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家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第19回】「信託契約作成上の留意点⑥」-受益者及び帰属権利者等の地位-

家族信託による 新しい相続・資産承継対策 【第19回】 「信託契約作成上の留意点⑥」 -受益者及び帰属権利者等の地位-   弁護士 荒木 俊和   委託者(【第17回】)、受託者(【第18回】)に続き、今回は信託契約における受益者及び帰属権利者等の地位について解説する。   1 受益者の信託契約における位置付け 受益者とは、受益権を有する者であり、受益権とは信託財産に関して受益者が受託者に対して請求できる権利及びその確保のために有する権利をいう(信託法第2条第6項・第7項)。 すなわち、受益者は受託者を通じ信託財産から発生する利益を享受する立場にあり、受託者が信託事務を正当に遂行することを確保するために、受託者への監督権限等の権限を有する。 家族信託の場合であれば、元の資産保有者が自己に代わって資産を管理処分することを求めて受託者に信託することが多いが、この場合は自益信託となり「委託者=受益者」になる。 受益者は受益権を持つことで信託財産に対する実質的な権利を保有することとなり、税務上の資産保有者とみなされる。   2 受益者になる資格 受益者は、信託契約において指定されれば、当然に受益権を取得することとなる(信託法第88条第1項)。 このため受益者は「受益の意思表示」等を行う必要がなく受益権を取得することから、これまで解説してきた委託者や受託者とは異なり、幼少であったり認知症であったりと、意思能力のない者でも受益者になることができる。さらに受益者連続型信託等においては、胎児など未存在の者を受益者として指定しておくこともできる。 一方で、受益者に浪費癖があるなどの理由により受益権を行使させたくないような場合には、信託契約において、受益者に対して受益権を取得したことを通知しない旨の規定を入れておくことで、受益者が受益権を取得したことを知らないようにしておくこともできる(信託法第88条第2項)。   3 受益者の受託者に対する監督権限 受益者は実質的な資産保有者として受託者に信託財産の管理処分を委ねることから、受託者を監督する各種の権限を有する。 詳細については【第8回】「よくある質問・留意点③-受託者が権限濫用を行うことを抑止するためにどのような仕組みが考えられるか-」を参照されたい。 なお、受益者自身の判断能力が低下している場合には、信託監督人又は受益者代理人を設置することで、受益者による監督機能を補完する手当が考えられる。   4 受益者が複数になる場合 家族信託では、委託者兼一次受益者が死亡した場合に、信託を終了させず、二次受益者に受益権を承継させる場合がある。このとき、相続税対策や遺留分又は相続人間の公平を図る観点から、受益権を分割して(又は準共有持分として)承継させることがある。 この結果、受益者が複数となる状況が生じるが、この場合には原則として、すべての受益者の一致によって受益者としての意思決定がなされることになる(信託法第105条第1項本文)。 しかし、現実的にはあらゆる意思決定においてすべての受益者の同意を得ることは必ずしも容易ではなく、受益者間の対立が生じたり、受益者の一部が認知症等によって意思表示ができなくなる等のリスクがある。 このため、受益者が複数となることが想定される場合には、予め信託契約において『受益者の意思決定基準』を決めておくことが重要である。 意思決定基準の例としては、「受益者のうち1人の意思表示をすべての受益者による意思表示とみなす」ことや、「受益者のうち過半数の同意があればすべての受益者による意思表示とみなす」こと等が挙げられる。また、受益者代理人を設置して、受益者代理人の意思表示によることも考えられる。   5 受益権が移転する場合 受益権は、法律上は債権と同様に扱われており、譲渡が可能である(信託法第93条第1項本文)。 ただし、家族信託においては予めスキームを決定しており、それを逸脱する受益権の譲渡は望ましくないことから、基本的には受託者の承諾がある場合を除き、受益権の譲渡を認めない旨を信託契約に規定しておくのが望ましい。 また、受益権を譲渡する場合には、対抗要件(受益権の譲渡を確定させるために必要な手続)を備える必要があるが、受託者に対する対抗要件と第三者に対する対抗要件を備えるため、受託者による譲渡に関する承諾書を作成し、それを公証役場に持参して確定日付の付与を受けることが妥当である(信託法第94条)。 なお、受益者と受託者との間には直接的な契約関係があるわけではなく、受託者が支出した信託事務に要した費用について、当然に受益者が負担するとはならないため、受益者に負担を求めるには、信託契約とは別途の合意が必要である。 筆者の場合、受益者が変更された場合には、新たな受益者と受託者との間で「費用負担に関する覚書」を締結し、受託者が信託財産から信託事務に係る費用を支出しても不足する場合には、受益者に負担させるようにしている。   6 帰属権利者等への信託財産の移転 信託終了の際、残存している信託財産(残余財産)が誰に帰属するかについて、法律上は、 の上位から順に帰属するものとされている(信託法第182条)。 しかし、資産承継に係るスキームを決めて実行される家族信託の場合、『残余財産が誰に帰属するか』は非常に大きい要素であり、遺留分や相続人間の公平性の問題もあるため、例外的な場合を除き、残余財産受益者等を決定しておくべきであると考えられる。 筆者が多く経験しているケースとしては、信託終了に伴い受託者が帰属権利者として残余財産を取得し、引き続き財産の管理処分を行うというものであるが、他にも、相続人が存在するケースでは残余財産の一部を他の相続人に帰属させたり、委託者の財産で信託財産とならなかったものについて遺言を作成し他の相続人に承継させたりするなど、全体のバランスを考慮する必要がある。 いずれにしても信託財産の帰属ばかりに近視眼的になるのではなく、委託者の財産全体を見て妥当なスキームを決定しておく必要がある。 また、受益者の死亡を原因として信託が終了し、残余財産を取得する者が受益者の相続人である場合には相続税、相続人でない場合には贈与税の課税がなされる場合があるため、留意が必要である。 (了)

