女性会計士の奮闘記 【第25話】 「はじめの一歩は問題だらけの決算書」 公認会計士・税理士 小長谷 敦子 (画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。) (※) 流動比率は、会社の財務の安全性を示す比率です。以下のように計算します。 流動比率=流動資産/流動負債×100(%) ◆ワンポントアドバイス◆ “お客様作りは、まず種まきから” すぐに報酬には結びつかなくても、まわりまわってお客様獲得につながることもあります。 信頼を得てお客様を獲得するためには、たとえすぐに結果がでなくても、地道な努力が必要なのです。 (了)
プロフェッションネットワーク主催セミナー 「税理士 笹岡 宏保氏による【1日で理解する】セミナーシリーズ」 【裁決事例から学ぶ】 広大地評価の最前線実務確認 ~広大地該当性を徹底的に検証する~ 株式会社プロフェッションネットワーク主催の笹岡宏保氏セミナー「【裁決事例から学ぶ】広大地評価の最前線実務確認」の開催が、1月26日(月)と近づいてまいりました。 お申込受付は、本日22日(木)の17時までとなりますので、ご注意ください。 ※お申込み受付は終了しました。 セミナー内容の詳細やお申込方法など、くわしくは下記からご覧ください。
《速報解説》 監査基準等の改訂受け「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い」の改正に関する公開草案が公表 ~有責組合法に基づく財務諸表等に適用される財務報告の枠組みに注意~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年1月16日付で、日本公認会計士協会は、「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い」(業種別委員会実務指針第38号)の改正に関する公開草案を公表した。 これは、 平成26年2月の監査基準の改訂及び同年4月の監査基準委員会報告書800「特別目的の財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸表に対する監査」に対応するものである。 意見募集期間は、平成27年2月17日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 投資事業有限責任組合(以下「有責組合」という)については、設立当初より事業の存続期限が定められている(有期限性)という特徴がある。 実務指針では、有責組合における継続企業の前提の取扱いについても規定している(11項等)。 1 有責組合における財務報告の枠組み 財務報告の枠組みについて、以下のように述べている(9項)。 なお、金融商品取引法に基づく財務諸表及び中間財務諸表は、広範囲の利用者に共通する財務情報に対するニーズを満たすように策定された一般に公正妥当と認められる企業会計の基準等に基づいて作成されるため、当該枠組みは、一般目的の財務報告の枠組みであり、適正表示の枠組みである(10項)。 2 有責組合法に基づく財務諸表等 (1) 有責組合会計規則に準拠した場合の時価評価、会計処理及び表示方法 有責組合会計規則7条において、投資は時価を付さなければならないとされていることを述べ、組合契約に定める投資の評価方法(以下「投資資産時価評価準則」という)は、市場性のない有価証券の評価に当たって、回収可能価額を斟酌する必要があることに留意するとしている(24項)。 ここでは、有責組合の存続期限までが1年未満となった場合における存続期限の到来の直前期(無限責任組合員が存続期限の延長を計画しており、延長後の予定存続期限までが1年以上となる場合を除く)に関する会計処理等の取扱いなどが述べられている(25項~28項)。 (2) 注記事項 有責組合会計規則に定める注記事項に加えて、組合員が有責組合の財務諸表等を利用するに際し、必要と思われる注記事項に、次のものが例示されている(37項)。 3 金融商品取引法に基づく財務諸表及び中間財務諸表 重要な会計方針には、有責組合の有期限性の下での継続企業の前提の考え方並びに有責組合の存続期限及び延長可能期間、継続企業の前提に関する注記等を記載しなければならない(54項)。 4 監査手続及び留意事項 (1) 有責組合法に基づく財務諸表等に適用される財務報告の枠組みの受入可能性 監査人は、監査基準委員会報告書210「監査業務の契約条件の合意」4項(1)に従って、財務諸表の作成において適用される財務報告の枠組みが受入可能なものであるかどうかを判断することが求められている(監基報800第7項)。 投資資産時価評価準則は、市場性のない有価証券の時価評価に当たって、回収可能価額を斟酌すべきものであるが、これは「組合員として参加している投資家に対し組合の業務の状況を正確に開示するという情報開示の本来の目的」(運営研報告書)のためであり、有責組合の財務諸表等の作成において適用される財務報告の枠組みが受入可能かどうかを判断する際の重要な要素となる(監基報800第7項、A5項)。 