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居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第24問】「所有者の異なる2棟の建物を一体として居住の用に供している場合」-一の家屋-

居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第24問】 「所有者の異なる2棟の建物を一体として居住の用に供している場合」 -一の家屋-   税理士 大久保 昭佳   Q 下図のように、X所有の土地の上にX所有の家屋AとY所有の家屋Bがあります。XとYは親子であり生計を一にしています。また、XとYの家屋は渡り廊下(Y所有)で結合されています。 XとYそれぞれの家族は、2つの家屋全体を居住の用に供しています。 このほど、この土地全体と2つの家屋を一括して売却しました。 この場合、Xは、Y所有の家屋Bの敷地の用に供されている部分の土地譲渡所得についても、「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができるでしょうか? A Y所有の家屋の敷地の用に供されている部分の土地譲渡所得についても「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができる。 〈解説〉 X所有の家屋AとY所有の家屋Bとが一体として一の機能を有する一構えの家屋と認められる場合には、Y所有の家屋の敷地の部分も含めて居住用財産に該当するものとして差し支えないものと考える。 (了)

#No. 62(掲載号)
#大久保 昭佳
2014/03/27

貸倒損失における税務上の取扱い 【第14回】「子会社支援のための無償取引⑩」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第14回】 「子会社支援のための無償取引⑩」   公認会計士 佐藤 信祐 第13回においては、無利息貸付けにおける貸方側の処理、すなわち、収益を認識するための理論構成についての分析を行った。 本稿においては、借方側の処理である寄附金についての取扱いを分析することにより、法人税基本通達9-4-2の基本的な考え方について解説を行う。 (2) 貸方側の処理 ① 条文上の根拠 第13回目で解説したように、無利息貸付けによって収益を認識したのであるから、借方側をどのように処理するのかという問題が生じる。 二段階説(有償取引同視説)を採用するのであれば、まず、未収利息を認識したうえで、当該未収利息の債権放棄を行ったとみなすことから、法人税法第22条第3項第3号により、「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの」が発生したと考えることになる。 しかしながら、別段の定めである法人税法第37条に規定する寄附金に該当する場合には、損金の額に算入することはできないという整理になる。 つまり、逆に言えば、法人税法第37条に該当しなければ、別段の定めに該当しないことから、原則に戻って、損金の額に算入されるという結論になる。 なお、寄附金に該当するか否かという点については、本来は収受すべき利息を収受しなかったのであるから、原則として、寄附金が発生することになるが、例外的に、法人税基本通達9-4-2に該当した場合に限り、寄附金として処理しないという整理になる。 この場合における法人税法の条文の理解であるが、法人税法第37条第7項(清水惣事件では同条第5項)において、 と規定されており、括弧書きにおいて、寄附金から除くものと規定しているため、これらが単なる例示であると解するのであれば、法人税基本通達9-4-1、9-4-2に該当したものについて、括弧書きに含めることにより、寄附金から除くことができるという条文解釈があり得る。 また、法人税基本通達9-4-1、9-4-2に該当したものについて、経済合理性があることから、「金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与」に含まれないと解するのであれば、寄附金から除くことができるという条文解釈もあり得る。 判例、学説からは、いずれとも解釈することが可能であり、法人税基本通達9-4-1、9-4-2の法人税法上の根拠が極めて曖昧なものであるということができよう。 清水惣事件の控訴審判決文を見る限り、合理的な経済目的を有するのであれば、「金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与」に該当しないという解釈のように読めるが、そのような条文解釈が可能であるのかという点は疑いがある。 しかしながら、法人税法第37条第7項括弧書きが例示列挙であるとみなすというのは、条文の文言からすると、条文解釈として可能であるか否かについては疑問が残るところである。 結局のところ、法人税基本通達9-4-1、9-4-2の取扱いについてはかなり限定的なものであり、子会社等の解散や経営権の譲渡等が行われ、社会通念上も親会社責任等が問われる場合である法人税基本通達9-4-1についてはともかくとして、法人税基本通達9-4-2が存在する根拠については個人的には疑問に感じている。 あえて解釈するのであれば、昭和38年の税制調査会の「所得税法及び法人税法の整備に関する答申」において、 との提言を受けて、現在の法人税法第37条第7項において、 としたことから、これを例示列挙としたうえで、経済合理性のある無利息貸付け等については、業務に明らかに関係あるものとすることにより、法人税基本通達9-4-2がこれに含まれると解さざるを得ないと考えられる。 ② 法人税基本通達9-4-1、9-4-2の位置付け このように、法人税基本通達9-4-1、9-4-2に対する条文上の根拠は曖昧ではあるが、原則として寄附金として処理し、法人税基本通達9-4-1、9-4-2に該当したものについて寄附金として処理しないとしていることから、そもそも「寄附」の要素は存在するのである。 第8回目で解説を行ったが、清水惣事件は合理的な経済目的がある場合には、寄附金としないという余地を残しており、その後に定められた法人税基本通達9-4-1、9-4-2においても、一定の要件を満たした場合には、寄附金とはしないものとしており、寄附を行っているという事実がありながらも法人税法上の寄附金とはしないと規定しているという点に特徴がある。 このことは、国税庁のHP上のタックスアンサー「No.5280 子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例等 Q2-3」においても、 としており、「経済取引として十分説明がつく」という点が重視されている。 この場合における「経済取引として十分説明がつく」という点については、その典型的なケースとしては、子会社の倒産を防止するために行われる緊急的な融資が該当するであろう。 この点につき、森文人氏は と説明されており、合理的な再建計画に基づくつなぎ資金については、無利息貸付けを行ったとしても寄附金とはしない、すなわち、損金の額に算入することができることになる。この場合には、法人税法第22条第2項に基づいて認識した利息収益と同額が損金の額に算入されることになるから、結果として、利息収益を認識しなかったのと同じ効果をもたらすことになる。 法人税基本通達9-4-1、9-4-2の具体的な内容は、昭和55年度において新設された経緯、平成10年度において改正された経緯を含めて、いずれ細かな検討を行う予定である。 今の段階では、法人税基本通達9-4-1、9-4-2は「寄附」の要素は存在するものの、合理的な経済目的がある場合には、寄附金とすべきではないという趣旨から設けられた通達であるということをご理解いただきたい。 また、次回以降は、貸倒損失の具体的な内容を解説する前に、貸倒損失に関連する判例をいくつか紹介する予定である。 (了)

