〔3/24(月)開催セミナー〕 【間違えると大変なことになる】 広大地評価の実務 ~誤りやすい論点を裁決事例で確認~ 株式会社プロフェッションネットワーク主催のセミナー「【間違えると大変なことになる】広大地評価の実務~誤りやすい論点を裁決事例で確認~」の開催が、3月24日(月)とせまってまいりました。 ※このセミナーの受付は終了しました。 昨年よりご好評をいただいております税理士 笹岡 宏保氏による【1日で理解する】セミナーシリーズ。 今回は土地の評価のうち「広大地の評価」に論点を絞り、通達制定の趣旨、広大地の定義からその解釈運用について、基本的な考え方から既に現実に発生している実務における運用上の論点まで広範囲にわたって検討します。 特に、広大地の評価をめぐる最新の論点別に、当該論点を分析するうえで最適な裁決事例を確認分析することにより、実務上の勘所を養うことを目標とした内容です。 各回のセミナー内容は各々独立して1日単位で内容は完結しており、どの回からでもご受講いただけますので、この機会にぜひご参加ください。
《速報解説》 「消費税法等の施行に伴う 源泉所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」のポイント 税理士・社会保険労務士 上前 剛 1 概要 消費税が税率3%で最初に導入されたのが平成元年4月1日、税率5%に引き上げられたのが平成9年4月1日、そしてこの春、平成26年4月1日に8%へ引き上げられる。 これに対応する形で、平成元年1月30日に公表(直法6-1)、平成9年2月26日に改正(課法8-1)された「消費税法等の施行に伴う源泉所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」が、平成26年3月5日付けで改正(課法9-1)された。 上記の通達は、 の3項目からなる。 課法8-1(平成9年改正)と今回の課法9-1を比較すると、「2 非課税限度額の判定」において、課法8-1では“105分の100を乗じた金額”という表現であったものが、課法9-1では“消費税及び地方消費税の額を除いた金額”という表現に改正されている。 上記以外は、課法8-1と課法9-1は全く同一の内容となっているが、改めて実務上の注意点について触れておきたい。 2 実務上の注意点 まず、「1 給与所得等に対する源泉徴収」については、現物給与を支払った場合にその現物の価額に消費税が含まれる場合は、消費税込の金額を給与として源泉徴収する。 例えば、4月1日以降に税抜価格10万円(税込価格10万8,000円)の商品を支給する場合、10万8,000円に対して源泉徴収しなければならない。特に、税抜経理を採用している場合、10万円に対して源泉徴収することのないよう注意が必要である。 次に、「2 非課税限度額の判定」については、所得税法基本通達36-22、36-38の2に定める非課税限度額の適用の判定にあたり、消費税抜の金額で非課税限度額を超えるかどうかの判定をする。 所得税法基本通達36-22は、一定の創業記念品等の評価額が1万円以下の場合には給与課税しないという規定である。つまり、1万円以下かどうかの判定を消費税抜の金額で行うことになる。 例えば、4月1日以降に税抜価格9,500円(税込価格10,260円)の創業記念品を支給する場合、9,500円≦1万円なので非課税となる。 特に、税込経理を採用している場合、10,260円>1万円と判定しないよう注意が必要である。所得税法基本通達36-38の2や直法6-5についても同様である。 最後に、「3 報酬・料金等所得等に対する源泉徴収」については、原則として報酬・料金等の金額に消費税を含めた金額を源泉徴収の対象とし、例外として報酬・料金等の支払いを受ける者からの請求書等において報酬・料金等の金額と消費税が明確に区分されている場合には、報酬・料金等の金額のみを源泉徴収の対象として差し支えないとされる。 (了)
【重要】消費税率の変更に伴う各種サービスに関するご案内 株式会社プロフェッションネットワークの各種サービスに関する消費税率引上げへの対応につきましては、こちらをご覧ください。
2014年3月20日(木)AM10:30、Profession Journal No.61 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。
