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こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第20回】「平成27年分源泉徴収税額表の変更点」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第20回】 「平成27年分源泉徴収税額表の変更点」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   平成27年1月から源泉徴収税額表が変更になったそうですが、どこが変更になったのかわかりません。 平成27年分源泉徴収税額表の変更点についてご教示ください。 平成25年度税制改正により、平成27年分以後の所得税について最高税率が引き上げられた。 この改正により、平成27年1月1日以後に支払うべき給与等について源泉徴収税額表等が変更されており、変更点は、次の通りである。   1 給与所得の源泉徴収税額表(月額表)の変更点 ① 甲欄 1,740,000円以下の表記は、平成26年分と同じである。平成26年分は、“1,740,000円を超える金額”までの表記なのに対し、平成27年分は、“1,740,000円を超え3,570,000円に満たない金額”、“3,570,000円”、“3,570,000万円を超える金額”の表記が追加された。また、最高税率は、40.84%から45.945%となった。 【平成26年分の甲欄の一部】 【平成27年分の甲欄の一部】  ② 乙欄 1,010,000円以下の表記は、平成26年分と同じである。平成26年分は、“1,010,000円を超える金額”までの表記なのに対し、平成27年分は、“1,010,000円を超え1,250,0000円に満たない金額”、“1,250,000円”、“1,250,000円を超える金額”の表記が追加された。また、最高税率は、40.84%から45.945%となった。 【平成26年分の乙欄の一部】 【平成27年分の乙欄の一部】   2 給与所得の源泉徴収税額表(日額表)の変更点 ① 甲欄 58,000円以下の表記は、平成26年分と同じである。平成26年分は、“58,000円を超える金額”までの表記なのに対し、平成27年分は、“58,000円を超え119,000円に満たない金額”、“119,000円”、“119,000円を超える金額”の表記が追加された。また、最高税率は、40.84%から45.945%となった。 【平成26年分の甲欄の一部】 【平成27年分の甲欄の一部】 ② 乙欄 33,000円以下の表記は、平成26年分と同じである。平成26年分は、“33,000円を超える金額”までの表記なのに対し、平成27年分は、“33,000円を超え41,500円に満たない金額”、“41,500円”、“41,500円を超える金額”の表記が追加された。また、最高税率は、40.84%から45.945%となった。 【平成26年分の乙欄の一部】 【平成27年分の乙欄の一部】 ③ 丙欄 58,000円以下の表記は、平成26年分と同じである。平成26年分は、“58,000円を超える金額”までの表記なのに対し、平成27年分は、“58,000円を超え119,000円に満たない金額”、“119,000円”、“119,000円を超える金額”の表記が追加された。また、最高税率は、33.693%から40.84%となった。 【平成26年分の丙欄の一部】 【平成27年分の丙欄の一部】   3 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表の変更点 ① 甲欄 35.735%以下の表記は、平成26年分と同じである。35.735%超の表記について、平成26年分は、“38.798%”、“40.84”%の表記なのに対し、平成27年分は、“38.798%”、“41.861%”、“45.945%”の表記となった。また、最高税率は、40.84%から45.945%となった。 【平成26年分の甲欄の一部】 【平成27年分の甲欄の一部】 ② 乙欄 20.42%以下の表記は、平成26年分と同じである。20.42%超の表記について、平成26年分は、“30.63%”、“40.84%”の表記なのに対し、平成27年分は、“30.63%”、“38.798%”、“45.945%”の表記となった。また、最高税率は、40.84%から45.945%となった。 【平成26年分の乙欄】 【平成27年分の乙欄】   4 退職所得の源泉徴収税額表の速算表の変更点 18,000,000円以下の表記は、平成26年分と同じである。平成26年分は、“18,000,000円超”までの表記なのに対し、平成27年分は、“18,000,000円超40,000,000円以下”、“40,000,000円超”の表記が追加された。また、最高税率は、40%から45%となった。 【平成26年分】 【平成27年分】   5 電子計算機等を使用して源泉徴収税額を計算する方法を定める財務省告示の別表の変更点 別表第1~第3のうち、別表第1と別表第2は、平成26年分と同じである。 別表第3の1,500,000円以下の表記は、平成26年分と同じである。平成26年分は、“1,500,001円以上”までの表記なのに対し、平成27年分は、“1,500,001円以上3,333,333円以下”、“3,333,334円以上”の表記が追加された。また、最高税率は、40.84%から45.945%となった。 【平成26年分の別表第3】 【平成27年分の別表第3】 (了)

