経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第63回】 包括利益③ 「包括利益の表示」 ―1計算書方式と2計算書方式、税効果の金額及び組替調整額の注記 仰星監査法人 公認会計士 石川 理一 〈事例による解説〉 1 包括利益を表示する計算書 包括利益を表示する計算書は、次のいずれかの形式によります。いずれの場合においても、包括利益のうち親会社株式に係る金額及び少数株主に係る金額を付記します(基準11)。 これらの記載例を示すと以下のとおりです。 【2計算書方式】 【1計算書方式】 包括利益は少数株主損益調整前当期純利益にその他の包括利益を加減する形式で表示します。このため、1計算書方式では、当期純利益を少数株主損益を調整する前の金額に戻してから、包括利益を表示することになります。 なお、上の例では、S社は100%子会社であり、少数株主損益は発生しないため表示されていません。 その他の包括利益の内訳は、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定、退職給付に係る調整額等に区分して表示します。持分法を適用する被投資会社のその他の包括利益に対する投資会社の持分相当額は、一括して区分表示します(基準7項)。 2 注記の記載方法 その他の包括利益の内訳項目別に、税効果の金額及び前回解説した組替調整額を注記する必要があります。これらの注記は、併せて記載することができます(基準8項、9項)。 併せて記載する場合の記載例を示すと以下のとおりです。 【税効果の金額及び組替調整額を併せて記載する場合】 このように包括利益に関しては、連結包括利益計算書への付記及び税効果や組替調整額の注記と、詳細な情報が求められています。 (了) ※12月は外貨建取引の会計を取り上げます。
公的年金制度の“今”を知る 【第3回】 「今後の年金改革のゆくえ」 特定社会保険労務士 大東 恵子 1 給付と負担のバランスについて国民的合意を得る 公的年金制度には、多くの方に安心を提供し、老後の生活を支えるという役割があることから、年金制度は、長期間にわたって財源を維持し、財政のバランスがとれるように運営していくことが不可欠である。 現在の日本の公的年金は、年金支給のために必要な財源をその時々の保険料収入から用意する「賦課方式」で運営されており、現役世代が納めた保険料は、そのときの年金受給者への支払いに充てられている。 「賦課方式」を維持することを前提に今後の年金改革を考えるのであれば、まず、給付と負担の水準をどうするのか、国民的合意を得ることが重要であろう。つまり、高い給付を求めるのであれば負担も高くなり、負担を抑制したいのであれば給付も抑制せざるを得ない。給付と負担のバランスについて「高負担・高福祉」「中負担・中福祉」「低負担・低福祉」のいずれかを選択するか、具体的な金額シミュレーションを示し、国民的な議論による合意を得る必要が第一に必要である。その上で、公的年金制度体系の制度設計の詳細に着手することになろう。 ただし、「国民」と一括りにいっても、財源を負担する側の現役世代と、受給する側の高齢世代では、意識や希望に異なる結果が出ることは自明である。世代間の意見の相違を可能な限り排除した上で国民的な合意を得るためには、現役世代に負担が変重しないようなきめ細やかな配慮――例えば、消費税に財源を求めるにしても軽減税率を導入する、所得が一定水準以上の高齢者世代は財源を負担する等――の検討を併せて行うことが不可欠となろう。 2 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)改革 最近“GPIF”という言葉を新聞やニュースで耳にすることが多くなった。英語名称Government Pension Investment Fund の略称で、日本語の正式名称は「年金積立金管理運用独立行政法人」である。 GPIFは、厚生年金と国民年金の積立金を一元的に管理・運用しており、政府の年金財政にとって大きな役割を持つ。それだけに、年金財政の悪化が続く中で、日本の成長戦略とからめた年金積立金の運用改革が注目されている。 GPIFの基本ポートフォリオは、国内債券60%、国内株式12%、外国債券11%、外国株式12%、短期金融資産5%で構成されており、昨年末は国内債が55.2%に低下する一方、国内株式は17.2%まで上昇した。現在、国内株式の運用比率をさらに20%まで引き上げるという議論が行われている。 懸念すべきは、GPIFは129兆円もの運用資金を持ちながら、独立した監視機能もなければ、独自のファンドマネージャーを採用する権限もないという点である。 専門家でない政治家が、国債を売却し株の購入を示唆するよう運用に対する介入を行うことができてしまうガバナンスは健全とはいえず、これを排除する仕組みづくりに着手しなくては、年金積立金が株式相場とアベノミクスの買い支えに流用されかねない。 真のGPIF改革は、国民の財産である年金積立金という資産を、どう運用すべきなのか国民的な議論を深めることが重要で、その結果、運用成績の改善や安定収益が得られ、年金積立金が増える好循環がもたらされることである。 * * * 最終回である次回(第4回)では、公的年金制度の今後について考察する。 (了)