日本の企業税制 【第5回】 「再び地方法人税課税をどうする」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 阿部 泰久 1 はじめに-地方法人課税の抜本改革を 従来の法人実効税率引下げは国税を中心に行われ、地方税は波及効果程度とされてきたが、法人実効税率を25%まで引き下げるためには、地方法人二税を今のままとして国税だけでとはいかない。今回は地方法人課税の抜本改革を正面に据えてかからなければ先には進めない。 法人所得を課税ベースとする税は、どのように加工しても不安定性、偏在性を免れることはできない。特に、財源を生む法人企業の活動が東京都をはじめとする大都市部に集中していることから、景気が良くなれば税収のアンバランスが拡大するという矛盾を解消することはできない。 平成20年度改正による地方法人特別税の創設、平成26年度改正による「地方法人税」という国税の創設などをみても明らかなように、地方法人課税改革は、法人所得を課税ベースとする法人住民税法人税割及び法人事業税所得割を個々の地方自治体から切り離し、地方全体の「共同税」とした上で、その比重を極力縮小することが出発点である。 そして、それに見合う財源は、①法人所得によらない地方法人課税、②その他の偏在性の少ない地方税を組み合わせることで捻出することが検討課題となる。 2 所得によらない地方法人課税 地方法人所得課税見直しの財源としてだけでなく、地方自治体の安定的な税収確保のためにも、所得によらない地方法人課税である法人住民税均等割及び法人事業税の外形標準課税の見直しは避けて通れないとの意見がある。しかし、実際にこれらをどこまで拡充できるのかは、慎重に考えなければならない。 * * * 法人、個人を問わず住民税の均等割は、地方自治体の行政サービスに要する費用の分担のあり方として至極、当然なものである。現在、法人住民税均等割の最少額(資本金等の額1,000万円以下、従業員50人以下の1事業所のみ、超過課税なしの場合)は7万円であるが、これを2倍程度に引き上げたとしても中小零細法人の経営を破綻させることはなかろう。一方、大企業で全国に事業所を展開しているような場合には数十億円を負担している例もある。 しかし、個人住民税均等割は本則4,000円、復興税を合わせても5,000円でしかなく、個人事業者と実態はそれほど変わらない零細法人の負担水準とは、明らかに不均衡である。仮に、法人住民税均等割を拡充するのであれば、個人住民税均等割の増税を合わせて行うべきであろう。 【法人住民税均等割】 ※市町村民税均等割については、制限税率(1.2倍)が定められている。 法人事業税外形標準課税の拡充は、さらに困難である。 第1に課税対象を資本金1億円以下の法人にまで広げることは、中小企業を対象に赤字法人課税を断行することと同義であり、消費税率を段階的に引き上げていく中では、政治的にも成り立たない。また、人件費が大部分を占める付加価値割部分を拡充することもできない。 そもそも、付加価値割は、消費税と課税対象が二重になっており、本来ならば地方消費税の拡充と合わせて縮小・廃止すべきところである。 資本割については、自社株買いの結果、課税がなされない大企業が現れるなど制度創設時には想定していなかった事態も生じており、見直しの余地はあり得る。しかし、仮に対象を現行どおり資本金1億円超の普通法人としたまま、資本割の課税方法に技術的な改正を加えることができたとしても、財源としてはいくらにもならない。 3 財源としての他の地方税 それでは、他の地方税で法人税減税の財源となりそうなものはあるのか。 まず第1に、個人住民税がある。そもそも、地方税としての個人所得課税のあり方をどうすべきかは大事な問題である。しかし、法人税減税の財源を個人所得課税の増税に求めることは、経団連としても本意ではない。前述のように、法人住民税均等割との関係で、個人住民税均等割を引き上げることがせいぜいであろう。 むしろ、個人住民税については、法人税減税の結果、従業員の給与水準が向上し、あるいは、配当が増加することなどによる「自然増収」がどの程度見込めるのかが課題とはなろう。 * * * 第2は、固定資産税である。地方税としては、地方自治体の独自財源に最もふさわしいものであり、偏在性は所得課税よりは少なく、安定性も地価の趨勢次第であるが、それなりに上向きに推移することが期待できよう。また、平成27年度は、3年に1度の固定資産税の大改正の節目でもある。 資産課税としての性格からは、地方法人二税の減税の代替財源として、法人企業が保有する資産について増税を行うとの議論はあり得ようが、特に償却資産課税については、経団連は明確に廃止・縮減を求めており、これを減税財源として考慮する余地はない。土地・建物についてどうするかは、固定資産税全体の課税のあり方の問題であろう。 一方で、個人の保有する資産、特に居住用資産の軽減措置の見直しは平成27年度改正で大きな議論となろうが、直接に、法人税減税財源とリンクさせることは、個人住民税以上に困難であろう。 * * * その他の税目では、金額的にもさしたる意味をもたないものばかりである。 新税の創設、特に「地方環境税」は、再度、税制改正のテーマとはなろうが、経団連としては絶対に反対である。仮にその税収を全額、法人税減税財源とされようが容認はできない。 4 おわりに 法人税改革には、地方法人二税の抜本的見直しは不可避であり、また、この機会を逃しては地方法人二税の改革はできない。そのための財源として、法人住民税均等割及び法人事業税の外形標準課税の見直しは課題となるであろうし、法人が保有する資産に対する固定資産税も議論になろう。 しかしながら、地方税の枠の中ですべてを完結させることには無理があり、地方交付税や譲与税を含め、国と地方との間で大きな財源調整が必要となろう。 (了)
まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第6回】 「通信販売・予約販売の取扱いについて」 アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩 (監修) 税理士 寺村 維基(執筆) 第6回である今回は、通信販売と予約販売を行っている場合における消費税率の適用について、以下の具体的な事例を交えて解説を行うこととする。 【解 説】 通信販売に係る売上げについても、原則として施行日(平成26年4月1日)以降に引渡しを行う商品の売上げは、施行日前に注文を受けたものであっても新税率が適用される。 なお、通信販売については、以下の経過措置が設けられている。 この経過措置は、指定日の前日(平成25年9月30日)までに商品の内容や価格等の販売条件を提示し(又は提示する準備が完了し)、その提示条件に基づいて平成26年3月31日までに申し込まれたものであることを事業者側で書類等により明らかにしている場合に、旧税率である5%が適用される。 ただし、経過措置の適用対象となる商品について、到着日が平成26年4月1日以後であるものから新税率である8%で請求することとした場合には、旧税率の5%と新税率の8%の差額3%は本体価格の値上げ請求をしたものと考えられ、経過措置の適用要件である「提示した条件に従って施行日以後に商品を販売」するものではなくなるため、経過措置の適用はなく新税率の8%が適用される。 なお、売上げについてこの経過措置の適用を受けた場合であっても、その商品の仕入れが施行日以後に行われた場合には、仕入れについては旧税率ではなく新税率が適用されることとなることに留意されたい。 また、オーダーメイドによる商品の販売については、「工事の請負等の税率等に関する経過措置」の適用対象となる可能性がある。 この場合、指定日の前日(平成25年9月30日)までに契約を締結している商品について、施行日以後に商品の受渡しを行うときは、その商品に係る対価の額(指定日以後にその契約に係る対価の額が増額された場合には、その増額される前の対価の額に相当する部分に限る)については、旧税率が適用される。 【解 説】 事業者が、指定日の前日までに締結した不特定かつ多数の者に対して定期的に継続して供給することを約する契約(※)に基づき譲渡する書籍その他の物品でその契約に定められたその譲渡に係る対価の全部又は一部を施行日(平成26年4月1日)前に領収している場合において、その対価の領収に係る書籍その他の物品の譲渡を施行日以後に行うときは、その領収した対価に係る部分の書籍等の譲渡については旧税率である5%が適用される(消費税法施行令附則第5条1項)。 ご質問の雑誌の定期購読契約は、指定日前に締結されており、購読料を1年分前払いで支払いを受けていることから、経過措置の適用がある。 なお、この経過措置の対象となる書籍その他の物品とは、雑誌等の定期刊行物などの書籍、食料品、化粧品、装花などの物品が対象であり、照会の定期刊行物のデジタル版などのように記事というコンテンツに加えて紙媒体と異なるシステム利用のためのサービスの提供は、役務の提供に該当するため、経過措置は適用されない。 また、毎月物品を発送し、都度代金を決済する場合には、指定日の前日までに契約を締結している場合であっても、指定日の前日までに領収した対価に係る部分の譲渡のみが対象とされるため、施行日以降に代金決済を行うものは経過措置の対象外となることに留意されたい。 (了)
