《速報解説》 金融機関により「暦年贈与サポートサービス」で事前照会 ~東京局、サービス契約に基づく連年贈与でも 「定期金給付契約に関する権利」の贈与には該当せずと回答 Profession Journal編集部 東京国税局はこのたび文書回答事例により、金融機関が行う暦年贈与のサポートサービスについて、当初の契約に基づき連年で贈与を行ったとしても、約束をした年に、定期金に関する権利(例えば、10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして各年の贈与として贈与税が課税されるという相続税法24条の「定期金給付契約に関する権利」の贈与には該当しないとの見解を示した。 暦年贈与は毎年一定額の贈与を行うことにより110万円の税額控除枠を利用するもので、安定的に贈与できるとして従来から活用されている生前贈与策の1つだ。 だが、毎年一定額を贈与する場合、例えば10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、受贈者と贈与者との間で約束されている場合には、1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、約束をした年に一定額の贈与を計画し、その金額を定期的に贈与するという定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利=相続税法24条)の贈与を受けたものとみなされ、贈与総額に対して贈与税が課されることとなる。 今回事前照会を行った金融機関は、贈与者と金融機関による本サービス契約期間となる5年間に、毎年贈与契約書を金融機関から贈与者へ郵送等し、受贈者との間で締結された契約書を一旦受領した後、その贈与金額を贈与者から受贈者の口座へ振り替える等、贈与者と受贈者の間に立って暦年贈与手続に関するサービスを行うというもの。取引概念図及び手続の流れは次のとおり。 《取引概念図》 (※) 国税庁ホームページより 本サービスは、当初のサービス契約に基づき5年間の契約期間中に定期的な贈与が行われることが想定されるため、サービス利用開始時に「定期金給付契約に関する権利」の贈与が行われたものとして総額で贈与税が課税されるのではないかとの疑義が生じることから、東京国税局に対して事前照会がされたと考えられる。 当初のサービス契約によって贈与契約が成立するものではなく、契約期間中の各年に締結する贈与契約の履行に基づき各年の贈与を行うものであるため、定期金給付契約に関する権利の贈与には該当しない、とする照会者からの照会内容に対して、東京国税局は「貴見のとおりで差し支えない」との回答を行っている。 本サービスは、上記【手続の流れ】③下線部の説明のとおり、贈与の都度、贈与者・受贈者間の贈与の意思確認を行った上で、その双方合意による贈与契約の成立を証する贈与契約書に基づいて贈与資金の払出し・振込(預金の振替)を行う点がポイントだ。 そのため、例えば贈与者が認知症となっていても贈与が続いていたり、贈与者が重篤な状態に陥っているにもかかわらず贈与が行われた場合には、上記の「贈与の都度、贈与者・受贈者間の贈与の意思確認を行った」とはいえず、相続税法24条に基づき認定課税が行われることになる。 また、贈与者=親、受贈者=子での契約では、相続が開始した場合は、本契約による贈与によっても、その3年以内に贈与があれば相続財産に取り込まれる点には留意したい。 (了)
《速報解説》 国税庁、法人番号を用いた取引先管理等の利用法をパンフレットで紹介 ~6月末までは研修会の講師派遣も Profession Journal編集部 法人番号の利活用を促進するために、国税庁はこのほど、「法人番号の利活用~法人番号の利活用方法のご紹介~」と題したパンフレットを公開した。 同パンフレットには、法人番号の活用法のほか、利活用のための他の法人等の法人番号の入手方法などが示されている。 〇個人番号と異なり利用制限のない「法人番号」 法人番号は、国税庁長官により登記された法人や人格のない社団等に対して付番された13桁の番号である。対象法人等には昨年10月以降「法人番号指定通知書」により郵送されている。 法人番号は、個人番号(マイナンバー)とは異なり、利用範囲の制限がされていないことから、一般に法人番号の利活用が可能となる。今回、公表されたパンフレットは、その利活用のための手引きという位置づけだ。 