《速報解説》 日本監査役協会関西支部 監査役スタッフ研究会、 「改正会社法及びコーポレートガバナンス・コードへの対応状況と監査役・監査役スタッフの役割における今後の課題」 を取りまとめた報告書を公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成29年9月28日(ホームページ掲載日)、日本監査役協会関西支部監査役スタッフ研究会は「改正会社法及びコーポレートガバナンス・コードへの対応状況と監査役・監査役スタッフの役割における今後の課題」(以下「報告書」という)を公表した。 これは、改正会社法(平成27年5月1日施行)及びコーポレートガバナンス・コードにおける監査役等の関連項目に焦点を当て、公表資料等の事例を分析し、今後予想される実務的な課題やその対応策等について各社の事例を中心に研究を行ったものである。報告書にはアンケート結果も記載されているので、実務の動向などを知ることができる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 報告書の主な内容は次のとおりである。 以下では主な内容について解説する。 1 取締役会の事前説明関係 取締役会の事前説明に関する主管部門は、一部では取締役会事務局である総務部等の執行部門になるであろうが、監査役スタッフは、社外監査役が取締役会の場で積極的に質問をし、又は意見を述べられるように、取締役会の議案内容はもとより、付議するに至った背景となる自社や業界のトピックス等の情報を収集し、提供していく姿勢が必要であろうと述べられている(15ページ)。 2 監査役監査関係 監査役監査関係については次のように述べられている。 3 会計監査人関係 会計監査人関係については次のように述べられている。 4 企業集団の内部統制関係 企業集団に関する内部統制を改めて検証する際の課題として、海外子会社に対する内部統制が述べられている(42ページ)。 監査役としては、各子会社における主要な経営リスクについて自社において正確に把握されているか、それに対してどのようなリスク管理体制が整備されているかという視点で監査することが求められると述べられている(43ページ)。 5 取締役会の実効性評価 取締役会の実効性評価を行う部門については、ほとんどが社内部門で対応しており、実効性評価に客観性を持たせるため第三者の視点を取り入れることも有益であるが、外部機関を活用している会社は少なかった。 取締役会の実効性評価に関して、特に社外取締役や監査役には経営監督について大きな役割を果たすことが期待され、評価の主体者であることが望ましいと考えると述べられている(46ページ)。 6 監査等委員会設置会社関係 平成29年7月31日時点で、監査等委員会設置会社への移行(移行表明を含む)をしている上場企業は837社(日本監査役協会関西支部事務局による集計)とのことである。 アンケートでは、監査等委員会設置会社へ移行した企業12社から回答を得たが、母数が少ないことにより回答傾向において偏りがある可能性があるため、移行した企業に追加のヒアリングを行ったとのことである。 監査等委員会設置会社への移行に関するメリットとデメリットについて述べられている。 (了)
《速報解説》 消費税率、2019年(平成31年)10月の10%引上げまで2年 ~軽減税率対策補助金の申請受付期間は来年1月末まで、全国で税務署による説明会も Profession Journal 編集部 安倍首相は昨日9月28日に衆議院を解散、来月22日には衆議院選挙が実施される。今回の解散理由が消費税率引上げ分の使途見直しの是非を問うとしていることから、これまで二度にわたる延期を行ってきた消費税率の10%引上げ及び複数税率(8%の軽減税率)の導入が現実味を帯びてきた。 特に複数税率の対応については取引ごとの適用税率の判定からシステム改修等、個人事業者や中小企業を含む事業活動全体に大きな影響を与えるため、これまで対策に二の足を踏んできた企業や、クライアント企業への指導を積極的に行ってこなかった税理士も、導入までの2年間を意識した具体的な対策スケジュールを立てる必要があるだろう。 ここで活用を検討したいのが、中小企業や小規模事業者等が、複数税率に対応したレジの導入や受発注システムの改修等を行った場合に交付される「軽減税率対策補助金」だ。軽減税率対策補助金は、複数税率対応のレジの導入・改修時に使えるA型と、受発注システムの改修・入替を行う場合に使えるB型の2つに大きく分けられ、それぞれ対象となる改修等要件のほか、補助率や補助額の上限などが定められている。これらの詳細については次の軽減税率対策補助金のホームページが詳しいので、ぜひ確認されたい。 ただし、この補助金についてはすでに昨年(平成28年)3月29日から制度が始まっており、システムの導入・改修の完了期間、及び、補助金の申請受付期間は平成30年1月31日までとなっている。レジメーカーやシステムベンダー等の受注側も対応に追われ期間までに導入・改修が間に合わないケースも想定されることから、未着手の場合は急ぎメーカー等に確認したい。 【参考図】 (※) 軽減税率対策補助金ホームページより 同補助金事務局はホームページで上記の期限について注意を呼びかける一方、駆け込みの申請増によるためか、提出書類の不足や必要事項の記入漏れにより審査から補助金交付までに時間を要する場合が生じているとして、補助金の申請の際には「公募要領」や「申請の手引き」を確認するよう促している。 ちなみに同ホームページ上では「申請書の記入でよくある間違い」というコーナーが設けられ、A型・B型ごとに申請書の記入ミスや記入漏れ、補助金申請額の計算ミスなどの事例が多数紹介されているので、申請前にチェックしておくとよいだろう。 (※) 補助金の代理申請が可能な協力店を検索するページも設けられている。 「代理申請協力店検索」 なお、軽減税率制度についてはすでに9月から全国で税務署による説明会が開催されており、国税庁ホームページでは都道府県ごとの開催日程(随時更新)を確認することができる。 また、本誌1月掲載の金井恵美子税理士による下記の記事も参照されたい。 (了)
