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プロフェッションジャーナル No.229が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年8月3日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.229を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/08/03

monthly TAX views -No.55-「政府税調、海外調査報告から読み解く「記入済み申告制度」導入に必要な視点」

monthly TAX views -No.55- 「政府税調、海外調査報告から読み解く 「記入済み申告制度」導入に必要な視点」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   「記入済み申告制度」については、6月1日公開の本連載で取り上げたところである。 その後、6月19日の政府税制調査会で、「ICTの活用と納税者利便の向上」に関する海外調査報告が行われ、議論の方向が見えてきたので、改めてその課題などを考えてみたい。 安倍政権の下では、ドラスティックな税制改革はできない(やらない)というのは今や常識なので、来年度税制改正の目玉は今のところ特になく、「本件が主要な議論になる」と考えられる。 *  *  * まず報告書を読んだ感想として、「各国の税制には、それぞれ歴史があり、ICT(情報通信技術)の活用法も一様ではない」ということだ。 とりわけ、年末調整のある国(英国、ドイツなど)とそうではない国(米国、カナダなど)では、ICTの活用法が異なる(後者の方が進んでいる)ということである。ただし、いずれの国も、わが国よりは活用が進んでいる、というのが第1印象である。 このことは、今後わが国で議論が加速することを示しているといえよう。 議論の焦点となるのは、欧州諸国で導入している「記入済み申告制度」である。これを導入しているのは、おおむね年末調整のない国ということだが、それらの国では、申告に際しての「納税者サービスの一環」として行われているということである。 もう1つ重要なことは、英国やフランス、さらには韓国に代表されるように、記入済み申告の基礎となるICTの活用の目的は、税制だけでなく、社会保障の給付や徴収のためにも必要とされたということである。 (※) 政府税制調査会「政府税制調査会海外調査報告(フランス・イギリス)(説明資料)」 このことは、納税者の所得情報が、「低所得者にとっては主として社会保障に、高所得者にとっては主として税務情報に」活用されるということで、税と社会保障の社会保障・税一体改革的な運用が各国で行われていることを物語っている。 わが国に決定的に欠けているのは、この視点である。 そして、この視点を入れるためには、政府税制調査会という税制だけを扱う場では不十分であって、官邸主導で、社会保障も含めた議論の場を作ることが必要だ。アベノミクスに最も欠ける点といえる。 さらに、米国や英国、つまりアングロサクソンの国は、支払調書の活用というより、サモンズ(行政召喚状)など司法的手続きにより税務に必要な資料を収集することが行われているということもわかった。番号だけでは万能ではないということである。 (※) 政府税制調査会「政府税制調査会海外調査報告(アメリカ・カナダ)(説明資料)」 このような報告を参考に、わが国税制への適用を考えてみたい。 *  *  * わが国申告の特色は、「年末調整がある」ということである。これを米国などのように、「国民全員自主申告」に持っていくことは容易ではないし、すべきでもない。 必要なことは、ある程度の納税者が、選択的に、申告を行えるような制度にすべき、ということである。 そのためには、給与所得控除の概算控除の水準を引き下げる(その分は、人的控除の充実に充てる)とともに、特定支出控除の拡充を図るというセットでの対応が必要となる。 政府税調の考え方は、「まずはICTの年末調整への活用を進めていくこと」のようである。 5月23日の規制改革推進会議で報告された「規制改革推進に関する第1次答申」には、「ICTの一層の活用等により、被用者・雇用者を含めた社会全体のコストを削減する観点から、電磁的な方法による年末調整関係書類の提出を原則全て可能とすることについて、関係者の意見も踏まえて検討し、結論を得る」と記されており、今後進んでいくものと考えられる。 同時に必要なことは、医療費控除の簡素化である。 7月から始まっているマイナポータルには、保険診療については、保険者から支払情報の入手が可能になる方向で議論が進んでいる。これを進めて、保険外診療についても、領収証を電子的にやりとりできるようにしていくことが必要であろう。 医療費控除の還付申告は、全申告数の半分以上を占めており、税務署にとっても、手間をかけての納税の還付である。ここの合理化は大変大きな意味を持つ。 (了)