〇法人番号を使った顧客管理簿作成事例 法人番号は、「国税庁法人番号公表サイト」で名称及び所在地と共に公表されており、本サイトを通じて誰でも検索・入手ができるようになっている。 法人番号の利用だが、例えば、本サイトで取得した取引先の法人番号を利用して顧客管理簿を作成することで、独自の顧客管理方法を構築する手間が省けることになる。 これにより、売掛金(売上台帳)などで法人番号をキーとすることで、取引先ごとの集計が容易となるばかりでなく、支店・出張所との取引であっても、本店と同一の法人番号であることから取引先ごとの集計を確実に行うことができるとする例が紹介されている。 (※) 国税庁「法人番号の利活用~法人番号の利活用方法のご紹介~」より 〇行政機関の公表情報にも法人番号を記載 行政機関では、平成28年1月より法人情報をWeb ページ等で公開する際には、法人番号を併記することとなった。これは、法人番号による情報の検索・収集・利用を容易にし、公開情報の利用価値を高めることを目的とするもので、下記の情報に法人情報を含む場合には、法人番号が付される。 法人番号を用いた顧客名簿を作成していれば、そのリストと行政機関情報に紐付けられている番号の照合を行うことが可能となるため、これまで容易に管理することが叶わなかった顧客情報管理を行うことも可能となろう。 〇法人番号の一括取得も可能に 上記のような利用を行うためには、目的とする法人に割り振られている法人番号の取得を行わなければならない。 顧客数が少なければ、国税庁法人番号公表サイトで、団体の商号及び所在地から法人番号を検索することで1件ずつの検索が可能だ。また、法人番号から団体の商号や所在地を検索する場合には一度に10件まで検索が可能になっている。 (※) 「国税庁法人番号公表サイト」より 顧客数が多い場合には、上記の検索方法では多くの時間を要することから、次 の4つの方法により全件データの一括提供も行われている。 上記の①や③を通じて取得した法人番号を利用することによって、郵便番号を用いた住所変換を行う入力補助のように、法人番号さえ入力すれば「法人名」「本店所在地」の情報を自動的に補完入力する機能を追加することが可能となるという。これにより誤入力や表記のゆれによる問題が解消できるほか、入力作業の効率化にもつながるという活用例も紹介されている。 (※) 国税庁「法人番号の利活用~法人番号の利活用方法のご紹介~」より 〇国税庁から研修会の講師派遣も 自社が抱える顧客管理の問題をクリアできるとして上記の利活用に興味を持ったとしても、いざ自社で導入するとなると様々な疑問点も生じよう。そこで国税庁法人番号管理室では、平成28年6月30日(木)までの期間、職場や事業者団体での研修会等の要望があった場合、講師を派遣し利活用事例を含めた法人番号についての説明を行うとしている(原則として参加予定人数が50名以上。説明会予定日の2週間前までにメールでの問い合わせが必要)。 下記ホームページ記載によると説明予定時間は20~50分だが、講師への講演料・交通費等は不要とされていることから、利活用を具体的に検討している企業や業界にとっては一考の価値ありだ。 (了)
《速報解説》 ITの進歩、サイバー攻撃等に対応した 「公認会計士業務における情報セキュリティの指針」及び Q&Aの改正(公開草案)が公表 ~クラウドサービス普及やIoTの進化による影響も記載~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年5月27日、日本公認会計士協会は次のものを公表し、意見募集を行っている。 これは、前回の改正(平成24年8月30日)以降のITの進歩への対応、日本年金機構における個人情報流出事案に象徴されるサイバー攻撃等、新たな情報セキュリティリスクとして、サイバーセキュリティへの対応などを行ったものである。 意見募集期間は平成28年6月27日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 実務指針の主な改正内容 1 対象範囲 実務指針は、公認会計士が監査に限定されないすべての業務において留意すべき情報セキュリティについての指針の提供を目的としている。 公認会計士は、実務指針に従って情報漏洩を防ぐ体制を構築し、運用することが必要である。 2 ITの進歩に対応する情報セキュリティ クラウドサービス等のITリソースが、ITの進歩により広く普及し、利用されるようになると、新しいリスクが生じることから、ITの進歩に対応した情報セキュリティ及び体制の見直しを考える必要がある。 