〈IT会計士が教える〉 『情報システム』導入のヒント (!) 【第2回】 「なぜ『導入したはずのシステムが使えない』のか?」 公認会計士 中原 國尋 はじめに 情報システムの導入により業務効率が向上し、利便性が高くなるはずにもかかわらず、「うちの会社のシステムは使えない」という話をよく耳にする。 なぜそのようなことが起こってしまうのか。 実施すべき手続とのギャップを見ながら、その理由に迫りたい。 ▼システム導入の当初目的▼ 情報システムの導入目的は、もちろん業務の効率化とそれに基づく生産性の向上にある。 情報システムの導入を検討するにあたっては、例えば、 表計算ソフトで作成している帳票の作成を自動化したい 入力項目を減らしたい 手作業しているデータの集計を自動化したい などのユーザー(利用者)ニーズを満たすことによって、業務が円滑に遂行できることを目標とするのである。 ▼まずはユーザーニーズの抽出と確定▼ 情報システムの導入は、一般に以下のステップで行われる。 まずは、新しいシステムに実現する機能を確定するために、ユーザーニーズを収集し、そのうちシステムに機能として実装するものを確定しなければならない。 ユーザーニーズの収集は担当部署に対するヒアリングをベースに行われるが、ユーザーに対してただ「実現したいこと」を問うても、具体的な話に落し込むのは困難であるため、現在の業務フローチャートを作成して、それをベースに議論を進めることが多い。 その中で現在の業務における不都合な点や問題点を相互に認識しながら、次期システムにおいて解決すべき項目を抽出する。 しかし、ここで抽出されたユーザーニーズをすべてシステム的に実現することは非現実的である。もちろん、ユーザーは自動化することにより業務が簡便になり効率化が進むと考えているが、本当に効果があるのか、優先的に対応すべきか否かについて判断しなければならない。 判断にあたっては、システムで対応することによる効率化の度合い、対応に要するコストとの関係、自動化する項目の柔軟性(特にアウトプットの作成)について考慮する。 ▼導入のリスクについても把握する▼ 情報システムには、次のような特徴がある(※)。そのため、それらの特徴を考慮したうえで、何をシステム上実装することが効果的なのかを考えていくのである。 (※) 日本公認会計士協会 監査基準委員会報告書315「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」A52 これらの特徴は情報システムのメリットに焦点を当てているが、特徴がデメリットになる点もある。例えば、権限が付与されていないユーザーによるデータへのアクセスや、データの未承認の変更、データの改ざん等である。これらリスクも考慮した検討が必要となる。 ▼ユーザーニーズだけでなく会社の方針も明確に▼ 実現すべき機能が明確になった段階で、導入するパッケージを選定し、実際の導入作業に入る。採用するパッケージを検討するにあたっては、当初ニーズをすべて実現することは難しい場合も想定されるため、優先順位を検討しながら、最終的に何を実装するのかを判断し確定させる。 その際に、システムを導入した後の「あるべき業務フロー」を作成し、それをベースに検討することで、具体的な検討が行われることになる。 なお、導入後の業務フローを検討するにあたっては、各ユーザーの意見も尊重されるべきであるが、それ以前に会社としての方針を明確にするとともに、業務全体としての有効性・効率性を図ることで全体最適を図っていくことが求められることに留意すべきである。 ▼ベンダーとのコミュニケーション不足が「使えないシステム」を作る▼ 実際に導入が進められると、必要な改修部分については依頼したベンダーが対応することになる。ベンダーが行っている業務については、導入側で適切に行われるようにコントロールしなければならない。またユーザーニーズを適切にベンダーに伝えることも重要なので、ベンダーの対応をモニタリングしながら、ユーザーニーズが適切にシステムとして実装されているのかをユーザー企業側で確認していく。 