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日本の企業税制 【第120回】「令和6年度税制改正に向けた外形標準課税の見直しに係る議論」

日本の企業税制 【第120回】 「令和6年度税制改正に向けた外形標準課税の見直しに係る議論」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   〇総務省検討会における議論の状況 去る10月12日、総務省の「地方法人課税に関する検討会」(第7回)が開かれた。今後は11月6日の第8回会合において、外形標準課税の対象法人のあり方に係る基本的な枠組みのとりまとめに向けた議論が予定されている。 今年度の検討課題は、「法人事業税の外形標準課税」と「国際課税」の2つである。第7回会合で示された検討の方向性では、外形標準課税の対象法人のあり方については、 と具体的な検討項目が提示される一方、国際課税については「OECDにおける議論の進捗を見ながら、今後検討(する)」とされるにとどまり、実質的には、外形標準課税に関する検討が中心課題となっている。 与党の令和5年度税制改正大綱では、 とされ、また、本年6月の政府税制調査会の中期答申においても同様の指摘がなされている。 一方、経済産業省の令和6年度税制改正要望では、法人事業税の外形標準課税の適用対象法人のあり方に関する検討を行う際には、地域経済・企業経営への影響も踏まえ慎重に行うよう求めている。   〇減資への対応 今回の第7回検討会資料では下図の通り、減資のパターンを、 の3つに分類したうえで、項目振替型減資にターゲットを絞った対応を検討している。 (※) 総務省ホームページより 現行の資本金1億円で適用対象を区切っていることからくる問題への対応として、新たな指標を付け加えることが検討されており、新たな指標の候補として、 の5つが挙げられている。 このうち①は、資本金から資本準備金ではなく、その他資本剰余金への振替えがなされた場合に対応できないことから除外され、また④及び⑤は利益剰余金等まで含まれることから所得の状況にも左右されるため除外された。このため残る候補は②又は③ということになる。 なお、地方法人税法上の「資本金等の額」は、法人税法上の「資本金等の額」を基礎として無償増減資の額を加減算し、さらに持株会社特例や圧縮特例等を適用して計算されている。②及び③は、ほぼ同様の概念ではあるが、③については自己株式の取得が行われた時点で(消却が行われなくても)減少する点が、②との違いである。 なお、平成27年度税制改正では、自己株式取得による減算による法人事業税資本割の課税ベースがマイナスになる事例が生じていたことから、「資本金等の額」をベースとする法人事業税資本割の課税標準及び法人住民税均等割の税率区分の基準について、「資本金等の額」が会社法上の「資本金+資本準備金」を下回る場合には、会社法上の「資本金+資本準備金」を用いることとされた経緯がある。つまり、上記①が採用された。本来であれば、「資本金+資本剰余金」の方がより「資本金等の額」との間で親和性があるのではないかと考えられるところ、あえて「資本金+資本準備金」とされたのは、税法上の数値である「資本金等の額」と会計上の数値である「資本金+資本剰余金」の額との間には、適格組織再編成その他の理由により大きく乖離している場合があり、基準として用いるのは適切ではないと考えられたことによる。   〇持株会社化・分社化への対応 法人税では、中小法人を区分するため「資本金1億円」を原則的な基準としつつ、その中小法人から、資本金が5億円以上である法人との間にその法人による完全支配関係がある法人等を除くこととしている。 こうした制度を参考に、また、減資対策として、資本金に新たな指標を付け加えることも念頭に、見直しを行う方向が示されている。 (了)