2017年9月28日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.237を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第39回】 「有姿除却の課税は国のエネルギー政策に反する」 税理士 山本 守之 1 有姿除却の内容 使用を廃止しているが、解撤、廃棄、破砕を行っていない資産についても、既に固定資産としての命数や使用価値が尽きていることが明確なものについて、現状有姿のまま除却処理を認めようとするものが「有姿除却」です。 すなわち、次のような資産については、その帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額を、有姿のまま除却損として損金の額に算入することができることとしているのです(法基通7-7-2)。 ①については、使用を廃止していることと、今後通常の方法によって事業の用に供する可能性がないという2つの条件を備えれば、現状有姿のままで除却処理をすることを認めたものです。 企業が使用を廃止した資産について解撤、破砕、廃棄等しないのは、これらに多額の費用を要する場合や、将来再使用の可能性がごくわずかであっても残っている場合です。 有姿のまま放置し、又は、わずかな再使用の可能性のために保有している資産を、廃棄等をしないからという理由だけで除却処理を認めないのは現実的でないため、これを認めることとしているのです。 ②については、特定の金型の例示です。金型の耐用年数は2年であるため、一般的には生産を中止した後の帳簿価額はわずかです。さらに、将来再び使用する可能性はごく少ないが、その時点で再び金型を作り直すロスを配慮して使用済みの金型がデットストックされている現状に着目した取扱いです。 2 有姿除却をめぐって争われた事例(中部電力事件) (1) 事例の考え方 1で述べたように、使用を廃止しているが、解撤、廃棄、破砕を行っていない資産についても、既に固定資産としての命数や使用価値が尽きていることが明確なものについて、現状有姿のまま除去処理を認めようとするものが「有姿除却」です。 電力需要に比べて供給力が過大となったため、低効率の発電設備の使用を廃止し、「有姿除却」として除却損を計上した電力会社(中部電力)に対して課税庁が除却損を否認し、更正したことについて争われた事例ですが、物理的に廃棄されていない状態で除却損を認めるという考え方は、通達の有無にかかわらず企業経営面から経済的観察をするという法解釈のあり方を学ぶことができます。 (2) 事例の内容 中部電力株式会社は、平成不況の影響により最大電力の伸び率が純化していたため、平成3年から5年にかけて、急速に最大電力需要に比べて供給力が過大となりつつありました。その後も、長引く不況による需要低迷に加えて、平成8年度以降、発電効率が極めて高いL火力発電所の最新鋭の大規模発電設備が順次運転を開始したため、最大電力需要に比べて供給力が過大となり、設備余剰の状態が一層顕著となっていました。 このような状況を受け、中部電力は、①適切な需給バランスを確保すること、②保守保安費用を低減させること、③発電所運転要員を有効活用することを目的に、平成10年度以降、低効率の既存発電設備について、年間を通じて運用を停止する長期計画停止を行ってきました。 これに対して課税庁は、除却した発電設備を構成する個々の資産の全てが固定資産としての命数や使用価値を失ったことが客観的に明らかでなく、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないとは認められないため、除却損の金額から実際に解体済みと認められる部分の金額及び通常のメンテナンスを行っていたと認められる平成14年3月までの減価償却費の金額を控除した後の金額は損金の額に算入されないとしました。 (3) 判決の考え方 基本通達に「有姿除却」が定められたのは、昭和55年直法2-8です。現在からみればかなり古い時期のものですので、その内容もかなり古いです。現在では、経済的観察及び経営的判断から有姿除却を考える必要があります(現行は法基通7-7-2)。 中部電力では、電力供給が過大となったので、低効率の発電設備を廃止して有姿除却したというものです。 このような「有姿除却」について通達化されていようといまいと、経済的観察と経営上の判断から損金性が容認されるべきなのです。 課税庁は、「各発電設備を構成する個々の資産の全てが固定資産としての使用価値を失ったことが客観的に明らかではなく、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないとは認められない」と主張しています。 つまり、再稼働の可能性があるとしたのです。 しかし、廃止された発電設備の再稼働について判決では、「通常の定期点検に要する費用だけでも1ユニット当たり約10億円を要すること、廃止後に保守又は保全の措置が執られていないために腐食が進行していることを考慮すると、再稼働には通常の点検を大幅に超える費用と時間が必要になると想定される。