#No. 229(掲載号)
#森信 茂樹
2017/08/03

〈平成29年度改正対応〉所得拡大促進税制の実務 【第4回】「FAQ②(継続雇用者)」

〈平成29年度改正対応〉 所得拡大促進税制の実務 【第4回】 「FAQ②(継続雇用者)」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   今回は継続雇用者の該当判定に関するFAQ(よくある質問)について解説を行う。 Q3(期中に雇用形態等が変更された場合) 以下のケースについて、継続雇用者に該当するかどうか教えてください。なおいずれの者も65歳未満であることを前提とします。 〈回答〉 〈ケース1〉⇒ 該当する (翌期は該当しない) 〈ケース2〉⇒ 該当しない(翌期は該当する) 〈ケース3〉⇒ 該当する (翌期も該当するが、集計には含まれない) 〈ケース4〉⇒ 該当する (翌期は該当しない) 〈解説〉 継続雇用者とは、「適用年度及びその前事業年度において給与等の支給を受けた国内雇用者」をいう(措法42の12の5②八)。そのため、継続雇用者に該当するかどうかを検討する上では、その前提として「国内雇用者」に該当するかどうかを検討する必要がある。 【第2回】で詳説したが、国内雇用者とは、法人の使用人(役員、役員の特殊関係者、使用人兼務役員を除く)のうち、その法人の有する国内の事業所に勤務する雇用者であって、労働基準法第108条に定める賃金台帳に記載された者をいう(措法42の12の5②一)。 すなわち、国内雇用者は以下の要件を満たしている必要がある。 これらの要件を満たさない者は、国内雇用者に該当せず、したがって継続雇用者にも該当しないということになる。 例えば以下の者は、国内雇用者に該当しない。 これらの者について、前期は国内雇用者として給与等の支給を受けていたことを前提とすると、当期(適用年度)は期首から当分の間、国内雇用者として給与等の支給を受けた期間が存在することから継続雇用者となるが、翌期は国内雇用者に該当しないため、たとえ在籍していても継続雇用者の要件を満たさないこととなる。 つまり継続雇用者への該当性という見地からすれば、期の途中で「国内雇用者に該当しない者」になった場合には、「退職社員」と同じ扱いをすることとなる。同様に、期の途中で国内雇用者に該当することとなった場合には、「新入社員」と同じ扱いをすることとなる。 以上を踏まえ、質問の各ケースについて判断すると以下のようになる。 ▷〈ケース1〉(期の途中で役員となった者)の判定 ・前期:国内雇用者該当 ・当期:国内雇用者該当 ⇒ 国内雇用者非該当 ・翌期:国内雇用者非該当 以上より、当期は「継続雇用者」に該当するが、翌期は「継続雇用者」に該当しないこととなる。 なお、継続雇用者給与等支給額として集計すべき額は、「国内雇用者」であった期間に支給を受けた額に限られるという点についても、念のため申し添える。   ▷〈ケース2〉(期の途中で役員を退任後引き続き嘱託社員として在籍することとなった者)の判定 ・前期:国内雇用者非該当 ・当期:国内雇用者非該当 ⇒ 国内雇用者該当 ・翌期:国内雇用者該当 以上より、当期は「継続雇用者」に該当しないが、翌期は「継続雇用者」に該当することとなる。 なお、翌期における「継続雇用者比較給与等支給額」(翌期からみて「前期」の支給額。すなわち当期の支給額)の算定に当たっては、国内雇用者に該当したとき以降の支給額について集計することとなるので、念のため申し添える。   ▷〈ケース3〉(期の途中で継続雇用制度の適用を受けることとなった者)の判定 ・前期:国内雇用者該当 ・当期:国内雇用者該当 ⇒ 国内雇用者該当(継続雇用制度) ・翌期:国内雇用者該当(継続雇用制度) このケースは他のケースと異なり、いずれの期も「継続雇用者」に該当する。 ただし、継続雇用者給与等支給額の集計に当たっては、継続雇用制度適用対象者は除かれるため、集計の観点からは「期中退職」と同じように取り扱ってよいといえる。 すなわち当期の継続雇用者給与等支給額は、継続雇用制度の適用前までの期間に支給を受けた額について集計し、翌期は集計対象外となる。   ▷〈ケース4〉(期の途中で海外勤務となった者)の判定 ・前期:国内雇用者該当 ・当期:国内雇用者該当 ⇒ 国内雇用者非該当 ・翌期:国内雇用者非該当 〈ケース1〉と同様である。当期は「継続雇用者」に該当するが、翌期は「継続雇用者」に該当しないこととなる。 なお、期の途中で海外勤務から帰任した社員については、〈ケース2〉と同様に考えればよい(当期:該当しない、翌期:該当する)。   Q4(「2期にわたり給与等の支給を受ける」の意義) 継続雇用者の定義中、「適用年度及びその前事業年度等において給与等の支給を受けた」の解釈について、留意すべき点があれば教えて下さい。 〈回答〉 適用年度及びその前事業年度において一度でも給与等の支給を受けていればよく、連続的に支給を受けている必要はない。 ただし、平均給与等支給額の算定対象となる「継続雇用者給与等支給額」の集計に含めるかどうかについては、雇用保険への加入状況を別途考慮する必要がある。 〈解説〉 所得拡大促進税制の適用要件の1つとして「平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を上回ること」が求められているのは、「一人・一月当たりの給与等支給額」が増加することこそが、所得拡大促進税制が最終的に目指す個人所得の拡大 ⇒ 個人消費の拡大 ⇒ 経済成長という循環を実現する上で必要不可欠だからである。つまり、本質的には「一人当たりの給与等支給額」の増加が認められれば、本税制の適用が認められるべきなのである。 制度創設当初、平均給与等支給額は、国内雇用者給与等支給額から「日雇い労働者に係る給与等支給額を控除した額」に基づき算定されていた。しかしこの計算によると、月給の高い社員が退職する一方で新入社員を採用する場合など、構造的に平均給与が引き下がる場合に適用要件を満たすことができないといった問題が指摘されていた。 そこで平成26年度税制改正において、「一人当たりの給与等支給額」をより適切に算定するために、「継続雇用者に対する給与等支給額(継続雇用者給与等支給額)」を対応する支給人員数で除して計算することとしたのである。 継続雇用者とは、適用年度及びその前事業年度において給与等の支給を受けた国内雇用者をいう(措法42の12の5②八)。これにより、適用要件を判断する上で集計すべき平均給与等支給額は、前事業年度と当事業年度(適用年度)の2期にわたり在籍している国内雇用者に対する給与等支給額によって計算されることとなり、前事業年度中の退職社員や、適用年度中の新入社員は算定から除かれることとなった。 そして定義中の「適用年度及びその前事業年度において給与等の支給を受けた」という表現からは、適用年度の前事業年度から継続して在籍し、連続的に給与等の支給を受けていることまでは求められておらず、適用年度及びその前事業年度において一度でも給与等の支給を受けている国内雇用者は全て「継続雇用者」に該当することとなる。 こういった特殊な勤務形態として想定されるのは、例えば、毎年繁忙期の時期だけ業務に従事するパート社員、アルバイト社員などが考えられる。これらの者も、適用年度及びその前事業年度においてそれぞれ支給実績を有しているならば、継続雇用者給与等支給額(及び比較継続雇用者給与等支給額)の集計に含められる必要がある、ということである。   Q5(「雇用保険一般被保険者」の考え方) 平均給与等支給額の算定上、継続雇用者給与等支給額には、継続雇用者のうち雇用保険の一般被保険者のみを集計することとされています(継続雇用制度適用対象者を除く)。 この点、本来は雇用保険の一般被保険者の要件を満たしていながら実際に雇用保険に加入していない社員の取扱いはどうなりますか。 〈回答〉 継続雇用者給与等支給額の集計対象となるのは、雇用保険の一般被保険者「に該当する者」とされており、実際に雇用保険に加入していることは求められていない。 〈解説〉 継続雇用者給与等支給額の定義については、租税特別措置法第27条の12の5第14項において、以下のように規定されている(一部、カッコ書きの中身を省略している)。 (下線筆者) いささか条文の細かい読み方の話にはなるが、条文上、一般被保険者に該当する者という表現が用いられている以上は、加入の有無にかかわらず、一般被保険者の要件に該当する者を広く含むものと解釈すべきである。仮に、雇用保険に実際に加入している者のみを対象とするならば、「一般被保険者に対して支給したものに限り」という表現になるはずだからである。 したがって、継続雇用者給与等支給額の集計に当たっては、実際の加入の有無にかかわらず、雇用保険の一般被保険者の要件を満たしている者に対する給与等支給額を集計すべきである。 参考までに、以下に雇用保険一般被保険者の範囲について示しておく。 (出典:厚生労働省HP公表資料) 〈まとめ〉 継続雇用者に該当するかどうか(その前提として「国内雇用者」に該当するかどうか)、そして継続雇用者に該当したとして「継続雇用者給与等支給額」の集計対象になるかどうかを判断する上では、それぞれの定義をきちんと理解したうえで、それらを判断するために必要な人事情報を効率よく収集・整理することが求められる。 そこで、「国内雇用者」「継続雇用者」及び「継続雇用者給与等支給額の集計対象者」の区別について下図にまとめておく。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   (了)

#No. 229(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2017/08/03

平成29年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第6回】「中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その2)」

