計算を行い、さらに特例計算が適用される場合にはその計算も行うこととなるので注意しなければならない。 設 例 F株式会社の当課税期間(平成26年1月1日~平成26年12月31日)の課税売上高等の状況は次のとおりである。なお、仕入税額控除の計算方法は、簡易課税制度による。 (ⅰ) 付表4の①欄から⑥欄(④欄を除く)までの作成 《記載見本》 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。   (ⅱ) 付表5-(2)の作成 《記載見本》 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 〔付表5-(2):Ⅰ 控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額〕 〔付表5-(2):Ⅲ 2種類以上の事業を営む事業者の場合の控除対象仕入税額〕 (1) 事業区分別の課税売上高(税抜き)の明細 (2) (1)の事業区分別の事業区分別の課税売上高に係る消費税額の明細 (3) 控除対象仕入税額の計算式区分の明細 イ 原則計算を適用する場合 ロ 特例計算を適用する場合 (イ) 1種類の事業で75%以上 (ロ) 2種類の事業で75%以上 ハ 上記の計算式区分から選択した控除対象仕入税額   (ⅲ) 付表4の④欄及び⑦欄以降の作成   (ⅳ) 確定申告書の作成 確定申告の作成については、付表4及び付表5-(2)を作成し、その内容を反映させることとなるが、具体的には第7回の連載を参照されたい。 《記載見本》 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (連載了)

#No. 106(掲載号)
#島添 浩、小嶋 敏夫
2015/02/12

法人税に係る帰属主義及びAOAの導入と実務への影響 【第7回】「改正の内容⑥」

法人税に係る帰属主義及び AOAの導入と実務への影響 【第7回】 「改正の内容⑥」   税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦   3-1-9 中間申告 改正前は内国法人の中間申告に関する規定を準用することとされていたが、帰属主義への移行により、PEを有する外国法人が「恒久的施設帰属所得」と「それ以外の国内源泉所得」の2つの課税標準を有することとなったことから、外国法人特有の取扱いの明確化を図る等の観点から、外国法人の中間申告に関する規定の整備が行われた(法法144の3、144の4、144の5)。   3-1-10 確定申告 改正前は内国法人の確定申告に関する規定を準用することとされていたが、帰属主義への移行により、PEを有する外国法人が「恒久的施設帰属所得」と「それ以外の国内源泉所得」の2つの課税標準を有することとなったことから、外国法人特有の取扱いの明確化を図る等の観点から、外国法人の確定申告に関する規定の整備が行われた(法法144の6、144の7、144の8)。 (参考) 恒久的施設を有する外国法人の確定申告に係る記載事項(イメージ)   (「平成26年度税制改正の解説」(財務省)737頁)   3-1-11 納付 外国法人の中間申告、確定申告に係る規定の整備が行われたことに伴い、中間申告、確定申告による納付について規定が整備された(法法144の9、144の10)。   3-1-12 還付 (1) 所得税額等の還付 PEを有する外国法人については、PE帰属所得に関する法人税から所得税額及び外国税額が控除され、PE非帰属国内源泉所得に係る所得に対する法人税から所得税額の控除がそれぞれ別々に行われることとなった(法法144の11①)。 (2) 中間納付額の還付 規定の整備が行われた(法法144の12)。 (3) 欠損金の繰戻しによる還付 帰属主義の導入により、PEを有する外国法人は2つの課税標準を有することとなったことに伴い、それぞれの課税標準に係る国内源泉所得に係る欠損金はそれぞれの国内源泉所得のみから控除できることになった。これに伴い、欠損金の繰戻し還付に関する規定についても整備された(法法144の13)。 PEを有する外国法人は、2つの課税標準ごとに繰戻還付額を計算して還付請求を行うことになる(法法144の3①)。 PEを有しない外国法人の繰戻還付額の請求についても規定が整備された(法法144の3②)。この取扱いは、外国法人が連続して青色確定申告書を提出している場合であって(租税条約によりすべての国内源泉所得について確定申告を要しないとされている場合を除く)、当該欠損事業年度の確定申告書を期限内に提出した場合に限り適用される(法法144の13⑧)。 (参考) 恒久的施設を有する外国法人に係る欠損金の繰戻し還付(イメージ)   (「平成26年度税制改正の解説」(財務省)744頁)   3-1-13 更正の請求 外国法人の更正の請求についても規定が整備された(法法145)。 具体的には、PE帰属所得に係る所得の金額等について、修正申告書を提出し、又は更正若しくは決定を受けたことに伴い、当該事業年度の法人税額が過大、又は中間納付額の還付金額が過少となる場合には、その修正申告書を提出した日又はその更正又は決定の通知を受けた日の翌日から2月以内に限り、国税通則法23条1項の規定による更正の請求ができることとされた。   3-1-14 青色申告 《改正前》 内国法人の青色申告に関する規定が準用されている(旧法法146①)が、外国法人の特殊性が考慮されて必要な読替え規定が置かれている(旧法法146②、旧法規62)。 帳簿書類への記録の対象となる取引は、外国法人については国内源泉所得に影響を及ぼすすべての取引となる。また、帳簿書類の保存については、納税地に補完することを困難とする相当の理由があると認められる場合には、その写しを納税地に保存していればよいとされる。 《改正後》 引き続き内国法人の規定を準用することとされたが、帰属主義への見直しに伴い、青色申告の承認申請の提出期限等の基準日となる日等については、PEを有することとなった日とされた(法法146②)。 帳簿書類への記録の対象となる取引に関しては、PEを有する外国法人については、内部取引を含めることとされた(法法146条による読替後の法法126、法規62による読替後の法規53、54、55、59等)。 認識すべき内部取引は、私法上の取引ではなく、契約書等の証憑類が当然には存在しないため、証憑類に相当する書類を作成することが義務付けられた(法法146の2②、法規62の3)。それらの内部取引に関する証憑類も青色申告の承認を受けた外国法人が保存する帳簿書類に加えることとされた(法規62による読替後の法規59①三)。 (了)