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載57〕 改正医療法を踏まえた 「医療法人の持分に係る贈与税及び相続税の納税猶予制度」の要件確認 税理士・行政書士 佐々木 克典 1 認定医療法人制度創設の背景 「経過措置医療法人」といわれる持分の定めのある社団医療法人は、平成25年3月31日時点において医療法人総数の86%である、4万1,903法人が存在する。 経過措置医療法人は、平成19年改正医療法附則により「当分の間」持分のあるものとして継続することが認められており、解散の際には残余財産が出資者に帰属する経済的価値があるものの、持分に相続税が課されることや、持分の払い戻し請求を受けるなどの問題点があった。 また厚生労働省は、『出資持分のない医療法人への円滑な移行マニュアル』を作成するなど、持分のない医療法人への移行を推進してきたが、移行は進まなかった。 そこで3年間に限り、持分のある医療法人から、持分のない医療法人に移行を推進する制度が、平成26年度税制改正において創設された認定医療法人における納税猶予制度である。 【参考図】 (厚生労働省ホームページより) 本稿では、この納税猶予制度の要件を確認するとともに、改正医療法を踏まえたうえでの制度上の問題点について触れてみたい。 2 認定医療法人の課税関係 納税猶予が行える課税関係は、次のパターンである。 このように納税猶予を受けられるのは、上記の3パターンのみであり、持分の贈与に対する贈与税や、過去に相続時精算課税制度による贈与を選択した者に対する相続税額などは猶予されない。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 3 認定医療法人の課税上の問題 経過措置医療法人が、持分のない医療法人に移行した場合、相続税が不当に減少すると認められるときは、持分の払い戻しを免除された医療法人は、個人とみなされ贈与税が課される(相法66の4)。 これは、認定医療法人といえども同様である。 認定医療法人から、特定医療法人に移行する場合や、特定医療法人並みに公益性の高い運営をしている医療法人には贈与税が課されないが、この要件を確実に満たすことができる法人はまれであろう。 例えば、次のような医療法人には贈与税が課される。 4 担保の提供 納税猶予を受けている受贈者や相続人は、猶予税額に応じた担保を提供しなければならない(措法70の7の5①)。 この場合、その受贈者等の納税猶予の適用に係る認定医療法人の持分のすべてを担保に供した場合には、猶予税額に対して担保が充足しているとみなされる(措法70の7の5⑩二)。 この担保提供は、おそらく、その出資持分に質権を設定することについての承諾書等を、税務署長宛に提出する方法によると考えられる。 5 移行計画認定方法 (1) 概要 納税猶予を受けるために、経過措置医療法人は、持分のない医療法人に移行するための取組みの内容や検討体制、移行の期限などの計画を作成し、その計画内容が適当である旨の認定を地方厚生局の局長(複数の厚生局管轄で施設を開設している場合は、厚生労働大臣)から受けなければならない(改正医療法10の3)。 (2) 認定を受ける移行計画の内容 認定を受けられる移行計画は、次の4つのパターンである(改正医療法10の3②)。 ①社会医療法人は、地域医療計画に定める救急医療計画を実施していなければ移行できず(医療法42の2)、②特定医療法人は、原則として40床以上の病院を開設していることが求められる(措法67の2)。 したがって、一般的な無床診療所を開設する医療法人が選択できる方法は、③または④のみである。 ③や④は、役員等への特別の利益提供の有無は、移行計画実施に際してほとんど確認されないと考えられるため、③や④を選択した医療法人に、贈与税が課される事例が出てくることが想定される。 (3) 移行計画認定のために必要な資料等 移行計画の認定を受けるには、移行計画書に①定款、②出資者名簿、③社員総会議事録、④移行計画の内容を記載した書面の添付が必要である。 したがって、移行計画を申請するには、まず社員総会において3分の2以上の決議を受ける必要がある。 (4) 移行計画中の報告 認定医療法人は、毎期決算日から6ヶ月以内に、移行計画の進捗などを記載した書面を、地方厚生局長に提出しなければならない(改正医療法10の5)。 社会医療法人の事業報告の提出期限が、毎期決算日から3ヶ月以内であるのに対し、認定医療法人の届出は6ヶ月以内とされている。おそらく、移行計画の実施がなされていない医療法人が想定できることに対して、実務的な対応策と考えられる。 認定医療法人が、移行計画に沿って、持分のない医療法人への移行を進めていない場合は、厚生局長は移行計画に認定を取り消すことができ、取り消された日から2ヶ月以内に、猶予税額に利子税を加算した額を納税しなければならない(措法70の7の5⑫)。 (了)