#No. 107(掲載号)
#上前 剛
2015/02/19

租税争訟レポート 【第21回】「課税仕入れ等の範囲(国税不服審判所裁決)」

租税争訟レポート 【第21回】 「課税仕入れ等の範囲(国税不服審判所裁決)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝     【事案の概要】 百貨店の物産展において弁当の調理・販売を行っている請求人が、マネキン紹介事業者等を介して手配した販売員に対して支払った金員について、外注費として計上し、源泉所得税を納付することなく、また外注費を課税仕入れ等として仕入税額控除の対象として申告を行っていたところ、販売業務の具体的態様に基づき、所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するとして、消費税の課税仕入れに係る支払対価の額に該当しないと判断したものである。   1 〔争点1〕本件調査の手続は違法であり、本件各処分が取り消されるべきか否か (1) 請求人による主張 請求人は、本件調査の手続は、次に掲げた事情によれば、違法であり、本件各処分は取り消されるべきであると主張した。 (2) 審判所の判断 こうした主張に対し、国税不服審判所は、一般論として、 としたうえで、上記⑤については、預り証を交付する必要があったものの、請求人から返却を求められるまでもなく、借用から約1週間で本件写しを返却したことから、請求人に相当な不利益が生じたことを示す事情が認められないこと、その他の請求人の主張についても、強要や裁量権の濫用があったといえるような事情は見当たらないと判断して、 と結論づけた。   2 〔争点2〕本件各販売員に支払った金員は給与等に該当するか否か 裁決では、販売員の募集形態・過程に応じて、争点を2つに分割しているが、本稿では、販売員に支払った金員の給与該当性の判断として、これを1つにまとめて検証する。 請求人が金員を支払った販売員は、以下の3種類の募集過程を経ている。 このうち①及び②に掲げる者については、請求人と販売員との間の役務提供が雇用契約に基づくものであるか、業務委託契約に基づくものであるかが争点となり、③に掲げる者については、雇用主が請求人であるか百貨店であるかが争点となった。 審判所は、給与について、 としたうえで、①及び②の販売員については、販売に使用する三角巾やエプロンなどは自分で用意しているものの、その事情のみをもって、請求人と本件各販売員との間に雇用契約が認められず、請求人が支払った金員が給与等に該当しないということはできないとした。 一方、③の販売員について、請求人は、 と主張したところ、審判所は、 と一般論を述べたうえで、請求人は、本件各販売員による役務の提供を受け、本件各販売員に対して賃金を支払う意思を有しており、また、本件各販売員も、請求人が出展した店舗において責任者の指揮監督の下で弁当の販売に当たり、請求人から対価の支払を直接受け、アルバイト従業者明細表にも請求人の出展した店舗において就業した旨記載していたのであるから、請求人に対して役務を提供し、請求人から賃金の支払を受ける意思を有していたものと認められることから、 として、請求人が本件各販売員に支払った金員は、請求人及び本件各販売員Cの間の雇用契約に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として支給されたものであり、給与等に該当すると認められる、と判断した。   3 〔争点3〕本件各処分は信義則に反するか否か 請求人は、本件各処分に至った調査に先立ち、平成20年10月頃、原処分庁所属の調査担当職員による税務調査を受けた。この際、請求人は、平成20年調査当時も、弁当の販売を行った販売員に支払った金員について、外注費として計上した上で仕入税額控除の対象とするとともに、源泉徴収せず源泉所得税を納付していなかったが、当該調査担当職員は、かかる税務上の取扱いについて指摘をすることなく、また、請求人もかかる税務上の取扱いについて質問しないままに、調査を完了していた。 この税務調査をめぐって、請求人は、信義則違反を主張し、課税処分の取消を訴えた。 (1) 請求人の主張 請求人は、本件各販売員に支払った金員について、仕入税額控除の対象とすることはできず、源泉所得税を納付すべきとの指摘がなかった平成20年調査の結果を信頼して、本件各販売員に支払った金員について、仕入税額控除を行うとともに、源泉所得税を納付していなかったのであるから、本件各処分は信義則に反する。 (2) 審判所の判断 これに対し、審判所は、 としても、 としたうえで、特別な事情に関しては、 と、一般論を述べたうえで、平成20年調査で、上記指摘がなかったことによって、それまでの消費税等の申告や源泉所得税の不納付を継続することが許されるというような信頼の対象となるべき公的見解の表示があったものとは認められないことから、特別の事情があるものとはいえないとして、本件各処分はいずれも信義則に反するものとはいえないと判断した。 (3) 「更正決定等をすべきと認められない旨の通知」との関係はどうなるか 平成23年の国税通則法の改正により、 こととされた結果、本争点に関する審判所の判断には、今後、多少の変化が生じる可能性があるのではないだろうか。 すなわち、本件平成20年調査終了時に、源泉所得税及び消費税に関し、「更正決定等をすべきと認められない旨の通知」が出されていた場合においても、審判所が、「特別の事情」が存しないとは言い切れないのではないか。当該通知が、税務署長名で発出される以上、「税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解」ではないと言えないのではないか、ということである。 かかる場合に、審判所がどのような判断をするかという点、今後順次公開されるであろう、審判所の新しい裁決を注視したい。   4 〔争点4〕「正当な理由」の存否 (1) 請求人の主張 信義則違反(〔争点3〕)における主張と同じく、請求人は、平成20年調査において、本件各販売員に支払った金員について、仕入税額控除の対象ではないし、源泉所得税を納付する必要があるとの指摘がなかったため、その結果を信頼して、本件各販売員に支払った金員について、仕入税額控除を行うとともに、源泉所得税を納付していなかったのであるから、消費税等の過少申告及び源泉所得税の不納付に関して、「正当な理由」が認められる。 (2) 審判所の判断 審判所は、正当な理由があると認められる場合とは、 としたうえで、税務調査においては、 ことから、 と断じて、 として、請求人の主張を一蹴した。 税務調査に関して「指摘がないことをもって(中略)是認した」とは言えないとする点、過少申告や不納付の責任を一方的に納税者に押しつける判断など、上記3(3)でも指摘したとおり、今後、審判所の判断に変化が生じる可能性はあろうと思料するものの、本件平成20年調査当時の状況からは、審判所はこれまでの判断を踏襲しただけのように思える。   5 マネキン(派遣社員)に対する支出の課税仕入れ該当性 灘野正規編『平成26年版消費税実務問答集』(納税協会連合会、2014年、377ページ)には、【問10-3】として、マネキン紹介所に支払っているマネキン報酬と紹介料が課税仕入れ該当するかどうかに関する解説が記載されている。そこでは、マネキンの派遣は職業安定法に基づくものであり、派遣先と派遣店員の間に直接雇用関係が発生すると説明がなされた後、マネキンに対する報酬(便宜的にマネキン紹介所に支払う場合を含む)は、雇用関係に基づく給与等に該当するものとして課税仕入れに該当せず、仕入税額控除の対象とはならないことが明記されている。 こうした記述からも、本件裁決は、実務上の取扱いを追認したものといえ、おおむね妥当な判断であると思料する。 (了)