#No. 62(掲載号)
#佐藤 信祐
2014/03/27

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第3回】「貸倒引当金」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第3回】 「貸倒引当金」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   「貸倒引当金」とは、売掛金、受取手形、貸付金、未収入金、立替金、差入保証金、敷金等の債権に対する将来の取立不能見込額を見積もった金額をいう。 将来、貸倒れが発生する可能性が高いであろう事実が当期に発生しているにもかかわらず、実際に貸倒れ事実が発生した時に費用(損失)処理すると、費用(損失)が将来に計上されることになってしまう。そのため、期間損益が正しく表されないこととなる。 そこで、期間損益を正しく表すために、将来の取立不能見込額を見積もり、「貸倒引当金」を計上する必要がある。 貸倒引当金の算定は、以下の4つのステップに分けることができる。 この4つのステップをフロー・チャートにすると、以下のようになる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 なお、ゴルフ会員権においても貸倒引当金を計上することがある(金融商品会計に関する実務指針(以下「実務指針」という)311)が、本解説では言及していない。   【STEP1】では、債権の区分を行う。 金融商品に関する会計基準(以下「基準」という)では、債権を債務者の財政状態及び経営成績等に応じて、「一般債権」、「貸倒懸念債権」、「破産更生債権等」の3つの区分に分け、その区分ごとに貸倒引当金を計上するという方法を採用している(基準27、28)。   (1) 債権の区分 債権の区分は、債務者の経営状態に応じて区分する。 まず、経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権については、「一般債権」に区分する(実務指針109)。 「経営状態に重大な問題が生じている」とは、以下のような場合が該当する。 次に、経営状態に重大な問題はあるが、まだ、経営破綻の状況には至っていない場合、言い換えると、債務の弁済に重大な問題が生じている又は生じる可能性の高い場合には、「貸倒懸念債権」に区分する(実務指針112)。 最後に、経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている場合には、「破産更生債権等」に区分する(実務指針116)。 3つの区分は以下のように、まとめることができる。 ① 一般債権 一般債権とは、経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権をいう(基準27(1))。言い換えると、貸倒懸念債権及び破産更生債権等以外の債権が一般債権となる。 ② 貸倒懸念債権 貸倒懸念債権とは、経営破綻の状況には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか、又は生じる可能性の高い債務者に対する債権をいう(基準27(2))。 「債務の弁済に重大な問題が生じている」とは、具体的な例として以下のような場合が該当する(実務指針112)。 「債務の弁済に重大な問題が生じる可能性が高い」とは、業況が低調ないし不安定、又は財務内容に問題があり(債務超過又は実質的に債務超過の状態等)、過去の経営成績又は経営改善計画の実現可能性を考慮しても債務の一部を条件どおりに弁済できない可能性の高いことをいう(実務指針112)。 貸倒懸念債権に該当するかどうかについて、恣意性を排除するため具体的な基準を決定する必要がある。 ③ 破産更生債権等 破産更生債権等とは、経営破綻(破産、会社更生、民事再生等)又は実質的に経営破綻(深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状態)に陥っている債務者に対する債権をいう(基準27(3))。 (次ページ【STEP2】へ進む) (前ページ【STEP1】へ戻る) 【STEP2】では、一般債権の貸倒引当金について検討する。 一般債権については、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた「貸倒実績率法」により、貸倒引当金を算定する(基準28(1))。 貸倒実績率法とは、「債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する」方法をいう。 ここでは、貸倒実績率による貸倒引当金の算定について、解説する。 貸倒実績率法による貸倒引当金の算定において、具体的には、以下の検討が必要となる。   (1) 貸倒実績率の算定 貸倒実績率の算定は、以下の①から③の順に算定する。 ① 債権残高の集計 一般債権の対象となる債権を集計する。集計は会社の状況により、債権全体で行うか、勘定科目別(例えば、売上債権とその他)や発生原因別(例えば、営業債権と営業外債権)、その他の方法によるグルーピングにより行う。 貸倒実績率は、当期を最終年度とする算定期間を含むそれ以前の2~3期間に係る貸倒実績率の平均値で計算する(詳細は下記③参照)。そのため、算定期間を決定した上で、その決定した期間に対応する債権残高を集計する必要がある(実務指針110)。 算定期間は、一般的に債権の平均回収期間とするのが妥当である(実務指針110)。例えば、平均回収期間が1年の場合、前期末の債権に対する貸倒損失額としては、当期に発生した貸倒損失額を集計することになる。 なお、債権の平均回収期間が1年を下回る場合には、1年とする(実務指針110)。例えば、下記②で貸倒損失額を集計するときに平均回収期間が6ヶ月の場合、前期末の債権に対する貸倒損失額としては、当期の6ヶ月で発生した貸倒損失額ではなく、当期1年間に発生した貸倒損失額を集計することになる。 ② 貸倒損失額の集計 貸倒損失額を債権全体又はグルーピングごとに集計する。貸倒損失額は上述した算定期間に発生した金額を集計する。 貸倒実績率は、当期を最終年度とする算定期間を含むそれ以前の2~3期間に係る貸倒実績率の平均値で計算するため(詳細は下記③参照)、①で決定した期間に対応する貸倒損失額を集計する必要がある(実務指針110)。 なお、貸倒損失額に個別引当金の金額(貸倒懸念債権及び破産更生債権等について計上した貸倒引当金繰入額)を含めるかどうかは、基準上、明確になっていない。しかし、専門家による評価など十分に精度の高い担保及び保証の回収見込額に基づいて引き当てられているものや、損失として早々に実現する可能性が高いものについては、より実態を表すため、個別引当金の金額を貸倒損失額に含めることは差し支えないと考えられる(金融商品会計に関するQ&A(以下「Q&A」という)41)。 ③ 貸倒実績率の算定 貸倒実績率は、上記②で集計した貸倒損失額を①で集計した債権残高で除して算定する。また、算定は債権全体又はグルーピングごとに行う。 当期末に保有する債権について適用する貸倒実績率は、当期を最終年度とする算定期間を含むそれ以前の2~3期間(具体的には①で決定した期間)に係る貸倒実績率の平均値で求める(実務指針110)。 なお、貸倒実績率の算定においては、以下の3つにも留意する必要がある。 なお、貸倒実績率の算定対象期間中に貸倒実績がないからといって、安易に貸倒実績率をゼロと判断してはいけない。 貸倒実績率の算定対象期間中には貸倒れの実績はないものの、それより前に貸倒れの発生があった場合、当該貸倒れの相手先及び債権の内容、発生した当時における企業内の債権管理体制と外部経営環境等を、企業が現在有する債権及び企業の状況と比較して、期末に有する債権の回収期間内において貸倒れの発生がないものと合理的に予想される場合以外は、貸倒実績率をゼロとすることは認められないと考えられる。 この場合には、過去における貸倒実績率の推移等に基づいて、適用する貸倒実績率を算定しなければならない(Q&A40)。   (2) 貸倒実績率による貸倒引当金の算定 貸倒実績率により、貸倒引当金は以下のように算定する。 会計処理の例は以下のとおりである。 