[個別対応方式及び一括比例配分方式の有利選択を中心とした] 95%ルール改正後の 消費税・仕入税額控除の実務 【第2回】 「個別対応方式と用途区分①」 国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦 1 用途区分の意義 (1) 個別対応方式と用途区分 本連載では消費税の仕入税額控除の実務についてみているところであるが、第2回となる今回、及び次回の第3回で、実額控除制度のうちの一つである個別対応方式について解説する。 付加価値税である消費税の仕組みにおいて最も重要な要素としては、仕入税額控除制度がある。仕入税額控除制度は、課税の累積を排除するため、前段階の税額である課税仕入れに含まれる消費税額を控除する仕組みである。 仕入税額控除制度については、課税仕入税額につき実額での控除を計算する方法として、個別対応方式と一括比例配分方式の2つがある。このうち一括比例配分方式においては、課税仕入れ等に係る消費税額について、特にその中身を区分することなく課税売上割合で按分計算した金額を仕入控除税額とする方法を採っている。一方、個別対応方式においては、課税仕入れ等に係る消費税額について、対応する売上(資産の譲渡等)により必ず以下の3種類のうちのいずれか一つに分類し、その分類に基づき仕入控除税額を計算する方法を採っている(消法30②一)。 個別対応方式におけるこのような3つの分類のことを一般に「用途区分」という。 ここで重要なのは、個別対応方式の適用の際には、上記用途区分が必須とされているということである。すなわち、用途区分を行わないと個別対応方式による仕入控除税額の計算はできず、税務調査においても否認されることとなるのである。 ただし、用途区分が必須であるとしても、必ず三区分に対応する金額がないと個別対応方式の適用がない、というわけではないことに留意すべきであろう。場合によっては、ある区分、例えば「その他の資産(非課税資産)の譲渡等にのみ要するもの」が全く存在せず、結果としてその区分の金額だけゼロとなることもあり得るが、この場合も個別対応方式の適用には問題がない。 (2) 個別対応方式における用途区分の仕分け手順 用途区分の意義を理解したところで、次に理解すべきは個別対応方式を採用した場合の申告実務のステップである。 個別対応方式を採用した場合の申告実務のステップ(仕分け手順)は、概ね以下のようになるものと考えられる。 これを図に示すと以下のようになる。 【課税仕入れの仕分け概念図】 なお、保税地域からの貨物の引取りについても、上記と同様に3つの用途区分・仕分け手順に基づき分類することとなる。 (3) 課税資産の譲渡等にのみ要するもの(課税売上対応分) 用途区分の3分類のうちの一つである課税資産の譲渡等にのみ要するもの(課税売上対応分)とは、課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ等をいうが、課税売上との直接的な対応関係にある仕入項目(売上原価や製造原価に該当するものがその典型)に限定されず、間接的な対応関係にある仕入項目(一般に、販売費・一般管理費に該当するものを指す)も含まれることとなる。 通達によれば、課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ等につき、以下のような項目を例示している(消基通11-2-12、11-2-14)。 上記のうち、①②が課税売上との直接的な対応関係にある仕入項目に該当し、③④が課税売上と間接的な対応関係にある仕入項目に該当することになる。 なお、課税仕入れとそれに対応する課税売上が同一課税期間にあったかどうかは、用途区分の判定に何ら影響を及ぼさない(消基通11-2-12)。すなわち、棚卸資産の仕入れ(課税仕入れ)が期末近くでなされ、実際の販売が翌期に行われた場合でも、棚卸資産の仕入れがあった時点で用途区分の判定(当該棚卸資産は販売目的で取得したものであるから、課税売上対応分とする)を行うことになる。 (4) その他の資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ等(非課税売上対応分) その他の資産(非課税資産)の譲渡等にのみ要するもの、すなわち非課税売上対応分とは、その他の資産(非課税資産)の譲渡等にのみ要する課税仕入れ等をいい、課税売上対応分と同様に、非課税売上との直接的な対応関係にある仕入項目(売上原価や製造原価に該当するもの等)に限定されず、間接的な対応関係にある仕入項目(販売費・一般管理費に該当するものを指す)も含まれることとなる(消基通11-2-15)。 その他の資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ等には、以下のようなものが該当することとなる。 なお、課税売上対応分のケースと同様に、課税仕入れとそれに対応する課税売上が同一課税期間にあったかどうかは、用途区分の判定に何ら影響を及ぼさない(消基通11-2-12)。 