#No. 540(掲載号)
#小畑 良晴
2023/10/19

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第28回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第28回】   東洋大学法学部准教授 泉 絢也   ウ 「③暗号資産の譲渡益の性質」と「④結論」 通常、所得は、その国の法定通貨で計算され、申告される(Nick Pantaleo & J. Scott Wilkie, General Report, in IFA, Foreign exchange issues in international taxation, Cahiers de droit fiscal international, VOL.94b, 29(2009)参照)。 日本の所得税法も、円単位で所得を測定し、税額を算定することを予定しており、円という通貨(邦貨)は、価値を計る物差しであり、円という通貨で構成される現金については他の資産について観念するような形で譲渡損益を観念することはないという見解がありうる(増井良啓「債務免除益をめぐる所得税法上のいくつかの解釈問題(上)」ジュリスト1315号196頁参照。所得税法が金額の単位を円としていることについて、所得税法89条など参照) また、現金は、経済的な価値があって、ある人から他の人に移転可能であるが、誰が持っていてもその額面どおりの価値があり、値上がりや値下がりを考えることができないため、譲渡所得を発生させる資産とはいえず、いわば、それ自体が他のモノや利益の価値を測る尺度であるから、譲渡所得の基因となる資産には当たらないという見解もある(佐藤英明『スタンダード所得税法〔第3版〕』89頁(弘文堂2022))。 租税法律主義への抵触に対する配慮の必要性を抱懐しつつも、円という通貨は、それ自体が他のものや利益の価値を測る価値尺度であり、値上がりや値下がりを考えることができないため、キャピタルゲインを生まず、譲渡所得の基因となる資産には該当しないという見解は一応理解できる。 他方、古銭や記念硬貨は、普通に流通している現金とは異なり、値上がりしたり値下がりしたりするため、譲渡所得の基因となる資産に当たると解されているが、外貨については、ドルのような外貨は交換レートにより、円で価値を計ることができるし、円で表した価値が変動するが、これは譲渡所得の基因となる資産には当たらないという見解もありうる。また、為替相場の変動による損益は、通常、雑所得とされているといわれる(佐藤・前掲書89頁参照)。 このように、邦貨も外貨も譲渡所得の基因となる資産に該当しないという考え方がありうるとしても、邦貨の譲渡からは所得の発生を観念しないこと及びこの点で外貨の場合と相違があることに注意が必要である。 そうすると、外貨はなぜ譲渡所得の基因となる資産に該当しないのか、その理由に関心が向けられる。 この点に関して、上記の見解のうち、古銭や記念硬貨は値上がりしたり値下がりしたりするため、譲渡所得の基因となる資産に当たるが、外貨は譲渡所得の基因となる資産には当たらないという部分はやや言葉足らずのように思われる。 古銭や記念硬貨の値上がり・値下がりの仕組みと、外貨の交換レートの変動の仕組みがどのように異なり、それが譲渡所得の基因となる資産該当性の判断にどのような影響を与えているかが明らかではないからである。ここでは、所得税法は、円単位で所得を測定し、税額を算定することを予定しており、外貨で所得を測定したり、税額を算定したりすることは予定していないこと、他方で、外貨には換算規定(所法57の3)が用意されており特殊な取扱いを受けていること(ただし暗号資産には用意されていないこと)にも目を向けておくべきである。 「譲渡所得の相当部分は物価上昇による名目的利得であるが、その多くの部分は需要と供給の関係によって定まる真正の利得である」という指摘があるところ(金子宏『租税法〔第24版〕』264頁(弘文堂2021))、外貨も暗号資産も需要と供給によって価格が上下に変動し、定まるものである。 もちろん、為替レートや暗号資産の交換レートの決定要因の説明理論を用いて、所得区分判定のために為替差損益の性質を掘り下げることも考えられる。 しかしながら、次のような疑問も同時に浮かんでくる。 為替差損益の所得区分について、ある論者は、「サラリーマンの有する家計に属する外貨の売買については譲渡所得とすることが妥当である」とし、その論拠について、次のとおり論じている(武田昌輔「サラリーマンの有する外貨についての譲渡損益」税経通信52巻15号204頁)。 この論者は、外貨は値上がり等の観念しうる資産、キャピタルゲインを生む資産であると理解しているのであろう。 さて、譲渡所得の本質を外的条件によってもたらされた価値の増加益であると解した場合に(岡村忠生『所得税法講義』216頁(成文堂2007)参照)、通貨の需給バランスによって決定される為替相場の変動による損益はこの譲渡所得の本質と合致するという論理で、上記のような理解を後押しすることもできるであろうか。 このほか、「外貨そのものは、円貨との関係においてキャピタル・ゲインを生むと考えて良い」という見解もある(吉村典久「通貨と租税」金子宏監修『現代租税法講座 第2巻 家族・社会』318頁(日本評論社2017))。 以上のほか、暗号資産の譲渡による所得の所得区分について、譲渡所得に該当せず、原則として雑所得に該当するという国税庁の見解に対しては、諸外国との比較などの観点から疑問を投げかけることも可能である(泉絢也「仮想通貨(暗号通貨、暗号資産)の譲渡による所得の譲渡所得該当性」税法学581号3頁以下、同「オーストラリアのキャピタルゲイン税制と暗号資産(仮想通貨)課税」千葉商大論叢58巻2号141頁以下参照)。   (了)

#No. 540(掲載号)
#泉 絢也
2023/10/19

相続税の実務問答 【第88回】「法人税の調査において死亡退職金の額が過大であると認定された場合」

相続税の実務問答 【第88回】 「法人税の調査において死亡退職金の額が過大であると認定された場合」   税理士 梶野 研二   [答] 法人税の調査において死亡退職金2億5,000万円の支給の事実が否定されたわけではありませんので、法人税の計算上、その一部の損金算入が否認されたことを理由とした相続税の課税価格及び相続税額の減額を求める更正の請求は認められません。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 死亡退職金に対する相続税の課税 相続税は相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額に対して課されますが、相続又は遺贈により取得した財産ではなくとも、これらの事由により取得したのと同視することが相当と考えられる一定の財産について、相続税法は、相続又は遺贈により取得したものとみなして相続税の課税対象とする規定を設けています。 その1つが、被相続人の死亡により相続人その他の者(以下「相続人等」といいます)が取得した当該被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与 (以下、これらを「死亡退職金」といいます)です。すなわち、相続人等が被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金の支給を受けた場合には、その死亡退職金は、その支給を受けた相続人等が相続又は遺贈により取得したものとみなされて相続税の課税対象とされます(ただし、一定の金額については相続税の非課税財産とされています)(相法3①二、12①六)。 相続人等に支払われた金員が死亡退職金に該当するかどうかは、その金員が退職給与規程その他これに準ずるものの定めに基づいて支払われる場合にはこの退職給与規程等により、役員に対するものなど退職給与規程等の適用されない場合や退職給与規程が存しない場合においては被相続人の地位、功労等を考慮し、被相続人の雇用主等が営む事業と類似する事業におけるその被相続人と同様な地位にある者が受け、又は受けると認められる額等を勘案して判定するものとされており(相基通3-19)、また、その名義のいかんにかかわらず実質上被相続人の退職手当金等として支給されるものであれば、死亡退職金として相続税の課税対象とされます(相基通3-18)。   2 法人税における過大退職金の損金不算入 法人税の申告においては、その法人が支払った死亡退職金の額は損金の額に算入されます。しかしながら、退職した役員の業務に従事した期間、その退職の事情、その会社と同種の事業を営む会社でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える部分については損金の額に算入されないこととされています(法法34②、法令70二)。 相当であると認められる金額を超える高額な役員退職給与が損金不算入とされるのは、役員退職給与の損金性を決定する尺度たる当該役員の会社に対する貢献度について算数的正確さをもって客観的に測定すべき基準がないために、その判断が主観的に流れやすい上、個々具体的な退職給与金額には多分に利益処分としての性格を有する支出の含まれる事例が少なくないことから、役員退職給与の損金算入を認めるに当たっては、実体に即した適切な課税と租税負担の公平を期する見地に立って、法人の行為計算にとらわれることなく、一般に相当と認められる金額に限って収益を得るために必要な経費として損金算入を認め、それを超える部分は益金処分として損金算入を認めないものとした趣旨であると考えられます(岐阜地判平成2年12月26日税務訴訟資料181号1104頁)。   3 相続税課税における死亡退職金と法人税における過大退職金 相続税の課税において、退職金支給規程等のない場合、相続人等が支払いを受けた金員が相続又は遺贈により取得したものとみなされる死亡退職金に該当するかどうかは、当該被相続人の地位、功労等を考慮し、当該被相続人の雇用主等が営む事業と類似する事業における当該被相続人と同様な地位にある者が受け、又は受けると認められる額等を勘案して判定することとなります。一方、法人税の課税においては、適切な課税と租税負担の公平を期する観点から、死亡退職金として支払われた金員のうち一定の金額を超える部分について損金の額に算入しないものとされますが、これはあくまでも法人税における所得金額計算上の扱いであって、これによって支払われた金員が死亡退職金に該当しないと判断されたわけではありませんし、また、死亡退職金の支払いの事実が否定されるものでもありません。したがって、法人税の課税上、死亡退職金が過大であるとしてその一部の損金算入が認められないとしても、それが直ちに相続税の課税に影響するものではありません。   4 ご質問の場合 A社は、法人税の税務調査においてお父様の死亡に伴い支給されることとなった死亡退職金の額が過大であると指摘され、当該過大部分の金額を損金不算入として法人税の更正処分を受けたとのことですが、A社から支払われた「死亡退職金」が死亡退職金に該当しないと判断されたわけではありませんし、ましてや死亡退職金の支給それ自体が否定されたわけでもありません。したがって、お父様の死亡退職金のうちの5,000万円部分について法人税の損金算入が認められないとしてA社に対する法人税の更正処分があったとしても、みなし相続財産である死亡退職金の額が減少することとはなりませんので、法人税の更正処分を根拠にして相続税の課税価格及び相続税額の減額を求める更正の請求は認められません。 (了)