#No. 106(掲載号)
#小林 正彦
2015/02/12

貸倒損失における税務上の取扱い 【第36回】「法人税基本通達改正の歴史⑤」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第36回】 「法人税基本通達改正の歴史⑤」   公認会計士 佐藤 信祐   昭和40年度に法人税法全文改正が行われ、さらに、昭和42年度に公正処理基準が導入された。 現行法上、貸倒損失については、法人税法に定めがなく、法人税法22条4項に規定する公正処理基準に従って処理することになるため、貸倒損失についての法人税法上の取扱いを理解するためには、昭和42年度に導入された公正処理基準について理解する必要がある。 本稿においては、公正処理基準の導入とその背景として出された2つの意見書について解説を行う。   5 公正処理基準の導入 まずは、昭和27年度に公表された「税法と企業会計原則との調整に関する意見書(昭和27年6月16日・経済安定本部企業会計基準審議会中間報告)」について解説したい。 本意見書は、その前書きにもあるように、 と述べている。すなわち、会計と税法とで目的が異なることから完全な一致は不可能であるとしても、可能な限り、調整を行うべきであるという立場から意見が述べられたものであり、当時の法人税法における貸倒準備金と企業会計における貸倒引当金との差異についても意見が書かれている。 これに対し、国税庁の立場としては、会計と税法は目的が違うということから、基本的には批判的な立場となっており、国税庁が公表した「『税法と企業会計原則との調整に関する意見書』について(昭和27年7月23日直法1-101)」においてもそのことが読み取れる。そうはいっても、法人税法が全く企業会計を無視したうえで課税所得の計算を行うことができるわけでもなく、その後の法人税法の改正については、企業会計を意識したものが散見される。 この点につき、武田昌輔教授は、 と述べられている。 その後、昭和40年度の法人税法の全文改正が行われることになるが、税制簡素化についてもその目的のひとつとされている。このときに、現在の法人税法22条1項から3項、5項に相当するものが導入されることになる。 さらに、昭和42年度税制改正において、現在の法人税法22条4項に規定する「第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。」という規定、すなわち、公正処理基準が導入されることになる。公正処理基準はアメリカにおける「一般に承認された会計原則(generally accepted accounting principles)」に相当する概念である。 公正処理基準の具体的な内容については様々な見解があるが、企業会計原則のみが「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」であるというわけではなく、確立した会計慣行を広く含めるべきであるという点には争いはない。しかしながら、何が確立した会計慣行であるのかという点については、会計ビッグバンから現在までの会計制度が大きく変わったこともあり、必ずしも明確ではないと考えられる。また、金子宏教授は、『租税法(第18版)』296-297頁において、企業会計原則の内容や確立した会計慣行が必ずしも公正妥当とは限らず、また、網羅的であるとはいえないという指摘をされている。 これに対し、私見ではあるが、企業会計と法人税法はそもそもの制度目的が異なることから、企業会計における諸基準において定められているものであったとしても、法人税法の制度趣旨に遡って、異なる視点により異なる解釈が求められることも存在し得ると考えている。 公正処理基準が導入された以降の税実務を見てみると、企業会計に比べて収益の認識を早めに行い、費用及び損失の認識を遅めに行っている事例は少なからず存在する。たしかに、過度に保守的な対応であるというものも存在しなくもないが、実際には、業界における暗黙の了解のようなものも存在するというのも事実である。さらに、「企業会計原則」は会計ビッグバンに対応しきれておらず、過去20年の間に五月雨式に出された会計基準、適用指針や実務指針の方がむしろ「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に近いと考えられる。 「中小企業の会計に関する指針」がダブルスタンダードを認めておらず、国際会計基準についても連結財務諸表のみが導入されており、個別財務諸表においては導入されていないという現状を考えれば、企業会計基準委員会、企業会計審議会、公認会計士協会等から出されたものと異なる会計慣行というのは、そもそもとして適正に会計処理がなされていない違法な会計慣行というべきであり、公正妥当なものとは言い難い。 すなわち、法人税法の制度趣旨に遡って、異なる視点により異なる解釈が行われるような場合を除き、企業会計基準委員会、企業会計審議会、公認会計士協会等から出されたものが「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」と捉えるべきであると考えられる。 また、昭和42年度税制改正に先立って、昭和41年度においては、「税法と企業会計との調整に関する意見書(昭和41年10月17日大蔵省企業会計審議会中間報告)」が公表されることになる。 本意見書は、「調整の対象を税法と企業会計原則のみに限定せず、税法・税務行政と企業会計原則・企業会計実務との間に存する差異についても取り上げている」という点に特徴がある。さらに、法人税法の課税所得計算については税法に準拠する旨の考え方を導入すべきであると指摘しており、例えば、 旨の規定を設けるべきであるということも指摘している。 このような時代の流れにより、会計と税務の調整が図られ、法人税法22条4項に規定する公正処理基準が導入されることになったのであるが、本稿のテーマである貸倒損失については、回収可能性の判断、損失の確定の判断については、企業会計よりも厳格に捉えられていると思われる点も少なからず存在する。 例えば、日本興業銀行事件における控訴審判決においても、 と判示している。 昭和40年度税制改正における法人税法の全文改正の流れは、昭和44年度の法人税基本通達の全文改正に繋がり、従来、同通達78の2から78の12に定めていた貸倒損失の取扱いについては、同通達9-6-1から9-6-11に定められることになった。具体的な内容については、若干の修正があるものの昭和42年度法人税基本通達の内容と大きくは変わらず、そのまま継承されているものがほとんどであるため、本稿においては具体的な解説を省略することとする。 次回においては、シャウプ勧告から昭和44年度の法人税基本通達全文改正までの間の議論を振り返りながら、部分貸倒れの論点について検討をする予定である。 (了)