しかも、このような費用と時間をかけて再稼働したとしても、低効率で経済性が劣る経年火力発電設備が再稼働されるにすぎないから、中部電力がこのような選択をするはずがないことは、社会通念上明らか」としました。 上記のとおり、廃止の理由は、「急速に最大電力需要に比べて供給力が過大となりつつあった」というものでした。その後も、需要低迷に加えて、発電効率が極めて高い最新鋭の大規模発電設備が順次運転を開始したため、設備余剰の状態が一層顕著となっていました。また、発電設備は運用開始後26年ないし38年が経過し、法定耐用年数である15年を大幅に超えて運用されていました。 さらに、原子力や液体天然ガス等に比べ、高価格の石油を用いる低効率の火力発電設備は、年間を通じて運用を停止する長期計画停止を行っており、発電メリットが保守費用を下回る状況が続く見込みであったため、取締役会の承認を経て発電設備が廃止されたのです。 つまり、「火力発電設備の廃止の時点で、各発電設備を構成する個々の資産は、そのほとんどが、社会通念上、その本来の用法に従って事業の用に供される可能性がないと客観的に認められるような状態には至っていなかったとする国の主張は、採用することができない」というのです。 結局、この訴訟では、火力発電設備がその廃止により「既存の施設場所」で「固有の用途」が失われているので有姿除却は認められるべきものであるとしたのです(東京地判平成19年1月31日、TAINSコード:Z257-10623、全部取消し(確定))。 3 国の方針と国税当局 経済産業省は2017年8月18日に、中部電力が大型石炭火力発電所(愛知県武豊町)の新設を計画している事業について、二酸化炭素(CO2)の排出削減への取組みを求める勧告を出し、中部電力が所有する低効率の火力発電所の休廃止・稼働制限など2030年以降に向けて更なるCO2排出削減を実現する見直しを計画的に実施することを求めました。中部電力は同日「勧告を真摯に受け止め、内容を踏まえて環境影響評価書を作成する」と発表しています。 石炭火力は安価ですが、CO2排出量が天然ガスよりも多いのです。温暖化防止を目指す「パリ協定」を踏まえた環境基本計画では、国内の排出量を2050年までに80%削減することを掲げておりますが、目標の達成が厳しくなる恐れがあり、経済産業省は、「温暖化ガスの削減が難しくなる」と懸念を表明している環境省に足並みを揃えるかたちとなりました。 山本前環境相は、2017年8月1日に中部電力の大型石炭火力発電所の新設をめぐって「国がめざす温暖化ガス削減が難しくなる」と指摘し、世耕経済産業相に老朽化した他の火力発電所の見直しを求める意見書を提出しています。 経済産業省と環境省が力を合わせて旧型火力発電所の休廃止を考えていたのに、国税当局が有姿除却に課税するなどは問題です。 幸いに訴訟によって課税が取り消されましたが、国の方針に国税当局が足を引っ張らないよう望みたいと思います。 (了)
組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第6回】 公認会計士 佐藤 信祐 (《第1章》 平成13年度税制改正前の議論) (3) 株主の課税 ① 株式の譲渡損益の取扱い 「会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方」の「第三 株主の課税」では、株式の譲渡損益の取扱いとみなし配当の取扱いが記載されている。このうち、株式の譲渡損益の取扱いは、以下のように記載されている。 【第3回】で解説したように、被合併法人又は分割法人における譲渡損益の計上は「移転資産に対する支配の継続」で考えるのに対し、株主における株式譲渡損益の計上は「投資の継続」で考えることから、両者は異なるものである。すなわち、被合併法人又は分割法人で譲渡損益を計上する場合であっても、金銭などの株式以外の資産の交付を受けていないのであれば、投資が継続していると考え、株式譲渡損益は認識しないことになる。 この点につき、『企業組織再編成に係る税制についての講演録集』32頁(日本租税研究協会、平成13年)では、株主が投資家であるという前提に立った考え方としたうえで、法人と株主との関係において、株主は投資家であると一律に決めて制度を創るのが実態に合っていないという話が出た場合には、もう一度見直しが必要であることも触れられている。 言い換えると、被合併法人を支配する株主が存在する場合において、合併により、当該株主による支配が清算されるのであれば、合併の対価として金銭などの株式以外の資産が交付されたかどうかを問わず、株式譲渡損益を認識するという考え方も、立法論としては可能であるとは思われる。しかし、そこまで複雑な制度にはしておらず、株主が一般投資家の立場であるという前提で制度を創ったのであれば、金銭などの株式以外の資産が交付されていない限り、株式譲渡損益を認識しないという考え方は、事業分離等に関する会計基準32、37、43項とも整合的である。 ② みなし配当の取扱い 「第三 株主の課税」では、みなし配当の取扱いについて、以下のように記載されている。 『企業組織再編成に係る税制についての講演録集』32頁では、この段階では、まだ一部検討が終わっていないとされているため、ここでは、上記から読み取れる内容のみに限定して検討を行うこととする。 非適格合併又は非適格分割型分割を行った場合には、資産及び負債を合併法人又は分割承継法人に時価で移転し、対価として受け取った合併法人株式又は分割承継法人株式を減資の対価として株主に交付したものとして取り扱うこととしている。すなわち、下図の取扱いを想定したものである。 