#No. 540(掲載号)
#梶野 研二
2023/10/19

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第54回】「役員給与の損金不算入と同族会社の行為計算否認規定」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第54回】 「役員給与の損金不算入と同族会社の行為計算否認規定」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 同族会社の行為又は計算の否認 同族会社は、株主が一族に集中しているため、非同族会社では不可能な取引を行うことが事実上可能であり、これが税負担の軽減に利用される場合も想定される。そこで、法人税法は132条1項において以下のような規定を定めている。 同族会社の取引の選択肢は無数にあるため、法人税法の個別規定では対処できなくなるようなケースも想定される。そこで、法人税の税負担を不当に減少させる結果となると認められた場合には、正常な取引が行われたものとして更正処分等を行うことができるとする規定が用意されたと思われる。すなわち、実際にこの規定を根拠とした更正処分を行う場合には、その行為が「不当」である必要があるが、「不当」の解釈には2つの異なる傾向があるとされる(※1)。これによれば、 という2つの考え方を示しつつ、①は何がその行為にあたるのかという判断が困難であるとして、②が妥当である旨が示されている。 (※1) 金子宏『租税法 第24版』(弘文堂、2021)542頁。 この「不当」の解釈に関する詳細な議論は他に譲るが、役員給与に関する事例において同族会社の行為計算否認が適用されたのは、過大役員給与として否認された東京高裁昭和34年11月17日判決(※2)、法人から代表者の妻に対する支出を交際費と偽ったことに対して適用された東京高裁平成22年8月26日判決(※3)等、いくつかの事例が見られるのみである。 (※2) 税務訴訟資料29号1176頁、TAINS:未登載。 (※3) 税務訴訟資料260号順号11497、TAINS:Z260-11497。 このように、役員給与の損金算入を対象に同族会社の行為計算否認が実際に適用された例は数少なく、これらの事例をみても、同族会社の行為計算否認が適用された直接の理由が判然としていない。例えば、同様の比較的新しい事例として以下のようなものがある。   (2) 役員給与の支給につき同族会社の行為計算否認が適用された事例 同族会社の行為計算否認が適用されて役員給与の損金算入が認められなかった比較的新しい事例として、長崎地裁平成21年3月10日判決がある(※4)。以下にその概要について紹介する。 (※4) 税務訴訟資料259号順号11153、TAINS:Z259-11153。 本件は、更正処分等の対象となった期間中に従業員から役員へ立場が変わった代表者長男乙への支給について、従業員である期間は「使用者の指揮命令に服して継続的ないし断続的に労務又は役務を提供できる常況にあるとは認められない」として、役員である期間は「勉学の傍ら海外において納税者の常況を把握し、業務決定の意思決定に参加できる常況にあるとは認められない」として、課税庁によって、同族会社の行為計算否認規定を根拠に、それぞれ損金算入が否認されたものである。 裁判所は、上記の通り課税庁の判断を支持しており、同族会社の行為計算否認が適用される「不当」と判断した理由について、「乙に対する本件給与等の支給は、その全額が、甲が同族会社であり、乙が甲代表者の子であることから可能であったということができ、これを甲の所得の計算上損金として認めることは、純経済人の行為として不自然、かつ不合理な行為又は計算であって、それによって甲の法人税の負担が減少するといわざるをえない」と示している。 この点、あたかも役員の業務の対価として役員報酬を支給していたことからすれば、隠ぺい仮装事案とみることもできる他、法人税法34条あるいは同法22条3項を根拠とすることもできたのではないかという指摘がある(※5)。これによれば法人税法132条1項を直接の根拠としたことは判然としないが、過去の先例(最高裁平成11年1月29日判決・税務訴訟資料240号407頁、TAINS:Z240-8327)に従ったと推測している。 (※5) 酒井克彦『裁判例からみる法人税法(三訂版)』(大蔵財務協会、2019)414頁。 なお、ここで先例とされた最高裁平成11年1月29日判決は、就学中の未成年への役員報酬の支給を損金算入していたところ、実質的には代表者への報酬であるとして、課税庁が更正処分段階では役員給与の損金不算入の規定により否認しつつ、係争段階では同族会社の行為計算否認規定に差し替えて主張したことが認められたというものである(※6)。 (※6) 税務訴訟資料240号407頁、TAINS:Z240-8327。 ここで、例えば法人税法34条の役員給与の損金不算入の規定が根拠となって損金算入が認められなかった事例として、代表者の妻の実態は非常勤役員に過ぎないことを認定し、同業類似法人の非常勤役員の水準に照らして判断された東京高裁平成23年2月24日判決がある(※7)。裁決例を見ても、同様のケースとして国税不服審判所平成17年12月19日裁決(※8)、国税不服審判所平成9年9月29日裁決(※9)等があるが、通常はこちらのロジックにより否認されるケースの方が大半であるように思われる。 (※7) 税務訴訟資料261号順号11623、TAINS:Z261-11623。 (※8) 裁決事例集70集215頁、TAINS:J70-3-14。 (※9) 裁決事例集54集306頁、TAINS:J54-3-16。   (3) 実際に同族会社の行為計算否認が持ち出される可能性はほとんど無い このように、役員給与の損金算入性について否認される場合、法人税法132条1項を直接の根拠とされるケースは僅少であると思われる。翻せば、勤務実態のない取締役に対する役員報酬について損金算入を否認しようとする場合、上記のように通常の役員給与の損金不算入の規定によって処理されるケースが多いからであり、特に税務調査段階で決着しているものが多いだろうことは想像に難くない。 また、(2)の通り、同族会社の行為計算否認が実際に適用されたケースにおいても、隠ぺい仮装と認定したり、法人税法34条等で対処したりすることができた旨の指摘があるように、実務上、役員給与の損金算入性を対象として同族会社の行為計算否認が適用されるケースはほぼ考えにくいのではないかと思われる。 実務においては、少なくとも、役員給与の損金算入性の判断について、対象となる役員が「納税者の常況を把握し、業務決定の意思決定に参加できる常況」にあるかどうかを確認することで、損金算入性に関する論拠を整えておくべきだろう。   (了)