監査人はこの点を十分に考慮した上で、監査契約の締結が可能か否かを検討することとされている(58項)。 (2) 適用される財務報告の枠組みに関する記載 監査人は、監査基準委員会報告書700第13項に基づき、その適用される財務報告の枠組みについて、財務諸表等に適切に記述されていることを評価しなければならない(監基報800第11項)。 このため、有責組合法、有責組合会計規則及び組合契約に準拠して財務諸表等を作成している旨が財務諸表に適切に記述されていることを評価することとなる(59項)。 Ⅲ 適用時期等 適用時期については、次のように述べられている(125項)。 (了)
《速報解説》 事業承継税制、2代目から3代目への早期自社株贈与は贈与税免除に ~経営者の高齢化を考慮し円滑な経営承継を図る(平成27年度税制改正大綱)~ ミレニア綜合会計事務所 代表税理士 甲田 義典 自民、公明の両党は、平成26年12月30日に「平成27年度税制改正大綱」(以下「大綱」)を決定した(平成27年1月14日閣議決定)。 本稿では、大綱で明らかとなった「非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度」(以下「事業承継税制」という)の見直し(拡充)について、その概要を解説する。 1 見直し(拡充)の背景 我が国が抱えている事業承継問題の1つに「経営者の高齢化」が挙げられる。 帝国データバンクが昨年1月に公表した全国社長分析によれば、社長の平均年齢は少なくとも1990年以降上昇を続け、2013 年には58.9 歳と過去最高齢を更新した。今後もこのトレンドは続いていくと予想されている。 また、事業承継のタイミングに関して2012年の中小企業庁の調査によれば、60歳以上の現経営者の約4割が「もっと早い時期でのタイミングが良かった」と回答しており、後継者への事業承継が遅れていると感じている経営者は少なくない。 経営者の高齢化が進めばそれだけ残された準備期間が少なくなるため、いかに事業承継を円滑に進めるかが重要なポイントになると言えるだろう。 2 事業承継税制拡充の概要(大綱p46) 大綱では、上述のとおり経営者の高齢化が進む中、中小企業の事業承継に関して、より一層の円滑化を図るため、2代目経営者から3代目に承継する場合に、贈与税の納税義務が生じないようにするなどの制度の拡充が盛り込まれた。 現行の税制では、1代目経営者が存命中において、2代目経営者が3代目に自社株を贈与した場合には、事業承継税制の適用により猶予されていた贈与税に関して、納税義務が2代目に生じることになり、3代目への事業承継が困難な状態となっていた。 しかし、今回の改正案において、1代目経営者が存命中に2代目から3代目に自社株を贈与した場合には、事業承継税制の適用により猶予されていた2代目の贈与税の納税義務が免除されることとなった。 【参考】 経済産業省ホームページ 具体的には、事業承継税制適用により2代目経営者において猶予されていた贈与税の納税義務が、以下のケースにおいて免除されることになる。 (了)
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《速報解説》 銀行等に対し預貯金情報をマイナンバーで検索できるよう義務付けへ ~税務調査等での効率的利用を促進。今後の関連法改正に注視(平成27年度税制改正大綱)~ 仰星監査法人 公認会計士 岡田 健司 はじめに 「平成27年度税制改正大綱」において、預貯金情報に対してマイナンバーを付与することが織り込まれた。またこれを受けて、財務省より資料「マイナンバーが付された預金情報の効率的な利用について(案)」が公表されている。 そこで、この税制改正の内容と財務省から公表された資料に基づき、マイナンバーが付与された預貯金情報が今後どのように利活用される予定であるのかについて解説する。 1 税制改正の内容 平成27年1月14日に閣議決定した平成27年度の税制改正大綱(103頁)において、円滑で適正な納税環境を整備する観点から、マイナンバーが付された預貯金情報の効率的な利用に関する措置が織り込まれた。 具体的には、マイナンバーが付された預貯金情報を税務手続において効率的に利用する観点から、番号法並びに、国税通則法及び地方税法等を改正し、銀行等に対し預貯金情報をマイナンバーにより検索可能な状態で管理することが義務づけられることになる。 2 財務省「マイナンバーが付された預金情報の効率的な利用について(案)」 当該資料(下図)(※1)は、財務省のメールマガジン(平成26年12月30日付)で公表されたものである。当該資料で税制改正並びに「マイナンバーが付与された預貯金情報」制度のイメージ及び法改正の動向について把握していきたい。 (※1) この財務省の資料には、「預金」情報とあるが、貯金もその範囲に含まれることから、正しくは「預貯金」情報である。