【会計処理】 また、前期に貸倒引当金を計上しており、「前期の貸倒引当金」>「当期の貸倒引当金」の場合、当期の貸倒引当金と前期貸倒引当金の差額を取り崩す(実務指針125)。 会計処理の例は以下のとおりである。 【会計処理】 (次ページ【STEP3】へ進む) (前ページ【STEP2】へ戻る) 【STEP3】では、貸倒懸念債権の貸倒引当金について検討する。 貸倒懸念債権については、債権の状況に応じて、「財務内容評価法」又は「キャッシュ・フロー見積法」により貸倒引当金を算定する。   財務内容評価法とは、担保又は保証が付されている債権について、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法をいう(実務指針113(1))。 一方、キャッシュ・フロー見積法とは、債権の元本の回収及び利息の受取に係るキャッシュ・フローを合理的に見積もることができる債権について、債権の発生又は取得当初における将来キャッシュ・フローと債権の帳簿価額との差額が一定率となるような割引率を算出し、債権の元本及び利息について、元本の回収及び利息の受取が見込まれるときから当期末までの期間にわたり、債権の発生又は取得当初の割引率で割り引いた現在価値の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法をいう(実務指針113(2))。   (1) 算定方法の選択 将来キャッシュ・フローを合理的に見積もることが可能であり、かつ、実際の回収が担保処分によるのではなく、債務者の収益を回収原資とする方針である場合は、財務内容評価法よりもキャッシュ・フロー見積法によることが望ましい(実務指針299)。したがって、このような場合には、キャッシュ・フロー見積法を選択することになる。 将来キャッシュ・フローを合理的に見積もることができない場合、又は将来キャッシュ・フローを合理的に見積もることができるが、実際の回収原資が債務者の収益ではなく担保処分によるものである場合には、財務内容評価法を選択することになる。   (2) 財務内容評価法 ① 債務者の支払能力の総合的判断 財務内容評価法を採用する場合には、まず、債務者の支払能力を総合的に判断する必要がある。具体的には、債務者の経営状態、債務超過の程度、延滞の期間、事業活動の状況、銀行等金融機関及び親会社の支援状況、再建計画の実現可能性、今後の収益及び資金繰りの見通し等、定量的・定性的要因を考慮し判断する(実務指針114)。 一般事業会社においては、債務者の支払能力を判断する資料を入手することが困難な場合もあり、例えば、以下のような簡便的な方法を採用することも考えられる。 ただし、個別に重要性の高い貸倒懸念債権については、可能な限り資料を入手し、評価時点における回収可能額の最善の見積りを行うことが必要である(実務指針114)。 ② 担保・保証の評価 次に担保又は保証がある場合、その担保又は保証の評価を行う。 担保の処分見込額を求める場合、合理的に算定した担保の時価に基づくとともに、担保の信用度、流通性及び時価の変動の可能性を考慮する必要がある。なお、簡便法として、担保の種類ごとに信用度、流通性及び時価の変動の可能性を考慮した一定割合の掛目を適用する方法が認められる(実務指針114)。一定割合の掛目としては、実務上、以下の金融検査マニュアルにおける掛目の例示が参考となる。また、定期的に担保の評価について見直しを行う必要がある。 【金融検査マニュアル】 保証による回収見込額を求める場合、保証人の資産状況等から保証人が保証能力を有しているか否かを判断する。また、個人にあっては保証意思の確認、法人にあっては保証契約など保証履行の確実性について検討する必要がある。さらに、定期的に保証人の資産状況等について見直しを行う必要がある(実務指針114)。 なお、清算配当等により回収が可能と認められる金額(債務者の資産内容、他の債権者に対する担保の差入れ状況を正確に把握して当該債務者の清算貸借対照表を作成し、それに基づく清算配当等の合理的な見積りが可能である場合における、当該清算配当見積額)については、担保の処分見込額及び保証による回収見込額と同様に債権額から減額することができる(実務指針114)。 ③ 財務内容評価法による貸倒引当金の算定 財務内容評価法では、貸倒引当金を以下のように算定する。 (※) 買掛金、支払手形等と相殺した後の実質的な債権の金額。 会計処理については、【STEP2】(2)を参照。また、一般事業会社の債務者の支払能力を判断する資料を入手することが困難な場合における簡便的な貸倒引当金の方法については、【STEP3】(2)①を参照。   (3) キャッシュ・フロー見積法 ① 将来キャッシュ・フローの見積り キャッシュ・フロー見積法を採用する場合、まず、将来キャッシュ・フロー(元本の返済+利息の支払)を見積もる(実務指針115)。将来キャッシュ・フローの見積りの際には、債務者の貸借対照表、損益計算書、事業計画、資金繰り表等の情報を加味して、合理的に見積もる必要がある。 また、以下の2点に留意する必要がある。 ② 割引率の算定 割引率には、債権発生時の約定利子率(又は取得した債権の場合、取得時の実効利子率)を用いる(実務指針115)。 ここで使用する割引率は、債権発生時のものである。キャッシュ・フロー見積法が、債権を時価で評価し直すために行われるのではなく、あくまでも債権の取得価額のうち当初の見積キャッシュ・フローからの減損額を算定することを目的として行われるため、将来キャッシュ・フロー見積り時点の改定約定利子率又は市場利子率は使用しない(実務指針299)。 ③ キャッシュ・フロー見積法による貸倒引当金の算定 ①で算定した将来キャッシュ・フローを②で算定した割引率で割引計算する。その割引後将来キャッシュ・フローと債権残高の差額が貸倒引当金となる。 将来キャッシュ・フローの見積りは、少なくとも各期末に更新し、貸倒見積高を洗い替える(実務指針115)。ここで、キャッシュ・フロー見積法は割引計算を行うため、時の経過により割引期間が短くなると、割引後将来キャッシュ・フローが大きくなる。そのため、貸倒引当金が減少する。 その減少分は、金利要素であるため、原則として、受取利息に含めて処理する。ただし、受取利息に含めないで貸倒引当金戻入益として営業費用又は営業外費用から控除するか、営業外収益に計上することもできる(実務指針115)。 《設例2》の会計処理は以下のとおりである。 【X1年度末 貸倒引当金の会計処理】 【X2年度 利息の受取の会計処理】 【X2年度末 貸倒引当金の会計処理】 (次ページ【STEP4】へ進む) (前ページ【STEP3】へ戻る) 【STEP4】では、破産更生債権等の貸倒引当金について検討する。破産更生債権等の貸倒引当金は、「財務内容評価法」により算定する。 (1) 担保・保証の評価 担保又は保証がある場合、その担保又は保証の評価を行う。 評価方法は、貸倒懸念債権の財務内容評価法を同一である(【STEP3】(2)②参照)。 なお、清算配当等により回収が可能と認められる金額は、担保の処分見込額及び保証による回収見込額と同様に、貸倒引当金の算定の際に債権額から減額することができる。 ここで、清算配当等により回収が可能と認められる金額には、債務者の資産内容、他の債権者に対する担保の差入れ状況を正確に把握して当該債務者の清算貸借対照表を作成し、それに基づく清算配当等の合理的な見積りが可能である場合における当該清算配当見積額のほか、清算人等から清算配当等として通知を受けた金額も含まれる(実務指針117)。 なお、貸倒懸念債権では、清算配当等の通知を受けることは稀のため、清算配当等の通知を受けた金額は貸倒懸念債権には含まれない(【STEP3】(2)②参照)。   (2) 貸倒引当金の算定 貸倒引当金は以下のように算定する(実務指針117)。 会計処理については、【STEP2】(2)を参照。 なお、破産更生債権等の貸倒引当金について、どの時点で償却(貸倒引当金と債権額との相殺)を行うかが問題となるが、その時点は、以下のとおりである。 破産更生債権等に区分した時点においては、担保及び保証による回収見込額を控除した残額を貸倒引当金として計上し、次に損失がほとんど確実となった時点でその引当金を回収不能となった債権額と相殺する(Q&A42)。 *   *   * 以上、4つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。    (了)