#No. 106(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/02/12

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第26回】株式会社エナリス 「第三者調査委員会調査報告書(平成26年12月12日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第26回】 株式会社エナリス 「第三者調査委員会調査報告書(平成26年12月12日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【調査委員会の概要】   株式会社エナリスの概要 株式会社エナリス(以下「エナリス」と略称する)は、2004年(平成11年)12月設立。電力をはじめとするエネルギー商品の購入・販売コンサルティング及び特定電気事業者に対する業務代行、卸電力の売買取引仲介などを主な事業としている。連結売上高10,177百万円、連結経常利益681百万円(数字はいずれも平成25年12月期)。従業員数100名。本店所在地、東京都千代田区。東証マザーズ上場。   調査報告書のポイント 1 調査に至った経緯――WEBサイトへの書き込み エナリスが、「一部WEBサイトへの書込みについて」と題するリリースを公表したのは、平成26年10月24日であった。そこでは、エナリスの平成25年12月期有価証券報告書に記載のあるテクノ・ラボ株式会社(以下「テクノ・ラボ」と略称する)に対する売掛金10億500万円の実在性に関する疑義が書き込まれていることに対し、同社との契約解除を認めたうえで、同じ発電設備を東証一部の金融機関に販売し、12月末までに入金予定であることが説明されていた。 しかし、その後、当該取引についての疑義が拡大し、社内調査委員会による調査を経て、第三者調査委員会による調査が行われるに至ったものである。   2  調査報告書により判明した事実 (1) 不適切な会計処理と認定された取引類型 第三者調査委員会が不適切な会計処理であると認定した取引は、次のとおり7つに分類されている。 本稿では、金額的重要性の高い取引①を中心に、不適切な会計処理が行われてきた経緯を検証したい。 (2) テクノ・ラボとの取引の経緯 本商談は、もともと福島県の発電プロジェクトをめぐるものであり、発電事業者はエナリスが融資した資金(約8億5,000万円)をもとに、発電所を建設、平成25年3月末までに発電を開始して、経済産業省から補助金を受けた後、融資金額を返済するというものであった。 しかし、平成25年4月中旬になっても発電事業は開始されず、当然、補助金の受給もできなかったことから、エナリスは発電機に設定された譲渡担保権を実行し、これを第三者へ売却することを企図する。 同年11月、エナリスは、テクノ・ラボとの間で、この発電機を10億500万円(消費税額等を含む)の価格で売買する契約を締結、12月13日付の物品受領書を取得したことから、同日において、売上計上を行った。 しかし、本来の支払期日である平成26年1月30日が2度にわたって延伸され、エナリスは転売先を探索することになる。 (3) 発電機の一部盗難とリース会社への転売 テクノ・ラボからの回収が滞っているさなかの平成26年4月、発電機18台のうち、3台が盗難にあったことが判明する。契約条項によれば、所有権の移転時期は「売買代金の入金日」であり、盗難発覚時点では、エナリスが所有権を有しているにもかかわらず、エナリスは何ら会計処理もしないまま、残る15台の発電機の転売を進める。 その結果、エナリスがリース会社(AX社)発電機を売却、リース会社はこれをグリーン燃料開発株式会社(AW社)に割賦販売し、エナリスはAW社が発電した電気を買い取るというスキームで合意に達し、6月30日、リース会社との間で、検収期限を11月30日とする売買契約を締結、同日付で、テクノ・ラボとの間の売買契約を解除した。 しかし、本契約は、12月29日になって「合意解除」されたことがリリースされている。 (4) 社長、会長による独断専行 上記の発電機売買取引(①)は、代表取締役社長である池田元英(以下「池田社長」という)が推進した事業であり、当初の発電事業者との間の基本合意者が、取締役会に付議されることなしに締結され、また、取引先審査も行われていなかった。取引⑦に係る商談についても、池田社長は、取引承認申請の過程において、合議部門である経理担当者のコメントを無視して、決裁を行っていた。 また、取締役会長である久保好幸(以下「久保会長」という)もまた、自らが主導した取引③から⑤について、正規の手続きを履践せず、取引の適正性よりも形式的な売上計上を優先させた。例えば、取引③は、子会社の連結外しによる売上計上を企図したものであり、取引⑤は、本来ならば、有償支給品として工事業者に支給すべき部材を、エナリスが別の会社に販売したように見せかけたうえで、工事業者に買い取らせる方法により売上を計上したものである。 エナリスの売上計上基準は「引渡基準」であるにもかかわらず、不適切な会計処理と認定された取引においては、物品受領書の交付を受けずに売上計上がされたものがあり、取引⑦では、エナリスが契約する倉庫に保管されたまま売上が計上されており、それが結果的に、売掛金の未回収、多額の返品につながっていることがうかがえる。 (5) 過年度決算に与えた影響額   3 調査報告書の特徴 (1) 2回に分けて公表された調査報告書 エナリス第三者調査委員会は、平成26年12月12日に調査報告書(以下、後記する追加報告書と区別するために、「第1次報告書」という)として事実関係と適切な会計記処理に関する報告を行い、同月19日、追加報告書として発生原因及び責任の所在並びに再発防止策の分析検討を行った結果を報告している。 これは、提出期限延長後の平成26年12月期第3四半期報告書の提出期限である12月12日までに調査報告書をまとめ、同日までに、過年度決算の訂正を行うための苦肉の策であったかと思料される。 (2) 責任の所在についての厳しい判断 追加報告書では、池田社長、久保会長の責任について、厳しい指弾がされている。 こうした報告を受けて、12月19日の会社側のリリースでは、池田社長、久保会長の取締役辞任とともに、後任の代表取締役社長として、社外取締役である村上憲郎氏が就任すること公表された。 (3) 再生可能エネルギーをめぐる報道 エナリスは、平成26年10月1日、「電力会社の再生可能エネルギー発電設備接続申込み保留による当社への影響について」を、同月14日には、「経済産業省による大規模太陽光発電施設の新規認定一時停止の検討の報道について」というリリースをそれぞれ公表し、電力会社の方針転換や政策の変更が、エナリスの業績に与える影響は軽微であることを説明している。 第1次報告書では、「エナリスと電力会社間の電力の部分供給に係る契約交渉が遅れる」ことや「貴社(引用者注:エナリス)の風評被害等により検討はサスペンドの状況」となっていることなどが、キャンセルの原因になったという記述があることを考え合わせると、国による再生可能エネルギー政策の推進を追い風に業績を伸ばしてきたエナリスにとって、こうした報道が業績に与えた影響は決して軽微ではなく、そうした逆風の中、売上至上主義に邁進する経営トップの姿勢が、不適切な売上計上を誘引した面も否定できないのではないだろうか。   4 再発防止策の提言 第三者調査委員会がまとめた再発防止策は、次の11項目にわたっている。 エナリスに特有の再発防止策としては、(8)に掲げられた「池田社長の持分比率の低下」が挙げられよう。平成26年3月期有価証券報告書によれば、池田社長及びその親族と見られる者の持ち株割合は54.9パーセントであり、他の株主がすべて5パーセント未満の株式しか所有していないことを合わせて考えると、池田社長が経営の一線から退いたとしても、大株主として権力を行使する恐れがないとは言えない。そこで持分比率を下げるための具体的な方策として、エナリスによる自己株式としての取得、第三者による取得、増資による希釈化などの方法が列挙されている。 こうした提言を受けて、エナリスが12月19日のリリースで公表した再発防止策は以下のとおりである。概ね、第三者調査委員会の提言に沿った内容となっているが、当然のことながら、上記の「池田社長の持分比率の低下」については言及がない。 その後、エナリスは、平成27年2月5日に、「最高財務責任者(CFO)の就任に関するお知らせ」と「「経営監視委員会」の発足に関するお知らせ」を公表した。最高財務責任者(CFO)は三井住友銀行から招聘され、「幅広い経営実務から経営管理部門のマネジメント強化」を図っていただきたいという就任理由が開示されている。一方、第三者調査委員会のメンバー3名がそのまま就任することとなった、経営監視委員については、選任理由はとくに触れられていない。 (了)

