減損会計を学ぶ 【第20回】 「割引率②」 ~割引率の選択~ 公認会計士 阿部 光成 割引率については、「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号。以下「減損適用指針」という)45項において、4つの方法が示されている。 前回に引き続いて、今回も、割引率に関する論点について解説を行う。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅰ 減損適用指針45項 減損適用指針45項は、資産又は資産グループに係る将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクについて、将来キャッシュ・フローの見積りに反映されていない場合、使用価値の算定に際して用いられる割引率は、貨幣の時間価値と将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクの両方を反映したものとなるとし、以下に述べる4つの方法又はこれらを総合的に勘案したものとなると規定している(減損適用指針45項、126項、127項)。 Ⅱ 割引率の選択 前述のように、減損適用指針45項では4つの割引率を規定している。 ①資産に固有の収益率については、資産のリスクを最もよく把握している企業内部の情報を用いているという長所がある一方、ハードル・レートの設定に関して恣意的な要素が含まれてしまう可能性を排除できないという短所が見られる。 ③市場平均の収益率については、類似の賃貸用不動産における還元利回りなどを入手できるかどうかがポイントになると考えられる。実務上、当該収益率を入手できる場合は、限定的ではないかと考えられる。 ④ノンリコースの利率については、資産又は資産グループのみを裏付け(いわゆるノンリコース)として大部分の資金調達を行ったときに適用することが考えられているので、実務上、当該利率を入手できる場合は、限定的ではないかと考えられる。 このように考えると、上場会社については、実務上、②資本コストの利用が多くなるのではないかと推察される。 Ⅲ 資本コストの利用 減損適用指針の「[設例6]使用価値の算定に用いられる割引率(第45項参照)」では、減損適用指針45項で述べた割引率について、具体的な数字をもって説明している。 ここでは、[設例6]における資本コストの算定方法を述べる。 【減損適用指針 設例6】 当該企業及び当該資産Aに関連するデータは、次のとおりとする。 〈前提条件〉 ① 当該資産Aに類似の資産について、保有の意思決定の際に用いているハードル・レート:7% ② 類似の資産の市場における平均的な利回り:2.7%(税引後) ③ 無リスクレート:1% ④ X社が上場している市場の期待収益率:4.5% ⑤ X社が上場している株式市場における株価指数の動きに対するX社株価の動きの比率を基準としたβ(ベータ)値:1.2 ⑥ X社の借入資本コスト:3% ⑦ 他人資本と自己資本の割合:7:3 ⑧ 当該資産の大部分をノンリコースの借入で調達した場合の利率:6.5% ⑨ 実効税率:40% 資本コストを用いる場合には、借入資本コストと自己資本コストを加重平均した資本コストを用いることとなる。 借入資本コストは、前提条件⑥から3%である。 自己資本コストは株主が企業に要求する収益率を表しており、次の資本資産評価モデル(CAPM)から計算する。 他人資本と自己資本の割合は7:3であるから、税引前の加重平均した資本コスト(割引率)は、次の算式から、4.7%となる。 Ⅳ その他の論点 1 割引率算定の時点と継続性 使用価値を算定する際に用いられる割引率は、減損損失の測定時点の割引率を用い、原則として、翌期以降の会計期間においても同一の方法により算定される(減損適用指針43項)。 減損会計では、使用価値を算定する場合には、現在から将来にわたる回収可能性を反映するので、減損損失を測定する際に算定される使用価値は、今後生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローを、現在時点の割引率を用いて割り引いた現在価値とすることが適当であると考えられている(減損適用指針124項)。 2 割引率は税引前の数値 将来キャッシュ・フローが税引前の数値であることに対応して、割引率も税引前の数値を用いる(減損適用指針43項)。 3 複数の割引率の利用 使用価値を算定する際に用いられる割引率は、実務上、単一の割引率を使用すると考えられる。 ただし、将来キャッシュ・フローが見積もられる期間のうち異なる期間において、合理的で説明可能な仮定及び予測に基づき将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクや貨幣の時間価値が相違するため、異なる期間について異なる割引率を見積もる場合には、当該割引率を用いることができる(減損適用指針44項、125項)。 4 連結財務諸表における割引率 連結財務諸表において、連結の見地から、個別財務諸表において用いられた資産のグルーピングの単位が見直された場合(減損適用指針10項)、原則として、使用価値の算定に際して用いられる割引率も資産のグルーピングに応じて見直されることとなる(減損適用指針47項、128項)。 (了)