平成29年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第6回】 「中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その2)」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   2 中小企業投資促進税制の見直しと適用期限の延長 中小企業投資促進税制について、上乗せ措置(生産性向上設備等に係る即時償却又は税額控除の上乗せ)を廃止(※1)し、対象資産から器具備品を除外した上(※2)、その適用期限を平成31年3月31日まで2年延長する(新措法68の11①)。 (※1) 平成29年4月1日前に取得等をした特定生産性向上設備等は、上乗せ措置が適用される(平成29年所法等改正法附則77②)。この場合、連結法人の平成29年4月1日以後に終了する連結事業年度において、改正後の中小企業投資促進税制の税額控除額に上乗せ分を含めて取扱うものとする(平成29年所法等改正法附則77③)。 (※2) 平成29年4月1日以後に取得等をしたものから除外される(平成29年所法等改正法附則77①)。 また、(1)中小企業経営強化税制、(2)中小企業投資促進税制、(3)商業・サービス業活性化税制について、これらの制度の税額控除額の合計は、当期の調整前連結法人税額の20%を限度とするが、その場合、(2)中小企業投資促進税制⇒(3)商業・サービス業活性化税制⇒(1)中小企業経営強化税制の順序で優先して税額控除される。 さらに、繰越税額控除限度超過額がある場合、まず、3つの制度の当期分の税額控除額から控除され、その後に、同じ順序で繰越税額控除限度超過額が控除される(※3)。 (※3) 平成29年4月1日以後に終了する連結事業年度から適用される(平成29年所法等改正法附則77④)。 なお、連結納税における中小企業投資促進税制について、単体納税と異なる点は次のとおりである。 ① 特別償却制度の適用対象者は、連結親法人又は連結子法人で中小連結法人に該当するもの(中小連結親法人又は中小連結子法人)となる(新措法68の11①)。中小連結法人の定義は、【第3回】「3 研究開発税制の見直し」の(2)を参照。 ② 税額控除制度の適用対象者は、特定中小連結親法人とその中小連結子法人をいう(措法68の11②)。特定中小連結親法人とは、中小連結親法人のうち、資本金の額が3,000万円以下の連結親法人をいう(新措法68の11②、新措令39の41③)。なお、資本金3,000万円を超える中小連結子法人であっても、連結親法人が特定中小連結親法人に該当すれば、税額控除制度の適用を受けることができる。この点、各法人ごとに特定中小企業者を判定する単体納税と取扱いが異なる。 ③ 税額控除については、次の①又は②のうちいずれか少ない金額(法人税額基準額)を限度とする(新措法68の11②、新措令39の41④)。 ※1 調整前連結法人税額は、【第3回】「3 研究開発税制の見直し」の(1)と同じ定義となる。 ④ 繰越税額控除限度超過額は1年間の繰越しができ、次の①又は②のうちいずれか少ない金額(法人税額基準額)を限度として繰越控除できる(措法68の11③、措令39の41⑤)。 ※1 調整前連結法人税額は、【第3回】「3 研究開発税制の見直し」の(1)と同じ定義となる。 ※2 ①の調整前連結法人税額の20%に相当する金額は、中小企業投資促進税制、商業・サービス業活性化税制及び中小企業経営強化税制の当期分の税額控除額がある場合、その税額控除額を控除した残額となる。 ※3 ②の金額は、連結親法人又はその連結子法人に中小企業投資促進税制、商業・サービス業活性化税制及び中小企業経営強化税制の当期分の税額控除額の個別帰属額がある場合、その個別帰属額を控除した残額となる。 ⑤ 各連結法人ごとに税額控除額(個別帰属額)が計算されるため、全体計算の場合の個別帰属額の計算はない(新措法68の11⑪⑫、新措令39の41⑥⑦)。 ⑥ 帳簿書類の備付け等により連結納税の承認が取り消された場合の税額控除額の取消しについて、中小企業経営強化税制と同様の取扱いとなる(新措法42の6⑤、68の11⑤、新措令27の6⑧、39の41⑧)。 ⑦ 地方法人税における中小企業投資促進税制の税額控除額の取扱いについて、中小企業経営強化税制と同じ取扱いとなる(新地方法6三、新措法68の11⑪⑫、新措令39の41⑥⑦、新地方法15①)。 ⑧ 住民税の各連結事業年度の個別帰属法人税額(道府県民税及び市町村民税の課税標準)の計算において、法人税における中小企業投資促進税制に係る税額控除額の個別帰属額は個別帰属法人税額から控除される(連結法人税個別帰属額に加算しない。新地法23①四の三、292①四の三)。   3 商業・サービス業活性化税制の適用期限の延長 商業・サービス業活性化税制について、その適用期限を平成31年3月31日まで2年延長する(新措法68の15の4①)。 また、(1)中小企業経営強化税制、(2)中小企業投資促進税制、(3)商業・サービス業活性化税制について、これらの制度の税額控除額の合計は、当期の調整前連結法人税額の20%を限度とするが、その場合、(2)中小企業投資促進税制⇒(3)商業・サービス業活性化税制⇒(1)中小企業経営強化税制の順序で優先して税額控除される(※4)。 さらに、繰越税額控除限度超過額がある場合、まず、3つの制度の当期分の税額控除額から控除され、その後に、同じ順序で繰越税額控除限度超過額が控除される(※4)。 (※4) 平成29年4月1日以後に終了する連結事業年度から適用される(平成29年所法等改正法附則79)。 なお、連結納税における商業・サービス業活性化税制について、単体納税と異なる点は次のとおりである。 ① 特別償却制度の適用対象者は、連結親法人又は連結子法人で、認定経営革新等支援機関等による経営の改善に関する指導及び助言を受けた旨を明らかにする書類として経営改善指導助言書類の交付を受けた中小連結法人に該当するもの(特定中小連結親法人又は特定中小連結子法人)となる(新措法68の15の4①)。中小連結法人の定義は、【第3回】「3 研究開発税制の見直し」の(2)を参照。 ② 税額控除制度の適用対象者は、資本金の額が3,000万円以下の特定中小連結親法人と資本金の額が3,000万円以下の特定中小連結親法人による連結完全支配関係がある特定中小連結子法人をいう(新措法68の15の4②、措令39の45の4③)。なお、資本金3,000万円を超える特定中小連結子法人であっても、連結親法人が資本金3,000万円以下となる特定中小連結親法人に該当すれば、税額控除制度の適用を受けることができる。この点、各法人ごとに特定中小企業者を判定する単体納税と取扱いが異なる。 ③ 税額控除については、次の①又は②のうちいずれか少ない金額(法人税額基準額)を限度とする(措法68の15の4②、措令39の45の4④)。 ※1 調整前連結法人税額は、【第3回】「3 研究開発税制の見直し」の(1)と同じ定義となる。 ※2 ①の調整前連結法人税額の20%に相当する金額は、中小企業投資促進税制の当期分の税額控除額がある場合、その税額控除額を控除した残額となる。 ※3 ②の金額は、特定中小連結親法人又はその特定中小連結子法人に中小企業投資促進税制の当期分の税額控除額の個別帰属額がある場合、その税額控除額の個別帰属額を控除した残額となる。 ④ 繰越税額控除限度超過額は1年間の繰越しができ、次の①又は②のうちいずれか少ない金額(法人税額基準額)を限度として繰越控除できる(新措法68の15の4③④、新措令39の45の4⑤)。 ※1 調整前連結法人税額は、【第3回】「3 研究開発税制の見直し」の(1)と同じ定義となる。 ※2 ①の調整前連結法人税額の20%に相当する金額は、商業・サービス業活性化税制及び中小企業経営強化税制の当期分の税額控除額と中小企業投資促進税制の税額控除額(繰越税額控除限度超過額の税額控除額を含む)がある場合、その税額控除額を控除した残額となる。 ※3 ②の金額は、連結親法人又はその連結子法人に商業・サービス業活性化税制及び中小企業経営強化税制の当期分の税額控除額と中小企業投資促進税制の税額控除額(繰越税額控除限度超過額の税額控除額を含む)の個別帰属額がある場合、その個別帰属額を控除した残額となる。 ⑤ 各連結法人ごとに税額控除額(個別帰属額)が計算されるため、全体計算の場合の個別帰属額の計算はない(新措法68の15の4⑪⑫、新措令39の45の4⑥⑦)。 ⑥ 帳簿書類の備付け等により連結納税の承認が取り消された場合の税額控除額の取消しについて、中小企業経営強化税制と同様の取扱いとなる(新措法42の12の3⑤、68の15の4⑤、新措令27の12の3⑦、39の45の4⑨)。 ⑦ 地方法人税における商業・サービス業活性化税制の税額控除額の取扱いについて、中小企業経営強化税制と同じ取扱いとなる(新地方法6三、新措法68の15の4⑪⑫、新措令39の45の4⑥⑦、新地方法15①)。 ⑧ 住民税の各連結事業年度の個別帰属法人税額(道府県民税及び市町村民税の課税標準)の計算において、法人税における商業・サービス業活性化税制の税額控除額の個別帰属額は個別帰属法人税額から控除される(連結法人税個別帰属額に加算しない。新地法23①四の三、292①四の三)。   (了)