2 共通売上対応分の意義 (1) 共通して要する課税仕入れ等(共通売上対応分) 用途区分のうち共通して要する課税仕入れ等(共通売上対応分)とは、課税仕入れのうち、課税資産の譲渡等にのみ要するもの(課税売上対応分)とその他の資産の譲渡等にのみ要するもの(非課税売上対応分)のいずれにも該当しない課税仕入れ等をいう。 このカテゴリーに該当するものには以下のようなものがある。 共通対応分に係る課税仕入れは、そのうち「課税売上割合」で按分した金額のみ仕入税額控除の対象となる。 (2) 「合理的な基準」による区分 1(2)の図で説明したとおり、共通して要する課税仕入れ等(共通売上対応分)の税額は、課税売上と非課税売上の双方に直接的な対応関係がある課税仕入れに係る税額が含まれるのみならず、売上との対応関係が明確ではない課税仕入れに係る税額も含まれるなど、その構成内容は種々雑多であるといえる。 そのため、事業者によっては、より厳格な経理の基準を設け、より事業実態に合わせた経理処理を行っているところもみられるが、このような適正な経理処理に熱心な事業者と、悪く言えばどんぶり勘定の事業者とを全く同じように扱うのは、必ずしも公平の観点から妥当とは言えないものとも考えられる。 勿論、事業者がわざわざ手間暇をかけて正確な経理処理を行うのは、その方がより仕入控除税額が多くなるためであり、いわばタックスプランニングの一環であるといえる。 そこで、通達では、倉庫料、電力料等のように生産実績その他の「合理的な基準」により、①課税資産の譲渡等にのみ要するもの(課税売上対応分)と②その他の資産(非課税資産)の譲渡等にのみ要するもの(非課税売上対応分)とに区分することが可能なものについて、その合理的な基準により区分している場合には、その区分したところにより個別対応方式の適用を行うことができる、とされている(消基通11-2-19)。 国税庁は当該通達をより具体化したガイドラインをQ&Aにおいて示している(国税庁消費税室平成24年3月「―平成23年6月の消費税法の一部改正関係―「95%ルール」の適用要件の見直しを踏まえた仕入控除税額の計算方法等に関するQ&A〔Ⅰ〕【基本的な考え方編】」、以下「Q&A〔Ⅰ〕」と称する)。 このQ&A〔Ⅰ〕問20では、通達では原材料、包装材料、倉庫料、電力料のように製品の製造に直接用いられる課税仕入れ等をその適用事例の典型として示しているが、これは、課税売上対応分と非課税売上対応分と明確かつ直接的な対応関係があることにより、生産実績のように既に実現している事象の数値のみによって算定される割合で、その合理性が検証可能な基準により機械的に区分することが可能な課税仕入れであるからである、としている。これを図で示すと以下のようになる。 【合理的な基準】 基準の合理性は「課税売上割合に準ずる割合」のように事前の(税務署長による)審査の対象とはならず、実務上基本的に税務調査によって事後的に検証されることとなるため、注意を要する。 なお、共通対応分に係る課税仕入れにつき課税売上割合で按分した金額のみ仕入税額控除の対象金額とした場合、事業実態から見て控除税額が過少となると考えられる場合には、税務署長の承認を受けることで、課税売上割合に代えて「課税売上割合準ずる割合」を用いて仕入控除税額を計算することができる(消法30③、Q&A〔Ⅰ〕問20(注))。 (3) 「合理的な基準」の適用例 タックスプランニングの観点から採用される「合理的な基準」について、以下でその適用例を検討することとする。 《事 例》 医療法人A病院はMRI(核磁気共鳴画像診断機器)を保有しており、その購入価格は157,500,000円(税込)である。A病院の課税売上割合は10%であるが、Aにおける当該MRIの使用実績は課税売上(自由診療分)に係るもの25%、非課税売上(保険診療分)に係るもの75%であった。この場合、A病院の仕入控除税額は以下のように計算する。 (※)平成26年4月1日以降の新税率により計算を行っている。 ① MRIの購入費用をすべて共通対応分として処理した場合 ② 使用実績を「合理的な基準」として採用した場合 ②>① ∴2,362,500円(②を採用した場合の仕入控除税額) 3 用途区分の判定時期 (1) 用途区分の判定時期の原則 仕入控除税額の計算方法として個別対応方式を採用した場合、用途区分を行う必要があるが、その判定時期はいつになるのであろうか。 まずその「原則」は通達に示されており、課税仕入れを行った日又は課税貨物を引き取った日の状況により行うこととなる(消基通11-2-20)。 そのため、申告書作成時やその後の税務調査の時点において、その用途区分を見直してみたところ、課税仕入れを行ったとき判断した用途区分と異なる判断となることが生じ得る。しかし、仮にその後の状況の変化等の理由により、当初の用途区分の判断を修正すべき事態が生じたとしても、当初の判断がその当時の状況から見て正当であれば、用途区分を変更する必要はないこととなる。 