#No. 540(掲載号)
#中尾 隼大
2023/10/19

基礎から身につく組織再編税制 【第57回】「適格株式交換(完全支配関係)」

基礎から身につく組織再編税制 【第57回】 「適格株式交換(完全支配関係)」   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   前回は組織再編税制における「株式交換」に関する基本的な考え方を解説しました。今回からは数回にわたり適格株式交換に該当する場合の要件について整理していきます。 今回は「完全支配関係がある場合」の適格株式交換の要件について確認します。 なお、完全支配関係の定義については、本連載の【第2回】を参照してください。   1 完全支配関係がある場合の適格株式交換の要件 完全支配関係がある場合の適格株式交換の要件は、次の2つです。   2 金銭等不交付要件 金銭等不交付要件とは、株式交換完全子法人の株主に株式交換完全親法人株式以外の資産が交付されないことをいいます(法法2十二の十七)。 ただし、次の①から④を交付しても金銭等不交付要件には抵触しません。 以下で1つずつ確認していきましょう。 ① 剰余金の配当としての金銭 剰余金の配当として金銭その他の資産を株主に交付しても、金銭等不交付要件に抵触しないこととされています。 ② 反対株主の買取請求に基づく対価としての金銭 買取請求に基づく対価として金銭その他の資産を株式交換に反対する株主に交付しても、金銭等不交付要件に抵触しないこととされています。 ③ 1株未満の端株相当の金銭 株式交換により交付する株式交換完全親法人株式に1株未満の端数が生じたために、その1株未満の株式の合計数に相当する数の株式を他に譲渡し、又は買い取った代金として交付したときは、1株未満の株式に相当する株式を株主に交付したこととなり、金銭等不交付要件に抵触しないこととされています。 ただし、交付された金銭が、交付の状況その他の事由を総合的に勘案して実質的にその株主に対して支払う株式交換の対価であると認められるときは、株式交換の対価として金銭が交付されたものとして取り扱います(法基通1-4-2)。 ④ 株式交換完全支配親法人株式 株式交換完全子法人の株主に株式交換完全支配親法人株式を交付しても金銭等不交付要件に抵触しないこととされています。 (※) 「株式交換完全支配親法人株式」とは、株式交換の直前に株式交換完全親法人と株式交換完全親法人以外の法人との間にその法人による直接完全支配関係があり、かつ、株式交換後に株式交換完全親法人とその法人(親法人)との間にその親法人による直接完全支配関係が継続することが見込まれている場合におけるその親法人の株式をいいます。平成31年度税制改正前は直接保有に限定されていましたが、改正後は間接保有の株式交換完全支配親法人株式を対価として交付する場合についても適格株式交換となります(法令4の3⑰)。 なお、下図のように株式交換完全支配親法人株式を交付する株式交換を「三角株式交換」といいますが、株式交換完全支配親法人株式の1株未満の端数相当の金銭についても④と同様に取扱います(法令139の3の2④)。   3 完全支配関係継続要件 完全支配関係継続要件とは、完全支配関係がある法人同士の株式交換の場合に、再編後においても完全支配関係が継続する見込みがあることをいいます(法法2十二の十七イ、法令4の3⑱)。 (1) 当事者間の完全支配関係 株式交換前に株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に株式交換完全親法人による完全支配関係がある場合には、株式交換後にも株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に株式交換完全親法人による完全支配関係が継続する見込みがあることが求められています。 上図の株式交換後は、C社(株式交換完全子法人)とA社(株式交換完全親法人)との間にA社(株式交換完全親法人)による完全支配関係が継続することが求められます。 (2) 同一の者による完全支配関係 株式交換前に株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に同一の者による完全支配関係がある場合には、株式交換後に株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に同一の者による完全支配関係が継続する見込みがあることが求められています。 上図の株式交換後は、B社(株式交換完全親法人)とC社(株式交換完全子法人)との間にA社(同一の者)による完全支配関係が継続することが求められます。 (3) 株式交換後に適格合併が予定されている場合の要件 ① 当事者間の完全支配関係 (ア) 適格合併で株式交換完全親法人が被合併法人となる場合 株式交換後に株式交換完全親法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、その適格合併に係る合併法人を株式交換完全親法人とみなして完全支配関係を継続する見込みがあることが求められています。 平成31年度税制改正により、株式交換後に株式交換完全親法人を被合併法人、株式交換完全子法人を合併法人とする適格合併を行う場合には、適格合併の直前の時まで完全支配関係が継続すれば、適格合併に該当することとなりました。 (イ) 適格合併で株式交換完全子法人が被合併法人となる場合 株式交換後に株式交換完全子法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、株式交換の時からその適格合併の直前の時まで完全支配関係が継続する見込みがあることが求められています。 ② 同一の者による完全支配関係 (ア) 適格合併で株式交換完全親法人が被合併法人となる場合 株式交換後に株式交換完全親法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、その適格合併に係る合併法人を株式交換完全親法人とみなして合併法人と株式交換完全子法人の間に合併法人による完全支配関係が継続する見込みがあることを求められています。 (※) 同一の者との完全支配関係は、適格合併の直前まで継続する見込みがあることが求められています。ただし、同一の者と合併法人との間に同一の者による完全支配関係がある場合には、適格合併後も株式交換完全子法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係が継続する見込みがあることが求められます。 (イ) 適格合併で株式交換完全子法人が被合併法人となる場合 株式交換後に株式交換完全子法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、株式交換の時からその適格合併の直前の時まで株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に同一の者による完全支配関係が継続する見込みがあることが求められています。 (ウ) 適格合併で同一の者が被合併法人となる場合 株式交換後に同一の者を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、その適格合併に係る合併法人を同一の者とみなして完全支配関係を継続する見込みがあることが求められています。   ◆完全支配関係がある場合の適格株式交換の要件のポイント◆ 金銭等不交付要件において、原則として株式交換完全親法人株式以外の対価を交付しないことが求められています。 完全支配関係継続要件は、合併の場合と異なり株式交換完全子法人が消滅しないため、当事者間の完全支配関係がある場合でも求められます。 株式交換後に合併が見込まれている場合には留意が必要です。   (了)