#No. 229(掲載号)
#足立 好幸
2017/08/03

相続空き家の特例 [一問一答] 【第5回】「「相続空き家の特例」を受けられない家屋③(別棟の離れ、倉庫、蔵、車庫等の建築物)」-相続空き家の特例の対象となる譲渡の範囲-

相続空き家の特例 [一問一答] 【第5回】 「「相続空き家の特例」を受けられない家屋③ (別棟の離れ、倉庫、蔵、車庫等の建築物)」 -相続空き家の特例の対象となる譲渡の範囲-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、昨年6月に死亡した父親の居住用家屋等(昭和56年5月31日以前に建築)及びその敷地を相続により取得しました。 相続の開始の直前において、父親は、その母屋、離れ、蔵、車庫を一体として居住の用に供し、1人で住んでいました。 Xは、それら建築物を耐震リフォームした上で、その土地と建築物の全てを売却しました。 この場合の、「相続空き家の特例(措法35③)」の適用対象となる被相続人居住用家屋の範囲を説明してください。 A 相続の開始の直前において被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる母屋部分のみが被相続人居住用家屋に該当します。 ●○●○解説○●○● 「相続空き家の特例」の適用対象となる被相続人居住用家屋は、その相続の開始の直前において、その相続又は遺贈に係る被相続人の居住の用に供されていた家屋で、その被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる一の建築物に限るとされています(措法35④、措令23⑥)。 そして、「相続空き家の特例」の場合は、他の「居住用財産を譲渡した場合の特例」と違い、被相続人居住用家屋は一の建築物に限ると規定されていることから、被相続人の居住の用に供されていた家屋が複数の建築物からなる場合であっても、それらの建築物のうち、その被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる一の建築物のみが被相続人居住用家屋に該当し、その一の建築物以外の建築物は、被相続人居住用家屋に該当しないとされています(措通35-10(被相続人居住用家屋の範囲))。 立法者の解説においても とされています(財務省HP「平成28年度税制改正の解説」152頁)。 (了)