#No. 106(掲載号)
#米澤 勝
2015/02/12

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第2回】「個別B/Sの「その他利益剰余金」が空欄になっているミス」

計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第2回】 「個別B/Sの「その他利益剰余金」が空欄になっているミス」   公認会計士 石王丸 周夫   1 今回の事例 計算書類のドラフトには、うっかりミスがつきものです。 たとえば、こんなミスをよく見かけます。 【事例2-1】 貸借対照表(個別)の「その他利益剰余金」の欄に数字が記載されていない。 【事例2-1】は、貸借対照表(個別)の純資産の部だけを切り出して掲載したものです。この中の「その他利益剰余金」が空欄になっているというミスの例です。 一見、何の問題もなさそうに見えますが、この欄は数字を記載すべきところです。空欄ではいけないのです。 ではなぜ、空欄のままにしてしまったのでしょうか。 後から気づくこともできなかったのでしょうか。 実はこのミス、起こるべくして起こったものです。 貸借対照表(個別)の「その他利益剰余金」は、このミスがよく起こる場所なのです。   2 リサイクル・ミスを防ごうとした工夫が仇に 本連載の【第1回】で、「前期の数字が当期の決算書に載っている」というミスの事例を紹介しました。 そのミスの原因は、前期の決算書のデータファイル(エクセルやワード等)をコピーして利用すること(データのリサイクル)にありました。前期の決算書データの数字部分に当期の数字を上書きしていく際、一部の科目で上書きし忘れてしまうというものです。上書きし忘れたところは、前期の数字がそのまま残ってしまいます(リサイクル・ミス)。 このリサイクル・ミスを防ぐ方法として、次のような方法が考えられます。 ファイル内のデータを上書きする際に、数字をひとつずつ上書きしていくのではなく、最初にすべての数字データを消去し、数字が一切入力されていない状態の決算書フォームを用意し、その状態から当期の数字を入力していくという方法です。こうすれば、前期の数字が残ってしまうリスクはゼロになります。前期の数字は最初にすべて消去しているので、残りようがないからです。 ところが、この方法は別のうっかりミスを招く可能性があります。 数字を入力すべき欄に数字を入力し忘れるというミスです。 数字をひとつずつ上書きしていく場合は、前期の数字が入力されている欄に当期の数字を入力していくので、こうしたミスは起きません。しかし、最初に前期の数字を全消去してしまうと、数字が何も入力されていない状態から数字の入力をするため、何も入力せずに済ませてしまうというミスが起こるのです。   3 B/S(個別)の「その他利益剰余金」に注意 何も入力せずに済ませてしまうミスが起こるとはいっても、ほとんどの科目では、そのようなミスは起こりません。 このミスが起こる可能性が高いのは、貸借対照表(連結・個別)の大科目や中科目といった集計科目の欄です。小科目の数値入力の際は、間違いのないように神経を使って行いますが、小科目のほうに気を取られてしまうと、大科目・中科目でミスをするからです。 特に貸借対照表(個別)の「その他利益剰余金」は、このミスが最も起きやすいところです。 【事例2-1】をご覧いただくとわかるとおり、貸借対照表(個別)の純資産の部は、内訳の中にさらに内訳を表示するという面倒な構造になっています。「その他利益剰余金」については、さらにその内訳を表示することになっており、【事例2-1】でも「別途積立金」と「繰越利益剰余金」が表示されています。 こうした面倒な構造が、数字の入力作業時に余計な神経を使わせてしまいます。 そのため「その他利益剰余金」でミスが起こるのです。   4 発見しづらいのがこのミスの特徴 このミスの怖いところは、ミスが起きても気づかないことです。【事例2-1】のように「その他利益剰余金」のところが空欄になっていても、違和感がありません。 加えて、このミスは計算チェックをしても見つかりません。数字の入力ミスは、たいていの場合、計算チェックで発見されますが、このミスはそうではないのです。空欄の項目は計算チェックの対象外ですから、計算チェックを行ってもひっかかることがないのです。 このミスが見過ごされやすい理由はもうひとつあります。 有価証券報告書の個別財務諸表では、計算書類の貸借対照表(個別)と違って、純資産の部の「その他利益剰余金」の欄は数字が記載されないのです。上場会社の経理担当者の場合は、この様式を日頃から目にしているため、計算書類の貸借対照表(個別)で「その他利益剰余金」が空欄になっていても、異常だと感じないわけです。 結局、このミスを防ぐには「ここでこういうミスがよく起きる」ということを頭に入れておくのが、手っ取り早いといえるでしょう。   〈今回のまとめ〉 貸借対照表(個別)の純資産の部の「その他利益剰余金」が、空欄になっていないか確認すること。 (了)