最新!《助成金》情報 【第5回】 「雇用関連助成金の活用(その5) 《新たに労働者を雇い入れる場合の助成金》」 特定社会保険労務士 五十嵐 芳樹 1 新たに労働者を雇い入れる場合の助成金の目的 労働者の新規雇入れに関する助成金は、新たに労働者を雇い入れる事業主に対する次のような助成をすることで、失業の予防や雇用機会を増大させることを目的とする。 2 新たに労働者を雇い入れる場合の助成金の主な支給対象外の事由 これらの助成金は、次に該当する場合は支給対象とならないため、事前確認が必要である。 (1) 目的 この助成金の目的は、就職が困難な人をハローワーク又は民間の職業紹介事業者等(※)の紹介により、雇い入れる事業主を助成することで雇用機会を増やすことであり、次の3種類がある。いずれも担当窓口は都道府県労働局かハローワークとなる。 (2) 手続の流れ [1] 特定就職困難者雇用開発助成金 (1) 目的 この助成金の目的は、次の対象者をハローワークや民間の職業紹介事業者等の紹介で継続して雇い入れる事業主を助成することで、雇用機会を増やすことである。 (2) 主な対象者ごとの有効活用のポイント (3) 支給額 注1:( )内は中小企業事業主。以下の他制度でも同じ。 注2:短時間労働者とは週所定労働時間が20~30時間未満の者。以下の他制度でも同じ。 [2] 高年齢者雇用開発特別奨励金 (1) 目的 この奨励金は、65歳以上の次のいずれにも該当する求職者をハローワーク等の紹介で1年以上継続して雇用する事業主を助成し、高齢者が引き続き経験などを活かして働けるよう支援することが目的である。 (2) 活用のポイント 65歳以上の在職老齢年金制度(日本年金機構)は、60~65歳未満の制度とは異なり、在職中でも老齢基礎年金は報酬額を問わず全額が支給され、老齢厚生年金は支給停止される限度額が高いため、報酬額が高額でなければ年金も全額を同時に受給できる場合が多い。特殊な技能知識や資格保有者である高齢者を人件費を抑制して確保したい事業主が、高齢者の体力や能力に応じた職務内容や労働時間を設定できる場合は特に有効と思われる。 (3) 支給額 [3] 被災者雇用開発助成金 (1) 目的 東日本大震災発生時に災害救助法が適用された被災地域(東京都除く)で、被災地域に居住する求職者をハローワーク等の紹介で雇い入れた事業者を助成することで再就職を支援する(詳細は担当窓口か厚生労働省で確認いただきたい)。 (2) 支給額 (1) 目的 この助成金は、職業経験や技能知識等から安定した就職が困難な求職者を、ハローワーク等の紹介により一定期間試行雇用(トライアル雇用)した事業主を助成することで、求職者の適性等を見極めてもらい早期就職を実現させることが目的となる。担当窓口は都道府県労働局かハローワークとなる。 (2) 対象者 この助成金は、次のすべてに該当する対象者を、条件に従い雇用する場合に支給される。 (3) 支給額 雇入れ日から1ヶ月単位で最長3ヶ月間の支給単位期間に、月額4万円の合計額をまとめて1回で支給する。 (4) 受給手続 (1) 目的 この助成金の目的は、定年退職を控えた高年齢者で、知識経験を活かせる他事業所での雇用を希望する者をハローワーク等の紹介で雇い入れる事業主を助成することで、高年齢者の雇用安定を図ることである。担当窓口は都道府県高齢・障害者雇用支援センターとなる。 (2) 対象者 この助成金の対象となるのは、次のいずれにも該当する者となる。 (3) 活用のポイント 特定就職困難者雇用開発助成金の60~65歳未満の高齢者と同一ポイントに加え、現役で活躍していた従前事業所での技能や知識を活用したい場合は特に有効と思われる。 (4) 支給額 (5) 受給手続 (了)