#No. 229(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/08/03

租税争訟レポート 【第33回】「顧問税理士の不正発見義務(東京地方裁判所判決)」

租税争訟レポート 【第33回】 「顧問税理士の不正発見義務(東京地方裁判所判決)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝     【事案の概要】 本件は、診療所を経営する医師である原告が、税理士である被告と税務顧問契約を締結していたところ、①原告が雇用していたA(以下「A」という)の横領につき、被告が、会計上の不正行為の有無を調査しなかったこと又は会計上の不正行為が疑われる事実を報告しなかったことが税務顧問契約上の債務不履行になるとし、損害賠償請求権に基づき、損害合計6,975万3,500円、及び、②原告の承諾なく被告が顧問料及び決算報酬の増額分を受け取っていたとして、不当利得返還請求権に基づき、当該増額分の合計額112万円の合計7,087万3,500円の支払いを求める事案である。 争点は、以下の4点である。 本稿では、(争点1)被告の義務及び義務違反の存否について、原告、被告の主張と裁判所の判断を中心に検討したい。   【(争点1-1)被告は、原告に対し、会計上、不正行為が行われているかを調査する義務があったか】 1 原告の主張 原告は、「顧問契約において、決算書類の作成補助、税務申告の代行、税務調査及び税務・会計に関する相談、総勘定元帳等の会計帳簿の作成、税務書類等の作成以外に、経営上の助言及び指導についても委任した」というものであり、「経営上の助言及び指導」については、「金の流れが正常であるかについて確認し、会計上、不正行為が行われているか調査を行うことである」としたうえで、原告が、被告に対し、顧問契約において、経営上の助言及び指導を委任したことは、以下の事実から認められるべきであると主張した。 2 被告の主張 一方、被告である税理士は、「経営の助言・指導及び不正行為の発見は、顧問契約の委任の範囲に含まれていない」とし、「不正の防止・不正の発見は、本来、経営者である原告が行うべきことである」と主張した。 そのうえで、税理士の業務は、税務代理、税務書類の作成、税務相談という本来の税務士業務と、その付随業務としての財務諸表の作成、会計帳簿の記帳代行等であるから、通常の税理士顧問契約は、これらの業務に限られ、これらを超える経営上の助言・指導等の業務は、特別な合意がある場合に限られるところ、顧問契約では特段の合意はないと上記の主張を裏づけ、また、被告には、雇用関係がなく指揮命令権もない事務長であるAを監督する権限又は義務は存在しないと主張した。 3 裁判所の判断 裁判所はまず、「顧問契約につき、原告と被告の間で作成された契約書等はなく、原告が、明示的に、被告に対し、不正行為についての調査を委任したと認めることはできない」として、被告の主張を認めたうえで、原告の経営指導も含まれていたという主張、供述については、「主観的な期待にすぎず、税理士の業務が、税務代理、税務書類の作成、税務相談及び付随業務としての財務諸表の作成、会計帳簿の記帳代行等である(税理士法2条)ことに照らしても、原告の期待がやむを得ないといえるような客観的な事情を認めることはできない」として、原告の主張は採用できないと判断し、被告は、原告に対し、会計上、不正行為が行われているかを調査する義務があったと認めることはできない、と結論づけた。   【(争点1-2)被告は、原告に対し、会計上、不正行為が行われていると疑われる状況がある場合、これを報告する義務があったか】 1 原告の主張 原告は、受任者は、善管注意義務を負い、また、税理士は、税理士法1条又は41条の3から、適正な税額の算定に当たって不正行為を排除すべきことを要求されていると解されることからすれば、会計業務を委託された税理士は、委託者に対して、不正が疑われる状況にある場合には、その状況を報告すべき義務を負うというべきであると主張した。 本件において、保管金から院長出金の名目で複数回にわたって多額の金員が引き出されていることは、不正が疑われる具体的な状況であり、被告はこれを原告に報告すべきであったが怠ったため、注意義務違反に該当するとした。 2 被告の主張 一方、被告は、税理士が、従業員の不正を認識した場合に、依頼者に対し、当該不正を報告する義務が認められることはあっても、不正が疑われるべき状況を報告すべき義務はないとしたうえで、仮に、被告に報告義務が認められるとしても、本件において不正が疑われる状況にあったことは否認すると主張した。 被告は、保管金から「院長出金」として支出された金額について、「事業主貸」「店主勘定」として計上していたが、これらの項目には、一般的に、事業上必要な経費であるが領収書をもらえない支出や事業主の個人的な生活費の支払等が計上されるものであり、高所得の病院長であれば、一般的に事業主貸勘定は高額になり、毎月何百万単位の事業主貸勘定が発生することは特別なことではない、と反論した。 3 裁判所の判断 裁判所は、まず、原告は、被告に対し、不正行為の調査を委任したということはできず、顧問契約における委任事務は、税理士としての本来業務である税務代理、税務書類の作成、税務相談及び付随業務としての財務諸表の作成、会計帳簿の記帳代行に限られるというべきであると前提となる事実を述べたうえで、受任者である被告は、委任の本旨に従った善管注意義務を負うものの、顧問契約において、診療所の適正な運営、委任者である原告の財産の管理や保全が委任の本旨になるものではないため、善管注意義務の内容として、被告が、一般的に、原告の財産又は本件診療所の運営に対する不正が疑われる状況にあるのかどうかを判断し、原告に報告にすべきであったということはできないと判断した。 同時に、仮に、被告が委任事務を処理する際、会計上、不正行為が行われていることを知り、又は不正行為が行われていると疑われる状況を知ったにもかかわらず、原告に報告しなかったとしても、安易にこれを原告に報告することは、かえって当該不正行為を行ったと疑われた者に対する名誉毀損等の問題すら生じかねないのであって、法的な責任を負うべき義務違反はないというべきであると、原告の主張を退けた。 また、原告による税理士法1条、41条の3の趣旨から、被告に報告義務があったとする主張については、「税理士法1条及び43条の1は、税理士が納税義務の適正な実現を目指すことを規定するものであって、委任者の財産等の保護等を規定するものではない」としたうえで、「院長出金の増加や資金繰りの悪化の原因としては、従業員の横領以外の原因であることも十分あり得る」のであって、Aの横領によることが一見して明らかであったともいうことはできないにもかかわらず、被告が、原告に対し報告すべきであったということはできないと判断し、被告は、原告に対し、会計上、不正行為が行われていると疑われる状況を報告する義務があったということはできないと結論づけた。   【(争点1-3)被告は、原告に対し、決算報告等を行うべき義務を怠ったか】 1 原告の主張 原告は、被告が、原告に対し、決算報告、財務書類の説明を行ったことがなく、被告は、Aに対し、決算報告等をしていたと主張するが、否認するとして、原告に決算報告等を行う義務を怠ったと主張した。 2 被告の主張 被告は、Aを通じて、原告に対して決算書類や税務申告の説明・報告をしているし、被告が診療所を訪問した際に、原告と顔を合わせたときには、直接原告に対して説明・報告をしていると主張した。 具体的には、決算時期になれば、原告に決算説明のアポイントを入れ、基本的に原告及び同席していたAに対して、決算説明を行い、その際には、決算資料を原告に渡している。アポイントがとれない場合は、Aに対して説明を行ったが、それは、原告から会計や出納を含め、診療所に関する診療以外の事務についてAに任せているのでAに対して行うよう指示があったからである。 3 裁判所の判断 裁判所は、被告が、診療所のA宛に作成した決算書等の財務諸表を送付し、また、決算報告も電話でAに説明していたことを認めたうえで、Aについて、平成10年9月頃、AがBの事務を全て引き継いでおり、診療所内において、Bが担当していた財務諸表や決算報告の確認についても、Aが担当することになっていたと判断し、原告の明示の指示がなくとも、被告が、Aへ財務諸表を送付し、Aに決算報告を説明すれば、必要なことは原告に伝わるはずだと考えて、Aに財務諸表の送付や決算報告をしたことが、顧問契約上の義務に違反するということはできないと結論づけて、原告の主張を退けた。   【(争点1-4)被告は、Aから横領をしたと聞いた後、直ちに原告に報告すべき義務を怠ったか】 1 原告の主張 原告は、被告が、平成21年5月15日、Aから横領の事実を告白された後、受任者の善管注意義務に基づき、直ちに原告に当該事実を報告すべきであったにもかかわらず、これを怠ったと主張した。 2 被告の主張 原告の主張に対し、被告は、平成21年5月15日にAから横領の告白を受けた際、Aに対し原告へ横領の事実を告白するよう説得し、A本人の意思を尊重するとともに、横領額について帳簿上確認する必要があると判断して原告への報告を一時留保したのであり、報告を怠ったものではないと反論した。 3 裁判所の判断 裁判所は、「被告は、Aから、平成21年5月15日、3,000万円を横領した旨告白されたにもかかわらず、直ちにこれを原告に報告しなかったこと」を認めたうえで、被告は告白を受けてからおよそ1週間後には原告に報告しており、被告には、Aからの告白を受けて直ちにこれを原告に報告すべき義務があったとまで認めるに足りる証拠はないとして、原告の主張を退ける判断を行った。   【解説】 税理士による顧問先従業員不正発見義務については、富山地方裁判所平成12年8月9日判決がこれまでリーディング・ケースとされてきた。同判決は、医院を経営する原告とその顧問税理士である被告との間の事実関係を検討した結果、以下のように判示して、被告である顧問税理士に対する損害賠償請求につき、原告の訴えを却下する判決を下している。 本稿で取り上げた東京地方裁判所平成28年5月18日判決も、大筋で、この見解に沿ったものであり、上記③の報告義務についても、被告は、平成21年5月15日にAから自白された後、同月22日に横領の事実を伝えていることからすれば、「直ちに」報告を行ってはいないものの、被告による報告義務は果たされたといえよう。 こうした判示事項から、税理士が顧問先従業員の不正行為を発見できなかったことによる損害賠償責任を負う場合とは、以下のケースに限られると考えられる。 ① 委任者である納税者との合意事項として、「経営指導」を行う義務を有していること ② 同じく合意事項として、委任者の従業員の「不正の発見」を行う義務を有していること ③ 税理士が不正を発見したにもかかわらず、これを委任者に報告していないこと   (了)