【非適格合併又は分割型分割における取引図】 このような取扱いは、現行法人税法62条1項からも読み取れる。その結果、被合併法人又は分割法人において譲渡損益を認識するだけでなく、その株主においてみなし配当を認識すべきであるという整理になる。さらに、合併法人又は分割承継法人からすれば、「時価による資産の現物出資」を受けていることから、利益積立金額を増加させる理由が存在せず、すべて資本金等の額として受け入れるということになる。 このように、株式譲渡損益の計算と異なり、被合併法人又は分割法人における譲渡損益の処理、その株主におけるみなし配当の処理、合併法人又は分割承継法人における純資産の部が、それぞれ整合的になっている。さらに、適格合併又は適格分割型分割を行った場合には、「利益積立金額が新設・吸収法人や合併法人に引き継がれることから、先に述べたとおり、配当とみなされる部分は無いものと考える」としている。すなわち、適格合併又は適格分割型分割の段階では、配当課税を行わないが、合併法人又は分割承継法人の株主として、配当課税の対象にできるように、利益積立金額として残されているということも言える。 平成22年度に導入されたグループ法人税制により、100%子会社の清算や自己株式の取得により生じる株式譲渡損益相当額について、資本金等の額の増減として取り扱うことになった(法令8①二十)。この根拠は明確ではないが、利益積立金額として処理することができないから資本金等の額として処理したようにしか思えない。 つまり、企業会計では資本・利益区分の原則が存在し(企業会計原則第一の三)、資本として処理できないものをその他利益剰余金の増減としている。債務超過会社の合併、分割において、資本のマイナスとして処理できないことから、その他利益剰余金のマイナスとしていることが良い例として挙げられるであろう(会社計算規則35②但書、37②但書、45②但書、49②但書)。これに対し、法人税法では、利益積立金額として処理できないものを資本金等の額の増減としていると考えると分かりやすい。 この理由については明示されていないが、株主におけるみなし配当課税を意識したものであると考えられる。 * * * 次回では、「第四 各種引当金の引継ぎ等」以降について解説を行う予定である。 (了)
理由付記の不備をめぐる事例研究 【第32回】 「役員賞与引当金」 ~事前確定届出給与に係る役員賞与引当金の繰入額の損金算入が認められないと判断した理由は?~ 千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也 今回は、青色申告法人X社に対して行われた「役員賞与引当金繰入額の損金算入の否認」に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた国税不服審判所平成23年5月19日裁決(TAINSコード:F0-2-496。以下「本裁決」という)を素材とする。 1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注) 素材とした本裁決の裁決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。 2 本件理由付記から読み取ることができる関係図 3 本裁決の判断 本裁決は、大要次のとおり、理由付記に不備はないと判断した。 (1) 求められる理由付記の程度 (2) 理由付記の十分性 4 検討 (1) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、X社が平成21年1月期の法人税の確定申告に当たり、同年3月31日における法人税法34条1項2号の規定に基づく役員給与(事前確定届出給与)の支給に係る引当金の繰入額として1,200万円を損金の額に算入していることを前提として、当該引当金繰入額は損金の額に算入されないとして行うものである。すると、本件更正処分は、更正処分に係る事実関係として、X社の帳簿書類の記載をそのまま受け入れるものであるから、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当する。 したがって、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (2) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 ア 債務確定基準と引当金 法人税法22条3項2号は、当該事業年度の損金の額に算入すべき金額として、「前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額」を掲げている。当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを「当該事業年度の・・・費用」から除外している上記括弧書き部分は、費用の年度帰属(計上時期)を決する役割を有しており、一般に、債務確定基準ないし債務確定主義とよばれている。 企業会計上の引当金は、現時点では財貨又は役務の費消という事実が発生しておらず、あくまで将来的に費用又は損失の発生の可能性が高い場合に計上するものにすぎないし、原因事実の発生といってもどのような事実をその原因と捉えるのかという点について見解が分かれうる。よって、発生の可能性、発生額及び当期の負担に属する金額について、法人による見積りの要素を排除することができないという側面を有する。すると、所得金額の計算の正確性・明確性の担保、課税の公平の確保という観点から、引当金の費用計上を無条件に認めることには不安を覚える。 