ベンダーの窓口となりうるのは、情報システム部門が一般的であるが、特に中堅規模以下の企業では情報システム部門を設置していない場合もある。その場合には責任部署を明確にして、担当を定めることが必須である。 また、窓口になる担当者は、ユーザー側と充分なコミュニケーションを図ってニーズを適切に理解し、それをベンダーに間違いなく伝達できるスキルが求められる。ユーザーとシステム担当者のコミュニケーションの欠如や要求仕様のベンダーへの不十分・不適切な伝達については、最終的に使えないシステムが完成する大きな要因となる。 ▼新たに生じた要求は実装すべきか▼ なお、導入の過程で当初想定していなかったユーザーニーズが洗い出され、新たな要求項目として出てくることがある。これらの項目については、当初目的をかんがみると、業務の効率化等を実現できるのであれば、積極的に実装すべきと判断されることもあるが、追加ニーズのすべてに対応することは、現実的ではない。 往々にして、これらのすべてに対応しようとすることで、開発コストの増大を招き、スケジュールの遅延にもつながる。そのため、原則としては次のシステム開発案件として検討すべきものとし、特に効果と優先順位が高いと判断されるものに限って対応することが現実的となる。 ▼稼動前テストを「やったことにする」?▼ 導入されるシステムは、稼働前にテストを行い、十分利用するに値するかを検討する。 テストはまずベンダーが行い、その結果をもってユーザーが確認するステップを取ることが多いが、ベンダーがどのようなテストを行ったのかについては開示されないケースもある。そのため、ベンダーに対してどのような品質管理を行っているのかを十分に確かめ、ベンダーがテストを重ねて品質に問題ないと判断するに至った過程をモニタリングすることで、ベンダーに対するけん制機能を働かせるとともに品質管理を行う。 最終的にはユーザーが利用できなければならないため、実際の業務に照らしながらユーザー側で受入テストを実施する。ここで可能な限りの問題点を抽出して改善することが必要となる。 しかし、ユーザーが主体的に実施すべきものであることから、システム部門や担当者が見ていないところでユーザーが「テストをやったことにする」ケースが極まれにみられる。ユーザーのニーズが適切にシステムに実装されているとは限らないため、そのような場合には特に、実際に稼働したのちに大きな問題に発展する可能性が高い。 ユーザー受入テストの結果を集約し、日常業務を遂行するにあたって特段大きな問題はないと判断された場合には、ユーザー側の業務の責任者の判断でリリースされることになる。 ▼リリース後の不具合は起こるもの▼ しかし、リリースしたからといって、不具合が全くない状況になっているわけではない。 システムを利用しながら、不具合は発見されることもあるが、それらについては都度解決してくことになる。しかし、リリース前の段階でユーザーが十分なテストを行わなければ、そもそも通常の業務遂行に不具合をきたすほどの問題が生じる可能性が高くなるのである。 したがって、責任者が問題ないと判断するためにユーザーはしっかりと時間をかけてテストをすべきであるし、情報システム部門としてもその結果が適切なものなのかを評価することが必要である。 ▼導入したシステムが使えない「本当の理由」▼ 導入したはずのシステムが使えない理由として一般に言われるのは、導入したシステムが合わない、必要な情報が出力されない、などがあるが、それらは「適切な導入が行われなかったこと」によるケースが非常に多い。 そしてその要因は、ユーザー部門と情報システム部門とのコミュニケーション不足や理解不足、そしてユーザー企業とベンダーとの間のコミュニケーション不足や理解不足であることが多い。 そうならないためにも、システム導入にあたっては当事者意識を持たせ続けるためにユーザーを適切に導入プロセスに巻き込むことで、導入過程でも意識をもって対応してもらうとともに、最終的に行われるユーザー受入テスト段階で確認作業を十分かつ適切に実施してもらうことが必要である。 ユーザーニーズをベンダーに適切に伝え、導入されたシステムが自社での利用に耐えうるかをユーザー側で判断してリリース判定を行わなければならず、決してベンダーに丸投げしてはならないのである。 (了)
女性会計士の奮闘記 【第23話】 「相続税は計算も説明も気をつけて」 公認会計士・税理士 小長谷 敦子 ◆ワンポントアドバイス◆ 相続税対策の話を当事者にするのは、なかなか難しいものです。 タイミングを間違えると相手の気分を害することもあります。 まずは「こんな事例がありましたよ」というふうに、他の人の実例を話すと受け入れやすいのではないでしょうか。 (注) 上記は本稿公開日(平成26年11月20日)現在の法令等によるものです。 (了)