#No. 540(掲載号)
#川瀬 裕太
2023/10/19

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第27回】「グローバル・トレーディング事件(東裁平20.7.2)(その1)」~租税特別措置法施行令39条の12第8項、OECDレポート(Report on the Attribution of Profits to Permanent Establishments)Part III~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第27回】 「グローバル・トレーディング事件(東裁平20.7.2)(その1)」 ~租税特別措置法施行令39条の12第8項、OECDレポート(Report on the Attribution of Profits to Permanent Establishments)Part III~   大阪芸術大学教授・米国公認会計士 原 光代   〈本件の概要(図)〉   1 グローバル・トレーディング グローバル・トレーディングとは、金融機関等が行う世界規模での金融商品等の取引をいう。ここでいう世界規模での取引とは、3つの主要な時間帯(ニューヨーク、ロンドン、東京又は香港)に跨って行われるものを指す。OECDの「金融商品のグローバル・トレーディングを実施する企業のPEに帰する利益についてのディスカッション・ペーパー(※1)」によれば、グローバル・トレーディングとは、24時間顧客の注文に応じて世界市場で金融商品を売買する金融機関等の活動とされ、取り扱う金融商品は債券、株式、金融先物や金融派生商品等多岐にわたり、利益の形態も株式貸与(※2)やレポ取引からの利子、証券ブローカーとしての手数料等様々である。 (※1) Discussion Draft on the Attribution of Profits to Permanent Establishments(PES: Part III(Enterprises Carrying on Global Trading of Financial Instruments), B-1 Definition of global trading of financial instruments. (※2) 「証券会社は、信用取引において、投資家に資金(=買い建てる場合の買付代金)や株券(=売り建てる場合の売付株式)を貸すが、制度信用取引において、投資家に貸すべきものを調達できない場合には、証券金融会社から売付株式や買付代金を借り入れる。」(野村證券ホームページ「野村證券用語解説集:貸借取引」より抜粋) 同ペーパーが示すグローバル・トレーディングの機能は、(1)販売とマーケティング、(2)トレーディングと日々のリスク管理、(3)資本/リスク引受け及び(4)サポート(バックオフィス)の4つ(※3)に分かれる。この他、グローバル・トレーディングの構成要素として、金融取引の基本方針を指示するマネージメント(※4)機能もあげられている。 (※3) Ibid. Discussion Draft, B-3 Functional analysis: a) Sales and Marketing Functions, b) Trading and Day to Day Risk Management, c) Treasury, d) Support (※4) 宮武敏夫「グローバル・トレーディング」金子宏編『国際課税の理論と実務:移転価格と金融取引』(有斐閣、1997年)、275頁   2 本件概要 本件請求人(納税者)は、A国に本店を置き日本国内の支店を通じてグローバル・トレーディング事業を実施しており、その事業所得を国内源泉所得として日本で法人税の確定申告を行っている。本請求人に加え、A国法人α社、B国法人β社の国外関連者は、顧客との間でα社を契約当事者としてエクイティ・デリバティブ(※5)の売買等(以下「本件事業」)を行っていた。本件事業に係る損益は契約当事者であるα社に計上(book(※6))されるため、請求人は、本件事業に係る自己の役務提供の対価を、「ヘッジファンドにおける利益分割割合」を用いた利益分割法により算定した独立企業間価格でα社に請求していた(※7)。 (※5) 株式の値動きをヘッジするストックオプションなど。 (※6) 「全世界24時間取引型のグローバルトレーディングでは、それぞれの金融機関がブック(book)というものをもつ。ブックとはinventory of financial productsで、自分の持っているファイナンシャル・プロダクツを一つの在庫表としてコンピュータの中に記録しているものである。例えば、ニューヨークの取引時間中に、そのブックはニューヨークが管理している。ニューヨークの取引時間がクローズになって次に東京に移そうという時、そのコンピュータはもちろん東京の支店なり子会社につながっているから、コンピュータによってその管理を東京に渡す。」前掲(※4)書(黒澤利武)、274頁 (※7) 国税不服審判所裁決要旨(平20.7.2東裁(法)平20−4)参照 請求人が本件各事業年度の法人税について確定申告書を提出したところ、原処分庁は、本件事業には「トレーダーの人件費」を分割要因とした利益分割法を用いるのが合理的とし、この方法により独立企業間価格を算定すべき旨を主張、平成17年6月29日付で、所得の金額及び翌期に繰り越す欠損金の額を修正する各事業年度の法人税の各更正処分並びに平成14年11月期及び平成15年11月期の過少申告加算税の各賦課決定処分がなされた。請求人はこれらの処分を不服として、平成17年8月29日に審査請求を行った(※8)。 (※8) 前掲(※4)書(伊藤剛志・水島淳)、178頁 その結果、国税不服審判所は、本件に係る独立企業間価格の算定方法は、請求人が用いた方法も原処分庁の主張する方法も合理性に欠けるとした上で、(1)トレーダーの人件費、(2)α社が本件事業に係る取引を計上(Book)するために金融当局に義務付けられる規制資本にかかる利子相当額の2つを分割要因とする利益分割法が合理的であると結論し、この方法で独立企業間価格を算定したところ国外移転所得が原処分の額を下回るため、原処分はその一部を取り消すべきであると裁決した(※9)。 (※9) 国税不服審判所裁決要旨(平20.7.2東裁(法)平20–4)参照 ((その2)へ続く)