電子メールの利用に際しての注意(誤送信防止など)、クラウドサービス等のITリソース利用に係る情報セキュリティ(ログオン時のID、パスワードの漏洩など)、サイバーセキュリティに係る情報セキュリティ(偽装したログイン画面を用意してログオン時のID、パスワードの奪取など)などが述べられている。 3 情報漏洩に関するリスクの認識と対応 業務上取り扱う情報がどのように管理されているのかに関して、業務の流れとITの利用状況に沿って理解し、関連する内部統制を識別した上で、リスクを認識しなければならないことについて述べている。 Ⅲ Q&Aの主な改正内容 Q&Aの改正は多くの事項に及んでいるので、下記では特徴的な記載について述べる。 1 サイバーセキュリティと情報セキュリティの違い(Q4) サイバーセキュリティは、サイバー空間を対象としたセキュリティの考え方である。サイバー空間は各種デバイス、コンピュータ、ネットワークその他の電子化された世界のため、サイバーセキュリティにおいては電子化された情報資産がその保護対象となる。 情報セキュリティはIT委員会実務指針第4号でも記載されているように、その範囲を電子の情報に限定しておらず、紙の資料もその対象に含まれる。サイバー空間固有の特徴はあるものの、サイバーセキュリティにのみ特化した対策を行うのではなく、情報セキュリティの一部として検討することが求められる。 2 サイバーセキュリティ対策に関する全体像の把握に適した資料(Q6) IT委員会実務指針第4号を活用する。 下記のものも参考になる。 3 IoT(Internet of Things)の動向(Q12) IoTが進んでいくことで便利になる一方、情報セキュリティの面からは管理対象が増加し、その特性上、情報漏洩のリスクが顕在化しやすくなる状況にあると言えると述べられている。 具体的な特性として、①管理が意識から漏れやすい点、②モニタリングの困難さが述べられている。 4 マルウェア対策を実施する上での留意点(Q24) マルウェアから防御するためには、すべてのPC・サーバにマルウェア対策ソフトを導入するとともに、常に最新の状態に維持されるようにする。そのため、情報セキュリティ担当者は、すべてのPCにおいてパターン・ファイルの更新の設定が正しく行われるよう留意する。 5 ファイルサーバとしてクラウドサービスを利用する場合の業者を選ぶ際の留意点(Q27) 委託先選定に当たっては、情報セキュリティ対策、サービスの稼働状況、利用者サポート体制、契約終了時のデータの取扱い、事業者の事業継続性についても考慮することが重要であると述べられている。 Q&Aでは、具体的な留意点が記載されている。 (了)
《速報解説》 消費税率10%引上げ先送りの場合 「住宅取得等資金の贈与税非課税特例」の大幅拡充枠は施行されず ~3,000万円非課税枠を見越した贈与計画は見直しに? Profession Journal編集部 消費税率引上げの判断について来月初旬にも安倍首相からアナウンスが行われると一部報道がなされているが、もし10%引上げが先送りとなった場合、現在施行されている税法をさらに改正する必要がある。 このときに気をつけたいのが、すでに消費税率10%引上げを前提として施行されている他制度への影響であり、特に注意すべきなのは今年の10月以降の契約分から非課税枠が大幅拡充される予定の『住宅取得等資金の贈与税の非課税特例』(措法70の2)だ。 この制度は父母や祖父母などの直系尊属から一定の住宅取得等資金を贈与により取得した場合に、非課税限度額までの金額について贈与税が非課税となるもの。 そして非課税限度額については27年度改正により、消費税率10%引上げ時の住宅需要の落ち込みを緩和するため、下表の通り「住宅資金非課税限度額」と「特別住宅資金非課税限度額」の2パターンに分かれた非課税枠設定がなされている。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 上表の通り、今年の10月1日以後契約分から制度がスタートする「特別住宅資金非課税限度額」は、省エネや耐震、バリアフリー等の質の高い住宅を取得等した場合、3,000万円という大幅な非課税枠が設けられている。 ただしこの特別住宅資金非課税限度額は、贈与資金を使って取得等する居住用家屋の対価に含まれる消費税等の税率が10%であることが前提となっており、消費税率10%引上げが先送りとなった場合は上表左の「住宅資金非課税限度額」が適用され非課税枠は良質住宅で1,200万円にとどまる。 