#No. 231(掲載号)
#荒木 俊和
2017/08/17

法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第5回】「循環取引の実務対応①(初動対応)」

法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第5回】 「循環取引の実務対応①(初動対応)」   弁護士・公認不正検査士 下尾 裕   本連載終盤となる【第5回】【第6回】は、循環取引発覚後の実務対応について解説する。今回は初動対応のポイントを整理したい。   1 初動対応の留意点 (1) 循環取引発覚の契機 【第1回】で述べたとおり、循環取引については「不正の兆候が表れにくく発見が容易でない」という特徴があり、首謀者の財政破綻により売掛金の回収が遅延する又は循環取引に関与した取引先から接触があったことを契機に発覚するのが典型的であるが、それ以外にも、例えば次のような契機により発覚する場合がある。 これは循環取引のみならず企業不祥事一般に言えることであるが、いずれのケースについても重要なのは、循環取引への関与が疑われた時点で速やかに企業内の担当部署(監査部等)において情報を共有した上、初動対応に着手することである。 (2) 初動対応の留意点 循環取引の実務対応において重要なのは、勿論、循環取引による企業の損害を最小化することであるが、循環取引に関与が疑われた場合の初動対応としては、特に次の2つの視点が重要である。   2 循環取引の実態調査 (1) 社内調査 企業が循環取引に対応するにあたっては、その実態を正確に把握する必要があることから、初動対応として、まずは社内調査により、企業の循環取引に対する関与の有無及びその範囲、さらには、自社の役員・従業員等の関与の有無・程度を速やかに調査する必要がある。また、当然のことながらその前提として、関与が疑われる役員等のパソコン及びメールデータの確保等、調査の前提となる資料の確保が必要となる。 特に循環取引の調査においては、【第1回】で述べた介入取引のケースを想定してもらえればわかりやすいと思われるが、書面上のやりとりのみで取引が完結しているケースが多く、自社の役員・従業員等に対するヒアリング及び自社に存在する資料等のみでは、循環取引の全容(特に実需の有無)を把握することが困難な場合があることから、必要に応じて、さらに、自社の直接の取引先等に接触を図る必要が生じるケースが多い。 (2) 調査委員会(第三者委員会)設置の要否に関する検討 企業不祥事における調査は、一般に、事実関係の認定、原因の究明、関係者の責任の有無及び再発防止策の策定等を目的として行われるものであるが、さらに、自社の株主・投資家、さらには金融機関を中心とする債権者に対する説明責任を果たす意味でも非常に重要性が高い。 【第3回】で述べたとおり、特に上場企業又は有価証券報告書等提出会社(上場企業等)において、循環取引に基づく会計処理が不適切(会計不正)と評価される場合には、かかる不適切な会計処理を前提に株主総会における決算承認等、適時開示又は有価証券報告書等の提出が行われていることに起因して、概ね以下のようなリスクが発生することになる。 したがって、特に上場企業等において、循環取引の取引額が大きく、投資家の投資判断等に影響を与える可能性が高い場合等については、投資家等に対する説明責任を果たしていく前提として、調査の中立性を確保すべく、社内調査において概要が判明次第、並行して(遅くとも発覚から1ヶ月以内に)、調査委員会(第三者委員会)の設置を検討する必要が生じる。 なお、第三者委員会の構成及び運営等については、日本弁護士連合会が「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」を公表していることから、参照されたい。   3 資金繰りに関する対応 循環取引発覚後は従前の資金循環が停止することになるが、この場合、各当事者は自社の売掛先からの支払いが受けられないばかりか、さらに、自らの買掛先からは支払いを求められる場合が生じてくる。特に、首謀者の破綻により循環取引が発覚した場合には、各企業の取引額が膨らんでいる場合が多く、資金循環の停止により各企業の資金繰りを大きく毀損する場合がある。 また、ケースによっては循環取引を前提に約束手形が発行されている場合がある。約束手形に基づく手形金請求については、法律上、直接の取引先以外の請求者との関係では、原則として、【第2回】で述べたような、循環取引である(実需がない)ことを理由とする支払拒絶の主張ができない構造となっていることから、破綻時点で振出し又は裏書している約束手形を順次決済できるだけの現預金を有していない企業については、即時倒産の危険性が発生することになる。 さらに、今後の資金調達との関係でも、循環取引が発覚した場合、取引先金融機関からは新規融資を停止される可能性があるのは勿論のこと、過去に提出した決算書等の不実記載等を理由に、既存の借入債務についても、銀行基本取引約定に基づく期限の利益喪失を主張される場合がある。 よって、企業の初動においては、自社の資金繰りの状況を直ちに把握するとともに、近い将来に資金ショートの可能性がある場合には、金融機関に対する説明等の対応、さらに、民事再生等の法的整理手続又は私的整理を視野に入れた対応が必要になる。 (了)