税制改正大綱においては、預貯金情報と記載されている。 【参考】 財務省ホームページ この資料から読み取れるこの制度のポイントは、次のとおりである。 なお、この制度の目的(※3)を十分に達成するための課題は、預貯金口座に対する付番をいかに促進し、いかにより多くの口座に対して付番をするかという点である (※3) 目的として資料に列挙されているのは社会保障制度における資力調査や税務調査であるが、換言すれば生活保護等の不正受給、脱税の防止抑制のためともいえる。これらのほか、マネーロンダリング防止、預金保険、通名による預金口座の名寄せなども挙げられる。 そこで、本資料には、付番開始後、すなわち平成30年1月から3年を目途に、預貯金口座に対する付番の状況等を踏まえて、預貯金口座への付番促進のための所要の措置を講じる旨の見直し規定を法案の附則に規定する方向で検討するとされている。つまり、預金者にマイナンバーの告知義務が課される可能性もありうるということである。 (了)
《速報解説》 「中小企業の会計に関する指針」、平成26年改正に係る公開草案が公表 ~資産の陳腐化等の場合は未経過使用可能期間にわたる償却も~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年1月14日、「中小企業の会計に関する指針」の改正に関する公開草案が公表された(日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会から公表)。 これは、「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号)などの企業会計基準の改正等に対応するものである。 意見募集期間は、平成27年2月13日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 1 固定資産の減価償却 従来、減価償却計算に適用した耐用年数又は残存価額の修正を行う場合、過年度における減価償却累計額を修正し、その修正額を特別損失に計上するとしていた。 公開草案では、資産の陳腐化その他一定の事由により使用可能期間が従来の耐用年数に比して著しく短くなった場合は、未経過使用可能期間(使用可能期間のうちいまだ経過していない期間)にわたり減価償却を行うとしている。 2 退職給付債務・退職給付引当金 公開草案は、確定給付制度、退職給付債務、確定拠出制度の用語を用いた表現に改正している。 3 組織再編の会計 「少数株主」から「非支配株主」へ用語を改正している。 (了) ↓お薦め連載↓
《速報解説》 中小企業等の貸倒引当金の特例、簡便法適用時の基準年度を見直し ~平成12年4月1日以後の新設法人も適用可能に(平成27年度税制改正大綱)~ 税理士 小谷 羊太 〇一括貸倒引当金-現行制度の概要 貸倒引当金は、金銭債権のうち、将来の貸倒れに備えるために、その損失の見込額を計上することができる引当金制度である。 一括貸倒引当金は、会社が有する金銭債権のうち、将来回収不能となるであろうと予測する貸倒損失額を当期において見積計上しようとするものである。 損金経理により貸倒引当金として費用計上した金額のうち、一定額(貸倒引当金繰入限度額)が当期の損金として認められる。 〇一括貸倒引当金繰入限度額の計算 繰入限度額の計算には、貸倒実績率による計算方法と法定繰入率による計算方法がある。 このうち、法定繰入率による計算方法は期末資本金が1億円以下の中小法人のみが選択することができる。 ◆貸倒実績率による計算方法(参考) 一括評価金銭債権 × 貸倒実績率 = 一括貸倒引当金繰入限度額 ◆法定繰入率による計算方法 〇中小企業等の貸倒引当金の特例-貸倒引当金の繰入限度額の計算 法定繰入率により計算する一括貸倒引当金繰入限度額は、上記算式のとおり「一括評価金銭債権の額」から「実質的に債権とみられないものの額」を差し引いた金額に「法定繰入率」を乗じて算出する。 「実質的に債権とみられないものの額」の計算方法には、個別法による方法と簡便法による方法がある。個別法で算出した金額と簡便法で算出した金額のうち、いずれかの金額を選択することができるが、少ない金額を採用したほうが結果的に貸倒引当金の繰入限度額は大きくなる。 黒字が見込まれる事業年度については特に、それぞれの方法で計算した結果を踏まえて有利な方を選択することとなる。 〇平成27年度税制改正大綱の内容 平成26年12月30日付けで公表された自由民主党、公明党による平成27年度税制改正大綱によれば、「中小企業等の貸倒引当金の特例について、実質的に債権とみられない金額の計算について基準年度実績による簡便法を用いる場合の基準年度を平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始した各事業年度に見直す」とある(大綱p73)。 