#No. 107(掲載号)
#米澤 勝
2015/02/19

税務判例を読むための税法の学び方【54】 〔第7章〕判例の探し方(その1)

税務判例を読むための税法の学び方【54】 〔第7章〕判例の探し方 (その1)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   1  判例の検索方法 ① 基礎的な検索項目 調べたい判例がある場合、「裁判所名」・「裁判年月日」・「事件番号」等をキーとして探すことになる。 判例を探す最も代表的なものとして、裁判所ホームページ内にある裁判例を検索するページ「裁判例情報」がある(ただし収録事案数は多くはない)。 その「総合検索」画面は次のようになっている。 「総合検索」の隣りのタブ「最高裁判所判例集」は、最高裁判所の裁判例を探すための画面であるが、「総合検索」よりも入力項目が増えている。増えた項目について、以下に説明していく。 さらに「高等裁判所判例集」のタブを開くと「高裁判例集搭載 巻・号・頁」という欄がある。 これは各高等裁判所の判例委員会により選択された裁判例(判決と決定)が掲載されている『高等裁判所判例集』のことである。 これも『最高裁判所判例集』と同様、内容は民事判例集と刑事判例集に分かれているが、各々を『高等裁判所民事判例集』『高等裁判所刑事判例集』として、通常の図書館では分けて製本している(ただし平成14年より部内資料とされている)。 通常、雑誌等で引用を示す場合には、『高等裁判所民事判例集』を「高民」、『高等裁判所刑事判例集』を「高刑」と略称を用いる。これも発行は昭和22年からである。   ② 事件番号とは 上述の「事件番号」について、もう少し詳しく記す。 裁判所では事件を受け付けると、事件記録の表紙に、事件の種類ごとに年度(暦年)・符号・番号(毎年1号から始まる受付の早い順に振られる通し番号)を表記する。これらの番号のことを「事件番号」という。 なお事件記録の「符号」とは、日本の各裁判所が受け付けた事件を識別するために、その内容に応じて細かく指定したものである。 符号の詳細は、以下の最高裁判所規定で定められている。 民事事件ではカタカナ、刑事事件ではひらがなの符号が基本的に使用されており、例えば「甲地方裁判所平成26年(ワ)第118号」は、甲地方裁判所が平成26年に受け付けた118番目(1月の最初の事件から数える)の通常の民事訴訟事件を表す。 民事事件と行政事件の符号について、いくつか代表的なものを下に記す。 (続く)