セミナーお申込受付は本日(11/20)17時まで! 平成26年11月21日(金)開催 株式会社プロフェッションネットワーク主催セミナー「【平成27年3月決算・申告対応】1日で徹底理解! 所得拡大促進税制-適用判断と申告実務-」の開催が、明日11月21日(金)となりました。 お申込みは、本日11月20日(木)17時まで受け付けております。 ※銀行振込のご利用は 11月19日(水)で終了させていただきました。 ※お申込受付は終了しました。
《速報解説》 消費税率10%引上げに伴う経過措置取扱通達が公表 ~規定内容の確認と今後の留意点~ アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩 はじめに 平成26年10月27日付けで、『平成27年10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いについて(法令解釈通達)』が国税庁より公表され、同時に『消費税法令の改正等のお知らせ~税率引上げに伴う経過措置について~』のリーフレットも公表された。 内容としては、10%引上げに伴う経過措置に関連するものであるが、8%引上げに伴う経過措置と同様の法令となっていることから、平成25年3月25日に公表された『平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いについて(法令解釈通達)』の読み替え規定となっている。 ただし、今回の法令解釈通達では、8%引上げの施行日である平成26年4月1日を『施行日』、10%引上げの施行日(予定)である平成27年10月1日を『一部施行日』と定義しており、また、8%引上げに伴う経過措置規定の指定日である平成25年10月1日を『指定日』、10%引上げに伴う指定日(予定)を平成27年4月1日とした上で『27年指定日』と定義しているので留意されたい。 したがって、今回の経過措置規定は、本来であれば10%が適用される平成27年10月1日(予定)以後に行われる資産の譲渡等につき、各種の経過措置規定の要件を満たせば8%を適用されるものである。なお、5%が適用される取引については、5%から8%の経過措置規定が適用されるため、今回の経過措置規定から除外されている。 また、リーフレットの内容も8%引上げ時に公表されたものと同様のものであり、施行日や指定日を読み替えた形で作成されている。なお、10%引上げに伴う経過措置規定の施行令により創設された『特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)に規定する再商品化等』の規定が明記されている(後述)。 なお、リーフレットには以下の注記がなされている。 今回の法令解釈通達の主な内容は以下のとおりであるが、先ほども述べたように5%から8%へ引き上げられた経過措置と同じであり、再確認されたい。 なお、本稿と併せて下記拙稿もご覧いただきたい。 【法令解釈通達の概要】(一部抜粋・要約) 〈リーフレットの内容に関する追加事項〉 (了)
《速報解説》 国税庁、HPで「2年前納された国民年金保険料の社会保険料控除について」を公表 ~「社会保険料(国民年金保険料)控除額内訳明細書」の添付がある場合の年末調整対応に注意~ 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 平成26年11月7日、国税庁ホームページにて「2年前納された国民年金保険料の社会保険料控除について」が公表された。 平成26年分の年末調整にも関わる内容であり、適切な対応ができるよう備えておきたい。 (1) 国民年金保険料の前納制度 国民年金保険料の納付方法には、毎月納付の他、「6ヶ月前納」と「1年前納」の制度があった。これらに加え、平成26年4月から「2年前納」の制度が始まった。前納制度を利用すると、毎月納付よりも保険料が割り引かれる。「2年前納」の割引額は、「6ヶ月前納」や「1年前納」よりも高く設定されている。 「2年前納」の場合、平成26年度に納付する保険料は、平成26年4月分から平成28年3月分であり、保険料を現金で納付することはできず、口座振替のみの取扱い(※)となる。 (※) 口座振替による前納制度を利用するためには、毎年2月末までに一定の手続が必要である。 【参考】日本年金機構ホームページ 「平成26年度4月から国民年金保険料の「2年前納」が始まりました」 (2) 社会保険料控除の方法 2年分前納された国民年金保険料に係る社会保険料控除については、次の2つのうち、どちらかの方法を選択することができる(所基通74・75-1、74・75-2)。 