昨年度の税制改正からこの3,000万円非課税枠を見越して贈与計画を立てている場合は、1,800万円の課税額増になるリスクが高くなっていることから、計画の見直しを迫られることになろう。 また、今年の9月30日までに契約(H29.4.1以後の譲渡)した場合は、請負工事等に係る消費税の経過措置規定として消費税率8%が適用されるが、こちらの規定も見直しとなるため留意されたい。 なお、予定通り消費税率が平成29年4月1日から10%へ引き上げられることとなった場合でも、10月以降で平成28年中に急ぎ住宅取得等資金の贈与を行うと、この特例の適用要件として、贈与年の翌年3月15日までに居住の用に供している必要があり29年4月以降の引渡しとはならないことから、消費税率8%が適用され「特別住宅資金非課税限度額」は使えない。 そのため、特例の適用を受けるならば、贈与は手付時点で行ってはならず引渡しの直前で実行しなければいけないという鉄則はこれまでと変わっていない。新築大型マンションでは3年後の完成というケースも珍しくないため、非課税枠3,000万円狙いで来年の9月30日までに購入契約をした場合でも、手付金は自らの資金で払い、親からの贈与は3年後に受けるといった手順も欠かせない。 * * * 仮に引上げが先送りされた場合、その要因は景気低迷にあるとして、税制含め新たな景気刺激策が採られる可能性もある。そちらの動向も注視しておきたい。 (了)
2016年5月26日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.170を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第23回】 「税執行における洒落」 税理士 山本 守之 1 軽減税率における「外食」の定義 消費税の軽減税率の対象品目と税率は次のようになっています。 注意したいのは、飲食料品の範囲から外食は除かれますが、消費税法の別表第一のイ、ロでは外食を次のように定義していることです。 外食の定義は場所と態様の2つの要素で判断します。1つ目の要素は取引の場所ですが、2つ目は「サービスの提供といえるか」という態様で判断します。 そこで「定義」では、「食品衛生法上の飲食店営業その他のその場で飲食させるサービスの提供(「食事の提供」)を行う事業を営む者が、テーブル、椅子その他のその場で飲食させるための設備(「飲食設備」を設置した場所で行う「食事の提供」その他これに類するもの)」と定義しています。 このうち「その他これに類するもの」とは、相手方の注文に応じて指定された場所で調理等を行うこと(「ケータリング・出張料理」)をいいます。 当初の財務省の資料によると、次のように区分されていました。 「外食」の定義 (出所) 財務省資料 しかし、その後、次のように区分しています。 2 テイクアウトと言って店内で飲食したら? 問題は、注文時には「テイクアウト」として料金を軽減税率で支払い、実際には帰らずに店内で飲食した場合はどうなるでしょうか。 税理士による解説書では次のように書かれています。 国会における財務省答弁では、「客の申し出がない限り負担を求めない」としていますが、安倍首相の答弁では「テイクアウトと言って店内で食べる子がいたら注意するのが大人の義務である」としています。 このようなことを国会で質問する方もどうかと思いますが、答える方もどうでしょうか。 財務省の答弁は、テイクアウトで税を払い店内で飲食しても本人が申告しない限りは税の追及はしないとしていますが、安倍首相は「大人として税は正しく払うべきだ」というのです。 「先進国ではどうしているのだろうか」と疑問を持った筆者は、3月に確定申告を早めに済ませると早速パリに行きました。 3 フランスで見た大人の税執行 シャンゼリゼ通りの飲食店で休憩のためにフランスパンとピザを買うと、店員から「テイクアウトか店内飲食か」と聞かれましたが、店内飲食という筆者のフランス語が通じず、商品を紙に包んでくれました。 実は、「店内飲食」の場合はトレーに乗せてくれ、「テイクアウト」の場合は紙に包んでくれるのです。「私たちは歩き疲れているので、椅子とテーブルのある2階で食べますよ」と言うように2階を指さすと、「どうぞ」と言うような態度を示してくれました。