#No. 540(掲載号)
#原 光代
2023/10/19

〔まとめて確認〕会計情報の四半期速報解説 【2023年10月】第2四半期決算(2023年9月30日)

〔まとめて確認〕 会計情報の四半期速報解説 【2023年10月】 第2四半期決算(2023年9月30日)   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 3月決算会社を想定し、第2四半期決算(2023年9月30日)に関連する速報解説のポイントについて、改めて紹介する。基本的に2023年7月1日から9月30日までに公開した速報解説を対象としている。 公開草案及び適用時期が将来のものは、基本的に記載の対象外としている。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ 会計関係 企業会計基準委員会のホームページに、次のものが掲載されている。 〇 「税制適格ストック・オプションに係る会計上の取扱いについて照会を受けている論点に関する解説」(内容:ストック・オプションに関連する税務上の取扱いの改正を踏まえ、ストック・オプションに係る会計上の取扱いに関する照会についての解説)   Ⅲ 金融商品取引法関係 次のものが公布・公表されている。 ① 「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第66号)(内容:新規公開(IPO)の公開価格設定プロセス等について見直すものであり、上場承認前届出書の記載事項に関する改正) ② 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(案)(内容:有価証券報告書等における「重要な契約」の開示に関する改正案。意見募集期間は2023年8月10日まで)   Ⅳ 内部統制関係 次のものが公布・公表されている。 ① 「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(2023(令和5)年6月30日、内閣府令第57号)(内容:企業会計審議会の意見書を受けて所要の改正を行うもの) ② 「財務報告内部統制監査基準報告書第1号「財務報告に係る内部統制の監査」の改正」及び「公開草案に対するコメントの概要及び対応」の公表(内容:「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」(2023年4月7日、企業会計審議会)などを受けた改正) ③ 「「内部統制報告制度に関するQ&A」等の改訂について」(内容:企業会計審議会の意見書の公表を受けて改訂する。金融庁) ④ 財務報告内部統制監査基準報告書第1号周知文書第1号「「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」(2023年4月)等を受けた内部統制監査上の留意事項に関する周知文書」(内容:改訂内部統制基準及び内部統制実施基準等に基づく内部統制監査業務を実施するに当たって、日本公認会計士協会の会員の実務の参考に資するもの。日本公認会計士協会)   Ⅴ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 「「監査事務所検査結果事例集(令和5事務年度版)」の公表について」(内容:公認会計士・監査審査会による監査事務所の検査で確認された指摘事例等を取りまとめたもの) ② 監査基準報告書700実務指針第1号「監査報告書の文例」及び監査基準報告書700実務ガイダンス第1号「監査報告書に係るQ&A(実務ガイダンス)」の改正並びに「公開草案に対するコメントの概要及び対応」の公表(内容:報酬関連情報(監査報酬、非監査報酬及び報酬依存度)の開示の記載例を示す) ③ 業種別委員会研究資料「Web3.0関連企業における監査受嘱上の課題に関する研究資料」(公開草案)(内容:暗号資産やNFT(Non-Fungible Token)などのトークン(電子的な記録・記号)を活用するWeb3.0ビジネスに関連する監査受嘱について記載。意見募集期間は2023年10月6日まで) ④ 倫理規則実務ガイダンス第1号「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」の改正、倫理規則研究文書第1号「倫理規則に基づく報酬関連情報の開示に関するQ&A(研究文書)」 及び「公開草案に対するコメントの概要及び対応」(内容:会計事務所等が改正倫理規則に基づいて報酬関連情報の集計、算定及び開示を行う際の実務上の参考となる考え方を示すもの)   Ⅵ 監査役等の監査関係 監査役等の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 「主要監査業務のポイントと事例研究-監査の実効性と効率性の向上を目指して-(中間報告)」(内容:監査役スタッフの誰もが関わる重要業務を対象にして、その趣旨・目的、業務上のポイント及び留意点、実務上の課題に対応した工夫事例について研究したもの) ② 「監査報告のひな型の改定について」(内容:「監査役(会)監査報告のひな型」などのひな型の改定)   Ⅶ 過年度に公表されている会計基準等 過年度に公表されている会計基準等のうち、2023年4月1日以後に適用されるもの(早期適用を含む)として、次の会計基準等がある。 ① 「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」(2022年8月26日、実務対応報告第43号)(内容:「金融商品取引業等に関する内閣府令」における電子記録移転有価証券表示権利等の発行・保有等に係る会計上の取扱いを示すもの。2023年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。ただし、実務対応報告の公表日(2022年8月26日)以後終了する事業年度及び四半期会計期間から適用することができる) ② 「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(2022年10月28日、改正企業会計基準第27号)等(内容:税金費用の計上区分(その他の包括利益に対する課税)及びグループ法人税制が適用される場合の子会社株式等(子会社株式又は関連会社株式)の売却に係る税効果についての取扱いを示すもの。2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、2023年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる) (了)