#No. 107(掲載号)
#長島 弘
2015/02/19

金融商品会計を学ぶ 【第2回】「金融商品の範囲」

金融商品会計を学ぶ 【第2回】 「金融商品の範囲」   公認会計士 阿部 光成   金融商品会計基準の適用に際しては、適用範囲、すなわち金融商品の定義を満たすかどうかがポイントになる(「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)212項)。 今回は、金融商品の範囲について解説を行う。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 金融商品会計の対象となるもの 【金融商品会計基準の対象となるもの】   Ⅱ 金融商品会計の対象外となるもの (了)

#No. 107(掲載号)
#阿部 光成
2015/02/19

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第3回】「数字の前の「△」のつけ忘れ、とり忘れ」

計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第3回】 「数字の前の「△」のつけ忘れ、とり忘れ」   公認会計士 石王丸 周夫   1 今回の事例 計算書類のドラフトには、うっかりミスがつきものです。 たとえば、こんなミスをよく見かけます。 【事例3-1】 損益計算書の「法人税等調整額」の数字の前に△が表示されていない。 【事例3-1】の赤い丸で囲んだところをご覧ください。 法人税等調整額の数字部分です。「5」と表示していますが、これは本来「△5」と表示するのが正しかったのです。 「5」の右隣りの数字「55」は、「法人税、住民税及び事業税60」から「法人税等調整額5」を控除した数値です。つまり「法人税等調整額5」は、ここではマイナス数値でした。 その場合、数字の前に△が必要なのです。 おそらく、読者の皆さんの中には、同じようなミスをした人もいるでしょう。計算書類の作成作業では、△のつけ忘れというミスはよくあることなのです。 では、これを単なるミスとして片付けてしまってよいでしょうか。 もちろん、その場限りのことならそれでもよいかもしれません。しかし、そうしてしまうとまた同じミスを繰り返します。 実はこのミス、起こるべくして起こったものです。 そして、このミスが起きる場所も決まっています。   2 どうして△を付さなければいけないのか 「法人税等調整額」という科目は、税効果会計に関する科目です。繰延税金資産や繰延税金負債の相手科目として計上される科目です。そのため、借方に出ることもあれば貸方に出ることもあります。借方なら損益に対してマイナス、貸方なら損益に対してプラスです。 損益計算書上の表示では、プラスかマイナスかは、「法人税、住民税及び事業税」に対してプラスかマイナスかで判断します。 借方残の法人税等調整額は、損益に対してはマイナスですが、「法人税、住民税及び事業税」に対してはプラスです。 貸方残の法人税等調整額は、損益に対してはプラスですが、「法人税、住民税及び事業税」に対してはマイナスです。【事例3-1】はこのケースに当たります。 プラスになることもあればマイナスになることもあるという科目は、損益計算書上の表示の扱いが他の科目と異なります。マイナスの場合は△を付すのです。「営業損失」や「経常損失」のように、名称からマイナスとはっきりわかるものは、負数の△表示は不要ですが、そうでない場合は負数の△表示が必要なのです。 【事例3-1】の「法人税等調整額5」は、科目名からはプラス・マイナスがわかりません。マイナスであるなら△を付して、マイナスであることをはっきり示さなければならないのです。   3 これもリサイクル・ミス △をつけ忘れてしまった原因を考えてみましょう。 ここでは、計算書類の作成プロセスに原因があります。それは、計算書類の作成に際して、前期データの使い回し(リサイクル行為)を行っているということです。 【事例3-1】では、まず、前期の損益計算書のデータファイルのコピーを作成し、そのファイルに当期の数字を上書き入力していくことにより、当期の損益計算書を作成したはずです。 その際、問題の「法人税等調整額」ですが、前期においてはこれがプラスだったと考えられます。つまり、前期の損益計算書上は、「法人税等調整額」に△はついていなかったのです。 そうすると、当期用にデータコピーして用意した損益計算書のファイルでは、「法人税等調整額」の欄には△が付されていないわけです。ところが当期は「法人税等調整額」がマイナス値です。新たに△をつけてあげる手間が必要です。しかし、頭では分かっていてもそうすることを忘れてしまいます。 損益計算書を一番上の売上高から順に上書き入力していくと、単純に数字だけを書き換える作業のリズムができてしまいます。その勢いで「法人税等調整額」のところも単純に数字を書き換えるだけにしてしまいます。△をつけ忘れるのです。 前期もマイナス値で△がついていれば△をつけ忘れることはなかったでしょう。ところが、「法人税等調整額」はその年度によってプラスにもなればマイナスにもなります。そのため、こういうことがよく起こるのです。   4 「△のとり忘れ」もある △のつけ忘れがリサイクル・ミスであることを理解すると、【事例3-1】とは逆のパターンがあることにも気がつきます。 △のとり忘れです。 これは、前期において「法人税等調整額」がマイナスであったのだけれど、当期においてはプラスになったというケースで起こるリサイクル・ミスです。前期に付されていた△を取り損なったまま数字を上書き入力して終わってしまったというミスです。 なお、今回紹介した2つの事例は、個別の損益計算書におけるものでしたが、連結損益計算書であっても、同じミスが起こります。   〈今回のまとめ〉 「法人税等調整額」がプラスなのかマイナスなのかを確認し、△表示に間違いがないかチェックすること。 (了)