#No. 106(掲載号)
#石王丸 周夫
2015/02/12

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第71回】リース会計⑤「転リース」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第71回】 リース会計⑤ 「転リース」   仰星監査法人 公認会計士 薄鍋 大輔   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 (1) 回収・返済スケジュール表 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (2) 仕訳( 単位:千円) ① X1年4月1日(リース取引開始日) (*1) 利息相当額控除後の金額で計上する方法によっている(リース取引に関する会計基準の適用指針(以下、適用指針という)47項)。 ② X1年4月30日 (ⅰ) 第1回 回収 (*2) C社からの受取リース料 (*3) 回収・返済スケジュール表より(元本分) (*4) 回収・返済スケジュール表より(当該転リース取引において手数料収入以外の利益は生じないため、利息相当額については預り金として処理する) (*5) ① 受取リース料総額60,300千円-支払リース料総額60,000円=300千円 ② ①×1ヶ月/60ヶ月=5千円(手数料総額300千円を毎月定額で配分する) (ⅱ) 第1回 支払 (*6) 回収・返済スケジュール表より (*7) (*4)で計上した金額 (*8) B社への支払リース料 以後も同様の会計処理を行います。 〈会計処理の解説〉 転リース取引とは、リース物件の所有者から当該物件のリースを受け、さらに同一物件を概ね同一の条件で第三者にリースする取引をいいます(適用指針47項)。 転リース取引の特徴は、これを行う会社がリース契約の貸手と借手の両方の立場で取引を行い、場合によっては、実質的にリース契約を仲介しているといえる点にあります。 本事例の取引の全体像を図に示すと次のようになります。 本事例でみれば、A社にとっては、C社からの受取リース料とB社への支払リース料の差額が手数料収入としての性格を有しているといえます。そのため、A社においては、貸借対照表上は貸手としてのリース投資資産と借手としてのリース債務の双方を計上する(仕訳①)こととなりますが、損益計算書上は、借手としての支払利息、貸手としての売上高、売上原価等の計上は行わず、手数料収入相当額を転リース差益等の名称で計上する(仕訳②)こととなります。 なお、本事例では、リース投資資産およびリース債務を利息相当額控除後の金額で計上しているため、リース投資資産の回収・リース債務の返済の会計処理では、元本部分と利息部分を分けて、利息部分については、預り金勘定で処理します。 *   *   * 次回は残価保証があるケースの会計処理について解説します。 (了)

#No. 106(掲載号)
#薄鍋 大輔
2015/02/12

常識としてのビジネス法律 【第20回】「会社法《平成26年改正対応》(その1)」

常識としてのビジネス法律 【第20回】 「会社法《平成26年改正対応》(その1)」   弁護士 矢野 千秋     第1 総論 株式会社は、社員(株主)の地位が株式と称する細分化された割合的単位の形をとり(株式の制度)、その社員は会社に対し各自の有する株式の引受価額を限度とする出資義務を負うだけで(有限責任性)、会社債権者に対しては責任を負わない会社である。したがって、「株式の制度」と「社員の有限責任性」とが、株式会社の最も根本的な2つの特質である。そしてこれによって会社の大規模化を果たさせようというのが株式会社制度の本来的なねらいである。 研究開発にしても、逆に会社の倒産を見ても、企業規模が大きいほど利益追求に適している。それを狙って株式会社は「株式の制度」により誰でも会社に容易に参加できるようにし、「有限責任性」により万一の場合の責任を投資限度に限定することにより安心して参加できるようにしている。 このように容易かつ安心して参加できるようにすることで株式会社が大規模化するように図ったのである。 そして「資本の制度」は、株主有限責任の結果、株主は会社債権者に対して直接の責任を負わず、その結果、会社債権者に対する担保となるものは会社財産だけであるから、会社財産の確保を図る必要性から、会社法は一定額を資本として定めさせ、会社財産がこの資本額を下回ることを極力防止することにしたものである。それゆえ、資本の制度は有限責任性から派生する第二次的な特質であるといえる。 ただし、最低資本金制度が廃止されたため、剰余金の分配可能額の算定において純資産額による制限が導入された。すなわち、剰余金の算定方法において、株式会社の純資産額が300万円を下回る場合には、通常の算定方法は適用しないとしている(458条)。 本来企業の経営は実質的「所有者」たる株主が行うべきである。しかし大規模化すれば経営内容は高度化・複雑化し、それと反比例して質が低下する株主に経営の責任を負わせるわけにはいかない。 