#No. 229(掲載号)
#米澤 勝
2017/08/03

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第28回】「棚卸資産」~棚卸資産の計上が漏れていると判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第28回】 「棚卸資産」 ~棚卸資産の計上が漏れていると判断した理由は?~   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して行われた「棚卸資産計上漏れ」に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた国税不服審判所平成23年3月25日裁決(裁決事例集82号143頁。以下「本裁決」という)を素材とする。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本判決の判断 本裁決は、大要次のとおり、信憑性のある資料を摘示して、計上漏れとなっていた各棚卸資産の品名、数量及び製造原価を具体的に明示しているため、理由付記に不備はないと判断した。 (1) 求められる理由付記の程度 (2) 理由付記の十分性   4 検討 (1) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、X社が平成20年12月期の確定申告書に添付している「棚卸資産の内訳書」と、X社から提出のあった「平成20年12月末在庫一覧表」を照合した結果、期末商品棚卸高に計上漏れがあるとして行うものであるから、X社の帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当する。 したがって、理由付記の程度としては、 ことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 なお、法人税法上、売上原価の計算を次のとおり行うことについては、本連載【第7回】を参照されたい。 (2) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 本件理由付記は、「期末商品棚卸高計上漏れ」として〇〇〇円を当事業年度の所得金額に加算する処分を行うに当たり、X社の平成20年12月期法人税確定申告書に添付されている「棚卸資産の内訳書」と、X社から提出された資料である「平成20年12月末在庫一覧表」(棚卸資産の品名、数量及び製造原価が記載されたもの)を基礎とした旨記載し、さらに、この「平成20年12月末在庫一覧表」の写しを別紙として更正通知書に添付している。 そうすると、本件理由付記は、法令上の根拠を明らかにし、かつ、法令上の要件に対応する具体的な事実を帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示して具体的に明示するものであり、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものであるといえる。したがって、本件理由附記は、上記(1)①ないし③を満たし、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 *  *  * 次回は、「架空の宅地造成費用の否認」に係る法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 229(掲載号)
#泉 絢也
2017/08/03

〔判決からみた〕会計不正事件における当事者の損害賠償責任 【第4回】「「会計監査人」の損害賠償責任」

〔判決からみた〕 会計不正事件における当事者の損害賠償責任 【第4回】 「「会計監査人」の損害賠償責任」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   ニイウスコー損害賠償請求事件 (東京地方裁判所平成26年12月25日判決) 1 訴訟当事者【再掲】 2 事案の要旨【再掲】 原告は、東京証券取引所に上場していたニイウスコー株式会社(以下「ニイウスコー」という)の有価証券報告書等に虚偽の記載があったにもかかわらず、そのことを知らずにニイウスコー株式の取引をしたため損害を被ったと主張して、同社の取締役、監査役又は会計監査人であった被告ら各自に対し、主位的に金融商品取引法24条の4及び24条の5第5項において準用する同法22条に基づき、予備的に民法709条又は旧商法266条の3第1項、2項、旧商法特例法10条、18条の4第2項、21条の22第1項、会社法429条1項、2項に基づき、損害賠償として、合計2,604万8,983円及び遅延損害金の支払を求めた。 3 訴訟の争点【再掲】 本事件の争点は、以下のとおりであるが、本連載では、主に、争点②及び争点③について、裁判所の判断を検討することとしたい。 4 無限定適正意見を出した監査法人について故意又は過失がなかったかについて 本稿では、裁判所が、どのような事実認定を行い、会計監査人であった有限責任監査法人トーマツ(被告Y8法人)が、「監査基準に適合した監査を行った上、無限定適正意見及び有用意見を表明したということができるから、本件有価証券報告書等の記載が虚偽でないと説明したことについて、故意又は過失がなく、金融商品取引法24条の4、24条の5第5項、22条の責任を負わない」と判断したのかを中心に見ていきたい。 (1) 原告が主張する不正の兆候 原告は、不正の徴候として、以下の事情があったから、被告Y8法人は高度の注意義務を尽くすべきであったと主張した。 (2) 被告Y8法人による監査 裁判所は、原告の主張する「不正の兆候」について、いずれも「そのような事情だけで不正取引を行う可能性が高い」とはいえないとして、原告の主張を退けた。判示の中で、「セールス・アンド・リースバック取引」と「滞留在庫」に関する被告Y8法人の監査に関する判断は次のとおりであった。 ① セール・アンド・リースバック取引 被告Y8法人は、セール・アンド・リースバック取引について、売却時に売却益を一括計上する簡易な会計処理を容認していたものであるが、これは、利益に対する金額的影響を考慮して、計画上の重要性の判断基準額を設定したものであり、平成16年6月期におけるセール・アンド・リースバック取引がニイウスコー社の利益に与える影響は、税引前純利益及び税引後純利益のいずれについての計画上の重要性の判断基準額をも下回るものであったから、簡易な会計処理を許容したとしても、監査基準に反するものではないことから、セール・アンド・リースバック取引について、被告Y8法人は、故意又は過失がなかったと認められる。 ② 滞留在庫 被告Y8法人は、滞留在庫について、聴取りなどにより、販売可能性を確認した上で、評価減の必要性の有無を判断し、また、滞留在庫が増加してきた平成16年6月期には、評価減ルールの制定を求め、その内容の合理性を確認するなどした上、平成18年6月期には、実地検査を行っていたこと、不適切取引による架空在庫が存在することが露呈しないようにするための対策をニイウスコー社の従業員が行っていたことから、被告Y8法人は、滞留在庫について十分な監査を行っており、架空在庫を発見できなかったとしても、やむを得ないことであったというべきであるから、被告Y8法人には故意又は過失がなかったと認められる。   