現行制度においては、簡便法を用いる場合の基準年度は平成10年4月1日から平成12年3月31日までの間に開始した各事業年度のデータを基にして計算することとなっているが、この期間を上記の期間に見直すということが公表された。 〇基準年度実績による簡便法の計算 基準年度実績による実質的に債権とみられないものの額の計算は、次の算式により計算した「控除割合」を一括評価金銭債権に乗じて計算する。 上記算式にある各事業年度は、基準年度のものを使用する。 つまり、現行制度においては、平成10年4月1日から平成12年3月31日までに開始した各事業年度のものを使用し、税制改正による見直しはこの基準期間について、平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始した各事業年度のものを使用することとなる。 〇基準年度における留意点 現行制度においては、平成10年4月1日から平成12年3月31日において会社が存在していなかった場合、つまり、平成12年4月1日以降に新設された会社などについては、上記の基準期間が存在しないため、この基準年度実績による簡便法の計算ができなかった。しかし、今回改正によりその基準期間を平成27年4月1日から平成29年3月31日として見直しをすることにより、簡便法での計算が可能となる。 簡便法による計算は、控除割合を用いて「実質的に債権とみられない金額」を容易に計算することができるため、通常の申告時には貸倒引当金の適用を受けない企業であっても簡便法による計算により貸倒引当金の繰入限度額が容易に計算できるようになる。 改正後においては、新しい控除割合の数値が必要となるため、平成27年4月1日から平成29年3月31日までに開始する各事業年度においては、個別法により「実質的に債権とみられないものの額」の計算をしておく必要がある。 〇実質的に債権とみられないものの額(参考) 実質的に債権とみられないものの額は、有する金銭債権の相手方に対して相殺適状にある債務のほか、次のような金額も該当する。 (了)
《速報解説》 平成27年度改正における 主な措置法(法人税関係)の見直し(まとめ) ~商業・サービス業等活性化税制は2年延長、生産等設備投資促進税制は廃止へ Profession Journal編集部 以前よりその有効性について検証が行われていた租税特別措置については、特に昨年は法人税率の引下げに伴う代替財源策として、政府税調においても下記のように、廃止を含めた見直しの方向で議論されていた(税制調査会「法人税の改革について」(平成26年6月)p3~4)。 以下では平成27年度税制大綱(与党大綱)で明らかとなった主な措置法の見直し等の内容についてまとめた。 〇商業・サービス業・農林水産業活性化税制は2年延長 商業・サービス業を営む中小企業等が経営改善設備を取得した場合に、取得価額の30%特別償却又は7%税額控除ができる「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」(特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除:措法42の12の3)は、対象者から認定経営革新等支援機関等を除外し、一部の対象設備については消費税率引上げ対策と関係がないものを除外するなど所要の見直しを行った上、適用期限(現行:平成27年3月31日まで)を平成29年3月31日まで2年延長することとされた(所得税についても同様)(大綱p75)。 なお本制度の詳細は下記の記事を参照いただきたい。 〇生産等設備投資促進税制は平成27年3月31日で廃止 法人の規模にかかわらず一定額以上の生産等設備を取得した場合に、新たに取得等をした機械・装置について30%の特別償却又は3%の税額控除(法人税額の20%を限度)ができる「生産等設備投資促進税制」(国内の設備投資額が増加した場合の機械等の特別償却又は法人税額の特別控除:措法42の12の2)については、適用期限となる平成27年3月31日をもって廃止することとされた(大綱p75)。 (※) 「生産性向上設備投資促進税制」(措法42の12の5)については後述。 〇環境関連投資促進税制(いわゆるグリーン投資減税)の即時償却は、対象資産を風力発電設備のみとした上で1年延長 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合に特別償却又は税額控除が可能な「環境関連投資促進税制」(エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除:措法42の5)のうち、平成27年3月31日で適用期限を迎える即時償却については、風力発電設備のより一層の導入促進を図るため、即時償却の対象資産から太陽光発電設備を除外し風力発電設備のみとした上で、その適用期限を平成28年3月31日まで1年延長することとされた(所得税についても同様)(大綱p75)。 