#No. 62(掲載号)
#西田 友洋
2014/03/27

過年度遡及会計基準の気になる実務Q&A 【第8回】「遡及適用と税務処理」

過年度遡及会計基準の気になる実務Q&A 【第8回】 「遡及適用と税務処理」   公認会計士 阿部 光成   《解 説》 前述のように、過年度遡及会計基準による遡及適用を行ったとしても、税務上の過去の確定申告については、過年度に誤った課税所得の計算をしていないのであれば、特に影響を及ぼすものではない。 税務上の取扱いについては、次のことに注意する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 国税庁Q&Aの概要 国税庁Q&Aでは、問1の答の2(1)「当期における申告調整」において、次のように述べている。 すなわち、法人税の確定申告は「確定した決算」に基づき行うこととされているが(法人税74条1項)、過年度遡及会計基準に基づく遡及処理は過去に「確定した決算」を修正するものではないので、遡及処理が行われた場合でも、その過年度の確定申告において誤った課税所得の計算を行っていたのでなければ、過年度の法人税の課税所得の金額や税額に対して影響を及ぼすことはない。ただし、遡及適用及び修正再表示を行う結果、利益剰余金の前期末残高と当期首残高が不一致となることから、税務上は、当期の法人税申告書別表において所要の調整を行うことが必要になると述べている。 なお、遡及処理とは、遡及適用、財務諸表の組替え又は修正再表示により、過去の財務諸表を遡及的に処理することをいう(過年度遡及会計基準27項)。   Ⅱ 会計方針の変更があった場合の取扱い 国税庁Q&Aの問2「会計方針の変更があった場合(棚卸資産の評価方法の変更)」の設例に基づいて、税務上の取扱いの概要を述べる。 【前提条件】 【遡及適用による影響額の算定】 会計方針の変更に伴い、過年度遡及会計基準に従って遡及適用を行ったところ、前期末の棚卸資産は遡及適用前の550(先入先出法)から遡及適用により500(総平均法)と算定された。 この結果、過年度にすでに開示された財務諸表と異なる資産(棚卸資産)の金額が当期の財務諸表の比較情報として表示され、当期首の棚卸資産及び利益剰余金が、それぞれ50減額して算定されることとなる。 株主資本等変動計算書では、遡及適用の影響が次のように表示される。   【税務処理】 税務上の過去の確定申告については、過年度に誤った課税所得の計算をしていないのであれば、特に影響を及ぼすものではない。 国税庁Q&Aでは、別表の記載方法について次の例を示している。 (了)