公的年金制度の“今”を知る 【第1回】 「公的年金制度の概要と現状」 特定社会保険労務士 大東 恵子 1 公的年金制度とは 公的年金制度とは、個人の予測不能な将来に対し、定期的に一定の金額を給付する制度のもとで、社会全体で備え支え合う仕組みである。老後に備えて個人が貯蓄をするにしても、人は何歳まで生きるのか誰もわからない。また、物価は上昇していくので、貯蓄は将来的に目減りする可能性が拭えない。 そこで、すべての国民が何らかの公的年金制度に加入する「国民皆年金」制度が確立したのは、昭和36年のことである。当時の平均寿命は、男性66.03歳、女性70.79歳。国民年金は原則として65歳から亡くなるまで給付される制度設計である。 また、公的年金を受給するのは、高齢者の「老齢年金」に限定されるわけではない。不慮の病気・事故などにより障害者となった場合は「障害年金」が所得を保障している。また、一家の大黒柱が死亡すれば路頭に迷うことになりかねないが、「遺族年金」はこのようなリスクもカバーし、所得を保障しているのである。 2 現在の公的年金制度 現在、公的年金制度には、次の3つの種類がある。 なお、公的年金制度において、会社員の場合は、国民年金の上に厚生年金が上乗される2階建て構造である。 そして、いずれかの公的年金制度に加入している人を「被保険者」と呼ぶが、この被保険者には次の3つの分類がある。 (※) 厚生年金保険料は労使折半となっており、これと同額を事業主が負担して支払っている。 3 現状の公的年金制度の問題点 現在、高齢者世帯の平均所得の約7割を公的年金が占め、高齢者世帯の6割以上が公的年金だけで生活している。公的年金制度は、国民の高齢期の生活を支える主要な収入源となっている一方で、制度創設時の前提や社会経済の状況等が大きく異なってきた結果、現在の日本の公的年金制度は多くの問題を抱えている。以下に、特に大きな要因3点を紹介する。 (1) 少子高齢化 公的年金制度は、若者が高齢者の年金を支える仕組みとなっている。現役世代の保険料負担で高齢者世代の年金に必要な費用をまかなう世代間扶養の考え方を基本にした「賦課方式」で運営されているからである。 しかし、今日の日本の平均寿命(平成24年)は、男性79.94 歳、女性86.41歳。まだ延びると予測され、とりわけ女性の平均寿命はいずれ90歳を超えると推計されている。年金制度創設当時には想定できなかったほどの長寿社会になった。 このため、現役世代が減る一方、年金を受け取る世代が増加し、制度設計は崩壊寸前と言われている。 (2) 国民年金保険料の未払い問題 国民年金の第1号被保険者の年金保険料の未払いが問題となっている。この原因は、年金保険料の支払いを支える「雇用」という土台が揺らいできたためである。 公的年金制度は、安定的に働いて、保険料を拠出してくれる層がいて初めて成立する制度である。高度経済成長時代には、正社員・終身雇用・年功序列型賃金が前提となり、保険料の拠出も順調であった。しかし、経済のグローバル化で国際競争が激しくなり、企業は非正規労働者を多く雇うようになった。 現在、雇われて働いている人の約38%は非正規労働者である。賃金が低ければ、保険料納付も苦しくなる。非正規労働という不安定な雇用形態で働く人が増えるにつれ、年金保険料収入が落ち込んできたのである。 (3) マクロ経済スライド 平成16年から年金には「マクロ経済スライド」という制度が導入されている。それまでは、物価の変動とともに年金額を変動させていたが、これからは物価の変動だけではなく、少子高齢化、経済情勢などマクロ経済全体を考慮し年金額を決めるという制度である。ただし、制度は導入されたものの、マクロ経済スライドはこれまで一度も実施されていない。理由は、物価が下落しているときには発動ができないためだ。 マクロ経済スライドには、次のような限定化がなされている。 したがって、賃金や物価が下落する場合、それに応じて年金額を下げるが、それ以上に年金額を下げることはないのである。 * * * 上記の3点以外にも、保険料の負担なしで年金を受け取ることができる3号被保険者問題など、日本の年金制度には様々な問題があり、年金の積立金は厚生労働省の想定を上回るスピードで切り崩しが進んでいる。 次回(第2回)は、年金財政の持続可能性の確保のために行われた平成24年の年金改正について、その評価と課題を解説する。 (了)