そこで所有者株主は経営の専門家たる取締役を選任し、取締役またはそれが構成する取締役会に経営の意思決定を行わせることとされた。したがって取締役は所有者株主から委任された「受任者」である。 取締役会は会議体であるので執行に極めて不向きである。そこで取締役会が執行代表機関である代表取締役を選定する。その代表取締役を監査するのが監査役であり、やはり株主総会で選任される「受任者」である。しかし監査役は取締役と選任基盤が共通し、生まれながらに代表取締役の影響を受けやすい。そこで法は監査役に代表取締役からの「独立性」を強固に保障している。 以下に今後本連載で使用するキーワードをまとめる。 なお用語であるが、本解説においては「公開会社」でない会社を「非公開会社」、「大会社」でない会社を「非大会社」、「取締役会設置会社」でない会社を「非取締役会設置会社」等と呼ぶ。   第2 株式 1 総論 (1) 株式、株主 株式とは、株式会社における社員(株主)の地位であるが、その地位が細分化された均一の割合的単位の形をとっている点に特色がある(割合的単位の形をとらねば株式の取引相場の表示も困難になる)。そして、細分化された割合的単位の形をとるため、「株式」と称され、社員はこのような株式の所有者であるため、「株主」と呼ばれる。 株主は実質的に見れば会社企業の共同所有者である。しかし、この会社企業における共同所有者としての株主の持分は、会社が法人(会社自体が権利義務の主体となっている)であることから、会社に対する法律上の地位の形に引き直され、株主はこの地位に基づいて会社に対し多様の権利を有することとなる。 この株主の地位は、それが細分化された割合的単位の形をとっているところから、個性のない多数の者が容易に株式会社に参加することができるように仕組まれた、その意味で技術的なものである。 (2) 株主平等の原則 株式が均一の単位であるということは、1株1株は同じ大きさ、すなわち同一の権利内容を有するということである。だとすれば、これを株式の所有者である株主の面から見れば、株主は頭数で平等に取り扱われるべきではなく、原則としてその有する株式の数に応じて平等に取り扱われるべきだということになる。これを「株主平等の原則」という。 この原則は理念的な平等から生まれたものではなく、株主の地位が均一の割合的単位の形をとっており、株式が均一の単位であるということは同一の権利内容を有し、そうであれば取扱いも同一でなければならないということを表したものに過ぎない。その意味では、株式の制度を裏から表現した法技術的な平等である。 そこで会社法は「株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。」(109条1項)と規定して株主平等の原則の一般的規定を設けるとともに、その平等の意味は法技術的な平等であることを明らかにした。   2 株式の譲渡制限制度 一部の種類の株式についての譲渡制限も認められた(2条17号、108条1項4号)。すなわち、株式会社は、定款である種類の株式の譲渡について承認を要することを定めることができるものとする。 譲渡制限株式の取得者から株式会社に対してその取得の承認を請求する手続は、名義書換請求のために要求される手続と同様のものとし(137条2項(原則共同申請)。cf.133条2項。平成21年改正・規22条1項10号、2項4号5号、24条1項8号、2項4号5号)、承認なく株式を取得した者からの名義書換請求については、株式会社はその取得を承認せず名義書換を拒むことができるが、承認を拒否された取得者は、株式会社に対しその株式を買い取るか、買取人の指定を請求することができる(138条1号ハ)。 相続・合併により譲渡制限の定めのある株式を取得した場合、株式会社がその移転を承認しないときは、株主総会の決議により、その株式の売渡請求ができる旨を定款で定めることができる(174条~177条)。 譲渡制限株式については、株主間の譲渡についても原則として承認を要するものとしている。承認機関は株主総会(取締役会を設置する株式会社にあっては、取締役会)とするものとする(139条1項)。ただし、定款で次に掲げる事項などを定めることも妨げないものとする(139条1項但書)。   3 自己株式の取得 自己株式については議決権その他の共益権は行使できず(308条2項)、自益権についても剰余金の配当請求権はなく(453条括弧書)、株主割当の場合でも募集株式を割り当てることができない(202条2項括弧書)。株式の併合、分割の規定には、括弧書がない(180条、183条)。 (1) 株式の消却の概念の整理 会社法では、株式の消却を自己株式の消却の類型のみとした。したがって自己株式以外の株式を消却するには、会社がいったん株式を取得して自己株式としたうえで消却するという方法によってのみ行われる(178条)。 (2) 自己株式の取得手続 会社法には、株主との合意による有償取得は市場取引・公開買付け、特定株主からの取得および不特定株主からの取得の3種類が規定されている(155条3号、それ以外の自己株式の取得(155条1号2号、4号ないし13号))。  (続く)