#No. 540(掲載号)
#阿部 光成
2023/10/19

給与計算の質問箱 【第46回】「特例措置対象事業場の残業代」

給与計算の質問箱 【第46回】 「特例措置対象事業場の残業代」   税理士・特定社会保険労務士 上前 剛   Q 当社は役員1名、従業員1名、合計2名の飲食店です。当社の給与計算の締め日は末日、支給日は翌月25日です。 従業員の9月末締め10月25日支給の給与計算をしようとタイムカードを確認したところ、1日の労働時間が8時間を超える残業はなく、午後10時以降の深夜残業もありませんでしたが、週の労働時間が40時間を超えている週がありました。この場合の残業代の計算についてご教示ください。 なお、給与計算に関する情報は以下のとおりです。 〈従業員のタイムカードの一部〉 A 質問の場合、飲食店、かつ、従業員が10人未満であり、「特例措置対象事業場」に該当するため、週44時間を超える労働時間について残業代を支給する必要がある。 * * 解 説 * * 1 「特例措置対象事業場」とは 法定労働時間は、原則1日8時間、週40時間だが、「特例措置対象事業場」に該当する場合、1日8時間、週44時間となる。 「特例措置対象事業場」とは、次に掲げる業種に該当する常時10人未満の労働者を使用する事業場をいう。   2 残業代の計算 就業規則等に定めがなければ、週の労働時間の起算日は日曜日となる。特例措置対象事業場では、日曜日から土曜日までの労働時間の合計が44時間までの場合、残業代は不要となる。 図表の上段の週は、48時間勤務しているので「48時間-44時間=4時間分」の残業代が発生する。 4時間分の残業代の計算は、以下のとおりである。 図表の下段の週は、42時間の勤務であり、44時間を超えていないので残業代は発生しない。 (了)

#No. 540(掲載号)
#上前 剛
2023/10/19

《税理士のための》登記情報分析術 【第5回】「権利部「乙区」の見方」

《税理士のための》 登記情報分析術 【第5回】 「権利部「乙区」の見方」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   1 権利部「乙区」について 不動産に関する登記記録の権利部「乙区」には、不動産に設定された所有権以外の権利について登記される。乙区を分析することで、不動産の利用状況などを詳しく知ることができる。   2 登記される権利 乙区に登記される権利には様々なものがあるが、実務においてよく見かける権利は次のとおりである。 (1) 抵当権 抵当権とは、特定の貸金債権などを担保するために不動産に設定される担保権である。住宅ローンなどの際によく利用され、担保の対象となった債権が完済されると抵当権も消滅することになる。 【記載例:抵当権設定の登記記録】 (2) 根抵当権 根抵当権とは、根抵当権者と債務者との間で発生する一定の取引範囲に属する債権を、極度額という金額の枠内で担保するために不動産に設定される担保権の一種である。抵当権と異なり、仮に担保している債権をすべて完済されても、根抵当権を抹消する必要がない(※1)。不動産を活用して継続的に金融機関から融資を受けたい場合は、担保の設定費用が節約できるメリットがある。主に事業性の融資に利用される。 (※1) 「根抵当権の元本確定」といって、一定の事由により根抵当権の担保すべき債権が確定した場合には、担保すべき債権が返済されると根抵当権は消滅することになる。 【記載例:根抵当権設定の登記記録】 【図表:根抵当権のイメージ】 (3) 賃借権・地上権 不動産を利用する権利としてよく利用されるのが、賃借権と地上権である。賃借権は土地や建物を対象に設定することができる。実務でよくあるのは、飲食店などが地主との間で事業用定期借地権を設定し、借り受けた土地の上に店舗を建設して運営するようなケースである。地上権については、太陽光発電事業者が地主との間で土地に地上権を設定して、太陽光発電事業を行っている事例を目にする。 賃借権と地上権の違いは様々あるが、賃借権は譲渡する場合に、原則として賃貸人である地主の承諾が必要であるのに対して、地上権は譲渡が自由となっている。そのため太陽光発電事業のように投資として土地の活用をするような場合に適しているといえる。 【記載例:賃借権設定(事業用定期借地権)の登記記録例】 【記載例:地上権設定の登記記録例】   3 乙区に引かれた下線の意味 乙区では所有権に関する事項が登記された甲区ではあまり見ることのない、下線が引かれた登記事項を目にすることがある。下線が引かれている箇所については、すでに権利の消滅などにより登記が抹消されていることを意味する。 登記制度には「先に登記された権利が、後に登記された権利よりも優先する」というルールがあり、乙区のなかにおいては、順位番号が先のものが優先されることになる。例えば、順位番号1番と順位番号2番で抵当権が設定された不動産が競売された場合には、まず順位番号1番で設定された抵当権の抵当権者が配当を受け、余剰がある場合に順位番号2番の抵当権者が配当を受けることになる。自らの権利を確保するためには、正確に登記記録を読み解くことが重要といえる。 【記載例:下線が引かれた登記記録】 ※この登記記録例では、順位番号1番で登記された抵当権(抵当権者 株式会社XYZ銀行)が抹消されており、順位番号3番で登記された抵当権(抵当権者 株式会社ABC銀行)が実質的に順位番号1番抵当権となる。   4 税理士として乙区の分析力を高める意味 税理士としても乙区の分析力を高めることで、顧客からの信頼を獲得することにつながるだろう。企業の顧問先が多いのであれば、抵当権と根抵当権の違いについては、質問される可能性がある。また投資を行っている顧客からは太陽光発電所への投資の際に、地上権と賃借権の違いについて説明を求められるかもしれない。こうした質問を受けた際に、さわりの部分だけでも説明できるようにしておくと、頼りになる専門家だと顧客から感じてもらえるのではないだろうか。 (了)

#No. 540(掲載号)
#北詰 健太郎
2023/10/19

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第46回】「最有効使用の捉え方」~「更地」と「建物及びその敷地」では最有効使用が異なる場合がある~