私が出会った[相続]のお話 【第11回】 「税理士の皆さまに求めたい『いざ相続!』前の日常対策」 ~漏れのない対応が結果として自分を助けることに~ 財務コンサルタント 木山 順三 〈対応その1〉 「財産明細表」の作成と年に一度の更新を徹底 クライアントは年配になればなるほど、ご自身の財産を管理するのがおっくうになりがちです。 そのような人には、最低限、どこの銀行、どこの証券会社と取引しているのか、貸金庫はどこにあるのか等の「財産のあり場所メモ」だけでも残すようお勧めしています。 と申しますのも、某生活研究所が調査した結果によれば、自分の親が亡くなって「預金している銀行や口座が分からない」といった人が4割を占めているというのです。 現に私も、次のような事態に遭遇した経験があります。 これらの事例のように、せっかくの財産が誰にも知られないまま埋もれてしまうリスクを避ける必要があります。なぜならこれは、社会的な損失だからです。 きちんとした税理士のクライアントについては上記のような事態は少ないと思いますが、常に最新のより詳細な財産明細表を作成するように指導しましょう。 すなわち預入先はもとより、預入の種類、名義、金額、償還日、その他保有資産の保険や不動産の種類、所有者、持分等々を含むすべての財産明細を作成させましょう。 これにより、当家の将来の相続対策や遺言書作成時の資料として、次のような明確な対応をとることができるのです。 〈対応その2〉 財産明細表を分析して税務対策と節税策の提案を 上記〈対応その1〉により詳細な財産明細表を作成することで、例えば以下のようなチェック作業が可能となります。 以上の状況を把握し、将来の相続開始を想定した事前の交通整理を行いましょう。 すなわち、 等々を行い、そのうえで将来の「争族リスク」が予想される場合は、次のように公正証書遺言書作成等を行うよう勧めましょう。 〈対応その3〉 当家は遺言書の作成が必要かどうかを考える 遺言書作成に当たっては、ぜひとも公正証書で作成させてください。仮に税理士が遺言執行者になった場合でも、自筆証書に比較して限りなくリスクが少なく安心です。 また遺言執行者にまで委任されなくとも、立ち合い証人になることで来るべき相続開始の際に相続業務を任されるケースが多く、遺言書作成希望に際しては極力相談に乗ることが望ましいと思います。 もちろんクライアントの中には自筆証書にこだわる人もおられます。この連載の第9回でご紹介した事例などはまさにその通りで、すなわち愛人への遺贈内容などは、公証人役場ではなかなか披露できないものです。 でも万一、要件違反の遺言書になっていたら・・・ 大事な内容であればあるほど、公正証書にすることが大切です。そのことがお世話役としての税理士が、他の相続人から疑念の目で見られなくするための対策でもあるのです。 〈対応その4〉 当家の「家庭状況」を常に把握する 税理士にとって顧客の信頼を得るうえでまず大切なことは、当家の家庭状況を把握することです。そのうえで、事前の交通整理や遺言書作成等のお手伝いを行いましょう。 当家の置かれた状況を十分観察し、現状における実権者は誰か、誰がネックとなるのか等々、常に把握しておかなければなりません。 このことが次へのつながりに結びつき、幅の広い、奥行きのある、息の長い顧客グリップへと発展するのです。 そのうえで、アドバイザーとしての公平を保ち、時に厳しく、時に優しく、クライアントへの指導を行いましょう。 その原点は、『当家のために』という気持ちであり、そのことを忘れずにおけば、自信を持った顧客対応ができるのです。 (了)
書籍『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか』の書評が 日経新聞(11/2・日)に掲載されました。 - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
《速報解説》 国税庁、HPに「社会保障・税番号制度について」を設置 ~平成28年以降活用が開始される個人番号・法人番号についてFAQで解説 Profession Journal編集部 平成27年10月から通知が始まる個人番号・法人番号は、平成28年1月から順次、社会保障、税、災害対策分野で利用が開始される予定だ。 番号の通知は、来年10月に予定されているが、およそ11ヶ月前となった10月29日、国税庁は、ホームページに「社会保障・税番号制度について」を公表。混乱が予想される番号の扱いなどの番号制度に対して、FAQなどを用いて周知に動き出した。 ◆FAQで国税関係の影響の把握が可能 国税庁のHPの「社会保障・税番号制度について」では、番号制度に関する概要や、「法人番号制度に関するFAQ」「国税分野におけるFAQ」を公開し、国税分野の解説を行っている。 番号制度の導入による税分野のメリットとしては、国税当局に関しては、提出される申告書・法定調書等の税務関係書類に個人番号及び法人番号が記載されることによって、法定調書の名寄せや申告書との突合がより正確かつ効率的に行えるようになるため所得の正確な捕捉が可能になる。他方、納税者にとってのメリットは、次の点を挙げている。 番号は、大きく「個人番号」と「法人番号」に大別されるわけだが、番号法で規定される個人番号は、市町村長により指定され、厳格に用途が定められ、その管理が求められているため、漏えい等が生じた場合には罰則が用意されている。