#No. 62(掲載号)
#阿部 光成
2014/03/27

林總の管理会計[超]入門講座 【第23回】「管理会計は発展する」

林總の 管理会計[超]入門講座 【第23回】 (最終回) 「管理会計は発展する」   公認会計士 林 總   あらためて考えよう。 なぜ管理会計を学ばないといけないのか?   情報技術が管理会計を発展させる (連載了)

#No. 62(掲載号)
#林 總
2014/03/27

〔会計不正調査報告書を読む〕【第15回】株式会社リソー教育・「不適切な会計処理の疑義に関する第三者委員会調査報告書」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第15回】 株式会社リソー教育・ 「不適切な会計処理の疑義に関する 第三者委員会調査報告書」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【概要】   【株式会社リソー教育の概要】 株式会社リソー教育(以下「リソー教育」という)は、1985年7月設立。TOMASという名称の学習塾を直営方式で経営している。売上高約218億円、従業員数539名(2013年2月期)。本店所在地は東京都豊島区。東証1部上場。 調査の結果、不適切な会計処理が判明したのは、リソー教育の連結子会社、株式会社名門会(以下「名門会」という)と株式会社伸芽会(以下「伸芽会」という)の2社であった。名門会は家庭教師派遣事業を営み、年商約51億円、伸芽会は幼児教育事業を営み、年商約30億円で、いずれも、連結売上高に占める割合が10%を超える重要な子会社である(2013年2月期)。   【報告書のポイント】 1  調査結果により判明した事実 (1) 不適切な会計処理に関する疑義が発覚した経緯 リソー教育は、平成25年11月下旬、証券取引等監視委員会の任意調査を受けたことから、同社及び同社の連結子会社である名門会において、不適切な会計処理が行われた疑いが明らかとなった。 (2) リソー教育における不適切な会計処理の概要 リソー教育における不適切な会計処理の手法は多岐にわたっているが、主な手法は以下の3種類である。調査報告書では、「監査法人の監査を擦り抜けるために、複数の方法を組み合わせたり、過去の方法を応用したりした」売上の不適正計上があったとされている。 ① 「当日欠席」「社員授業」を仮装した売上計上 「当日欠席」とは、授業当日の欠席は、役務の提供があったものとみなされる受講契約を悪用して、授業実施コマ数に応じた売上を計上するものであり、「社員授業」とは、専任講師としての社員が授業を実施したことを仮装して、未消化のコマ数を減らすことにより、売上を計上するものである。 仮装売上に「社員授業」の手法が使われた理由は、社員以外の講師が授業を実施したことを仮装すると、その分、講師料の支払が発生するため、授業実施の偽装には社員である専任講師が利用されたものであろう。 ② 「ご祝儀」を仮装した売上計上 「ご祝儀」とは、生徒が未消化授業を残しながら志望校に合格して退会した場合や、生徒が転居等によって未消化授業が残った場合に、教室の担当者が保護者から明示・黙示による「授業実施と前受金の返還はいずれも不要」との了解を得て、未消化授業相当の売上を計上するものであるが、売上が数字目標に達しないときに、実際には発生していない「ご祝儀」を仮装して、未消化コマ数を減らし、売上計上する不適切な会計処理が行われていた。 ③ 映像講座契約等を利用した不適正な売上計上 契約書の日付を遡及した売上計上、仮契約書に基づく売上計上、契約書の偽造による売上計上など、「映像講座等を使った売上の不適正な計上が大規模かつ組織的に行われたことは明らかである」と報告書は指摘している。 (3) 名門会における不適切な会計処理の概要 名門会の売上計上システムは、契約内容とは無関係に、講師に支払う指導料の算定システムを利用して、その指導料に見合う金額の授業料が入金されているとの仮定に基づいて売上を計上するものであるため、サービス授業(無料)や値引き契約分についても売上が計上される欠陥システムであった。 こうしたシステムの欠陥を利用して、サービス授業の実施により売上目標(ノルマ)の達成を図るとともに、契約を額を増やし、入金額を先取りすることにより、不適正売上の発覚を免れてきた。 (4) 伸芽会における不適切な会計処理の概要 平成25年3月実施予定の春期講習会契約について、実施日を2月と入力することにより、平成25年2月期の売上として64百万円を前倒し計上した。 (5) 不適切な会計処理による影響額について 売上の不適正計上金額は、3社合計で83億8百万円に及ぶ大規模なものであり、調査委員会は、「全社的に不適切な会計処理を行った事案と言っても過言ではなく、上場企業として投資家に対する大きな背信行為であって、企業責任は極めて大きい」と断じている。また、グレーゾーンに属する売上計上の是非については、第三者委員会は、「リソー教育が上場企業であり、投資家に不確実な情報を提供すべきではない」として、会社側が提出した証拠等によって正当なものと認められる場合を除き、不適正なものと推定して処理する方針をとったとしている。   2  調査報告書の特徴 (1) 学習塾運営ビジネスにおける売上計上基準 入塾金と月々の授業料で運営されている学習塾であるが、その一部には、授業料の複数月一括払い、複数年一括払いによる優待と塾生の囲い込みを行っているようである。リソー教育でも数百コマの講習会を一度に契約することも稀ではなかったようで、常に入金が先に立っていることから、コマ数消化を偽装して売上を計上することが横行していた。 本来、会計上の売上高は、契約や入金とは切り離して、授業実施に対応して計上するべきであるが、授業の実施状況と乖離した売上計上が行われていても、入金が先行している、つまり通常の架空売上と異なり、売掛金が滞留しないことから、実態が判明しづらい面があったかもしれない。 (2) 売上至上主義の企業風土 創業者であり、経営者であり、32%の持株を持つ岩佐実次代表取締役会長(以下「岩佐会長」という)の売上に重きを置く経営方針と、これに直結する短期(3ヶ月ごと)の昇給、昇格、降給、降格等の人事制度は、取締役や社員が売上目標達成のためには売上の不適正計上もやむを得ないとの心情に陥らせた。