2階に移り食べながら周りを見渡すと、トレーで食べている人(10%の外食の税を払った人)が50%、紙包みで食べている人(5.5%の軽減税率しか払っていない人)が50%くらいでした。 かつて日本で悪名高き「取引高税」があった時、税務職員が電柱の陰に隠れて、店から出てくる客に「証書をもらいましたか」と聞いて、もらっていなかった場合は店に踏み込んで「脱税だ!」と摘発したものです。 安倍総理の考え方で税務執行をしたら嫌だなと思っていましたが、フランスでは大人の執行をしていることを確認して安心しました。 カナダでは、ドーナツを「その場で食べるかどうか」を軽減税率適用の指標としています。 例えば、5個以下のドーナツを購入した場合は、「その場ですぐに食べられる」ということで「外食」となり、税率は5%、一方6個以上のドーナツを購入した場合は、テイクアウト用の食料品となりゼロ税率となります。 そこで客Aが3個、客Bが3個買うとして、2人が組みになると6個でゼロ税率となり、片目をつぶってニヤリと対応してくれます。 洒落が通じるので、このような執行(ドーナツクラブ)が通用するのです。 日本では国会の審議で、「8%で買ったハンバーガーを店内で食べた場合」という議論を国会議員と総理がしています。 フランスの標準税率は20%ですが、軽減税率は次のようになっています。 筆者は、椅子に座ってパンとピザを食べたのですが、フランスの税法からみればTVA(日本の消費税)は10%となります。しかし、筆者はテイクアウトとして5.5%の税しか払っていません。それでは「脱税」になるのでしょうか。 税を少なく(5.5%)払っている人も悪びた様子もなく、10%を払っている人もこれを責める様子がなく、自然に楽しんでいます。これが自由の国フランスなのです。 日本では首相が国会答弁で「子どもがテイクアウトと言って店内で食べている子がいたら注意するのは大人の義務です」との答弁は正しいかもしれませんが、社会生活としての正義とは必ずしも言えません。 歩き疲れたから椅子に座って食べただけで罪人のように扱われるのはたまらないのです。 「できるだけ税が少なくなるように」と庶民が知恵を使うのと、資産家が資産税で脱税まがいの「節税」をするのとは次元が異なるのです。 4 日本で軽減税率が導入されたワケ 日本の法人税減税を調べてみると、例えば「研究開発減税」は6,746億円(平成26年度)ですが、企業数で全体の0.1%に満たない資本金100億円超の企業の利用が全体の8割です。 このほか、資本金100億円超の法人は生産性向上設備減税で76%、賃上げ促進減税で46%、と利用が集中しています。 実効税率引き下げとともに政策減税で大企業優遇となっています。 財務省と日本税理士会連合会は軽減税率制度を適用することに反対していましたが、自民党と連立を組む公明党の要求で軽減税率制度が実現しました。 筆者は今回の渡仏でベルシーにある財務省には寄りませんでした。それは、わずか2%、(10%→8%)の軽減税率とした理由(選挙対策)が恥ずかしくて説明できなかったからです。 財務省や日税連が軽減税率を反対としていた理由は、「食料品は高所得者ほど支出額が多く、飲食料品軽減税率を適用しても低所得者対策にならない」というもので、野党の主張と同じでした。 これに対して安倍首相の野党代表者の質問に対する答弁は「軽減税率は、日々の生活において消費税の負担感を直接軽減することで、買い物の都度、痛税感の緩和を実感できる利点があり、この点が特に重要だと判断し(軽減税率の)導入を決定した。年収の低い人の飲食料品等の消費支出の占める割合は高収入の人より高くなっており、逆進性緩和の点からも有効だ。消費者の消費行動にもプラスの影響があると期待できる。」というものです。 何のことはない、野党は「飲食料品の消費の額は高所得者の方が多い」としており、首相答弁では、「低所得者は生活に占める食料品購入の割合が高いから有効だ」というのです。 一方は食料品消費の「額」で主張し、他方は生活費に占める食料品の「割合」で答えている。当然のことを使い分けているだけで、当然のことを言っているのですが、国会の中でなければ討論にならない論理です。 政治家や財務省、日税連の主張は同じですが、庶民の生活実態とは乖離しています。 ◆ ◇ 筆者のコメント ◇ ◆ ここからは「自由職業者」としての筆者のコメントです。 はじめに知っておかなければならないのは、消費税法では物を売ったら税を預かれとは書いていないのです。消費税を預かろうと預かるまいと課税売上に消費税率を掛けた金額を課税するとしています。 