だが、一方の国税庁長官が指定する法人番号は、一般の利用も可能とするなど取扱いは大きく異なっている。 ◆申告の場面でも影響 税務における番号の扱いについては、既に関係省令等の改正が行われており、申告書や法定調書等の税務関係書類に納税者の個人・法人番号を記入することが求められることとなるわけだが、関与先の申告書を提出する場合でも、リスクに対応するために、これまでとは異なる厳格な本人確認が義務付けられている。 申告に当たって、税理士は番号法19条に定める委託者と位置付けられ、申告書等作成のために番号の保有者から個人番号を提供されることが認められているわけだが、税理士が顧客の個人番号を記載した申告書等を提出する際には、代理権、代理人の身元及び本人の番号が確認されることになる。 税理士が、その際に提示を求められるものは、①委任状、②代理人の個人番号カードや運転免許証(身元確認)、③顧客の個人番号カードや通知カードの写しなどだ。 なお、番号法施行規則において、税理士が代理権に基づき申告を行う際は、原則的な方法による身元確認が困難な場合には税理士名簿の確認(身元確認)等による方法も認められている。 番号の申告書等への記載の開始時期だが、所得税については平成28年分の申告書から、法人税については平成28年1月以降に開始する事業年度に係る申告書から、法定調書については平成28年1月以降の金銭等の支払い等に係るものから、申請書等については平成28年1月以降に提出すべきものからとなる。 【参考】 税務関係書類への番号記載時期 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) 国税庁ホームページより (了)
2014年10月30日(木)AM10:30、Profession Journal(プロフェッションジャーナル) No.92 が公開されました。 - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
〈平成26年分〉 おさえておきたい 年末調整のポイント 【第1回】 「注意しておきたい最近の改正事項」 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 (1) 給与所得控除の上限設定 平成24年度の税制改正により、給与所得控除に上限が設定され、給与等の収入金額が1,500万円を超える場合の給与所得控除額は、一律245万円となった(所法28③六)。この改正は、平成25年分以後の所得税について適用されている。 詳しくは、拙稿「〈平成25年分〉おさえておきたい年末調整のポイント【第1回】「(1) 給与所得控除の上限設定」」(本誌No.41掲載)をご覧いただきたい。 なお、平成26年度の税制改正により、給与所得控除の上限をさらに段階的に引き下げることが決まっているが、当該改正は平成28年分以後の所得税に対して適用されるため、今年及び来年分の年末調整には影響しない。 (※) 給与所得控除に関する平成26年度改正については、拙稿「《速報解説》 給与所得控除の見直し(縮小)~平成26年度税制改正大綱~」(2013年12月18日公開)をご確認いただきたい。 (2) 復興特別所得税の創設 平成25年1月1日から平成49年12月31日までの各年においては、所得税と併せて復興特別所得税が課される(復興財確法9①)。平成26年度の税制改正により、復興特別法人税は1年前倒しで廃止されたが、復興特別所得税には改正が行われていない。よって、復興特別所得税は、平成26年分以後も平成25年分と同様に課税される。 復興特別所得税の額は、基準所得税額(その年分の所得税の額)の2.1%相当額であり、源泉徴収及び年末調整において所得税とともに徴収、精算される(復興財確法28①、30①)。 詳しくは、拙稿「〈平成25年分〉おさえておきたい年末調整のポイント【第3回】「復興特別所得税(その1)」」(本誌No.43掲載)及び「〈平成25年分〉おさえておきたい年末調整のポイント【第4回】「復興特別所得税(その2)」」(本誌No.44掲載)をご覧いただきたい。 (3) 生命保険料控除の改組 平成22年度の税制改正により、平成24年分以後の生命保険料控除に、新たに介護医療保険料控除が加わった。改正後の生命保険料控除は、一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除の3本立てとなっている(所法76①②③)。 控除額を算出するための計算式は、保険契約の締結時期が平成24年1月1日以降(新契約)か、平成23年12月31日以前(旧契約)かによって異なる。また、適用限度額は、3つの控除の合計で12万円である(所法76④)。 