#No. 106(掲載号)
#矢野 千秋
2015/02/12

企業における『マイナンバー導入プロジェクト』の始め方&進め方 【第1回】「企業内の“旗振り役”となる構成メンバーを集める」

企業における 『マイナンバー導入プロジェクト』の 始め方&進め方 【第1回】 「企業内の“旗振り役”となる構成メンバーを集める」   仰星監査法人 公認会計士 岡田 健司   はじめに ~マイナンバーへの企業対応は順調か~ 2015年も2月に入ったが、読者の勤務する企業、あるいは読者が関与する企業でのマイナンバーの導入準備は、順調に進められているだろうか。 筆者の印象では、政省令等、ガイドライン、各種Q&Aあるいは法定調書の様式案等が順次公表されてはいるものの、社会全体としては依然認知度合いは低く、急いで取り組まなければならないというトーンにまでは至っていないのが実態と思われる。 「なかなか準備が進まない理由」としては、指針となる情報が最近になって矢継ぎ早に公表されていること、「本人確認」をはじめとする実務がほとんどの会社にとって初めてであることから、その手続き等、手探りにならざるを得ない状況であることも推測される。 また、着手にすら至っていない企業においては、マイナンバー制度自体の認知度の低さに加え、その実務への影響が十分に浸透していないことから、何から着手したらよいか分からないこともその理由に挙げられるのでないだろうか。 マイナンバー制度への対応について、まず何より、『旗振り役となるコアメンバー』の存在が不可欠である。 次に、このコアメンバーを中心として実務への影響を検討し、実際に実務への落とし込みを進めていく『導入プロジェクト』の存在が必要となる。 そこで本連載では、どのようにこのプロジェクトを立ち上げ、どのような役割分担で、どのように進めていけばよいかを解説していきたい。 本連載は計3回シリーズとし、およそ次の内容を予定している。 なお、2015年におけるマイナンバーへの対応については、本誌に掲載した下記の拙稿をご覧いただきたい。   1 マイナンバー制度が企業実務へ与えるインパクト 企業がマイナンバー制度へ対応するにあたって、まず、実務への影響度を認識する必要がある。 詳細は上記の拙稿にてご理解いただけると思うが、およそ次の2点が特徴として挙げられる。 (※1) ここでいう「規模」とは、売上高や資本金ではなく、従業員数、支店などの拠点数、株主数、契約数、源泉徴収票の発行数などをイメージされるとよい。 (※2) 本連載において後述するが、影響の大きい業種に、金融業、派遣業、運送業、小売業などが挙げられる。なお、本連載では、金融業は取り上げない。 マイナンバー制度への実務対応にあたっては、この2点を考慮に入れた慎重な対応が求められる。 1点目については、まさに本稿で説明するプロジェクトの進め方と直結する点である。 2点目については、プロジェクトの進め方とも関係するが、どちらかといえば実務的に対処すべき課題である。今まで以上に組織全体、組織の細部に至るまで情報管理の重要性を浸透させる必要がある。また、不要な個人番号を入手しないよう従業員教育を行うことが重要になる。この点は、制度が運用されるまでの残り1年弱の期間にかけてじっくりと、また制度が運用された以降も継続して取り組むべき事項である。   2 企業規模や業種等による影響度合い (1) 企業規模からみた影響度 マイナンバー制度の導入が企業実務へ与える影響の大きさは、その企業の売上高や資本金等におおむね連動することになると思われる。その他、番号法の実務への影響度合いを計る指標となるものとして、従業員数、支店などの拠点数、株主数、契約数、源泉徴収票や支払調書の発行枚数などが挙げられる。 これらの指標が多ければ多いほど、実務に与える影響は大きいといって間違いない。つまり、これらの指標が多いということは、企業で入手し管理すべきマイナンバー(個人番号)自体の数が多く、入手元である個人の種類も多様になると考えられるためである。 (2) 影響の大きい業種は? 業種からみた企業実務への影響度としては、総合商社、人材派遣業、介護・福祉、小売業、給与計算などのアウトソーシングを受けるサービス業などの業種においては、実務に与える影響が他の業種と比べて相対的に大きいといえる。その他の業種でも、運送業、塾や専門学校、出版社、不動産賃貸業、建設業などでも影響は大きいと考えられる。 これらの業種では、一般的に従業員数(アルバイトやパートタイマーを含む)が多く、事業拠点も全国に多数あるものと思われる。また、個人への業務委託、個人からの不動産賃借含め個人との関わりも深いと思われる。つまりは(1)と同様、マイナンバーの入手及び本人確認を行うべき対象となる個人が多種多数になると考えられるためである。 (3) 人事システム・給与計算システムが標準パッケージ製品か? 人事システムあるいは給与計算システムが標準パッケージ製品でない場合には、番号法への対応を機能面(マイナンバーの入力、新たな様式の帳票の表示や出力、マイナンバーの削除など)、情報管理面(マイナンバーへのアクセス制限、マイナンバーの非表示機能、出力ログの記録など)の両面にわたってシステム改修しなければならないことから、実務に与える影響は極めて大きいと考えるべきである。 (4) 導入に向けた『プロジェクト』が必要となる マイナンバー制度への実務対応の進め方を考えるにあたり、後述するとおり自社の業務を棚卸して影響度合いを分析するのが理想であるが、まずは上記(1)~(3)を照会することで、自社への影響度合いがおおまかにも把握できる。 影響度が大きいと考えられる企業については、できるだけ早期に対応を進めることはもちろん、影響範囲は広範に及ぶものと考えられることから、以下に示すように『プロジェクト』として対応を進めることが望まれる。   3 構成メンバーは『どの部署』から選ぶか? プロジェクトの発足にあたり、まずは関係する、あるいは関係しそうな部署の選定が必要となる。 この場合、「総務部」あるいは「人事部」が中心になると考えられるが、上述したようにマイナンバー制度は企業実務の広範囲に影響を及ぼすことから、関係する部署は多岐にわたるという認識が必要である。 例えば、 という切り口で考えれば、「総務部」あるいは「人事部」以外にも、「法務部」「経理部」などとも関係がある。 また、番号法やガイドラインで求められる安全管理措置を企業全体で達成しようとすると、「法務部」や「情報システム部」の協力は必要不可欠である。 そこで次の表は、 という2つの視点で、関係する部署とその役割について、筆者が想定するもので例示としてまとめたものである。 各部署の役割は企業の規模や業種で異なるため一概にはこのとおりに整理されないこともあると思われるが、実務上の影響をおおまかに把握し、各部署からメンバーを招集する際の参考にされたい。 なお、上記に『営業部』の記載がないが、営業部も業種によっては番号法遵守上、極めて重要な位置づけに置かれることもある。例えば、不要な個人番号の提示を顧客に求めたり、提示を受けた個人番号カードの写しや個人番号の記録を不用意にとることは、番号法上認められない。 そのため、営業部に在籍する従業員に対し、番号法上認められない事項や留意事項について十分な社内教育を行うことが、業種によっては重要になる。 なお、これらの対応はすべて、企業内の『誰か』が、プロジェクト化の重要性と、早期にプロジェクト化して取り組む必要性を問うてはじめて実現されうるものであり、繰り返しとなるが、やはり「旗振り役となるメンバー」の存在が極めて重要となるのである。   4 本稿のまとめ 本連載では、「企業における『マイナンバー導入プロジェクト』の始め方&進め方」と題し、企業全体として取り組むべき番号法への実務対応の進め方に焦点を当て解説していきたい。 初回となる本稿では、マイナンバー制度の実務上の影響度合いを概括的に把握するとともに、プロジェクトに関係があると考えられる部署はどこか探ってみた。 本連載の読者の一人でも多くの方がマイナンバー対応の事務局として旗振り役となり、組織に一石投じられることを心から期待している。 (了)