具体的には、次のとおりとなる。 (3) 年末調整における対応 (2)の①、②どちらの方法を選択しても、年末調整において社会保険料控除の適用を受ける場合には、保険料控除申告書に控除を受ける国民年金保険料の額を記入し、日本年金機構が発行した「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」(以下、控除証明書という)を添付することとなる(所法196②、所令319一)。 控除証明書には、その年に納付された国民年金保険料の総額が記載されるため、保険料を2年前納している場合には、2年分の保険料の合計額が記載されている。そこで、②の方法を選択する場合には、所得者が各年おいて「社会保険料(国民年金保険料)控除額内訳明細書」を作成し、控除証明書と併せて保険料控除申告書に添付することが必要となる。 「社会保険料(国民年金保険料)控除額内訳明細書」の様式等の詳細については、日本年金機構の下記ホームページをご参照いただきたい。 保険料控除申告書に「社会保険料(国民年金保険料)控除額内訳明細書」の添付がある場合には、保険料控除申告書に記載のある国民年金保険料の額と、当該明細書及び控除証明書に記載された内容との間に整合性があるかどうかを確認し、社会保険料控除を正しく計算できるようにしなければならない。 (了)
《速報解説》 東証、「決算短信・四半期決算短信作成要領等」を改訂 ~IFRS任意適用拡大促進に向け「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示を要請~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成26年11月11日、東京証券取引所は、「会計基準の選択に関する基本的な考え方の開示に関する『決算短信の作成要領』の改訂について」を上場会社に通知している。 これは、平成26年6月24日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2014-未来への挑戦-」において、「IFRS の任意適用企業の拡大促進」についての提言を踏まえたものであり、決算短信において、会計基準の選択に関する基本的な考え方を記載するものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 改訂内容 「決算短信・四半期決算短信作成要領等」(2014年11月)の27ページに次の規定が設けられている。 Ⅲ 適用時期 「決算短信の作成要領」の改訂は、平成27年3月31日以後に終了する通期決算に係る決算短信から適用する。 ただし、平成27年3月30日以前に終了する通期決算に係る決算短信から適用することもできる。 (了)
2014年11月13日(木)AM10:30、Profession Journal(プロフェッションジャーナル) No.94 が公開されました。 - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第23回】 「法人税法22条2項の「取引」の意義(その2)」 中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 この事件では、法人税法22条2項にいう「取引」の意義が重要な論点とされた。 以下では、簡単に判決をみてみたい。 3 判決の要旨 第一審東京地裁平成13年11月9日判決(判時1784号45頁)は、本件増資は、B社と、有利な条件でB社から新株の発行を受けたC社との間の行為にほかならず、X社はC社に対して何らの行為もしていないというほかないとして、更正処分を違法と認定した。 これに対して、控訴審東京高裁平成16年1月28日判決(訟月50巻8号2512頁)は、次のように判示してX社の主張を排斥した。 そして、東京高裁は、両社間における無償による上記持分の譲渡は、法人税法22条2項に規定する「無償による資産の譲渡」に当たると認定判断することができるとした上で、同条項にいう「取引」の意義について、次のように論じている。 この事件はX社から上告された。そして、上告審最高裁平成18年1月24日第三小法廷判決(訟月53巻10号2946頁)は、次のように判示した。 最高裁は、このように判示して、法人税法22条2項にいう「取引」とは、関係者間の意思の合致に基づいて生じた法的及び経済的な結果を把握する概念と解されるとするのである。すなわち、ここにいう「取引」について、X社が法律概念であると主張するのに対し、Yは法律概念ではないと反論し、むしろ経済的概念であると捉えていたのであるが、最高裁は、法律概念でもあり、経済的概念でもあると論じたのである。 