そこで、法人税法は、債務確定基準を採用するとともに、貸倒引当金(法法52)など別段の定めとしての引当金の規定を設け、この法定された引当金を除き、一般に引当金繰入額を当該事業年度の損金の額に算入することを認めていない。 イ 理由付記の趣旨目的との適合性 上記のとおり、法人税法は、所定の引当金以外の引当金に係る繰入額の損金算入を認めていないところ、本件理由付記には本件更正処分の根拠条文として同法22条3項が明記されておらず、「債務として確定していない」というような文言も使用されていない。 他方、「役員賞与引当金」、「役員賞与引当金繰入額」、更正処分の対象である平成21年1月期の翌事業年度に属する「平成21年3月31日に法人税法第34条第1項第2号の規定に基づく役員給与を支給するに当たり引当金として繰り入れたものである」という本件理由付記の記載振りから、少なくとも、本件更正処分が法人税法上、役員賞与ないし事前確定届出給与に係る引当金繰入額の損金算入は認められないという解釈を前提としていることは容易に読み取ることが可能である。 したがって、本件理由付記は、その記載内容から法令上の根拠が明らかになるものであり、かつ、法令上の要件に対応する具体的な事実を記載するものであり、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものである。よって、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものであると考える。 * * * 次回は、「代表者の配偶者に対する交際費の支出が代表者の役員給与(賞与)に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例54(法人税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆貸倒損失の計上(法法22③三、法基通9-6-1~3) 法人の有する金銭債権について、次の事実が生じた場合には、その金銭債権の額のうち全部又は一部の金額は、その事実が発生した日の属する事業年度において、貸倒れとして損金算入が認められる。なお、①の法律上の貸倒れについては、その切り捨てられることとなった部分の金額につき損金算入が強制される。 ① 法的手続きにより債権の額が切捨てとなったとき(法律上の貸倒れ) ② 回収不能が明らかになったとき(事実上の貸倒れ) ③ 取引停止後1年以上経過したとき(形式上の貸倒れ) ◆事実上の貸倒れ(法基通9-6-2) 法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできない。 (了)
〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第19回】 「別表10(5) 収用換地等及び特定事業の用地買収等の場合の所得の特別控除等に関する明細書」 〈その2〉 公認会計士・税理士 菊地 康夫 Ⅰ はじめに 本稿では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 前回は「別表10(5) 収用換地等及び特定事業の用地買収等の場合の所得の特別控除等に関する明細書」を採り上げたが、今回は同じ別表のうち、「Ⅱ 特定事業の用地買収等の場合の所得の特別控除等に関する明細書」の部分を採り上げる。 Ⅱ 概要 本明細書は、法人が、特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の所得の特別控除(措置法第65条の3)、特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の所得の特別控除(第65条の4)、農地保有の合理化のために農地等を譲渡した場合の所得の特別控除(第65条の5)の規定の適用を受ける場合に記載する。 本制度は、前回説明した収用換地等の場合の5,000万円の特別控除以外にも、法人の有する土地等が特定の事業のために買い取られた場合に認められる所得の特別控除制度である。 そもそも法人が所有する土地等の資産の譲渡益があった場合には、その収益は課税所得となるのが原則である。しかし、特定の公共事業等による買取りの利益までをも課税対象とすると企業は代替資産の取得が困難となり、事業継続に支障をきたす恐れが生じてしまう。 そこで公共事業等の施行を円滑に進めることができるように、一定の要件のもと譲渡益について以下のような特別控除の制度が設けられたのである。 なお本明細書では、上記の場合の他、特定の長期所有土地等の所得の特別控除(措置法第65条の5の2)の場合にも記載することになる。 この制度は、法人が平成21年1月1日から平成22年12月31日までの期間内に取得をした国内にある土地等について、その取得をした日から引き続き所有し、かつ取得をした日の翌日からその土地等の譲渡をした日の属する年の1月1日までの所有していた期間が5年を超えるものの譲渡をした場合で、一定の要件を満たしている場合には、その譲渡益の額のうち年1,000万円までは、その譲渡の日を含む事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することを認めるものである。 これは対象となる土地等の取得を平成21年と22年の2年間に限定し、集中的な土地取得を促進することで、当時の低迷する市場の土地需要を喚起し、土地の流動化を図るための臨時的な特例措置であることに留意する必要がある。 ▼ 注意!▼ これらの特別控除が同一暦年中に2つ以上適用される場合には、特別控除の合計額は5,000万円が限度とされる。