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第46回】 「最有効使用の捉え方」 ~「更地」と「建物及びその敷地」では最有効使用が異なる場合がある~   不動産鑑定士 黒沢 泰   1 はじめに 前回、「不動産の価格に関する諸原則」の解説を行うなかで、鑑定実務に特にかかわりの深い最有効使用の原則、適合の原則及び均衡の原則についてその概要を紹介しました。 なかでも、最有効使用の原則は、不動産鑑定士が鑑定評価を行うに際し、以下の点を判定する上できわめて重要な位置付けをなしています。 例えば、対象不動産の価格を査定する際に、これと比較する他の不動産が住環境に適合しており快適性に富むなどその利用価値を最大限に発揮しているにもかかわらず、対象不動産がそのような状況にないという場合、対象不動産は最有効使用の状態にあるとはいえず、その分だけ減価の要因となります。 このような意味から、不動産鑑定士は、「対象不動産の最有効使用は何か」とともに「対象不動産は最有効使用の状態にあるかどうか」という視点を常に念頭に置きつつ鑑定作業を進めています。しかし、鑑定評価書を読む立場からみて紛らわしいのは、「建物及びその敷地」の鑑定評価書のなかに、「更地としての最有効使用」と「建物及びその敷地としての最有効使用」という項目が登場するため、これらの関係が読み取りにくいところにあるものと思われます。 そこで、今回は、「更地」及び「建物及びその敷地」としての最有効使用の意味と、ケースによっては両者が一致しない場合があることを具体的に述べた上で、その根拠となる考え方を解説しておきます。   2 更地としての最有効使用 不動産鑑定評価基準(以下、「基準」と呼びます)では、「更地とは、建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう」と規定しています(総論第2章第2節Ⅰ)。 このように、更地とは建物等の定着物がない状態の土地を指すことはもちろんですが、それだけでは更地とは呼ばれず、所有者による使用収益を制約する他人の権利が付いていない宅地であることが要件となります。 例えば、対象地上に建物等が存在しなくても、その土地の全部に通行地役権が設定されていれば、所有者は自由に土地の利用形態を変更すること(例えば、その土地上に建物を建てる等)ができません。また、その土地に賃借権が設定されている場合も、所有者は自由にその土地を使用できないため、更地とはいえません。 このようなことを裏返せば、更地の場合には、所有者が自分で自由に使用・収益・処分ができることから、(都市計画法や建築基準法等による制限の範囲内で)その土地上にいつでも最有効使用の建物を建築できる状態にあるといえます。すなわち、近隣地域における標準的な使用方法が戸建住宅の敷地であれば、対象地上に戸建住宅を建築して最有効使用を実現する等です(標準的使用の内容に関しては、近隣地域の土地利用状況のいかんによって、店舗の敷地、事務所の敷地など、それぞれ異なります)。 鑑定評価書に登場する「更地としての最有効使用」の欄には、このように更地がいつでも最有効使用を実現できる状態にあることから、近隣地域の土地利用状況を踏まえて最も利用価値を発揮できる利用方法が記載されています。   3 建物及びその敷地としての最有効使用 基準では、「建物及びその敷地の類型は、その有形的利用及び権利関係の態様に応じて、自用の建物及びその敷地、貸家及びその敷地、借地権付建物、区分所有建物及びその敷地等に分けられる」としています(総論第2章第2節Ⅱ)。 例えば、自用の建物及びその敷地については、「建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であり、その所有者による使用収益を制約する権利の付着していない場合における当該建物及びその敷地をいう」と規定しています(同)。 更地の場合と異なり、建物及びその敷地という類型で捉える場合、敷地上には既に建物が存在し、特定の用途に供されています。そのため、既に存在する建物の用途が更地としての最有効使用と同じ状況にある場合もあれば、異なる場合もあります。 鑑定評価書に記載されている「建物及びその敷地としての最有効使用」の用途が「更地としての最有効使用」の用途と異なる場合があるのは上記の理由によります。   4 更地としての最有効使用と建物及びその敷地としての最有効使用が一致する場合 例えば、規模の大きな土地(建物付き)があり、近隣地域の土地利用状況から「更地としての最有効使用」は区分所有建物の敷地と判定されたとします。その土地上には現実に区分所有建物が建築されており、築年数及び現況から判断しても十分な利用価値が見込める場合、「建物及びその敷地としての最有効使用」も区分所有建物の敷地であると判定されます。実際に依頼される鑑定評価の案件にはこのようなケースが多いといえます。   5 更地としての最有効使用と建物及びその敷地としての最有効使用が一致しない場合 鑑定評価の依頼案件のなかにはこのようなものもあり、判断に迷うことが多いのはこれに該当するケースです。 例えば、近隣地域の標準的使用が戸建住宅の敷地(対象地の周辺一帯が同じような利用状況)であるところ、そのなかに規模の大きい共同住宅が建っていたとします(築年数はかなり経過しているものの、建物は賃貸に供されており入居率も50%以上あります)。 このような場合、「更地としての最有効使用」は戸建住宅の敷地と判定されますが、「建物及びその敷地としての最有効使用」も戸建住宅の敷地と判定してよいかどうかが判断の大きな分かれ目となります。 感覚的にいえば、対象地上に建っている建物の築年数がかなり経過していることからこれを撤去し、戸建住宅の敷地として活用する(敷地内に道路を新設して区画を分割する)ことが最有効使用の方法であると考えるのも一理ありそうです。しかし、最有効使用を実現するために多額の費用(例えば、更地価格を相当に上回る建物撤去費用、賃借人に支払う立退料、用途変更に要する工事費用ほか)が発生し、費用対効果の観点から建物の取壊しや用途変更を行うことが経済合理性にそぐわない場合があります(最有効使用を実現させるために大きな損失が生じる場合です)。 本稿で取り上げている設例が仮にこのようなケースに該当するとすれば、対象不動産の最有効使用は、以下のうち、最も高い経済価値を実現できる(イ)の使用方法となり(=(ア)の方法を選択した場合には大きな損失が生じる)、更地としての最有効使用と建物及びその敷地としての最有効使用は一致しないということになります。 このような場合、建物及びその敷地の鑑定評価に当たっては、建物の取壊しを前提とした価格ではなく、現行用途の継続を前提とした価格を求めることとなります。   【参 考】 基準では、建物及びその敷地としての最有効使用の判定に当たっては、次の事項に留意すべきであるとしています。 また、国税不服審判所の裁決事例のなかにも、このような考え方を反映した事案が見受けられるため、税理士の方にとっても留意が必要と思われます(下記事案はその一例です)。 〇国税不服審判所平成31年2月20日裁決(一部抜粋) (了)

#No. 540(掲載号)
#黒沢 泰
2023/10/19
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