【用途区分の判断時期】 例えば、販売目的で購入した商品がその後滅失したり、陳腐化により廃棄を迫られる場合などは、後の状況から見れば対応する売上が存在しないため、用途区分は課税売上のみに対応する課税仕入れとはならないという考え方もあり得る。しかし、消費税法上、用途区分の判定は課税仕入れを行った日の状況により行うとされているため(消基通11-2-20)、販売目的で購入した商品の用途区分は、原則として課税売上のみに対応する課税仕入れに分類すべきということになる(事故や盗難の場合にも仕入税額控除の対象となることを示したものとして、消基通11-2-11(※))。 (※) ただし、事故や盗難の時点では資産の譲渡等とは取り扱われない(消基通5-2-13)。 また、課税仕入れ時の用途区分の判断が当時の状況に照らして妥当であれば、翌課税期間において用途区分を変更する必要が生じたとしても、再判定の必要はなく、修正申告の必要もないこととなる。 さらに、課税仕入れ時の用途区分の判断が当時の状況に照らして妥当であれば、その後に受けた税務調査において、課税仕入れ時の判定後の状況変化に伴う用途区分の変更の必要性を指摘されたとしても、修正申告の勧奨に応じる必要はないこととなる。 (2) 判定時に未確定の場合 一方、課税仕入れを行った日において用途区分が未確定のケースもあるが、どうするのであろうか。 この場合は課税売上のみに対応するとも非課税売上のみに対応するともいえないのであるから、用途区分は両方に共通して要するものに分類することになる。 ただし、課税仕入れを行った日において用途区分が未確定であっても、その日の属する課税期間の末日までにその区分が明らかにされた場合には、その明らかにされた区分により個別対応方式の適用を行うことができる(消基通11-2-20)。仮に課税期間の末日においてもその区分が明らかでない場合の用途区分は、課税売上と非課税売上の両方に共通して要するものに分類することになる。 * * * 次回は、個別対応方式を選択した場合の用途区分の問題のうち、交際費・寄付金の取扱い、及び不動産関連費用の取扱いについて解説する。 (了)
居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第23問】 「接している2区画のマンションを一体として居住の用に供している場合」 -一の家屋- 税理士 大久保 昭佳 Q Xは、15年前に2DKのマンション1戸(302号室)を購入して居住していましたが、その後子供らが成長し、従来の住宅の部屋数だけでは狭くなりました。 そこで、5年前にその住宅の真横に当たるマンション1戸(303号室)をさらに購入し、2区画のマンションを一体として使用してきました。 このほど、Xは2区画のマンションを一括して売却しました。 この場合、全部について「3,000万円特別控除(措法35)」の特例を受けることができるでしょうか? A 全部について「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができる。 〈解説〉 2つの区画の建物が隣接しており、かつ、これらの建物がその家族の構成若しくは生計の状況又はこれらの建物の使用状況等からみて、社会通念上、一戸の家屋として機能していると認められるような場合には、「特例」の適用を受けることができるものと考える。 (了)
税務判例を読むための税法の学び方【31】 〔第5章〕法令用語 (その17) 税理士 長島 弘 10 期限や期日を示す表現 (① 「以前」と「前」、「以後」と「後」) 【第27回参照】 (② 「期限」「期日」「期間」、③ 期間計算に関する国税通則法の定めと民法、④ 「・・・から・・・まで」)【第28回参照】 (⑤ 時をもって定める期限、⑥ 期限の特例と各種消費税の届出書、⑦ 国税通則法第10条第2項の期限の特例に関するその他注意点)【第29回参照】 (⑧ 期間計算が過去にさかのぼる場合、⑨ 「経過する日」と「経過した日」)【前回参照】 ⑩ 「経過する日」と「満了する日」と法律上の年齢 前回「経過する日」について解説した。また期間計算においては通常初日不算入が原則である旨も解説したが、これらから、法律上の年齢は一般常識と異なる点をご存じであろうか。 かつて平成14年7月25日に、国会においても平野博文議員が「国民の常識と法律上の取扱いとの間、さらには各法令相互の間において、齟齬や混乱が見られる」として質問している。 通常、年齢は誕生日の日に加算されると思われているが、法律上の年齢は、誕生日の前日に加算される。 明治35年法律第50号により制定された「年齢計算に関する法律」というのがある。この法律は以下の3条からなっている。 