アイ・エックス・アイ損害賠償請求事件 (大阪地方裁判所平成24年3月23日判決) 1 訴訟当事者 2 事案の要旨 本件は、架空循環取引による架空の売上や仕掛品を財務諸表に計上していた再生債務者株式会社アイ・エックス・アイ(以下「再生会社」という)の管財人である原告が、再生会社の監査人であった被告において、架空循環取引を発見するために必要な監査手続を実施することなく漫然と監査を行い、再生会社の平成17年3月期決算、平成17年9月中間期決算及び平成18年3月期決算につき無限定適正(有用)意見を表明したことが、監査契約上の善管注意義務違反に当たるなどと主張して、被告に対し、債務不履行又は不法行為に基づき、被ったと主張する損害25億979万100円のうち、(1)1億2,723万7,000円(監査報酬相当額2,723万7,000円及び無形損害1億円)及び(2)7,276万3,000円(利益処分相当額及び法人税等納付額の各一部の合計)並びに(1)及び(2)に対する各請求の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 3 訴訟の争点 本事件の争点は以下のとおりであるが、本稿では、争点(1)②に掲げる、監査法人の善管注意義務を中心に、裁判所の判断を検討することとしたい。 4 有価証券報告書の財務諸表に重要な虚偽の記載があったかどうか(争点(1)①) 争点(1)①について、被告は、原告が行った架空循環取引についての検証は、その基となった資料が架空循環取引を立証し得ない不十分・不正確なものである上、検証過程に問題があるため、その結果は信用性に欠けるものであり、原告が重要な虚偽記載を立証できていないのは明らかであると主張した。 この主張に対し、裁判所は、原告による検証結果、再生会社元従業員らの証言によれば、再生会社が計上した第17期及び第18期における売上の大部分(少なくとも9割程度)及びこれに対応する仕掛品が、財務諸表への記載が許されない架空循環取引によるものであって、当該虚偽記載によって投資者等の意思決定が左右されるのは自明のことであるから、これらは重要な虚偽の記載に当たるといえると判断して、被告の主張を退けた。 5 監査法人による監査は監査契約上の善管注意義務に違反するかどうか(争点(1)②) (1) 原告の主張 原告の主張の骨子は、以下のとおりである。 そして、再生会社には次のように不正の兆候があったとし、こうした不正の兆候にもかかわらず、被告は、経営者が悪意で売上や資産を仮装した会社の監査を行うに当たり、監査をしているかの如く仮装したものといえるから、被告には、本件監査契約上の善管注意義務違反が認められると主張した。 (2) 裁判所の判断 こうした原告の主張に対し、裁判所は、監査人の善管注意義務について、次のように説示した。 そのうえで、裁判所は、再生会社について、「架空循環取引等の不正行為の存在を具体的に窺わせる事情とはいえない原告主張の諸点を総合的に勘案したとしても、再生会社による不正の可能性はないか、あるいは極めて低いとの判断を前提に、再生会社が健全に成長していると見ることが許容される状況」であったとして、被告は、「監査時において、架空循環取引等の不正行為発見のための監査手続を実施する義務を負っていたということはできず、被告が架空循環取引の存在を前提とすることなく行った本件監査は、リスク・アプローチ等当時の監査の基準に従った適正な監査と評価することができ、本件監査契約上の善管注意義務に違反するものとはいえない」と判断した。 そして、被告が適正な監査を行ったにもかかわらず、重要な虚偽の記載を看破することができなかった理由として、 などを挙げた。   判決の検討 1 難しい「原告による『善管注意義務違反』の立証」 いわゆる大手監査法人が被告となった2つの事件の判決を読むと、無限定適正意見を表明した監査法人の故意又は過失を立証することの困難さを感じざるを得ない。 これには、(1)情報の非対称性、(2)充実した監査ツール・監査マニュアル、(3)原告代理人である弁護士が必ずしも監査の専門家ではないことなどの影響が考えられる。 情報の非対称性については、被告の故意又は過失を立証しようとする原告側には、被告である監査法人が作成した監査調書や監査担当者の残した記録、PCデータが自由に閲覧できるわけではないことが挙げられる。 また、大手監査法人であれば、ソフトウエアを活用した各種監査ツールを使用した監査を行っていると同時に、監査マニュアルに則った監査業務を遂行することで品質を一定以上に保つよう業務内容が統一されており、そうしたマニュアル等を逸脱していれば故意又は過失の立証が可能である場合もあるかもしれないが、通常、その手の逸脱や手抜きは考えられない。そうすると、原告は監査手法そのものの適法性を争うことはまずできないことから、こちらの点でも立証は困難とならざるを得ない。 そして、最後に、原告の代理人たる弁護士が必ずしも監査業務に精通しているわけではなく、たとえ監査に関する知識を有していたとしても、現役の公認会計士に及ばないことは想像に難くない。 こうした点から、会計監査人の故意又は過失を立証するのは容易ではないと言えよう。 2 和解金の支払い合意 アイ・エックス・アイ事件において、再生会社管財人との訴訟では勝訴判決を得た新日本監査法人であるが、大株主から訴えられた損害賠償請求訴訟では、以下のようなリリースを出している。 株式会社インターネット総合研究所は、平成17年8月、アイ・エックス・アイ社の株式35,254株を約116億円で、当時のアイ・エックス・アイ社の親会社である株式会社シーエーシー及びアイ・エックス・アイ社代表取締役から譲り受け、さらに、第三者割当増資により約27億円の払い込みを行っていたところ、アイ・エックス・アイ社が、平成19年1月に民事再生手続き開始決定を受けたことから、損害賠償請求訴訟を提起していたものであった。 その後、株式会社インターネット総合研究所は、株式会社シーエーシーとは和解金30億円の支払いで、新日本監査法人とは、上述のように和解金1億5,000万円の支払いで、それぞれ和解の合意に達したとしている。 新日本監査法人が和解に応じた理由は、両者のリリースを読み比べても判然としないが、今回取り上げた判決文にはこの和解についての記述がなく、和解が大阪地方裁判所の判決に影響しなかったのは確かなようである。それにしても、本判決の「事案の概要」にあるとおり、新日本監査法人が受け取った監査報酬相当額は2,723万7,000円であるのに対して、和解金はその5倍を超える金額となっていることは注目される。 なお、本連載【第1回】で取り上げたエフオーアイ事件においても、会計監査人は和解に応じているようであり、会計監査人が被告となった訴訟において、判決によらずに、和解しているケースはかなり存在することも予想される。 *   *  * 連載5回目となる次回の論考では、幹事証券会社の損害賠償責任について、裁判所の判断を検討したい。 (了)