パンやピザを買った人がテーブルと椅子のある店内で飲食した場合でも、レジで注文した時に「テイクアウト」とした場合は標準税率に再計算する追跡はしないと財務省が答弁しているのは、執行が困難だからでしょうか。 「執行できない」ものを法律で定める方がおかしいのですが、これが国会で論議されている国もおかしいと思います。 フランスで5.5%(テイクアウト)しか払っていない人が店内で飲食することを許しているのは、自由の国フランスの執行上の洒落です。 10%の税を払って店内飲食している人もいますが、これも自由の国だからです。 日本でも10%(標準税率)払った人に「ありがとう」という気持ちがあればトレーの隅に小さいチョコレートでも置いたらどうでしょうか。これが日本の洒落というものです。 日本の税執行に洒落があれば、私たち税理士の仕事も一層楽しくなります。 (了)
「少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例」 平成28年度改正のポイント 【第1回】 「改正概要と適用上の留意点」 税理士 伊村 政代 1 概要 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の規定(措法67の5)は平成15年度税制改正における創設以来、適用期限が延長されてきた制度であり、平成28年度税制改正においても平成30年3月31日まで2年間延長されている。 ただし今回の改正では、次のように従業員数による適用対象法人の見直しが行われている。 2 平成28年度税制改正について 今回の改正において、下記の通り租税特別措置法67条の5第1項の適用対象を規定した箇所に「事務負担に配慮する必要があるものとして政令に定めるものに限る」という一文が加えられた(下線が改正部分)。 これは、マイナンバー制度の導入や消費税率変更等により事務負担の増える中小企業を支援するため、適用対象者を見直した上での期限の延長と解釈されている。 この「事務負担に配慮する必要があるものとして政令に定めるもの」については、改正租税特別措置法施行令39条の28第1項において「常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人とする」と規定された。 つまり、改正前に適用対象とされていた中小企業者のうち、従業員の数が1,000人を超える法人は、適用対象からすべて除外されることとなった。 なおこの改正は、平成28年4月1日以後に取得又は製作若しくは建設をする少額減価償却資産について適用され、同日前に取得又は製作若しくは建設をした少額減価償却資産については、従来どおりの制度が適用される(改正法附則101条)。 このように、対象法人の見直しにより今後適用除外となる法人があるため、留意されたい。 なお、上記改正事項の取扱いについては、次回(6/2公開)確認することとする。 3 制度の内容 次に、この制度の適用上の留意点について、あらためて確認しておきたい。 この制度は青色申告法人である中小企業者等が、1組又は1個の取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得した場合に、取得価額相当額を即時償却できる制度である。 通常の減価償却資産であれば取得価額相当額を耐用年数により按分し、徐々に事業年度を通して損金としていくが、この制度を適用することで下図のように初年度の即時償却となるため、利益の出ている事業年度に適用を受けることにより、その利益を圧縮する効果がある。 〈例〉 取得価額25万円、法定耐用年数5年のケース 4 適用資産を複数取得した場合 この制度には適用資産の合計額が年300万円以下とする上限額が設けられており、300万円を超えるときはその総額が300万円に達するまでの取得価額の合計額となる。 〈例〉 28万円の資産が12個(28万円×12個=336万円)の場合 5 他規定との組み合わせの検討 上記の通り、この30万円未満の少額減価償却資産の特例は上限額(年300万円)があるため、合計金額が300万円を超えているときは適用を受けることができない資産が生ずることとなる。 よって、取得価額が20万円未満の資産があるときは一括償却との組み合わせも考慮し、効果的な償却方法を選択することとなる。 なお、取得価額が10万円未満のものについては、法人税法上の「少額の減価償却資産」に該当し、その規定の方が優先されるため、結果的に「少額減価償却資産の特例」は適用されない。 ■少額な減価償却資産に適用される制度 (※) 一括償却は、取得価額が20万円未満の資産を3年で1/3ずつ損金とすることができる規定である(法令133の2)。 (出典) 小谷羊太『三訂版 実務で使う法人税の減価償却と耐用年数表』(清文社) (了)