#No. 231(掲載号)
#下尾 裕
2017/08/17

海外勤務の適任者を選ぶ“ヒント” 【第5回】「開き直りとユーモア、そして「1人で仕事ができること」」

海外勤務の適任者を選ぶ“ヒント” 【第5回】 「開き直りとユーモア、そして「1人で仕事ができること」」   中小企業診断士 西田 純   連載第5回目は、派遣者の性格や考え方が、ストレス対策の面で重要になるという視点からお話したいと思います。   1 海外勤務はストレスと無縁ではいられない 本社に比べて海外勤務では、比較的小さなオフィスで仕事をするケースが多くなると思います。小さなオフィスで限定的な責任範囲を任されるだけに、責任の所在が明確になり成果主義による評価も明快な数字としてついてまわります。 このような環境で、代表的なストレスとして考えられるのは、次のようなものでしょうか。 (1) 成果主義による評価 国内本社においても、営業部門などは同じだと思いますが、いわゆる成果主義の考え方が取り入れられており、毎期末に向けて目標達成のための施策が次々と講じられていくことと思います。結果として、普段よりも大きなストレスがかかります。 (2) 異文化の中で過ごす毎日 ローカルスタッフとの関係づくりや顧客とのコミュニケーション、現地政府との折衝まで、海外勤務は毎日が異文化との交渉に満ちています。これが積み重なると大きなストレスになります。 特に悩みがちなのが、前任者や同僚がそれを上手くこなしていた(いる)場合です。どうしても自分の場合と比べてしまいがちですが、そうなるとストレスの素を1人で抱え込むことになりかねません。 (3) 本社部門に理解されない実情 本社勤務に比べると、平日は厳しいストレスにさらされる海外勤務において、ゆとりある週末の時間は何よりの支えではないかと思います。 それなのに 「海外だとゴルフはやり放題なんだって?」 「週末とか、あちこち遊びに行けてイイなー!」 など、海外勤務というだけで、本社の同僚たちから羨望のまなざしで見られることもあると思います。 また、本社にいる人たちは、ローカルスタッフや客先とのコミュニケーションについては想像の範囲内でしか理解できないため、都度こまごまと説明でもされない限り、それが大きなストレスになるというイメージは持たない(持てない)のだと思います。 このようなコミュニケーションギャップを通じて本社との間で醸成されるストレスもまた、なかなか手ごわいものです。   2 ストレスに対して開き直れるかは“海外勤務者自身の考え方”による 考えてみれば当たり前の話なのですが、あるべきストレス対策について、海外勤務と国内勤務で大きな違いがあるわけではありません。 ただ、国内であれば社内制度や福利厚生、様々な啓発機会などを通じて会社側が担保できるものがあるのに比べて、上述したような海外勤務独特のストレス環境にどう対応するかは、「海外勤務者の自助努力に負うところが大きい」という違いは受け入れざるを得ないのです。 では実際に、どのような対応が求められるのでしょうか。 (1) ストレスに対して認知的に対応できるか? 私は今、通常よりも厳しいストレス下に置かれている。 ⇒それは〇〇が原因で、解決されるまでの期間、このストレスと対峙しなくてはならない。 ⇒それにはおおよそ〇週間程度必要であろう。 ストレスに対峙したとき、その様子をコトバにして表すと、おそらくこんなふうになると思います。 「ストレスに対して認知的に対応する」とは、言ってみればこのような形で考えを整理できるかということですが、何もしない状態に比べると、これをしただけでも不安要素は大きく軽減されます。 (2) ストレスの原因となる人に関して“アサーティブ”に振る舞えるか? 『アサーティブ』とは聞きなれない言葉だと思いますが、ストレスマネジメントの分野では 自分も相手も大事にしながら、上手に自分の気持ちや意見を相手に伝えられること とされています。 言ってみれば「気配り」の範囲だと思いますが、自分の言いたいことも併せて伝えることが大事です。 例えばエレベーターで足を踏まれて謝られたとき、「あ、いいですいいです。」と言ってため込んでしまう人と「イテー、でもいいっすよ。」と発散的に反応できる人の、微妙な差といえばそうなのですが。 (3) ストレスへの対応はマイペースか? ストレスに対峙したとき、いつもより反応スピードが明らかに速くなるタイプの人っていませんか? それとは逆に、ストレスを受けたときほどじっくりと構えるタイプの人というのも確実にいます。 いつもより反応が速くなるタイプの人は、開き直ってストレスと向き合うのではなく、自分の脇を固めて防衛に入ってしまうパターンです。 (4) 開き直りとユーモアがストレスを緩和する それでも厳しいストレスを上手にいなす知恵が「開き直りとユーモア」です。 たとえ努力が報われない場面があったとしても、仕方ないと割り切って次の最善策へと瞬時に頭を切り替えたり、後悔の対象になりがちなミスを笑いに換えたりする力は、場の雰囲気をぐっと和らげる支えになります。 ただ気をつけてほしいのは、リーダー的な立場にいる人がむやみと部下を笑いのネタにしたり、部下に無理な開き直りを強制するのは逆効果につながる場合があるということです。 笑いのネタは上司にしましょう。バレたらリーダーである自分が責任を取って謝ればいい話と割り切って。   3 候補選定上のポイント (1) その人が醸し出す“雰囲気” 上で述べたような特性は、日々の勤務状況をつぶさに見ていれば、本人の雰囲気から、ある程度は把握できるはずです。 ストレスに対して①認知的に対応できる能力があるか、②アサーティブな対応が取れるか、③マイペースを乱さずに対応しているか、④開き直りとユーモアを実践できるか、といった観点から、その人の醸し出す雰囲気を観察してみてください。 (2) ストレスマネジメントに対する理解 最近では特に、社員の健康管理という側面から、ストレスマネジメントの重要性が言われています。うつ病の予防などは、働き方改革への取り組みとも相まって、労務管理の面からも重要な課題となっています。 そのような話題に対して感性が働いているか、というのも重要な視点だと思います。   4 人材育成上のポイント (1) 開き直りとユーモアは後天的に獲得できる ① 開き直ってヘルプを頼む ストレスは自分1人で対応しなくてもいい、仕事なのだから組織の力で対応すればいいのだということを学べば、厳しい時に周りのサポートを加味した対応を取ることができます。 ② 開き直ってリラックスする じたばたしても仕方がない、むしろリラックスして対応した方が良いアイデアも浮かぶはず、と考え方を切り替えることができれば、ストレス対応能力はさらに高まります。 ③ ダジャレもアリ、ユーモアの心 開き直りに加えて、日本人ならではの知恵あるいはスキルとして、ユーモアのセンスを磨くことではないかと思います。 オヤジギャグでも、ダジャレでも、ヘタな浪花節や演歌でも構いません。周りをクスリとさせるその心遣いが、組織としてのストレス耐性を高めてくれるのです。 (2) 1人で仕事ができる 「必要以上に寂しがりな人」というのもまた、海外勤務でストレスと対峙するには不向きな人材だと言えます。 「普段から仲間が多い」のはプラスの要因ですが、何でもかんでも大勢でないと行動できないタイプの人は要観察です。 ランチにいつも大勢で連れ立って出歩く、飲み会はいつも仲間とハシゴをする、昼休みや飲み会では大声で話すのに会議では下を向く、発表役や指導役は苦手、というようなタイプがそれに該当するかもしれません。 特に海外勤務では、1人で仕事を進めることが少なくありません。そういうストレスと対峙できるには、まず国内でも1人で居られること、1人で仕事ができることが大前提であると考えてください。   5 まとめ 現代社会がもたらす仕事のストレスについて、体系的に学習することも重要ですが、組織的な対応がややもすると手薄になる海外勤務では、本人の力が重要になります。 開き直りとユーモアは、いざというとき自分を守る力になるということを、社員教育の機会などを通じて明示的に伝えるようにしてください。 (了)

#No. 231(掲載号)
#西田 純
2017/08/17

《速報解説》 空き家・空き店舗等の再生推進を目的とした「改正不動産特定共同事業法」、施行日は本年12月1日に~小規模不動産特定共同事業も登免税等の特例対象へ~

 《速報解説》 空き家・空き店舗等の再生推進を目的とした 「改正不動産特定共同事業法」、施行日は本年12月1日に ~小規模不動産特定共同事業も登免税等の特例対象へ~   弁護士 羽柴 研吾   1 はじめに 平成29年8月14日、官報第7080号において、同年6月2日に公布された不動産特定共同事業法の一部を改正する法律(以下「改正法」という)の施行に伴う関係政令を整備するための政令及び改正法の施行日を定めるための政令が公布された。   2 改正法の背景 不動産共同事業法の一部改正は、空き家・空き店舗等の再生について、不動産特定共同事業の活用をより一層促進するとともに、観光等の成長分野を中心に良質な不動産ストックの形成を促進するために行われたものである。 具体的には、空き家・空き店舗等の再生・活用事業に、地域の小規模な不動産事業者等が幅広く参入できるように、出資総額等が一定規模以下の小規模不動産特定共同事業を新設し、クラウドファンディングに対応した投資環境を整備するための改正等が行われた。これにより、小規模な不動産事業者が空き家等の再生事業に参入し、積極的な投資を呼び込むことが期待されている。   3 政令の内容 今回公布された政令は、主として、①小規模不動産特定共同事業の出資額、②小規模不動産特定共同事業者の登録に係る資本金又は出資の額、③改正法の施行日を規定するものである。   4 関連税制 不動産特定共同事業法に関して、平成25年度の税制改正によって、平成29年3月31日までの間、不動産特定共同事業法上の特例事業者が取得する不動産について、次の税制上の優遇措置(以下「本件優遇措置」という)が講じられてきた。 本件優遇措置は、平成29年度の税制改正において、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの2年間延長されることになり、小規模不動産特定共同事業についても適用されることになった。 改正法に係る本件優遇措置は、平成29年12月1日以後に受け付ける登記から適用されることになっている。 (了) ↓お薦め連載記事↓