また、当該経営方針のもと、売上に貢献する営業部門(教務企画局)に焦点があてられた結果、同部門による不適正売上をチェックすべき管理部門の立場が弱くなり、内部監査室(在籍者1名は人事部との兼任)も有名無実であったため、不正を防ぐことができなかった。 平成25年2月期の有価証券報告書によると、岩佐会長以外の4名の取締役はいずれも教務企画局の出身であり、ほとんどが局長を経験した後、あるいは局長兼務のまま取締役の地位にある。一方、管理部門担当役員は存在しない。 (3) 監査法人により繰り返された不適切売上の指摘 当社の外部監査は平成19年2月期までは新日本監査法人が担当し、平成20年2月期からは九段監査法人が担当して、現在に至っている。 調査報告書によると、平成17年以降、新日本監査法人から売上計上の否認や過大計上の指摘が繰り返され、「体質改善の試みは見られるものの、実際に改善されるかは不透明な状況にある」との理由で、平成19年2月期の監査終了をもって、監査契約が打ち切られた。 その後を引き継いだ九段監査法人による監査では、教室の往査等により問題を把握した場合には、経営陣に指摘して改善を求めてはいたものの、今回発覚した売上の不適正計上の実態を把握するには至らなかった。 (4) 取締役の責任の有無 岩佐会長について、調査報告書は、「売上の不適正計上に関与し、あるいは認識していたとは認め難い」ことから、「不適切な会計処理の事実を知らなかったことに落ち度があったとまで断じることはできない」としながらも、「一般投資家の信頼を裏切る結果となったことの経営責任は大きいものがある」と述べてはいるが、経営責任の在り方については、「リソー教育の今後の再建を念頭に起きつつ慎重に判断されるべき」とするにとどめた。その後、リソー教育の代表取締役社長らの辞任に伴い、岩佐会長は、代表取締役会長兼社長として、再建を主導することとなった。 調査報告書で、「売上の不適正計上を知りながら黙認」したとされた伊東社長、「自ら指示・命令したことを自認」したとされた赤尾常務取締役、「売上の不適正計上の事実を知りながら黙認・放置したことを自認」したとされた名門会の大森代表取締役社長の3名は、2月14日付で退任した。 (5) 監査役の責任の有無 監査役会の構成メンバーを見ると、常勤監査役は、当社の元専務取締役管理企画局長兼総務部長であり、非常勤監査役(社外監査役)3名のうち1名は公認会計士・税理士であり、他の2名はいずれも国税OBの税理士であった。 不適切な会計処理を防止し、あるいは早期に発見することが強く期待されるメンバー構成であるが、常勤監査役について、調査報告書は、「任務を十分果たしていたとはいえず、その責任は免れない」としたものの、他の3名の非常勤監査役については、「社外監査役としての任務を果たしていなかったとまで言えるかは疑問の残るところである」としている。 (6) 再発防止策 調査報告書は、再発防止策の提言として10項目を挙げているが、根幹となるのは「売上を過度に重視する経営方針の見直し」であろう。 その具体策として、「岩佐会長に比肩しうる見識を持った社外取締役」の受け容れや管理部門の強化、監査役会・内部監査室の充実、人事制度の見直し、外部委員会による再発防止策の進捗状況の検証などが並んでいる。 この提言を受けて、リソー教育は、2月14日付で、再発防止策を発表した。 また、3月4日には、上記(2)組織改革によるコンプライアンス遵守体制の整備の一環として、再発防止委員会を設置し、外部委員に1名の弁護士を迎えることを発表した。しかし、調査報告書で提言されている「外部有識者からなる第三者委員会」ではなく、委員長に岩佐会長兼社長が就き、1名の外部委員以外はすべて社内の委員であることから、実効性には疑問が残るところである。 リソー教育は、「28年連続増収」を標榜してきた。連続増収は、今回発覚した不適正な売上に基づくものであったわけであり、法的責任はともかく、経営責任をとるべきであったはずの岩佐会長兼社長の意識がどのように変わるかが、再発防止のポイントであると言えよう。 (7) 不適切な会計処理が行われていた期間中の資金調達 調査報告書では、「有価証券の偽計募集罪の成否については慎重な判断を要する」と書くにとどまっているが、不適正な売上が計上されている時期に約80億円の資金を市場から調達していたことに対する責任は、法的責任にとどまらない。 「(投資家を)だましてお金を取るようなもので、恥以外の何物でもない」――。日本取引所グループ・斉藤惇CEOは2月25日の定例会見の場で語気を強めた、とする報道もある。 また、3月7日には、証券取引等監視委員会は、「株式会社リソー教育に係る有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について」というリリースを出し、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、約4億円の課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った。   3  訂正された有価証券報告書の内容 (1) 訂正額が大きい勘定科目 訂正有価証券報告書に記載された連結貸借対照表を、訂正前のものと比較すると、訂正額が大きいのは以下のとおりである。なお、粉飾決算により、過年度において過大な法人税額等を納付していることから、繰延税金資産の額も大幅に増加しているが、これは割愛した。 (単位:百万円) (2) 訂正内容から読み取れる不正の手口 前受金の大幅な増加は、本来であれば売上計上できない未消化のコマ数を売上としていた処理を正規の形に戻す過程で発生したものと考えられる。現役の塾生を対象にした売上の前倒し・架空計上が44億円余りあったということであろう。 売上返戻等引当金については、これまで独立科目表示がされておらず、かつ、「重要な引当金の計上基準」に記載もないことから、「ご祝儀」売上の発覚に伴う、退会生に対する未消化コマ数の返金に見合うものであることが推察される。 (了)