改正内容の詳細や控除額の計算式及び計算例は、拙稿「平成24年分 おさえておきたい年末調整のポイント①今年度適用となる改正事項」(本誌創刊準備2号掲載)及び「〈平成25年分〉おさえておきたい年末調整のポイント【第2回】「生命保険料控除について」」(本誌No.42掲載)をご覧いただきたい。 (4) 扶養控除の見直し 平成22年度の税制改正では、扶養控除の見直しが行われた。この改正は、子ども手当の創設及び高等学校の実質無償化に伴い、従来の扶養控除の一部を廃止するものであり、平成23年分以後の所得税に適用されている。 改正点は、次の2つである。 改正後の扶養控除額を一覧にすると、〈図1〉のとおりとなる。 〈図1〉 年齢別の扶養控除額 (※) 参考:国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(平成22年4月)」 (5) 同居特別障害者加算措置の改組 平成22年分以前の所得税においては、控除対象配偶者又は扶養親族が同居特別障害者である場合には、扶養控除の額が35万円上乗せされていた。この取扱いが、平成22年度の税制改正により、扶養控除ではなく、障害者控除の額に35万円上乗せする方法に変更された。 この改正は、上記(4)により、年少扶養親族に対する扶養控除が廃止されたことに伴うものであり、平成23年分以後の所得税に適用されている。 改正により、扶養親族のうち特別障害者である者が、所得者、その所得者の配偶者もしくはその所得者と生計を一にするその他の親族のいずれかと同居している場合には、障害者控除の額が75万円(特別障害者である場合の障害者控除40万円に、同居特別障害者としての35万円を加算した額)となった(所法79③)。 なお、年少扶養親族が障害者である場合、扶養控除の適用はないが、障害者控除(一般の障害者27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円)を受けることはできるので注意が必要である(所法79①②)。 【参考】 年少扶養親族(6歳未満)が障害者に該当する場合の控除額 * * * 次回は所得税法施行令の一部改正(平成26年10月17日公布)に伴う「通勤手当の非課税限度額の引上げ」について解説を行う予定である。 (了)
有料老人ホームをめぐる 税務上の留意点 【第5回】 (最終回) 「老人ホームに入居していた場合の小規模宅地等の特例」 税理士 齋藤 和助 1 はじめに 平成25年度税制改正では、基礎控除の縮減、税率の見直し等とともに、小規模宅地等の特例に係る大幅な見直しが行われた。 具体的には、 特定居住用宅地等の面積制限の330㎡(改正前240㎡)への拡充 特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等の限度面積までの完全併用(最大730㎡) 二世帯住宅及び老人ホームに入居している場合の適用関係 などである。 本連載の最終回となる今回は、被相続人が老人ホームに入居していた場合の小規模宅地等の特例の改正点を確認し、その留意点をみていく。 2 改正前の取扱い 国税庁はホームページで(事例1)入院により空家となっていた建物、(事例2)老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例について、それぞれ質疑応答事例を公表している。 (事例1) 入院により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例 (事例2) 老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例 したがって、(事例1)入院により空家となった建物の敷地は原則として被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当し、(事例2)老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地は上記4要件((1)~(4))を満たせば、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当する。 3 改正後の取扱い 上記(事例1)については、平成25年度改正による変更はなく、今までどおり被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当する。 上記(事例2)については、(2)と(4)の要件が廃止され、老人ホームに入所するまで居住の用に供していた宅地等は、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等とされる。具体的には次の2つの要件に該当するものが認められる(措令40の2②③)。 なお、改正前は上記要件(1)において「介護を受ける必要があるため、老人ホームへ入所することとなったもの」とされ、入居の際に介護が必要であることが要件となっていたが、改正後は「要介護認定又は要支援認定を受けていた被相続人が有料老人ホーム等に入所等していたこと」とされ、相続開始時点で判定することとなるため、入所等前にこれらの認定を受けている必要はない。 (連載了)