この第1条によれば、まず出生日が期間計算上の初日として、カウントされることになる。そして民法143条(前回、及び第28回参照)によれば「起算日に応当する日の前日に満了する。」とされている。すなわち、平成25年3月15日が出生日であった場合の応当日平成26年3月15日の前日である平成26年3月14日に満了することになる。 もっともこの「前日に満了する」といっても、通常は、前日の午後12時をもって満了することを意味するものと解される。その者の「誕生日の前日の午後12時=誕生日の当日の午前零時」に加算されるもの考えた場合には、一般常識と異なることはない。 しかし、「満了する日」はいつから始まるのであろうか。 「この満了する日」自体は、上記の例でいえば、3月14日である。常識的には、この3月14日が経過した後に加算されるべきであるが、「満了した日」ではなく「満了する日」であるから「経過する日」である3月14日に加算される(時刻としては午後12時(事実上は、誕生日の当日の午前零時と同じ時間)であるが、月日の概念としては3月14日である)のである。 この例として分かりやすいのが、4月1日生まれの者が、いわゆる早生まれとして、3月生まれの者と一緒に就学することである。これは学校教育法(昭和22年法律第26号) の第17条に とあるためである。 平成20年4月1日に生まれた者は、誕生日の前日である平成26年3月31日に満6歳に達したため、平成26年4月1日が「満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年のはじめ」となるのである。 この条文では「達する日」ではなく「達した日」となっているのであるから、翌日になるのではないかという疑問も起きようが、年齢加算は「年齢計算に関する法律」により計算され3月31日午後12時に加算されるため、「達した日」は3月31日であり「達した日の翌日」は4月1日である。 この点判決(東京高裁昭和53年1月30日(上告棄却))においても、 と判示している。 このように、原則、法律上の年齢は、誕生日の前日に加算され計算されることになる。 ただし、年齢規定を法令でおいている中で、日を単位とせずに時刻を単位とする場合は、その効力は誕生日前日の午後12時まで、すなわち誕生日を迎えるまで発生しないため、注意を要する。この点、日を単位とした場合には、上記の如く時刻の部分(午後12時)を切り捨てるため、その効力は誕生日前日の初め(午前零時)から発生しているのと異なる。 とはいえ、日と時刻、いずれを単位として用いているかは、判断が難しい。というのも、この単位を見分け方として、「日」という文言が用いられている場合は日を単位としているという点は問題ないが、「日」という文言が用いられていない場合がすべて時刻を単位としているとは限らない。 公職選挙法第9条第2項には、以下の通り規定されている。 この選挙権に関する規定第9条2項は「日」という文言が用いられておらず、単に「満20年以上の者」としかないため争いが生じ、司法判断を仰いでいる。すなわち、日を単位とせずに時刻を単位とすれば、投票日の24時に満20歳となる投票日の翌日を誕生日とする者は、投票日の投票時間には満20歳に達していないため、選挙権を有しない。選挙権を有しない者が選挙に参加しているなどとして、選挙の無効が争われ、判決が昭和54年11月22日の大阪高裁にあった。 この判決において と判示されている。 よって条文上、「日」という文言が用いられていない場合には、法令の趣旨・目的をも含めて解釈せざるを得ないであろう。 また、法令によっては年齢計算に関する法律を適用していないとして、誕生日当日に年齢が加算されるものもある。 例えば、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号、旧名称「老人保健法」)は、被保険者資格の取得時期として、同法52条に「次の各号のいずれかに該当するに至った日(又は以下省略)」からの資格取得を規定している。そして第1号に「75歳に達した時」と規定されているところ、厚生労働省の見解は、年齢計算に関する法律を適用していないため、「該当するに至った日」とは、誕生日の前日ではなく、誕生日当日であるとしている(尤も、私見としては、何故年齢計算の関する法律を適用しないということが許されるのか疑問を感じている)。 下記の厚生労働省サイト内の「高齢者医療制度に関するQ&A 追加Ⅰ」の14頁「問58」を参照されたい。 この厚生労働省が他と異なる取扱いをしていることによる問題点や、上記の就学や選挙権に関しては、上記平野議員の質問に挙げられている。平野議員の質問内容に関しては、下記の衆議院のサイトを参照されたい。 その答弁は以下のサイトにて確認できる。 (了)