#No. 230(掲載号)
#羽柴 研吾
2017/08/15

《速報解説》 民法改正(相続関係)、中間試案後の審議を経て「追加試案」がパブコメに付される~配偶者の相続分引上げは見送り、最高裁判決受け預貯金債権の仮払い制度創設へ~

《速報解説》 民法改正(相続関係)、中間試案後の審議を経て 「追加試案」がパブコメに付される ~配偶者の相続分引上げは見送り、最高裁判決受け預貯金債権の仮払い制度創設へ   Profession Journal編集部   このほど法務省は8月1日付けで「中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案(追加試案)」を公表、パブリックコメントに付された(意見募集は9月22日まで)。   〇中間試案後の法制審議会審議を経て 法制審議会民法(相続関係)部会において審議が続けられてきた民法(相続関係)等の改正については、昨年(平成28年)7月12日から9月30日にかけ「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」としてパブリックコメントが行われたのは既報のとおり。 その後、寄せられた意見を踏まえ審議会における議論が再開されたが、特に反対意見の多かった一定条件下における配偶者の相続分の引上げについては別の方策を検討することとなり、また、中間試案にも掲げられていた預貯金債権の遺産分割をめぐっては最高裁決定(平成28年12月19日)が行われるなど本改正をめぐる状況も変化したことから、今回の追加パブコメ公表となった。 今後の予定としては、追加試案のパブコメ結果を踏まえ10月よりさらに審議会における調査審議を行い、本年末又は来年初めに要綱案の取りまとめを目指すとされており、来年中の民法等改正法案の国会提出も予測される。   〇意見募集の対象は「追加された方策」のみ まず今回の追加試案の位置づけを確認しておきたい。 追加試案は改正試案について改めて全面的な意見募集を行うものではなく、中間試案後の審議からその内容が大きく変更された箇所のみを対象としている。改正試案の全体像については法制審議会民法(相続関係)部会第23回会議で調査審議された「要綱案のたたき台(2)」で確認することができるが、追加試案として意見募集の対象となるのは、次のうち下線部分となる。 なお、追加試案にも中間試案パブコメ時と同様、見直しの趣旨や経緯を説明した「補足説明」が公表されており、そちらも合わせて読んでおきたい。 (※) 法務省ホームページより   〇配偶者へ贈与等された居住用不動産の持戻し免除 「第2 遺産分割等に関する見直し」について、中間試案では、一定の条件下(婚姻後の資産の増加割合、婚姻期間等)における配偶者の相続分の引上げが掲げられていた。ただし上述のとおり反対意見が多く寄せられたため配偶者の貢献を相続の場面で評価することには限界があるとし、残された配偶者の生活を保障するという方向性自体は必要としつつ、見直しの方策についてはその内容が大幅に変更されている。 まず、婚姻期間が20年以上である夫婦の一方が配偶者に対し、居住用の土地・建物の全部又は一部を遺贈又は贈与したときは、民法903条第3項の持戻しの免除の意思表示があったものと推定し、当該居住用不動産の価額は特別受益として扱わず、遺産分割の計算対象から除外される。 (※) 居宅兼店舗については不動産の構造や遺言の趣旨等によるとし本試案では明記せず。 税制上ではすでに贈与税についての配偶者控除(相法21の6)が存置されているが、民法においても手当てされるかたちとなる。   〇預貯金債権の仮払い制度を創設 平成28年12月の最高裁決定により預貯金債権が遺産分割の対象であることが明確化されたことで、今後は共同相続人全員の同意を得ることができない場合に預貯金債権の払戻しを受けることができず、被相続人が負っていた債務の弁済や、被相続人から扶養を受けていた共同相続人の当面の生活費について問題が生じるおそれがある。 このため「第2 遺産分割等に関する見直し」では、一定の条件・制約下で遺産に属する預貯金債権の全部又は一部を仮に取得することができる仮払い制度の創設が織り込まれた。 仮払い制度には①家庭裁判所への申立てによる方策(現行の家事事件手続法における保全処分の要件を緩和したもの)と②家庭裁判所の判断を経ず単独で預貯金の払戻しを受ける方策が示されており、②の場合には払戻し額に上限(以下の計算式による額)が設けられている。 その他「第2 遺産分割等に関する見直し」では、共同相続人による遺産の一部分割に係る規律の明文化や、共同相続人の1人が遺産分割前に遺産に属する財産を処分した場合の規律などが織り込まれており、また「第4 遺留分制度に関する見直し」においても、中間試案における提案内容から現物給付に関する規律が大きく変わっていることから、あらためてパブリックコメントの手続に付するとされている。   〇改正の全体像は 追加試案の補足説明によると「追加試案の内容以外の項目については中間試案から大きく変更はないことから、今回のパブリックコメントの対象とはなっていない」とされているものの、審議会で検討が進められている最新の改正試案では、中間試案において【甲案】【乙案】と両案併記されていた箇所がパブコメ後の審議会での議論を経て整理・集約されており、また民法等の改正条項を明示する等、要綱の取りまとめや民法等改正法案作成に向け、より具体的な内容へ固まりつつあることがわかる。 (※) 例えば自筆証書遺言の保管制度に関し、中間試案では保管を行う機関を「一定の公的機関」としていたが、現在の改正試案では「法務局」とされている。 なお、改正試案の全体については、上述した「要綱案のたたき台(2)」及び「補足説明(要綱案のたたき台(2))」において確認することができる。 このように、配偶者の短期居住権及び長期居住権、自筆証書遺言の方式緩和や保管制度、相続人以外の特別寄与者による各相続人への金銭請求権などは、中間試案から継続して織り込まれているため、今後の遺産分割協議に大きな影響を与える改正となることは間違いないといえよう。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 230(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2017/08/10

プロフェッションジャーナル No.230が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年8月10日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.230を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/08/10