#No. 62(掲載号)
#米澤 勝
2014/03/27

内定・採用に関する「よくある質問」 【第3回】「採用内定者の研修会場に向かう途中での事故は労災か」

内定・採用に関する「よくある質問」 【第3回】 「採用内定者の研修会場に向かう途中での事故は労災か」   社会保険労務士 菅原 由紀   労災保険とは 会社で働く労働者は、正社員に限らずパート社員でも1日だけのアルバイトであっても、すべて労働者災害補償保険(以下「労災保険」)による補償を受けることができる。 労災保険には、業務上の事由による業務災害のための補償給付と、通勤の事由による通勤災害による給付がある。 それでは、まず「労働者」とはどういう者をいうかということであるが、労働基準法第9条では「事業又は事業所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義されている。 労働者災害補償保険法の適用を受けられる「労働者」は、労働基準法の「労働者」と同じと解されている。 そこで内定者は「使用」されていて「賃金」を支払われている者に該当するかが、労災保険の適用を受ける上で問題になってくるのである。   研修は労働時間か 入社前研修(前回参照)について、それへの参加を強制する、あるいは「任意」と言いながらも、参加しないと入社後の処遇に影響があるような場合は、その研修への参加は会社からの命令であり、労務の提供とみられることになり、入社前研修に参加する内定者は「労働者」に該当すると考えられる。 なお、言うまでもなく労働時間については、賃金が支払われることが必要である。   内定者と労災保険 内定者への研修が全くの自由参加であり、その研修に参加していなかったことで内定が取消しになったり、入社後も不利益な取扱いを受けないものであれば、その研修への参加は、労務の提供とは言い難く、労災保険の適用の問題は発生しない。 一方、研修への参加が義務づけられていたり、入社後に必要な知識の習得や技能の訓練のための研修であったり、業務研修等の名目で実際に会社の指揮監督の下業務を行っているような場合は、その研修は実質的には「労働」とみなされ、労災保険の適用の可否が問題となってくる。 しかし一般的には、会社からの要請によって、ほとんどの内定者は特別の事情がない限り入社前研修に参加しているのが実情と思われる。そしてこれらの入社前研修については、「研修」であり「労働」ではないため、賃金を支払わないという取扱いをしている会社も少なくないと考えられる。 だが、現実に賃金が支払われていないからといって、直ちに労災保険が適用されないとは限らない。 「労働時間」かどうかは、会社と内定者間の同意ではなく、実態からみて客観的に労働時間と判断されれば、賃金の支払義務がある「労働時間」とされ、この場合、労災保険も適用されることになるであろう。 なお、労災保険の認定は個別具体的な内容を確認しながら、所轄の労働基準監督署長が行うものである。 実務上は、採用内定者の研修会場に向かう途中での事故に労災が適用されるか否かは、所轄労働基準監督署との協議をしながら判断されることになる。 (連載了)