交際費課税Q&A ~ポイントを再確認~ 【第10回:2014年10月改訂】 (最終回) 「法人税申告書[別表15]記載のポイント」 公認会計士・税理士 新名 貴則 1 交際費課税の改正と別表15の様式変更 ① 平成25年度税制改正後 【中小法人の特例のイメージ】 ② 平成26年度税制改正後 平成26年度税制改正における交際費課税の改正ポイントは次のとおりである。 【接待飲食費の50%損金算入のイメージ】 これに伴い、法人税申告書別表15「交際費等の損金算入に関する明細書」の様式も変更されている。 平成26年4月1日以後終了事業年度分の別表15の様式は、次のとおりである。 厳密には、平成26年度改正後の交際費課税制度が適用されるのは平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度であるが、平成26年4月1日以後に終了する事業年度からは、この別表15を使用することになる。 例えば、平成25年9月1日から平成26年8月31日までの事業年度であれば、平成26年度改正前の交際費課税が適用されるが、別表15は新様式を使用することになる。 【別表15「交際費等の損金算入に関する明細書」】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイル(国税庁ホームページ)が開きます。 2 別表15のケーススタディ 次の事例に基づいて、別表15の記載上の留意点を解説する。 ◆ケース Ⅰ ◆ 資本金5億円の場合 資本金が1億円を超えているため、中小法人の特例(年間800万円まで全額損金算入)は適用されない。しかし、平成26年度税制改正による交際費課税の適用後であれば、接待飲食費の50%損金算入が適用される。 ① 平成26年3月31日までに開始した事業年度の場合 この場合、接待飲食費の50%損金算入は適用されないため、交際費等10,000,000円の全額が損金不算入となる。 (別表15の記載例①) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ② 平成26年4月1日以後に開始した事業年度の場合 この場合、接待飲食費の50%損金算入が適用されるため、接待飲食費6,000,000円の50%に相当する3,000,000円が損金に算入される。この結果、交際費等10,000,000円のうち7,000,000円が損金不算入となる。 (別表15の記載例②) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ◆ケース Ⅱ ◆ 資本金1億円の場合 (資本金5億円以上の大法人の完全子会社ではない) 資本金が1億円以下であるため、中小法人の特例(年間800万円まで全額損金算入)が認められる。また、平成26年度税制改正による交際費課税の適用後であれば、接待飲食費の50%損金算入が適用され、中小法人の特例との選択適用が可能である。 ① 平成26年3月31日までに開始した事業年度の場合 この場合、接待飲食費の50%損金算入は適用されないため、中小法人の特例を適用し年間800万円までが全額損金に算入される。 したがって、交際費等10,000,000円のうち2,000,000円が損金不算入となる。 (別表15の記載例③) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ② 平成26年4月1日以後に開始した事業年度の場合 この場合、接待飲食費の50%損金算入が適用される。これを適用した場合、接待飲食費6,000,000円の50%に相当する3,000,000円が損金に算入される。この結果、交際費等10,000,000円のうち7,000,000円が損金不算入となる。 ただし、中小法人の特例も選択適用することが可能であり、こちらを選択すると①の場合と同様、損金不算入額は2,000,000円となる。したがって、通常はこちらを選択することになる。 (別表15の記載例④) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (連載了)