〇雇用促進税制は地方拠点強化税制に係る特例措置を拡充 一定以上の雇用者数の増加に応じ税額控除を受けられる「雇用促進税制」(雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除:措法42の12)は、地方における企業の拠点強化を促進する特例措置の創設(地方拠点強化税制)の一環として、「地方拠点の当期増加雇用者数1人当たりの税額控除の特例措置(拡充型・移転型)」が加わる(適用期間は3年間(平成30年3月31日までに「地方拠点強化実施計画」が承認された事業者が対象))(大綱p69)。 【参考図】 (※) 経済産業省ホームページ 〇生産性向上設備投資促進税制、所得拡大促進税制、研究開発税制の取扱い判断は平成28年度改正以降へ 次年度以降に適用期限を迎える「生産性向上設備投資促進税制(措法42の12の5)」(平成28年度末期限)、「所得拡大促進税制(措法42の12の4)」(平成29年度末期限)及び「研究開発税制(措法42の4)」(増加型・高水準型は平成28年度末期限)については、いずれも平成28年度税制改正以降における法人税改革の第2段階において、「景気の好循環の定着状況等を踏まえつつ、取扱いについて検討を行う」こととされた(大綱p4)。 なお、所得拡大促進税制及び研究開発税制(総額型)については、適用要件等の見直しが行われている。くわしくは下記の《速報解説》を参照いただきたい。 (了)
《速報解説》 主な車体課税の改正事項 ~10%消費税率へ向け抜本改革は先送り(平成27年度税制改正大綱)~ 公認会計士・税理士 菊地 弘 平成26年12月30日公表の「平成27年度税制改正大綱」(自由民主党・公明党)で明らかとなった自動車の車体課税等に関する主な改正事項は次のとおりである。 なお、消費税率10%引上げの延期により、「消費税率10%段階の車体課税の見直しについては、平成28年度以後の税制改正において具体的な結論を得る」とされ(大綱p8)、自動車取得税の廃止等の判断は先送りされることとなった。 1 車体課税の見直し (1) 自動車重量税【国税】 ① 「自動車重量税のエコカー減税」についての見直しと適用期限の2年延長 (乗用自動車等の例)(H27.5~H29.4) 消費税率10%への引上げ時の環境性能割の導入にあわせ、エコカー減税の対象範囲を、平成32年度燃費基準の下で、政策インセンティブ機能を回復する観点から見直すとともに、基本構造を恒久化することとされた。 ② 本則税率適用対象車の見直し 上記①の改正により、本措置の対象外となる平成27年度燃費基準を満たす検査自動車で平成29年4月30日までに新車に係る新規検査を受けるものについては、当該新規検査の際に納付すべき自動車重量税について本則税率を適用する経過措置を講ずる。 (2) 自動車取得税【地方税】 ① 「自動車取得税のエコカー減税」の見直しと適用期限の2年延長 (自動車等の例)(H27.4~H29.3) (3) 軽自動車税【地方税】 ① 「軽自動車税のグリーン化特例(軽課)」の導入 (乗用車の例)(H27.4~H28.3) (注1) 平成27年4月1日から平成28年3月31日までに新規取得した四輪以上及び三輪の軽自動車(新車に限る。) (注2) H21年排出ガス規制窒素酸化物10%低減 (注3) H17年排出ガス規制窒素酸化物等75%低減 上記の特例措置は、自動車税・軽自動車税における環境性能割の導入の際に、自動車税のグリーン化特例(軽課)とあわせて見直すこととされた(大綱p96)。 ② 税率適用開始の1年間延期 平成27年度分以後の年度分について適用することとされている原動機付自転車及び二輪車に係る税率については、適用開始を1年間延期し、平成28年度分以後の年度分について適用することとされた(大綱p98)。 2 租税特別措置等 (1) バリアフリー車両(ノンステップバス、リフト付きバス等)に係る特例措置 ① 自動車重量税【国税】 公共交通移動等円滑化基準に適合した乗合自動車等に係る自動車重量税の免税措置の適用期限を3年延長する。 ② 自動車取得税【地方税】 公共交通移動等円滑化基準に適合したノンステップバス及びリフト付きバス並びにユニバーサルデザインタクシー(新車に限る)に係る自動車取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。 (2) 先進安全自動車(ASV)に係る特例措置の延長・拡充 先進安全自動車(ASV)技術(対象装置:衝突被害軽減制動制御装置(衝突被害軽減ブレーキ)、車両安定性制御装置)を備えるトラック・バスに係る特例措置について、対象要件の拡充等を行った上で、自動車重量税の特例措置は3年間、自動車取得税の特例措置は2年間延長する。 車両総重量20トン超22トン以下のトラックについて、1装置装着の特例期間は平成28年10月31日まで。 平成28年11月1日以降は両装置装着に限り、自動車重量税:50%軽減(初回のみ)、自動車取得税:取得価額から350万円控除。 車両総重量5トン以下のバスに係る特例措置の対象装置は、衝突被害軽減ブレーキに限る。 (了)