この限度額の計算は、事業年度単位ではなく、あくまで暦年単位で判定することになる。 Ⅲ 「別表10(5)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成29年4月1日以後終了する事業年度。 (3) 別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (4) 別表の各記載欄の説明 Ⅱ 特定事業の用地買収等の場合の所得の特別控除等に関する明細書 「譲渡経費の額の計算」 「特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の特別控除額の計算」 「特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の特別控除額の計算」 「農地保有の合理化のために農地等を譲渡した場合の特別控除額の計算」 「特定の長期所有土地等を譲渡した場合の特別控除額の計算」 (了)
平成29年度税制改正を踏まえた設備投資減税の選定ポイント 【第11回】 (最終回) 「設備投資減税と金融支援」 アースタックス税理士法人 代表社員 税理士 島添 浩 シニアマネジャー 税理士 小嶋 敏夫 壽命 正晃 發知 諭志 本連載ではここまで、設備投資減税(中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制、中小企業経営強化税制)に関する規定の概要、手続き、資産別の選択のポイントについて確認してきた。 最終回となる今回は、この設備投資減税を選択した場合における法的な金融支援について確認する。 中小企業等経営強化法では、経営力向上計画が認定された事業者に対して法的な金融支援を行うことを定めており、政策金融機関の低利融資や民間金融機関の融資につき通常融資とは別枠での融資限度額の設定(利率の軽減を含む)、信用保証、保証債務等の資金調達に関する支援策を行うこととしている。 具体的には、以下のような金融支援が定められている。 なお、これらの金融支援策については、設備投資減税の適用が受けられる中小企業者以外の事業者についても支援される制度が含まれており、適用対象者について注意が必要である。 また、上記以外にも経営力向上計画が認定された事業者であれば、『ものづくり・商業・サービス補助金』という補助金制度の審査において加点されることとなっている。 1 適用対象者 中小企業等経営強化法第2条2項において、経営力向上計画の認定を受けることができる中小企業者等とは、以下の法人をいうのであるが、金融支援策については、各支援策によってその対象者が異なるので注意しなければならない。 また、固定資産税の特例や各設備投資減税(中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制、中小企業経営強化税制)の対象となる事業者についても、経営力向上計画の認定を受けることができる事業者とは異なることから確認が必要である。 ◆経営力向上計画の認定を受けられる「中小企業者等」の定義(中小企業等経営強化法第2条第2項) (※) 企業組合、協業組合、事業協同組合、事業協同小組合、商工組合、協同組合連合会、その他政令で定める組合についても、経営力向上計画の認定を受けることができる。 ◆固定資産税の特例が受けられる中小事業者等 ただし、次の法人は、資本金が1億円以下でも対象とならない。 ◆設備投資減税が受けられる中小事業者等 以下の法人のうち青色申告書を提出している法人。 ただし、次の法人は、資本金が1億円以下でも対象とならない。 (注) 資本金が3,000万円超の法人は、税額控除の適用が受けられないなどの制限を受ける場合がある。 ◆各金融支援策と適用対象者 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※1) その他政令で定める法人の意義 中小企業者以外に医療法人等、社会福祉法人、特定非営利活動法人についても資本金等の総額が10億円以下又は従業員数2,000人以下の要件を満たす場合は、その対象となる。 (※2) 中小企業者の意義 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 2 日本政策金融公庫による低利融資 経営力向上計画の認定を受けた事業者が行う設備投資に必要な資金については、日本政策金融公庫において低利で融資を受けることができる。 なお、融資の上限等については、①国民生活事業と②中小企業事業に区分され、以下のようになっている。 ① 国民生活事業(小規模事業者や創業企業への事業資金融資など) (イ) 対象者 次のすべてに該当する者。 (ロ) 貸付限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円) (ハ) 貸付金利 設備資金について、基準利率から0.9%引下げ(運転資金は基準金利) (※) 基準利率は1.76%(平成29年6月現在) (ニ) 貸付期間 ・設備資金20年以内(うち据置期間2年以内) ・運転資金7年以内(うち据置期間2年以内) ② 中小企業事業(中小企業・小規模事業者の成長・発展のための事業資金融資) (イ) 対象者 次の(ⅰ)又は(ⅱ)に該当する者。 (ロ) 貸付限度額 直接貸付7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円) (ハ) 貸付金利 設備資金について、基準利率から0.9%引下げ(運転資金は基準金利) (※) 基準利率は1.21%(平成29年6月現在) (ニ) 貸付期間 ・設備資金20年以内(うち据置期間2年以内) ・運転資金7年以内(うち据置期間2年以内) 3 商工中金による低利融資 経営力向上計画を策定している事業者に対し、商工中金の独自の融資制度により、低利で融資を受けることができる。 