#No. 107(掲載号)
#石王丸 周夫
2015/02/19

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第72回】リース会計⑥「残価保証があるケース」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第72回】 リース会計⑥ 「残価保証があるケース」   仰星監査法人 公認会計士 薄鍋 大輔   〈事例による解説〉 〈会計処理〉(単位:千円) (1) ファイナンス・リース取引に該当するか否かの判定 ① 現在価値基準による判定 貸手の計算利子率を知り得ないので、借手の追加借入利子率である年8%を用いてリース料総額(残価保証額を含む)を現在価値に割り引きます。 現在価値53,990千円/見積現金購入価額53,000千円=102%>90% (*1) リース料総額に残価保証額も含めて、現在価値に割り引きます。 ② 経済的耐用年数基準による判定 リース期間5年/経済的耐用年数6年=83%>75% したがって、①(または②)により、このリース取引はファイナンス・リース取引に該当します。また、所有権移転条項または割安購入選択権がなく、リース物件は特別仕様ではないため、当該リース取引は、所有権移転外ファイナンス・リース取引と判定されます。 (2) リース債務の返済スケジュール表 本事例では、(1)①で算定したリース料総額の現在価値53,990千円>見積現金購入価額53,000千円であるため、リース資産及びリース債務の計上額は、53,000千円となります。この場合に、利息相当額の算定に必要な利子率は以下のように求めます。 (3) 仕訳(単位:千円) ① X1年4月1日(リース取引開始日・第1回支払日) ② X1年9月30日(中間決算日) 利息の未払計上、減価償却費の計上 (*2) リース債務返済スケジュールより (*3) (53,000千円-5,000千円)×1年/5年×6月/12月=4,800千円 残価保証額5,000千円を残存価額として計算します。 ③ X1年10月1日(下期首・第2回支払日) 未払利息の振り戻し処理、リース料の支払い (*4) リース債務返済スケジュール表より 以後も同様の会計処理を行います。 ④ X6年3月31日(決算日) (ⅰ) 利息の未払計上、減価償却費の計上 (*5) リース債務返済スケジュール表より (ⅱ) リース物件の返却 (*6) 残価保証額は、便宜的に、いったんその他の流動資産として計上します。決算時には、当該その他の流動資産はリース債務及び関連する未払利息と相殺します。 ⑤ リース期間終了後(残価保証支払額の確定時) (*7) 残価保証額5,000千円-処分額2,000千円=3,000千円 (*8) リース債務返済スケジュール表より なお、残価保証支払額の確定時に一括して、次のような会計処理を行うこともできます。   〈会計処理の解説〉 本事例にみられるように、リース契約上に残価保証の取決めがある場合は、以下の点を考慮する必要があります。 (1) リース料総額の算定 残価保証額をリース料総額に含めることになります(リース取引に関する会計基準の適用指針(以下、適用指針という)15項)。このため、以下のリース料総額の現在価値を算定する際に残価保証額を考慮することとなります。 ファイナンス・リース取引に該当するかどうかの判定(上記(1)①) リース資産及びリース債務の計上額の決定(上記(2)) (2) 減価償却費の算定 所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産については、減価償却費の算定において、残存価額は原則としてゼロとすることとされていますが(リース取引に関する会計基準(以下、基準という)12項)、リース契約上に残価保証の取り決めがある場合は、原則として、当該残価保証額を残存価額とします(適用指針27項)(上記(3)②)。 (3) リース期間終了時の会計処理 所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合、リース期間の終了時においては、通常、リース資産の償却は完了し、リース債務も完済しているため、リース物件を貸手に返却する処理を除き、特に会計処理を要しません。ただし、リース契約に残価保証の取り決めがある場合は、貸手に対する不足額の確定時に、当該不足額をリース資産売却損等として処理します(適用指針29項)(上記(3)⑤)。 ※3月は2014年2月に続き、税効果会計を取り上げます。 (了)