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第55回】「税制調査会答申から租税法条文を読み解く(その1)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第55回】 「税制調査会答申から租税法条文を読み解く(その1)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦   はじめに 租税法律主義は、国民が議会において決定したルールによってのみ租税負担を負うものとする憲法上の基本原理である。ここには、国民による「自己同意」という考え方が基礎にある。 議会制民主主義が採用されている我が国では、多数決原理によって国民の意見が議会に反映されるが、この点、国民の代表者である議員の意思のみで租税立法がなされているといえるであろうか。審議会制度や、行政官による立法案策定などの現状を踏まえれば、そうとは言えないことは一目瞭然であろう。 今回の連載では、租税法が定立される過程において機能する「審議会制度」に注目してみたい。審議会制度の存在やそこでの審議等が租税法の解釈にいかなる意味を有するのかという点に関心を置き、とりわけ、税制調査会での議論や答申といったものが、租税法の解釈に及ぼす影響を考えてみたい(国会における審議が租税法解釈に及ぼす影響については、前回までの連載を参照)。 なお、「税制調査会」といっても、例えば「自由民主党税制調査会」というような各政党内の税制調査会や、「与党税制調査会」というような呼称もあるが、本稿における「税制調査会」とは、原則として、「政府税制調査会」を指す。   Ⅰ 税制調査会とは 最初に、税制調査会に関する政令の規定を確認しておこう。 以下に示すとおり、税制調査会は、内閣府本府組織令33条を根拠法として設けられている審議会である。すなわち、税制調査会とは、内閣府に設けられた審議会であり、内閣の付属機関ということになる(※)。 (※) 税制調査会が、政府・自民党の「かくれみの」的存在となっていると批判する見解として、北野弘久『納税者の権利』73頁(岩波書店2011)。 このように、税制調査会は、内閣府本府組織令33条1項において、「内閣総理大臣の諮問に応じて租税制度に関する基本的事項を調査審議すること」を司ることが規定されているが、同条2項にいう税制調査会令もみてみよう。 〈税制調査会の機構〉 税制調査会の機構は上図のとおりであるが、税制調査会の事務局は、実質的に財務省主税局が執り行っている。すなわち、税制調査会独自の事務局は存在しないのである。   Ⅱ 代表者と社会との同質性 議会制民主主義の下で、代表者の決定事項に社会構成員である国民の自己同意があったといえるためには、当然ながら、かかる代表者が社会を代表した者であるという前提が必要である。 国会議員が社会構成員の代表者であるという点は問題がないとしても、現実として、すべての国会提出法案がかかる代表者による提案法案であるわけではない。もっとも、第三者が考案した法案であったとしても、国会審議を通じて国会議員によって十分に議論された内容であるとすれば、問題はなかろう。 他方、国会議員以外の者によって考案された法案が、国会において十分に議論されていないのであれば、形式的な面はともかくも、実質的に国民の自己同意があったといえるのかにつき疑問や不安が惹起されるところである。 租税法に限っていえば、国会に上程される法案のうち多くには、税制調査会において提案されたものもある。そして、上記にみたとおり、税制調査会は、国会議員によって構成されているわけではないし、ましてや、内閣府という行政組織の機関であるばかりでなく、その事務局は財務省主税局にあるのである。 そうであるからこそ、税制調査会における答申などが租税法規の解釈に影響を及ぼす可能性やその余地、程度について検証する必要があるのである。   Ⅲ 事例検討1―遡及課税問題― 上記のような問題関心を踏まえ、最高裁平成23年9月30日第二小法廷判決(集民237号519頁)の事例を確認してみたい。 この事例は、長期譲渡所得に係る損益通算を認めないこととした平成16年法律第14号(以下「改正法」という。)による改正後の租税特別措置法(以下「改正後措置法」という。)31条《長期譲渡所得の課税の特例》の規定を、施行日より前に個人が行う土地・建物等の譲渡に適用するものとする改正法附則27条1項が、憲法84条に違反するか否かが争われたものである。 1 事案の概要 (1) 事件の経緯 改正後措置法31条は、同条1項所定の長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額を他の各種所得の金額から控除する損益通算を認めないこととし、同条の規定は平成16年1月1日以後に行う土地等又は建物等の譲渡について適用することとされた(改正法附則27①)。なお、改正法の施行日は同年4月1日であった。 平成16年2月26日にその共有する土地及び建物を譲渡する旨の売買契約に基づく代金を受領し、同年分の長期譲渡所得の金額の計算上損失を生ずるなどしたX(原告・控訴人・上告人)らは、改正法が、その施行日より前にされた土地等又は建物等の譲渡についても上記損益通算を認めないこととしたことは納税者に不利益な遡及立法であって、憲法84条に違反する等と主張し、損益通算を認めない税務署長の処分を不服として提訴した。 (2) 法改正の経緯 そもそも、改正前の措置法(以下「改正前措置法」という。)31条においては、所有期間が5年を超える土地等又は建物等を個人が譲渡(以下「長期譲渡」という。)した場合、これによる譲渡所得については他の所得と区分し、その年中の長期譲渡所得の金額から同条4項に定める特別控除額を控除した金額に対して所得税を課する分離課税を行うこととされ(旧措法31①)、その税率は20%とされていた(旧措法31②)。 他方、長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合には、その金額を他の各種所得の金額から控除する損益通算が認められていた(旧措法31⑤二、所法69①。以下、この損益通算を「長期譲渡所得に係る損益通算」という。)。 これに対し、改正後措置法31条においては、長期譲渡所得に係る所得税の税率が15%に軽減される一方で、上記特別控除額の控除が廃止され、また、長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合には、当該損失の金額は生じなかったものとみなすとされ、長期譲渡所得に係る損益通算は認められないこととなったのである(措法31①、③二。以下、この損益通算の廃止を「本件損益通算廃止」という。)。 なお、改正法は平成16年4月1日から施行されたが、上記のとおり、同条の規定は同年1月1日以後に行う土地等又は建物等の譲渡について適用することとされたのである(改正法附則27①。以下、同項の規定のうち本件損益通算廃止に係る部分を「本件改正附則」という。)。 (3) 具体的事実 次に具体的事実を確認したい。 (4) 問題点 さて、上記事実のように、税制調査会答申には損益通算を廃止することが掲載されておらず、その後の自民党の税制改正大綱を受けた報道はあったものの、大々的な報道とはとても言えない状況下で、損益通算が許されると理解してなした譲渡に対して損益通算を認めず、いわば遡及的な課税がなされたともみえる本件は、租税法律主義に反することにはならないのであろうか。 (続く)