#No. 229(掲載号)
#米澤 勝
2017/08/03

法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第3回】「会計からみた循環取引」

法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第3回】 「会計からみた循環取引」   弁護士・公認不正検査士 下尾 裕   1 会計からみた循環取引の問題点 企業会計(財務会計)は、経営者・株主・債権者等に対し財務会計の利益計算を報告することで、これら関係者の利害調整機能を果たすとともに、特に上場企業又は有価証券報告書提出会社(上場企業等)においては、投資家に対する情報提供機能を果たしている。 よって、企業は、財務諸表ないし決算書の作成に際しては、当該企業の経済活動実態を正確に反映する必要があり、仮に財務諸表等に記載された企業の財務状態とその実態に大きな齟齬があれば、借入に際し自社の財務諸表又は決算書を提出しているであろう金融機関等の債権者、さらに、特に上場企業等については株主・投資家との関係で、それぞれ大きな問題が生じることになる。 この点、例えば、企業が物品の売買により循環取引を行っている場合、当該企業は、自らの直前の売主との売買契約に基づき「資産」としての棚卸資産(商品・製品等)を取得し、その後、当該棚卸資産の買主との売買契約に基づき売上を認識するという会計の流れを繰り返すことになるが、上記で述べた企業会計の機能に鑑みれば、このような会計処理を通じて計上された収益(さらにはその前提となる棚卸資産の取得等)は、前提となる取引に経済合理性がない限り、原則として、収益等として取り扱われるべきではないという結論になろう。 そこで、本稿においては、循環取引において主に問題となる収益の認識(計上)について理論的な整理を行った上で、実際に循環取引が発覚した場合に、実務上しばしば問題となる過年度決算修正(循環取引が複数事業年度にわたり継続された場合における会計処理の修正方法)等について解説を行う。   2 循環取引に基づく収益の認識に関する理論的整理 (1) 企業会計における収益認識の考え方 企業がいつの時点で収益を認識すべきかという問題については、現行の企業会計原則においては、実現主義、すなわち、以下の2点が充足された時点で収益を認識すべきものと考えられている(企業会計原則「第二 損益計算書原則」「三」「B」本文)。 また、国際財務報告基準(IFRS)のコンバージェンスとの関係では、国際会計基準審議会(IASB)からは、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」が公表されており、さらに平成29年7月20日にはこれを踏まえた「収益認識に関する会計基準(案)」等が企業会計基準委員会(ASBJ)から公表されている。上記IFRS第15号によれば、①契約の認識、②履行義務の識別、③取引価格の算定、④履行義務への取引価格の配分及び⑤履行義務の充足という5つのステップを踏まえ、⑤履行義務の充足、言い換えれば、顧客が資産に対する支配を獲得した段階で収益を認識するという枠組みが採用されている。 (2) 循環取引における収益認識 循環取引に係る収益認識に関しては、あくまで当該循環取引の実態に応じた個別判断となるものの、少なくとも経済合理性のない円環を構成している場合については、各当事者が移転する財貨又は提供する役務は円環を通して自己に戻ってくることから、現行の企業会計原則で言うところの「財貨の移転又は役務の提供」がない、又は、上記IFRS第15号で言うところの「重要なリスク及び経済的価値の移転」がないと判断されることにより、多くの場合、収益認識が否定されることになると考えられる。   3 会計上の過年度決算修正の是非等 循環取引は、多くの場合、複数の事業年度に跨って取引が継続されることから、不適切な会計処理についても進行年度のみならず、過年度(過去の事業年度)にわたることになる。このような場合、企業においては、不適切な会計処理を前提に過年度の財務諸表等が既に作成されていることから、これらをどのような形で修正するのかという問題が生じる。 また、企業においては、単に財務諸表等を作成するのみならず、当該財務諸表等を前提に会社法上の決算承認又は報告(決算承認等)、さらに上場企業等においては有価証券報告書等の提出が行われているため、これらをどのようにして訂正するかという点が問題となる。 (1) 企業会計における過年度決算修正の考え方 循環取引に係る従前の会計処理が不適切と判断される場合には、企業会計上、当該会計処理は過去の「誤謬」と評価されることになる。 過年度に跨って誤謬が存在する場合の会計処理について、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(過年度遡及会計基準)の適用開始(平成23年4月1日以降開始する事業年度)以降は、以下の取扱いになっている。 よって、循環取引に基づく会計処理についての過去の誤謬は、企業会計上、原則として、遡及修正方式により修正再表示を行うことになり、実務上は、会社法上の株主・債権者による計算書類等の閲覧期間が5年であることを踏まえ、5年間に限定して遡及修正する方法を採用する場合が多いのではないかと思われる。 (2) 会社法に基づく決算承認等との関係 会社法は、株式会社について、毎事業年度の計算書類等の作成及び株主総会における決算承認等を要求しているところ(会社法第435条・同法第438条第2項・同法第439条)、上記のとおり、循環取引を原因として、企業会計上、遡及修正方式による修正再表示が要求される場合につき、会社法上どのような手続が必要かについては概ね以下の整理となる。 なお、過年度に係る決算承認等の要否については、過年度遡及会計基準が会社法第431条の「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に該当するであろうことを踏まえ、会社法の観点から、過去の誤謬が決算確定を妨げるほどの重要性を有するのかの観点から判断されるとの考え方も有力であり、例えば株式会社東芝といった最近の大規模会計不正事案では、遡及修正を行った過年度決算につき、改めて株主総会における承認等を取得している例も存在する。 よって、循環取引において過年度修正を行った場合における会社法上の決算承認等についても、当該誤謬が株主等に与える影響等を踏まえた判断が求められよう。 (3) 提出済の有価証券報告書等の処理 有価証券報告書等提出会社において循環取引に基づく過年度の誤謬が存在する場合については、既に当該誤謬を前提に有価証券報告書等を提出している以上、単に修正した財務諸表を再表示するだけでは足らず、これらの内容を反映した訂正報告書の提出が必要になるケースが大半であることから、注意が必要である。 *  *  * 次回は税務からみた循環取引の解説を行う。 (了)

#No. 229(掲載号)
#下尾 裕
2017/08/03

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第135回】引当金の会計処理⑧「リストラクチャリングに関連する引当金」 ―リストラクチャリングに伴う割増退職金等―

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第135回】 引当金の会計処理⑧ 「リストラクチャリングに関連する引当金」 ―リストラクチャリングに伴う割増退職金等―   仰星監査法人 公認会計士 渡邉 徹     〈事例による解説〉   〈会計処理〉(単位:百万円) (X1年3月決算時) ① 早期退職者に対する割増退職金の合理的な見積額 ② 従業員の配置転換に伴う費用の合理的な見積額 〈会計処理の解説〉 我が国では、引当金について、企業会計原則注解18(以下「注解18」という)にその計上基準が示されています。企業会計基準委員会及び日本公認会計士協会から、個別の会計事象等について、会計基準や監査上の取扱い等が公表されていますが、引当金に関する包括的な会計基準は設定されていません。 そのため、会計事象について「注解18」に示されている引当金の計上基準を満たす場合には、引当金を計上する必要があると考えられます。 「注解18」に示されている引当金の計上基準 ただし、他の会計基準に直接規定されている費用又は損失については、そちらの会計基準の規定が適用されます。 ① 早期退職者に対する割増退職金の合理的な見積額 事業又は子会社等の整理に伴い従業員の早期退職の募集が行われる場合には、退職給付会計において、割増退職金の費用処理は、従業員が早期退職制度に応募し、当該金額が合理的に見積もられる時点で行われるとされています(退職給付に関する会計基準の適用指針 10項)。 今回の事例は、リストラクチャリングに伴う人員整理の一環として、早期退職者の募集に伴う割増退職金の支給であり、期末日時点で金額の合理的な見積りが可能になっています。 よって、期末日時点で「退職給付引当金」等の勘定科目で引当金を計上することが求められます。なお、勘定科目は「早期退職費用引当金」等の科目で「退職給付引当金」とは別の勘定科目で計上することも考えられます。 〈イメージ図〉早期退職者に対する割増退職金の金額の見積りの確度 なお、リストラクチャリング計画を経営者が決定したのみの段階では、従業員にも知らされていないことから、リストラクチャリングの実行可能性が不透明な場合や合理的な見積りが困難な場合が多く、一般的には、引当金の認識要件は満たさないと考えられます。 人員整理の規模・金額の概要を含むリストラクチャリング計画が従業員に周知された段階では、リストラクチャリングの実行可能性が高まり、金額の合理的な見積りも可能となるケースもあると想定されるため、引当金の認識要件を充たすことがあると考えられますが、労使関係等の状況によっては慎重な判断が必要となります。 早期退職の募集が開始された場合には、募集期間が終了していない段階であっても、リストラクチャリング計画が従業員に周知された段階と同様に、募集人員の金額の合理的な見積りが可能となるときもあると想定されるため、引当金の認識要件を満たすことがあると考えられます。 また、早期退職の募集期間が終了し、早期退職者が確定した段階では、割増退職金は債務として確定していることから、未払退職金等として計上されることになります。 ② 従業員の配置転換に伴う費用の合理的な見積額 従業員の配置転換に係る費用は、会計基準等に直接会計処理方法が規定されていませんが、上述した「注解18」に示されている引当金の計上基準を満たす場合には、引当金を計上する必要があります。 当該費用については、支払いがX2年3期に見込まれているので、将来の特定の費用であると考えられます。また、「リストラクチャリングに伴う人員整理計画を決定した」という当期以前の事象に起因していると考えられます。また、事例の前提条件より、発生可能性も高く、金額を合理的に見積もることができます。 よって、当該費用については、引当金の計上要件を満たすため、「事業構造改善引当金」等の勘定科目名称で引当金を計上することが求められると考えられます。 (了)

#No. 229(掲載号)
#渡邉 徹
2017/08/03
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