なお、商工中金における融資制度の種類としては、革新支援のうち『新事業活動促進資金』に該当し、経営革新計画の承認を受けた中小企業者、経営向上計画について商工中金より承認を受けた中小企業者等が、経営革新、経営の向上等のために必要な設備資金、運転資金の融資を受けることとなる。 4 中小企業信用保険法の特例 中小企業者は、経営力向上計画の実行にあたり、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠が拡大される。 なお、この特例規定は、新商品・新サービスなど「自社にとって新しい取組」(新事業活動)を行う場合に限る。 保証限度額等については、以下のとおりである。 5 中小企業投資育成株式会社法の特例 経営力向上計画の認定を受けた場合、通常の投資対象(資本金3億円以下の株式会社)に加えて、資本金額が3億円を超える株式会社(中小企業者)についても、中小企業投資育成株式会社からの投資を受けることが可能となる。 なお、中小企業投資育成株式会社とは、中小企業投資育成株式会社法によって設立された法人で、資本調達力が弱く、また証券市場を通じて資本を調達することのできない中小企業に対し、「自己資本の充実を促進し、その健全な成長発展を図るため、中小企業に対する投資等の事業を行う」ことを目的として、国、地方公共団体、民間(金融機関、証券会社など) の出資で設立されており、具体的な業務としては、資本金3億円以下の株式会社で、政令で指定する業種に属するものの株式や転換社債の引受け及びその保有することを主な業務としており、それ以外にも投資先企業に対し、依頼に応じて経営や技術指導を行っている。 今回の特例規定により、資本金が3億円超の中小企業者であっても経営力向上計画の認定を受けている場合には、投資を行うことができることとなった。 6 日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット 経営力向上計画の認定を受けた中小企業者(日本国内に親会社がある内国法人)の海外支店又は海外現地法人(以下「海外現地法人等」)が、日本政策金融公庫の提携する海外金融機関から現地通貨建ての融資を受ける場合に、日本政策金融公庫が信用状(スタンドバイ・クレジット)を発行して、債務の保証を実施できることとなった。 具体的な内容は、以下のとおりである。 ① 対象者 信用状の発行が、海外現地法人等が提携金融機関から現地流通通貨建て融資を受けることを目的としたものであり、かつ、次のいずれかに当てはまる法人であること。 (注) 本制度により資金調達を行う海外現地法人等は、認定事業者が経営を実質的に支配している先で、かつ、上記の計画において認定事業者と共同で事業を行うこととされている法人に限る。 ② 信用状の補償限度額 法人1社あたり4億5,000万円とする。なお、海外支店や工場等、国内親会社と法人格が同一の場合は国内親会社毎に4億5,000万円、海外において別個に法人格をもつ場合は当該法人毎に4億5,000万円が補償限度額となる。 ③ 補償料率 信用リスク・信用状有効期間等に応じて所定の料率が適用される。 ④ 信用状の有効期間 1年以上6年以内 ⑤ 海外の借入条件 融資条件(期間・返済方法・金利等)の詳細については、提携金融機関が決定することとなるが、以下の内容であることが必要となる。 ⑥ 提携金融機関 平安銀行(中国)、インドステイト銀行(インド)、バンクネガラインドネシア(インドネシア)、山口銀行(日本)、KB國民銀行(韓国)、CIMB銀行(マレーシア)、バノルテ銀行(メキシコ)、メトロポリタン銀行(フィリピン)、ユナイテッド・オーバーシーズ銀行(シンガポール)、合作金庫銀行(台湾)、バンコック銀行(タイ)、ベト・イン・バンク(ベトナム) 7 中小企業基盤整備機構による債務保証 中堅クラスの企業等、信用保険法の特例(上記4参照)が措置されていない中小企業者以外の者が、経営力向上計画を実施するために必要な資金について、中小企業基盤整備機構が行う中小企業等経営強化法に基づく債務保証制度(経営力向上促進債務保証制度)により、最大25億円までの債務の保証を受けることができる。 なお、中小企業基盤整備機構とは、中小企業を中心とする事業者への事業活動支援を目的として設立された独立行政法人であり、創業や新規事業展開においての資金援助と助言、人材育成支援、産業用地の提供、債務の保証、共済制度の運営等を行っている。 この債務保証については、資本金10億円以下又は従業員2,000人以下の中堅企業等を対象としており、設備投資減税の適用が受けられる中小企業者は対象外となるので注意が必要である。 具体的な内容は、以下のとおりである。 ① 対象事業者 経営資源を高度に利用する方法を導入して事業活動を行うことにより、経営の向上を図る、経営力向上計画の認定を受けた事業者(中堅企業等に限定) ② 保証限度額 25億円(最大50億円の借入まで) ③ 保証割合 50% ④ 保証率 ・有担保の場合0.3% ・無担保の場合0.4% ⑤ 保証期間 ・設備資金は10年以内 ・運転資金は5年以内 8 食品流通構造改善促進機構による債務保証 食品製造業者等は、経営力向上計画の実行にあたり、民間金融機関から融資を受ける際に信用保証を使えない場合や巨額の資金調達が必要となる場合に、食品流通構造改善機構が行う食品流通構造改善対策債務保証事業による債務の保証を受けることができる。 