#No. 62(掲載号)
#菅原 由紀
2014/03/27

現代金融用語の基礎知識 【第4回】「ビットコイン」

現代金融用語の基礎知識 【第4回】 「ビットコイン」   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 ビットコインとは? 最近よく耳にするビットコインとは、インターネット上で流通する仮想通貨であり、その実体は暗号データである。「仮想通貨」と混同しがちな言葉に「電子マネー」があるが、それとは異なる。JR東日本のSuicaなどを思い浮かべるとわかるように、電子マネーは事前あるいは事後に入金する必要があり、あくまで円など実物のある通貨の裏付けを伴うものである。それに対して、ビットコインは、そうした通貨とは別の独立した仮想通貨なのである。   2 どのようにして取得するのか? ビットコインは、通常、その専門取引所で通貨と交換することにより取得できる。電子マネーのように入金するというわけではない。ビットコインを売りたい者と買いたい者が、その専門取引所でビットコインと通貨を交換するのである。   3 自分で探し出すことも? ビットコインは、その専門取引所で通貨と交換して取得するだけでなく、何と自分で探し出すこともできる。どういうことかというと、ビットコインの実体は暗号データなのだが、それを解読することにより自分で探し出すこともできるのである。これは、地中から金を掘り出すことに似ているため、「採掘」とよばれている。   4 価値がなくなるのでは? 「採掘」により自分で探し出すことが可能だとすると、無制限に発行されることになり、価値が低下していき、仕舞いには価値がなくなってしまうのではないかと思われる。しかし、そうではなく、プログラムにより発行量の上限が決まっているのである。そのため、需要が大きくなるほど価値が高まっていくことになる。   5 ビットコインのメリットは? ビットコインが普及している理由は、その便利さのためである。クレジットカードで商品やサービスを販売した場合、売上の数パーセントを手数料としてカード会社に支払わなければならないが、ビットコインの場合、そうした手数料はかからない。また、ネットを通じて世界中に送ることができるが、銀行を介するわけではないため、その場合の手数料もほとんどかからないのである。 【ビットコインの取得と利用】   6 課税は? そうした便利なビットコインだが、それについて考えると、様々な疑問がわいてくる。例えば、課税されるのか否かである。ビットコインの便利さに注目して、それで商品やサービスを販売している事業者が、日本国内にも存在する。しかし、ビットコインにより商品やサービスを販売した場合、税法上の収入に当たり、課税されるのだろうか? また、「採掘」によりビットコインを取得した場合はどうなのだろうか?   7 ビットコインのリスクは? ビットコインには、もちろんリスクもある。通貨のように中央銀行が発行量を調整するわけではないため、価値の変動が激しく、また、政府が管理するものではないため、価値が保障されているわけではなく、無価値になる可能性もある。その専門取引所も、現在のところ政府による規制の対象外のため、そこが破綻すれば、ビットコインを通貨に戻せなくなってしまうのである。   8 投資者保護か自己責任か そうした懸念が現実化したのが、ビットコインの専門取引所「マウントゴックス」を運営するMTGOXの破綻である(平成26年2月28日に民事再生手続申請)。これを受けて、政府はビットコインの規制に乗り出そうとしている。 しかし、その前に、投資者保護のためにしっかりと規制すべきなのか、それとも、規制は行わず、あるいは、行うとしても最低限にして、あくまで投資者の自己責任に委ねるべきなのかについて議論が必要なのではないだろうか。 今回のような事件があると、必ず投資者保護のための規制強化が行われる。そのため、わが国の金融商品に関わる法制度は、投資者を手厚く保護するものになっている。しかし、それが本当に良い方法なのだろうか。そうした方法では、自分で適切な投資判断を行える投資者がいつまで経っても育たないようにも思われるのだが。 (了)

#No. 62(掲載号)
#鈴木 広樹
2014/03/27

神田ジャズバー夜話 「11.ジントニック」

多分、ネットで調べたのだろう。知らない会社からバー向けの雑誌やら酒の通販カタログやらが送られてくる。その内の一冊に東京の有名なバー7店のジントニックを紹介しているものがあった。ジンはゴードンだ、ブードルスだ、ライムじゃなくてレモンだ、いや何も入れない、小さなグラスを使うとか店によってバラバラで、どの店も「これが辿り着いた究極のジントニックです」のようなコメントをしていた。 味覚は人によって嗜好が異なり、体調や気分でも変わる。つまり味については万人共通の絶対的評価が存在しない。それでも繁盛していて、多くの客から「ここのジントニックは最高だね」などと言われれば、店の人も「うちのが究極だ」などと言ってみたくなる。 「ふーん、言い切っちゃえばいいんだ」と思った。 時刻は11時半。1時間前から5人のグループ客が飲んでいる。 今夜の客はこのグループだけだ。カウンター席は5席あるが、話すのが目的らしいので4人掛けのボックス席に椅子を1つ足して5人纏めた。音楽は眠くなるようなジュリー・ロンドンを小さく流している。 話の様子から5人は同じ会社の人たちで、40代の男が部長で30代の男が課長、あとは20代の男が2人と女が1人。店に入ってからずっと部長の独演会が続いている。 課長はトイレへ立った帰りにカウンター席へ移動してしまった。20代の男の1人は座ったまま寝ている。女は口をつけていないモスコミュールが入ったグラスをじっと見つめている。もう1人の20代の男だけが部長の聴衆で、たまに頷いているが、やはり眠そうに見える。それでも部長は話を続ける。まだ誰も一杯目の酒を飲み切っていない。 「マスター、ジントニックください」カウンターで課長が2杯目を注文した。 ジントニックは細長いゾンビグラスに製氷機の角氷を5、6個入れ、ビーフイータージンを45ミリとトニックウォーターを注ぎ、最後に半割のライムのさらに1/5ぐらいをみかんの房みたいに切ったのを入れる。ごく普通のレシピのジントニックだ。 「いかがですか。ごく普通のレシピなんですけど結局これが一番だと思うんです」 「おいしいですねえ」 普通のものでもそれらしく一言添えればうまくなる。それは確かなようだ。 退屈なのでカウンター越しに課長と話を続けた。 「皆さんどちらまで帰るんですか」 「千葉とか埼玉とかバラバラですよ」 「まだ電車あるんですか」 「もう、そろそろヤバイですね。タクシーかな」 「いいですね。タクシー代が出るんですか」 「いや、自腹ですよ」 ここまで普通の声で話していたが、部長がトイレへ立った隙に課長に小声で訊いた。 「もう、帰りたい? 」 課長は黙って頷いた。ボックス席を見ると、寝ている男以外の2人も頷いている。 トイレで水を流す音がして部長が戻ってきた。 「マスター、全員にズブロッカ一杯ずつください」 「すいません、もう閉めますんで」 「えー、そうなんだ。じゃあ、お会計」 「はい、えーと6,100円です」 「ということは、ひとり1,200円でいいや、あと俺出すから」と部長は私に一万円札を差し出した。部下たちはゴソゴソと鞄や財布から千円札と小銭を取り出して部長に渡している。 若い3人が先に出て、釣り銭を確かめた部長も「じゃ、また」と続いた。課長が最後になったので話し掛けた。 「電車、大丈夫? 」 「もう、タクシーですね」 「おごりでもないんだ」 「いつものことです。でもジントニックはおいしかったです」 課長は重そうに膨らんだ鞄を肩に掛け、「次はひとりで来ます」と言い残した。 (了)

#No. 62(掲載号)
#山本 博一
2014/03/27

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#Profession Journal 編集部
2014/03/26
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