#No. 230(掲載号)
#酒井 克彦
2017/08/10

〈あらためて確認したい〉「相続時精算課税制度」適用上の留意点

〈あらためて確認したい〉 「相続時精算課税制度」適用上の留意点   税理士法人トゥモローズ 代表社員 税理士 角田 壮平   ◆ は じ め に ◆ 相続時精算課税制度(相法21の9、措置法70の2の6)は、高齢者の保有する財産を早期に若い世代に移転し、その移転財産の有効活用を通じて経済社会の活性化を資することを趣旨として平成15年に創設された生前贈与の制度である。 当該制度の創設時から平成27年までの適用人員及び取得財産価額は下記の通りである。 (※) 国税庁資料を元に筆者作成。 平成19年をピークとして逓減しているものの、近年でも毎年5万件程度の適用件数があり、6,000億円前後の財産が相続時精算課税制度により次世代に移転している。 この制度が創設されて15年弱が経過し、長寿化・高齢化等社会情勢も変化していることから、本稿では今一度、この制度について税理士が特に留意すべき点を贈与時と相続税申告時とに時点を分けて確認していきたい。   1 贈与時の留意点 (1) 顧客に対するリスク・デメリットの説明及び共有 「相続時精算課税による贈与を実行したい」と顧客から言われた場合や税理士から相続時精算課税による贈与を提案する場合においては、顧客に対し相続時精算課税のリスクやデメリットについて丁寧に説明し、お互いにそれらを共有することが必須となる。 下記に相続時精算課税を選択したことによるリスクやデメリットを再確認したい。 (2) みなし贈与による相続時精算課税の適用 民法上の贈与契約は成立していないが実質的に贈与と同様の経済効果が生じる場合には贈与により取得したものとみなして贈与税を課税する、すなわち「みなし贈与」(相続税法第5条~9条の5)についても相続時精算課税の適用は可能である。このことから、暦年贈与課税とすると過大な贈与税負担となるような場合に、相続時精算課税の選択をすることも一案となる。 例えば、時価(=相続税評価額)5,000万円の不動産を子に2,000万円で譲渡した場合、低額譲渡として時価と対価の差額3,000万円がみなし贈与の対象となる。暦年贈与課税であれば1,000万円強の贈与税負担となるが、相続時精算課税を選択すれば100万円の贈与税負担とすることができる。 もちろん、将来の相続時に精算する必要は生じるが、一時的な多額のキャッシュアウトは回避することができる。 (3) 期限後申告となる場合 相続時精算課税の特別控除2,500万円を適用するためには期限内申告が要件となる。これには宥恕規定も設けられていないため注意が必要だ。 仮に、期限後申告となった場合には贈与財産の評価額に20%を乗じた贈与税を納める必要がある。なお、期限後申告の場合には特別控除を使っていないため翌年度以降に特別控除枠を繰り越すことは可能である。   2 相続税申告時の留意点 (1) 相続税法第49条の閲覧請求 相続時精算課税制度が創設されて15年弱が経過しているが、相続税申告実務を担当していると、相続人が相続時精算課税贈与による申告書等の控えを紛失してしまっているケースが多々ある。 このような場合に活用したいのが、相続税法第49条の閲覧請求である。 開示請求書に一定の事項を記載し、戸籍謄本等を添付することにより、請求から2ヶ月以内に下記のような開示書が発行される。 〈相続税法第49条第1項の規定に基づく請求に対する開示書〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 請求者本人は開示対象者とはならないため他の相続人から開示請求してもらう必要がある。なお、当該開示請求以外に過去に自身がした申告内容等を確認する手続きとして、申告書等閲覧サービス(事務運営指針)も存在するが、筆者の経験上、開示請求の方が、手続きが簡便であると考える。 ちなみに、当該開示請求は、争い案件等で他の相続人等の生前贈与財産の相続財産への加算額が不明であると正確な相続税計算が行われなくなるため、当該加算額の情報を税務署長から開示することにより相続税の正確な計算を資することが本来の趣旨といえる。 (2) 相続時精算課税と除斥期間 相続時精算課税を選択した後に、特定贈与者から1,000万円の資金移動があったが、贈与税の申告を失念して10年が経過したとする。この場合には贈与税の除斥期間が経過しているため、相続時精算課税に係る贈与税の期限後申告は不可能となる。 ただし、特定贈与者の相続税申告上、当該1,000万円については、課税価格に算入する必要がある。もし、相続時精算課税を適用していない場合において、当該資金移動につき贈与が成立しているときは、この1,000万円は相続財産を構成しない。しかし、相続時精算課税を適用した場合には適用後に係る過去の贈与はすべて相続財産を構成することとなるため、1,000万円は相続財産に含めることとなる。 (3) 住宅取得等資金の贈与 相続税申告実務を担当していると、旧措置法70の3の2(住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税に係る贈与税の特別控除の特例)の適用を受けている相続人が稀に存在する。 当該特例は平成21年12月31日に廃止されているが、相続時精算課税の特別控除の特例として、通常の特別控除2,500万円とは別枠で住宅取得等資金に限り1,000万円の上乗せが認められていた制度だ。 この特例に関連し相続税申告上留意すべきなのが、相続財産への持戻しである。 措置法70の2(直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税)については持戻しの必要はないが、旧措置法70の3の2の上乗せ部分1,000万円については相続財産に加算する必要があるので失念しないように注意したい。 (了)