なお、食品流通構造改善促進機構とは、食品の流通部門の構造改善を促進することを目的として、農林水産省の許可を得て設立された公益財団法人であり、食品の流通構造の改善を図る計画で農林水産大臣の認可を受けたもの(認定計画)に係る構造改善事業に必要な資金の借入れに係る債務保証、事業参加及び受託実施、同事業を実施する方に対する必要な資金のあっせん、食品の流通構造の改善を図るための援助、食品流通に関する調査研究、情報の提供など、食品の流通機構の合理化と流通機能の高度化を図る取組を支援する業務などを行っている。 具体的な内容は、以下のとおりである。 ① 対象者 食品の流通部門の構造改善を促進することを目的として経営力向上計画の認定を受けた食品製造業者等(中小企業等経営強化法第2条第2項に規定する中小企業者等) ② 対象資金 対象事業の実施に必要な設備資金並びに同事業の維持発展に必要な運転資金(試験研究費、試作費、市場調査費等) ③ 保証限度額 1事業者あたり6.5億円以内 ④ 保証期間 ・設備資金は20年以内(据置期間5年以内) ・運転資金は5年以内 ⑤ 債務保証料 保証債務残高の0.8%以内 9 補助金制度の加点 経営力向上計画の認定を受けた事業者は、「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金(2次公募)」において、その審査基準に対して加点されることとなっている。 この募集は2次募集となっていることから新規の募集を受け付けているわけではないが、今後も中小企業庁が実施する補助金制度において、認定事業者に対する優遇制度は検討される可能性があるので留意されたい。 10 金融支援制度の適用を受ける場合の留意点 中小企業等経営強化法における金融支援制度については以上のとおりであるが、設備投資減税の対象者や対象資産と必ずしも一致するわけではなく、以下の点に留意する必要がある。 ① 対象者に注意 金融支援制度においては、適用対象者が各制度において異なるが、設備投資減税の対象となる中小企業者よりも範囲が広く、認定事業者であれば金融支援を受けることができる可能性がある。 ② 対象資産に注意 例えば、建物及び構築物については、前回述べたとおり、設備投資減税(中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制及び中小企業経営強化税制)の対象とはならないが、金融支援制度の適用が受けられることに留意すべきである。 また、金融支援制度については、中小企業経営強化税制における生産性向上設備(A類型)及び収益力強化設備(B類型)の区分に関係なく適用できることから、金融支援制度を受ける前提で資産を取得する場合には、手続きを行う際に注意しなければならない。 なお、建物及び構築物は、地域中核企業向け設備投資促進税制(地域未来投資促進税制)の対象資産になっている(【第4回】参照)。 ③ 融資制度を活用するための事前準備 この金融支援制度については、経営力向上計画の認定を受けた事業者であっても各金融機関や団体における審査を別途受けることとなるため、認定事業者であっても金融支援を受けられない可能性があることに注意が必要である。 したがって、金融支援制度を受ける前提で資産を取得する場合には、事前に各金融機関等と検討しなければならない。なお、各金融機関においても経営力向上計画の認定を受けるための指導等を行っていることから、事前確認を有効に活用することが重要となる。 (連載了)
相続空き家の特例 [一問一答] 【第13回】 「相続の時から譲渡の時までの利用制限 (相続後に無償で貸した場合)」 -相続空き家の特例の対象となる譲渡の範囲- 税理士 大久保 昭佳 Q Xは、昨年3月に死亡した父親の家屋(昭和56年5月31日以前に建築)とその敷地を相続により取得しました。 相続の開始の直前まで、父親はその家屋で一人暮らしをしていましたが、相続後、Xは、その家屋を海外勤務から帰国した弟家族に一時的に無償で貸し付けました。 弟家族が新居を購入して転居したことから、その家屋を取り壊して更地にし、本年12月に売却しました。 この場合、Xは、「相続空き家の特例(措法35③)」の適用を受けることができるでしょうか。 A 相続の時から譲渡の時までの間に、被相続人居住用家屋が貸付けの用に供されていたことから、「相続空き家の特例」の適用を受けることができません。 ●○●○解説○●○● 「相続空き家の特例」は、被相続人居住用家屋を譲渡する場合(家屋のみの譲渡又は家屋及びその敷地の譲渡の場合)、又は、被相続人居住用家屋の取壊し等の後に被相続人居住用家屋の敷地等を譲渡する場合(更地の譲渡の場合)も、相続の時から譲渡の時までの間に、「事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されたことがないこと」が要件の1つとして規定されています(措法35③一イ・二イロ)。 そして、この利用制限の要件に係る判定に当たっては、相続の時から譲渡の時までの間に、それが一時的に利用されていた場合であっても、事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたものとして取り扱われることとなります。また、この貸付けの用には、無償の貸付けも含まれることとなっています(措通35-16(相続の時から譲渡の時までの利用制限))。 したがって、本事例の場合、Xの弟家族への貸付は一時的な無償による貸付けであるものの、上記通達の取扱いにより、「相続空き家の特例」の適用を受けることができません。 (了)