#No. 106(掲載号)
#岡田 健司
2015/02/12

此の国にも『日本企業』! 【第2回】「《ナイジェリア》 諦めない想いが繋いだ挑戦 ~(株)アンカーネットワークサービス~」

此の国にも『日本企業』! 【第2回】 「《ナイジェリア》 諦めない想いが繋いだ挑戦 ~(株)アンカーネットワークサービス~」   中小企業診断士 西田 純       〈挑戦のきっかけは1つの出会いから〉 古いパソコンをきれいにして、OSだけ新しく入れなおして安く売る、今そんなビジネスが注目されています。技術の進歩でちょっと前のパソコンでも快適に動くようになったこともあって、国の内外で注目されるサービスです。 今回取り上げた(株)アンカーネットワークサービス(以下、アンカー社)は、正規のMicrosoft Windowsを中古パソコンにインストールして販売する、いわば再生PCの正規販売事業者なのですが、限りある地球の資源を大切に使うことを社是とする、環境社会配慮型の会社でもあります。 そんなアンカー社がなぜナイジェリアでビジネスを始めたかというと、そこには人と人との出会いと縁があったとしか言いようがありません。 日本に長く住んでいたナイジェリア人のジェラルドさんとアンカー社が最初に出会ったのは、単に「他の人に紹介されたから」というものだったのだそうです。   〈大きなリスク、そして苦渋の決断〉 当時、アフリカへの足掛かりを探していた同社の興味と、日本発のビジネスをナイジェリアに持ち帰りたいジェラルドさんの思惑が一致し、アフリカにおける同社初のビジネス拠点をジェラルドさんが手伝うことになったのが2012年でした。「単に中古PCの輸出だけではなく、現地でのアフターサービスも手掛ける企業にしたい」そんな思いでアンカー社の若手スタッフとジェラルドさんは二人三脚で仕事を始めたそうです。 ところが、仕事を始めて間もなくアルジェリア・イナメナスで日本人を標的としたテロが発生しました。ナイジェリアも、都市を離れればイスラム教過激派の影響が心配される土地柄であることから、同社経営トップは苦渋の決断により日本人駐在員の引き揚げを決めます。そのとき、自らの家族を日本に残してまでビジネスの継続に協力を申し出てくれたのがジェラルドさんだったのだそうです。 実際にその後、ナイジェリアでは北部を中心とした過激派「ボコ・ハラム」による学校襲撃事件などが発生し、同国におけるビジネスの難しさを再認識させられる状況になりました。それでもジェラルドさんは、日本で丁寧に使われた品質の良い中古PCの輸入と販売、そしてサービスに至るまで、アンカー社の出先として頑張ってくれているのだそうです(2015年1月の段階でジェラルドさんはアンカー社の契約社員という扱いです)。   〈想いが繋いだ挑戦への道〉 現在の仕事の流れは、20フィートコンテナで輸出された中古PC1,500台をジェラルドさんが取引先へ卸し、売り切ったらまた次のコンテナを送るという流れで、おおよそ年2回から3回程度の船積みがあるそうです。 ただ日本の中古PCは高品質であるとの定評を得ているそうですが、反面で比較的長く大事に使われるため、アメリカや中東から入る商材に比べると、型式がやや古いと言われるハンディもあるそうです。ですが、現地で中古PCのビジネスを根付かせるためのカギはサポートの充実だと言われている中で、ナイジェリアではジェラルドさんがサポートまで対応してくれているため、現地で「アンカーネットワークサービス」のブランドは次第に認知度を高めているのだそうです。 同社としては、政治対立・宗教対立のリスクはあるものの、成長著しいナイジェリアの市場開拓には引き続き興味を持っています。さらに管理システムを充実させることによって地に足の着いたビジネスができるようになればと考えており、そのために遠くない将来ナイジェリアで再度現地調査を行うことを考えているそうです。 また、事情が落ち着けば日本人社員の再配置も検討すべきと考えていて、そのために①海外経験のある新人の採用、②現地派遣が可能な外国人スタッフの積極的採用を実施しつつあるとのこと。市場では海外ブランドのDELLやヒューレット・パッカードが強いのだそうですが、日本製の東芝や富士通もある程度のブランド価値を築いているのだそうで、今後の展開が楽しみな事例だと思います。 (了)

#No. 106(掲載号)
#西田 純
2015/02/12

《速報解説》 「医療法人の持分に関する納税猶予制度」に係る措置法通達が公表~みなし贈与が生じる「持分の放棄があった日」の判定方法が明らかに~

《速報解説》 「医療法人の持分に関する納税猶予制度」に係る措置法通達が公表 ~みなし贈与が生じる「持分の放棄があった日」の判定方法が明らかに~   税理士・行政書士 佐々木 克典   1 はじめに 医療法改正に伴い、平成26年10月より持分の定めのある医療法人から、持分の定めのない医療法人へ移行する計画の認定を厚生労働大臣から受ける、いわゆる認定医療法人制度が創設された。 持分の定めのある医療法人の出資者やその相続人などに相続税や贈与税が課される場合、一定の要件のもとその納税を猶予し、さらに持分の定めを消滅させた場合には猶予税額の免除を受けることができる(措法70の7の5、70の7の8)。 平成26年12月18日付けで、本制度に関係する43の措置法通達が公表された(平成27年1月23日公表)。そこで本稿はこれら通達のうち特に重要と思われる、持分の放棄があった日の意義(措通70の7の5-1)を解説する。   2 通達の背景 医療法人の持分の全部または一部を放棄したことにより、他の個人の持分の価値が増加した場合、増加した価額に相当する額の経済的利益を受け、みなし贈与が生じる(措法70の7の5①)。 このみなし贈与がいつの時点で生じたのか明確にするのが、以下の措通70の7の5-1である。   3 書面による放棄 持分の放棄については、従来から明確な方法はなく、一般的に社員総会において宣言をすることで行われてきたが、厚生労働省より持分の放棄に関する申出書の様式例(下記)が公表されたことにより、今後は書面による放棄も増加していくものと考えられる。 通達では書面による放棄は、書面提出日または書面に記載した放棄日のいずれか遅い日とされている。 例えば、出資持分の放棄申出書を記載した日が1月31日、医療法人に書面が到達した日が2月3日の場合、経済的利益が生じた日は2月3日となる。 本通達により、医療法人が持分放棄の事実を知り得る前に、みなし贈与が生じる可能性は排除されたが、逆に書面到着日に疑義が生じる事案も出てくるであろう。   4 書面によらない放棄 書面によらない持分の放棄は、厚生労働省に提出した出資持分の状況報告書に記載した日となる。したがって状況報告書の記載ミスがあった場合、課税に影響を及ぼすので慎重に作成をしてもらいたい。 【状況報告書(抜粋)】 では、書面によらない持分の放棄の時点はいつか、という論点がある。 一般的な医療法人の定款の場合、持分の放棄について特段の規定は設けられておらず、さらに医療法人にとって経済的損益は生じないことから、社員総会の議決を経なければならない重大な事項とも考えられず、持分を有する者の単独行為により、放棄が行えるものと考えられる。 したがって、出資持分の放棄を理事長などに宣言した日が、一般的な放棄日と言え、社員総会の承認日ではない。 (了)

#No. 105(掲載号)
#佐々木 克典
2015/02/10
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