#No. 230(掲載号)
#角田 壮平
2017/08/10

平成29年度税制改正を踏まえた設備投資減税の選定ポイント 【第5回】「[設備種別]適用税制の選択ポイント①(機械装置)」

平成29年度税制改正を踏まえた設備投資減税の選定ポイント 【第5回】 「[設備種別]適用税制の選択ポイント①(機械装置)」   アースタックス税理士法人 代表社員  税理士 島添 浩  シニアマネジャー 税理士 小嶋 敏夫 壽命 正晃 發知 諭志   【第5回】から【第10回】にわたっては、青色申告法人(連結法人を除く)における設備種別の適用税制(中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制、中小企業経営強化税制)の選択ポイント及び具体的な申告実務上の留意事項を確認する。 なお、各税制の概要や適用手続き等については、【第1回】から【第3回】までを参照願いたい。 それでは今回【第5回】は、機械装置について紹介する。   1 選択ポイント 中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制、中小企業経営強化税制の主なポイントは下記のとおりである。 【機械装置における適用税制一覧表】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) 上記税制以外に、【第4回】で確認した「地域中核企業向け設備投資促進税制(地域未来投資促進税制)」が平成29年7月31日から適用開始されている。  承認地域経済牽引事業に係る承認地域経済牽引事業計画に従って、特定地域経済牽引事業施設等の新設又は増設をするような場合には、当該税制の検討も要する。 機械装置においては、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は対象外となるため、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の選択となる。 【第2回】及び【第3回】で確認したとおり、中小企業経営強化税制は、原則として機械装置を取得する前に一定の手続きを要するため、事前準備を行う必要があるが、中小企業投資促進税制に比べ特別償却、税額控除ともに有利な制度になっている。 特に設備投資が多額になることが想定される製造業の機械装置については、中小企業経営強化税制の選択を考慮に入れた事業計画を立てる必要があると思われる。   2 申告実務上の留意事項 1により選択した税制について、具体的な申告実務を確認していく。なお、特別償却又は税額控除は法人税関係特別措置の適用となるため、これから確認する下記添付書類以外にも適用額明細書の添付が必要なことに注意したい。 (1) 特別償却 ① 中小企業投資促進税制 中小企業投資促進税制により特別償却を選択適用した場合には、特別償却の付表(2)(中小企業者等又は中小連結法人が取得した機械等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表)を記載し、該当する別表16とともに確定申告書等に添付して提出する必要がある。 なお、所有権移転外リース取引により取得した特定機械装置等について、特別償却の適用は受けることができない。 ② 商業・サービス業・農林水産業活性化税制 商業・サービス行・農林水産業活性化税制により特別償却を選択適用した場合には、特別償却の付表(7)(特定中小企業者等又は特定中小連結法人が取得した経営改善設備の特別償却の償却限度額の計算に関する付表)を記載し、該当する別表16とともに確定申告書等に添付して提出する必要がある。 なお、所有権移転外リース取引により取得した経営改善設備について、特別償却の適用は受けることができない。 ③ 中小企業経営強化税制 中小企業経営強化税制により特別償却を選択適用した場合には、特別償却の付表(8)(中小企業者等又は中小連結法人が取得した特定経営力向上設備等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表)を記載し、該当する別表16とともに確定申告書等に添付して提出する必要がある。 なお、所有権移転外リース取引により取得した特定経営力向上設備等について、特別償却の適用は受けることができない。 ④ 特別償却準備金方式 特別償却の適用を受けることに代えて、特別償却限度額以下の金額を剰余金の処分により特別償却準備金として積み立てた場合には、上記①から③の特別償却の付表の他に別表16(9)(特別償却準備金の損金算入に関する明細書)も記載して添付する必要がある。 (2) 税額控除 ① 中小企業投資促進税制 中小企業投資促進税制により税額控除を選択適用した場合には、別表6(12)(中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書)を記載し、確定申告書等に添付して提出する必要がある。 なお、所有権移転外リース取引により取得した特定機械装置等について、税額控除の適用は受けることができる。 ② 商業・サービス業・農林水産業活性化税制 商業・サービス業・農林水産業活性化税制により税額控除を選択適用した場合には、別表6(21)(特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書)を記載し、確定申告書等に添付して提出する必要がある。 なお、所有権移転外リース取引により取得した経営改善設備について、税額控除の適用は受けることができる。 ③ 中小企業経営強化税制 中小企業経営強化税制により税額控除を選択適用した場合には、別表6(22)(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書)を記載し、確定申告書等に添付して提出する必要がある。 なお、所有権移転外リース取引により取得した特定経営力向上設備等について、税額控除の適用は受けることができる。   3 具体例(特別償却、税額控除) 今回は、特別償却を選択した場合と税額控除を選択した場合を確認する。 - 前 提 - 金属製品製造業を営む青色申告法人である内国法人甲社(資本金3,000万円、発行済株式の総数1,000株、従業員の数20人、大規模法人に株式を所有されていない)は、当期(平成29年4月1日から平成30年3月31日)において、圧造機械(金属製品製造業用設備・その他の設備)を取得し、事業の用に供した。なお、償却方法については、定率法を選定し届け出ている。 【機械装置(圧造機械)の詳細】 取得価額:50,000,000円 法定耐用年数:10年 (定率法償却率:0.200、改定償却率:0.250、保証率:0.06552) 取得日:平成29年10月10日 事業供用日:平成29年10月25日 普通償却費:5,000,000円 普通償却限度額:5,000,000円 (1) 特別償却を選択適用した場合 ① 中小企業投資促進税制 特別償却費として15,000,000円を損金経理しているものとする。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ② 商業・サービス業・農林水産業活性化税制 機械装置については、適用できない。 ③ 中小企業経営強化税制 特別償却費として45,000,000円を損金経理しているものとする。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (2) 税額控除を選択適用した場合 ① 中小企業投資促進税制 調整前法人税額は34,428,000円であるものとする。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ② 商業・サービス業・農林水産業活性化税制 機械装置については、適用できない。 ③ 中小企業経営強化税制 調整前法人税額は34,428,000円であるものとする。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 *  *  * 次回【第6回】では、ソフトウェアについての選択ポイント及びその具体例を確認していく。 (了)