法人税法22条2項にいう「取引」を「関係者間の意思の合致に基づいて生じた結果を把握する概念」であると最高裁が位置付けたことは、X社とYの主張にいう法律概念であるか、あるいは経済的概念であるかという点よりもはるかに重要であるように思われるのである。 Ⅱ 法人税法上の「取引」概念 法人税法22条4項は、同条2項にいう「当該事業年度の収益の額」は、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。」と規定する。このような規定振りからすれば、同条項にいう「無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額」も、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されることになるのである。このように考えると、「取引」という用語の意義は、企業会計の考え方に従って解釈されるべきという理解があり得るように思われる。 この点につき、法人税法22条2項にいう「取引」は、会計からの借用概念であると論じる見解がある。 さて、会計学では、「取引」について、どのように定義されているのであろうか。 例えば、番場嘉一郎教授は、簿記・会計上の「取引」を次のように定義される(番場編『会計学大辞典〔第3版・増補版〕』763頁(中央経済社1993))。 また、広瀬義州教授は、次のように「取引」を定義される(広瀬『財務会計〔第12版〕』78頁(中央経済社2014))。 ところで、これまでこの連載において解説してきたとおり、借用概念というものは他の法律分野からの概念の借用をいうのであって、会計からの借用概念というものはあり得ない。この点をまずは確認しておきたい。 しかしながら、そうであるからといって、会計にいうところの「取引」と同様の意味で理解すべきとする考え方が必ずしも否定されることになるわけではない。すなわち、固有概念として理解することができないわけではないからである。この点について、検討を加えることとしよう。 法人税法22条5項は、「資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配及び残余財産の分配又は引渡しをいう。」と規定している。この規定から、「取引」には、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引と、そうではない取引があると理解することができそうである。 すなわち、例えば、利益準備金の資本組入れのような「資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引」と、例えば、売掛金を現金で回収したというような「資本金等の額の増加又は減少を生じない取引」があるわけであるが、資本等取引には、前者のような取引が含まれると規定しているのである。 このように、法人税法22条5項が、「法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引」と規定しているところから、「法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引以外の取引」が観念されると考えることは、条文解釈としては自然であるように思われるのである。 次に、法人税法施行規則53条《青色申告法人の決算》をみてみたい。同条は、次のように規定する。 ここでの「資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引」という規定振りは、前述の番場教授のいう「簿記上で取引とは、資産、負債および資本に増減変化を及ぼす一切の事象である。」という点と極めて近似していることが判然とする。このような点から考えると、なるほど、法人税法にいう「取引」とは、簿記・会計にいうところの「取引」と同様に理解されているということができるように思われるのである。 しかしながら、この規定を先ほどの法人税法22条5項の解釈と同じように整理するとどうなるであろうか。 このように、取引には、①「資産、負債及び資本に影響を及ぼす取引」と、そうではない②「資産、負債及び資本に影響を及ぼさない取引」があると理解することができそうである。 果たして、このような理解が可能であるとすると、会計上の「取引」が、①「資産、負債及び資本に影響を及ぼす取引」にとどまるのに対し、法人税法上の「取引」には、会計上の「取引」以外の取引も含まれるということになるように思われる。 このような理解になるのであろうか? (続く)