企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の制度解説 【第2回】 「対象となる寄附・寄附先等の要件」 辻・本郷税理士法人 税理士 安積 健 今回は本制度を適用するための要件について確認していく。本制度は、各地方公共団体において地域再生計画を策定の上、内閣総理大臣の認定を受け、その上で、企業に寄附を募り、各企業がこれに応じ寄附を実施することで各企業において所定の税額控除を受けることができる。 1 対象法人 青色申告書を提出する法人であること。 2 対象となる寄附先 (1) 認定地方公共団体 地域再生法第8条第1項に規定する認定地方公共団体に対する一定の寄附であること。地域再生制度とは、地域経済の活性化、地域における雇用機会の創出その他の地域の活力の再生を総合的かつ効果的に推進するため、地域が行う自主的かつ自立的な取組みを国が支援するものである。 地域再生法に基づく認定制度は、地域が行う地域再生のための自主的・自立的な取組を総合的かつ効果的に支援するため、地方公共団体が作成しその認定を申請する地域再生計画について内閣総理大臣が認定し、国は認定を受けた地域再生計画に基づく事業に対し特別な措置を講じるものである。この内閣総理大臣の認定を受けた地方公共団体を「認定地方公共団体」という。 ただし、寄附を受ける地方公共団体が次に掲げる場合には、本制度の対象とはならないことに注意が必要である。 ① 都道府県 後述する「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」を行おうとする年度の前年度において、普通交付税の交付を受けていないこと。 ② 市町村 次のいずれにも該当すること。 具体的には、次に掲げる地方公共団体が本制度の対象外となる(「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)活用の手引き(平成28年4月)」内閣府地方創生推進事務局、P7)。 (2) 認定地方公共団体からの経済的利益供与の禁止 なお、認定地方公共団体は、まち・ひと・しごと創生寄附活用事業に関連する寄附を行う法人に対し、寄附を行うことの代償として経済的な利益を供与してはならないとされる。 例えば、以下の行為を行ってはならないとされる(「地域再生計画認定申請マニュアル(抜粋版)〈地方創生応援税制関係〉(平成28年4月)」内閣府地方創生推進事務局、P4)。 3 対象となる寄附(特定寄附金) 本制度の対象となる「特定寄附金」とは、認定地方公共団体に対して当該認定地方公共団体が行ったまち・ひと・しごと創生寄附活用事業に関連する寄附金をいう。 ただし、寄附をした者がその寄附によって設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものは除かれる。 「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」とは、認定地方公共団体の作成した認定地域再生計画に記載されているものをいう。 具体的には、次に掲げる要件をすべて満たした事業である。 本制度で想定される事業としては、例えば、次に掲げるようなものがある。 また、法人からの寄附については、次に掲げる要件を満たす必要がある。 寄附の払込みについては、地方公共団体がまち・ひと・しごと創生寄附活用事業を実施し、事業費が確定した後に行うこととなる。また、本制度の対象となる寄附は、確定した事業費の範囲内までとなる。 4 適用事業年度 特定寄附金を支出した日(平成28年4月20日~平成32年3月31日に支出したもの)を含む事業年度において税額控除が適用される。ただし、解散(合併による解散を除く)の日を含む事業年度と清算中の各事業年度は除かれる。 〈地方創生応援税制のフロー図〉 (※) 「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)活用の手引き(平成28年4月)」内閣府地方創生推進事務局、P4より (了)
〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第4回】 「別表6(21) 雇用者給与等支給額が増加した場合の 法人税額の特別控除に関する明細書」 公認会計士・税理士 菊地 康夫 Ⅰ はじめに 本連載では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、複数の書き方パターンがある様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 今回は、最近創設された制度での中で比較的適用できるケースが多いにもかかわらず、書籍等での掲載頻度が少ない「別表6(21) 雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」を採り上げる。 Ⅱ 概要 この別表は、青色申告書を提出する法人が租税特別措置法第42条の12の4第1項の規定(いわゆる「所得拡大促進税制」)の適用を受ける場合に作成する。 これは、平成25年4月1日から平成30年3月31日までに開始する事業年度において、以下の(イ)、(ロ)及び(ハ)の要件をすべて満たした場合、国内雇用者(注1)に対する給与等支給増加額について、その支給増加額の10%の税額控除ができる(当期の法人税額の10%、中小企業者等は20%が上限)制度である。 (イ) 給与等支給額(注2)が基準事業年度(注3)の給与等支給額と比較して次に掲げる事業年度の区分に応じた割合以上増加していること。 (※1) 中小企業者とは、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人でその発行済株式又は出資の総数又は総額の一定割合以上を大規模法人に所有されていない法人及び資本又は出資を有しない法人で常時使用する従業員の数が1,000 人以下の法人をいう。 (ロ) 給与等支給額が前事業年度の給与等支給額を下回らないこと。 (ハ) 平均給与等支給額(注4)が前事業年度の平均給与等支給額を超えていること。 なお本別表の所得拡大促進税制と似たものに、雇用促進税制(「別表6(18) 雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」)がある。雇用促進税制は厚生労働省が所管であるが、所得拡大促進税制は経済産業省が所管であり、それぞれ異なる制度となっている。これらの制度はである。 Ⅲ 「別表6(21)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成27年4月1日以後終了する事業年度。 (3) 別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (4) 別表の各記載欄の説明 [基準雇用者給与等支給額の計算]欄 [比較雇用者給与等支給額の計算]欄 [平均給与等支給額及び比較平均給与等支給額の計算]欄 〔22欄〕から〔27欄〕までの各欄は、「適用年度」の①欄、「前事業年度又は前連結事業年度」の②欄にそれぞれ分けて記入していく。 (了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例38(財産評価)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆旗竿地 袋地から延びる細い敷地で道路(公道)に接するような土地をいい、その形が竿のついた旗に似ていることから旗竿地と呼ばれる。 ◆無道路地の評価(財産評価基本通達20-2) 無道路地とは、道路(注1)に接しない宅地又は接道義務(注2)を満たしていない宅地をいう。無道路地は、道路に面している画地に比べるとその利用価値が低いため、道路に面した画地の価額である路線価を補正してその価額を評価する。 具体的には、無道路地を不整形地として評価した価額から、接道義務に基づき最小限度の通路を設けた場合の通路開設費を控除して評価する。したがって、無道路地の評価額は通常の不整形地の評価額より低くなる。 (注1) 建築基準法における道路とは、原則として「幅員4m(特定行政庁指定区域内においては6m)以上の一定のもの」をいう(建築基準法第42条第1項)。 (注2) 建築基準法においては、原則として「建築物の敷地は、道路に2m以上接していなければならない。」と定められている(建築基準法第43条)。 接道義務は、地方公共団体が条例により、必要な制限を付加することができることとなっている。 (了)