#No. 230(掲載号)
#アースタックス税理士法人
2017/08/10

〈平成29年度改正対応〉所得拡大促進税制の実務 【第5回】「組織再編が行われた場合の取扱い(その1:合併)」

〈平成29年度改正対応〉 所得拡大促進税制の実務 【第5回】 「組織再編が行われた場合の取扱い(その1:合併)」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 所得拡大促進税制に関する規定の中で最も難解なのは、組織再編が行われた場合の取扱いであろう。 すなわち、合併や分割等の組織再編が行われた場合には、企業規模が著しく変動することとなるため、所得拡大促進税制の適用要件の判定に用いられる「基準雇用者給与等支給額」及び「比較雇用者給与等支給額」について一定の調整計算が行われるところ(措法42の12の5⑤)、関連する計算規定に係る条文のボリュームが大きく、読み込みにはかなりの困難を伴うと思われる。 そこで本連載の残り2回にわたり、組織再編が行われた場合の取扱いについて、全体像を示しながら解説する。   2 全体像 まず、組織再編が行われた場合の取扱いに関する条文がどのように配置されているかを整理する。 所得拡大促進税制の適用上、一定の調整計算の対象となる組織再編は以下の通りである。 そして、それぞれの組織再編形態ごとに、基準雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額の調整計算について定められている。 さらに、かかる調整計算は、「適用年度に行われた組織再編」と「基準事業年度開始日から適用年度開始日の前日までに行われた組織再編」のそれぞれについて定められている。これは、組織再編が行われた年度と、それ以降の適用年度で調整計算すべき額が異なるからである。 以上を踏まえ、調整計算に関する条文がどのように配置されているかをマッピングすると下表のようになる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 以下、それぞれの組織再編形態ごとに、調整計算の内容について解説する。   3 合併が行われた場合の調整計算 合併が行われた場合には、基準雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額の調整計算上、被合併法人におけるそれぞれの金額を加味することとなる。 (1) 適用年度に吸収合併が行われた場合 適用年度に吸収合併が行われた場合、合併日の属する月以後、被合併法人から引き継いだ従業者に対する給与等支給額が加味されて、雇用者給与等支給額が大きく増加することとなる。 そこで、基準雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額についても、合併日の属する月から事業年度末までの月数について、被合併法人におけるそれぞれの事業年度(※1)に係る給与等支給額を加算する調整を行うことで、適切な大小比較を可能とする(計算のイメージは下図を参照されたい)。 (※1) 調整計算の対象となる基準事業年度及び前事業年度のことを、条文上は「調整対象基準年度」及び「調整対象前年度」と称している。 この図より一目瞭然であるが、合併後の雇用者給与等支給額の水準(上図③)と同じような図形になるように、基準雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額を調整していることがイメージできれば、理解も早まると思う。 【基準雇用者給与等支給額の調整】 以下の金額を合計した額となる(措令27の12の5⑥一)。 ・合併法人の調整対象基準年度における給与等支給額(上図①) ・被合併法人の調整対象基準年度における月別給与等支給額を合計した金額(上図④)に、当該合併の日から当該適用年度終了の日までの期間の月数を乗じてこれを当該適用年度の月数で除して計算した金額(上図では「÷12」としている) 【比較雇用者給与等支給額の調整】 以下の金額を合計した額となる(措令27の12の5⑫一)。 ・合併法人の調整対象前年度における給与等支給額(上図②) ・被合併法人の調整対象前年度における月別給与等支給額を合計した金額(上図⑤)に、当該合併の日から当該適用年度終了の日までの期間の月数を乗じてこれを当該適用年度の月数で除して計算した金額(上図では「÷12」としている) この点に関し、被合併法人の給与等支給額として加算調整すべき金額の計算上、単純に被合併法人の基準雇用者給与等支給額ないし比較雇用者給与等支給額を用いるのではなく、「月別給与等支給額を合計した金額」を用いている点に留意が必要である。 「月別給与等支給額」とは、その合併に係る被合併法人の各事業年度の給与等支給額をそれぞれ当該各事業年度等の月数で除した金額を当該各事業年度等に含まれる月に係るものとみなしたものをいう(措令27の12の5⑦)。年度内の月別給与等支給額を合計すれば当然、年間の給与等支給額と一致する。 あえてこのような計算をさせているのは、上図の「合併~期末までの月数」に係る給与等支給額として、被合併法人の各月の支給実績額をそのまま用いるとすると、給与等支給額の月別変動が含まれて適切な判定ができない可能性があるためである。 そこで、給与等支給額の月別変動を排除するために、いったん月平均額としての「月別給与等支給額」を算定した上で、これを合計するという手順を踏んでいるのである(下図参照)。 (2) 基準年度開始の日から適用年度開始日の前日までに吸収合併が行われた場合 適用年度は年度を通じてすべて合併後の規模で給与等支給額が発生することとなるが、引き続き、基準年度及び前年度の給与等支給額について調整が必要となる(下図参照)。 【基準雇用者給与等支給額の調整】 以下の金額を合計した額となる(措令27の12の5⑥二)。 ・合併法人の調整対象基準年度における給与等支給額(上図①) ・被合併法人の調整対象基準年度における月別給与等支給額を合計した金額(上図④) 【比較雇用者給与等支給額の調整】 調整対象前年度において合併が行われている場合(※2)、以下の金額を合計した額となる(措令27の12の5⑫二)。 ・合併法人の調整対象前年度における給与等支給額(上図②) ・被合併法人の調整対象前年度における月別給与等支給額を合計した金額(上図⑤) (※2) 調整対象基準年度開始の日から調整対象前年度開始の日の前日までに合併が行われている場合(上図⑤が存在しない場合)には、調整対象前年度においても、年度を通じて合併後の規模で給与等支給額が発生することとなるため、特段の調整は不要である。 (3) 適用年度に新設合併が行われた場合 新設合併の場合には、合併法人は合併により成立するため、前年度以前の給与等支給額は発生していないが、合併に係る被合併法人の給与等支給額に基づき、基準雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額を計算することとなる。 また、適用年度は合併日から開始するため、通常の事業年度よりも短いことが一般的である。この場合、基準事業年度及び比較事業年度と適用年度の月数が異なることとなるため、その調整も必要となるので留意が必要である(措法42の12の5②四ロ・六ロ。詳細は【第1回】を参照)。 新設合併に特有の取扱いとして、当該合併に係る被合併法人のうち、どの被合併法人の給与等支給額を基礎として合算調整を行うかを決定する必要がある。対象となる被合併法人を「基準被合併法人」といい、被合併法人のうち当該合併の直前の時における資本金の額又は出資金の額が最も多いものをいう(措令27の12の5⑥三)。 そのうえで、基準雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額は以下のように調整される。 【基準雇用者給与等支給額の調整】 以下の金額を合計した額となる(措令27の12の5⑥三)。 ・基準被合併法人の調整対象基準年度における給与等支給額(上図①) ・基準被合併法人以外の被合併法人の調整対象基準年度における月別給与等支給額を合計した金額(上図④) 【比較雇用者給与等支給額の調整】 以下の金額を合計した額となる(措令27の12の5⑫三)。 ・合併法人の調整対象前年度における給与等支給額(上図③) ・被合併法人の調整対象前年度における月別給与等支給額を合計した金額(上図⑥) 調整対象前年度は、基準被合併法人の適用年度開始日から合併の日の前日までとなっている点に特に留意されたい。 (4) 基準年度開始の日から適用年度開始の日の前日までに新設合併が行われた場合 この場合には、合併法人として前事業年度が存在するため、比較雇用者給与等支給額については特段の調整は必要とされず(ただし、前年度と適用年度の月数が異なる場合の調整は必要)、基準雇用者給与等支給額についてのみ調整計算が定められている。 【基準雇用者給与等支給額の調整】 以下の金額を合計した額となる(措令27の12の5⑥三)。 ・基準被合併法人の調整対象基準年度における給与等支給額(上図①) ・基準被合併法人以外の被合併法人の調整対象基準年度における月別給与等支給額を合計した金額(上図③) 【比較雇用者給与等支給額】 特段の調整はない(上図⑤)。この点に関し、適用年度と前事業年度の月数が異なる場合には、月数補正の調整が必要となる。   (了)

#No. 230(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2017/08/10
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