#No. 107(掲載号)
#薄鍋 大輔
2015/02/19

企業における『マイナンバー導入プロジェクト』の始め方&進め方 【第2回】「構成メンバー各人が所属する部署の役割と対応内容を把握する」

企業における 『マイナンバー導入プロジェクト』の 始め方&進め方 【第2回】 「構成メンバー各人が所属する部署の役割と対応内容を把握する」   仰星監査法人 公認会計士 岡田 健司   本連載の第1回目となる前回では、「企業内の“旗振り役”となる構成メンバーを集める」と題し、マイナンバー制度の影響が大きいと思われる企業においては早期にプロジェクトを発足させ実務対応を進める必要性が相対的に高いことを述べるとともに、そのプロジェクトへの参画が必要と考えられる部署をピックアップした。そして、このプロジェクト化に当たっては、企業において“旗振り役”となる存在が重要であることについて、筆者なりに問いかけを行った。 第2回となる本稿では、第1回で取り上げた各部署がどのような役割をもち、具体的にどのような対応を求められるかを詳しく検証したい。 つまり、各部署から選ばれたプロジェクトの構成メンバーは、自然と自身が所属する部署の役割と求められる対応に関する管理責任者となるであろうから、対応すべき事項について詳しく把握し、他の構成メンバー及び関係部署と連携をとらなければならない。   1 各部署の役割と求められる対応 (1) 『人事部』の役割と対応内容 人事部では主に、従業員(パート、アルバイト等を含む)及びその扶養家族、社会保険労務士などのマイナンバーを取り扱うことになる。 企業が取り扱うマイナンバーの中心が企業の従業員であると考えると、最も中心的な部署であるといえる。 つまり、従業員が入社して退社するまでの間、マイナンバーを使った事務は数多くあり(※1)、多数の従業員のマイナンバーの取得、利用、提供、保管、廃棄等に係る業務の見直しを行うことを考えると、他部署と比較して実務的にも負荷の大きい部署であるといえる。 (※1) 例えば、入社時における各種保険の資格取得届、標準報酬月額算定のための届出、賞与支払時の報告、源泉徴収、年末調整と給与支払報告、退職時における退職所得の支払報告などである。 したがって、マイナンバーの導入プロジェクトは、人事部が中心となって進めるのが最も実務的であると考えられる。 また、給与計算業務を外部に委託しているような場合には、当該委託先が、番号法が求める適当な水準で安全管理措置等を講じているか、適切に監督する責任を負うことになる。あるいは、逆に企業で子会社の人事・給与業務を請け負っている場合、またはフランチャイズ契約によってフランチャイジーの給与業務の一部を請け負っているような場合には、マイナンバーの取扱い範囲はさらに拡大することになる。この場合は、マイナンバーの取扱いの委託を受けたものとして、委託者に対して適切に管理を行っている旨等を定期的に報告する責任をも負うことになる。 そして、取り扱うマイナンバーが多数あることに連動して、多くの個人番号関係事務を取り扱うことになる。そこで、日々の個人番号関係事務が番号法及びガイドライン等に則って適切に行われるよう、番号法が施行されて以降も安定的な運用を維持する責任を有することになる。 なお、人事部は企業によっては独立した部署ではなく、後述する総務部において兼務されていることも多いと思われる。そのような場合は、上記「人事部」と記載のある箇所については、必要に応じ「総務部」と読み替えていただきたい。 (2) 『法務部』の役割と対応内容 法務部では主に、弁護士、弁理士などのマイナンバーを取り扱うことになる。 番号法及びガイドライン等には、「××しなければならない。」「・・・してはならない。」とする規定が多く、以前の連載から繰り返し述べてきたとおり、番号法違反に対しては企業あるいは従事する従業員に対して厳しい罰則が科される可能性があることから、これまで以上に情報保護あるいは法令遵守の体制を強化する必要性は高い。 そこで、法務部においては、番号法及びガイドライン等に則って、適切に情報保護あるいは法令遵守(※2)を行いうる体制を整備するよう、企業全体に対して働きかけを行うことが求められる。 (※2) この意味合いはかなり広範である。個人番号を含む特定個人情報を、企業として適切に入手し、必要な範囲で利用あるいは提供し、不要となったタイミングで適時に廃棄等を行っているか、という非常に広範な意味での情報保護あるいは法令遵守である。 また、番号法の施行に伴い、各部署においては契約書等の様式等を見直しすることが必要となるが(※3)、これらの契約書等の内容が番号法等に照らして適切なものであるかどうか法的観点からチェックすることも必要になると思われる。 (※3) 例えば、給与計算を外部にアウトソーシングしているような場合には、当該業務委託契約においてマイナンバーの取扱いについて改めて規定することが求められる。 また、企業はマイナンバーの管理全般的に適切に行っていることの説明責任を課されることになることから、これらの説明責任を果たすべく、改めて全社的な特定個人情報の管理体制の構築を図るとともに、情報セキュリティポリシー等の見直しを行う必要がある。さらに、場合によっては、特定個人情報保護委員会からの命令等あるいは検査への対応も求められる。 なお、法務部は企業によっては独立した部署ではなく、後述する総務部において兼務されていることも多いと思われる。そのような場合は、必要に応じ、上記「法務部」と記載のある箇所については、「総務部」と読み替えていただきたい。 (3) 『総務部』の役割と対応内容 総務部は主に、企業が賃借する不動産の地主あるいは賃貸人、株主(※4)、産業医などのマイナンバーを取り扱うことになる。 (※4) 上場会社等においては、株主名簿管理人を設置し株主管理を信託銀行等に委託しているケースが多いと思われる。このような場合には、基本的に、企業において株主のマイナンバーを取り扱うことはない。株主名簿管理人を置いておらず、多数の株主を有する企業が毎年配当を行っているようなケースでは、できるだけ早く株主からマイナンバーを入手する方法の検討が望まれるところである。 総務部では各種契約の事務を取り扱うことが多いと考えられる。そこで、マイナンバーが関連する契約(※5)については、人事部あるいは法務部等などの部署と適宜連携して、契約書の文言の見直し、契約事務フローの見直しを行う役割を担っているといえる。 (※5) 地主との不動産賃貸借契約、定期借地権設定契約、個人の産業医等への業務委託契約などである。 また、総務部が関係するマイナンバーは企業規模(体系)や業種によっては多数にのぼる可能性がある。全国に支店拠点展開を図っているような企業では、不動産の賃借に関する契約が多いと思われ、地主や賃貸人も多く存在する可能性がある。また、ゴルフ場を運営する非上場の会社でいわゆる株主制を採用しているような場合にも相当数の株主が存在する可能性がある。 このように、総務部は先の人事部とは異なり、企業外部の者のマイナンバーを取り扱わなければならないという意味で、人事部とは異なる重要な役割を担っているといえる。 (4) 『経理部(あるいは財務部)』の役割と対応内容 経理部(財務部)は主に、公認会計士、税理士などのマイナンバーを取り扱うことになる。 本稿執筆時点では、法人税等の税目の申告や各種届出において、どの様式が番号法の施行に伴い修正されることになるか未定であるが、これらの申告書や届出書等のいずれかで個人番号を記載しなければならないことは間違いないことから、これらの個人番号関係事務が適切に行えるように準備する役割を担っている。 また、企業によっては法人税や消費税等の申告書等の作成や申告を外部の税理士に委託していることも考えられるが、委託契約に含まれる申告書等の作成や申告において個人番号を記載・利用しなければならない場合には、当該税理士が適切にマイナンバーを取り扱っているかどうかについて監督する責任を負うことになる。 (5) 『情報システム部』の役割と対応内容 もし、情報システムの構築等にあたって、個人のプログラマーなどにその一部の業務委託を行っているような場合には、当該個人のマイナンバーを取り扱うことになる。 また、番号法の施行に伴い多くの会社では自社の情報システム(ソフトウェアを含む)のバージョン・アップ、あるいはシステム改修が必要になると考えられるが、システム改修が必要な場合(※6)には、利用部門(ユーザー部門)(※7)の意見や要望を踏まえて、早期にシステム上の仕様を検討するとともに、システム設計に取り掛からなければならない。 (※6) 例えば、人事管理システム、給与計算システムを自社製作しているような場合である。 (※7) 上記の例でいえば、人事部、総務部などである。 マイナンバーの管理にはさまざまな制約(※8)があることから、情報システムの設計あるいは情報システムによって実現される機能がこれらの制約に応えたものであるか、平成28年1月の運用開始までに十分なテスト期間をもって検証をしなければならない。 (※8) 不要な個人番号は入手してはならない、不要になった個人番号は法定の保管年限を経過した場合には早々に破棄・削除しなければならない、個人番号関係事務と関係のない事務ではマイナンバーが表示されてはならない、あるいはマイナンバーが記載された状態で帳票を出力してはならないなどである。 (6) 『内部監査室』の役割と対応内容 もし、内部監査の業務の一部を公認会計士等に委託しているような場合には、当該公認会計士等のマイナンバーを取り扱うことになる。 また、内部監査室が担う大きな役割は、第三者の立場で客観的に自社の番号法等の遵守状況についてモニタリング(監視・監査)し、不適切な点、あるいは対応として不十分な点がある場合には当該プロジェクトのマネジメント等に適時にフィードバックしなければならないという点である。 さらに、企業が上場会社である場合には、いわゆる内部統制評価報告制度において自社の業務プロセス等の有効性について評価する責任があるが、番号法等の遵守状況はいわゆる全社統制とも関連すると考えられるし、特に人件費等が重要な勘定科目であるような場合には人件費等に至る業務プロセス全体が評価対象になると考えられる。 そこで、財務報告に係る内部統制の評価部門と事前に十分に打ち合わせを行い、いわゆる業務プロセスの3点セットの見直しが必要な箇所はないか、整備手続や運用手続の見直しが必要なものはないかなどについて、検討することが求められる。場合によっては、早々に独立監査人と協議しておくことも有効であると考えられる。 (7) その他想定される部署の役割と対応内容 企業によっては、「経営管理部」「支店管理部」などの部署を設け、それぞれ子会社あるいは支店を管理する業務を担っていることも考えられる。このような場合には、子会社や支店が適切に番号法等への対応を進めているか、仮に子会社や支店においてマイナンバーを入手し本人確認のうえ保管させるとした場合、どのような手順で実施させるかといった指導も必要になると思われる。 また、前回記載したとおり、日常的に顧客の個人情報を取り扱ったり、個人顧客の情報をシステム登録しているような場合には、「営業部」に対する教育が極めて重要になると考えられる。不用意に個人番号の記録を取ったり、個人番号カードの控えを取ったりすることがないよう(※9)、これらの点を組織全般にわたって周知徹底する必要がある。 (※9) 場合によってはこれらが法令違反と判断され、罰則が科される可能性もある。   2 構成メンバーがまず着手すべきこと このようにみてくると、各部署で取り組むべき事項は意外に多く、また、各部署が担っている個々の役割は、プロジェクト全体にとって必要不可欠であり、重要な意味を持っていることがわかるのではないだろうか。 つまり、よくマイナンバーへの対応に関し誤解されることであるが、人事部や総務部に偏った対応だけでは、番号法やガイドライン等が求める水準での管理は難しいのである。 そこで、各部署から集まったプロジェクトの構成メンバーが中心となり、それぞれが所属する部署が担う役割と対応内容について、適切に業務の棚卸をすることが重要であるといえる。 本来はこれら業務の棚卸を行ってからプロジェクトを組成することが望ましいともいえるが、この棚卸の結果によっては、プロジェクトの参加メンバーを新たに見直すといった柔軟な対応も必要であろう。 とにかく重要なことは、できるだけ早くプロジェクトを発足させ、一日でも早くこの作業に着手するということである。   3 本稿のまとめ 第2回となる本稿では、第1回で取り上げた各部署のそれぞれの役割について解説することを通じ、企業として対処すべき事項を整理し、改めて全社的に『マイナンバー導入プロジェクト』を進める必要性について再確認した。 本連載の最終回となる次回は、これまでの解説を受け、具体的に企業全体としてどのようにプロジェクトを進めていくべきかについてまとめてみたい。 (了)

#No. 107(掲載号)
#岡田 健司
2015/02/19

〈IT会計士が教える〉『情報システム』導入のヒント(!) 【第5回】「システムの選定は自分に合った服を選ぶように」

〈IT会計士が教える〉 『情報システム』導入のヒント (!) 【第5回】 「システムの選定は自分に合った服を選ぶように」   公認会計士 坂尾 栄治     はじめに ~そのシステムの導入目的は明確か?~ 企業はどのような時、システムの導入や更改(いわゆる再構築)を検討するだろうか。 中堅企業が、今使っている会計システムを新しい別の会計システムに更改する場合を考えてみよう。 ハードウエアやソフトウエアの保守が切れる場合には、システムの更改を考えるだろう。ハードウエアが故障したときにメーカーのサポートが受けられないとなると、企業にとっては一大事であるが、これはソフトウエアについても同様で、システム更改を真剣に考える最も典型的なケースと考えられる。 あるいは、新たに適用される制度に対応するためにシステムを更改しようと考える場合もあるだろう。少し前には、IFRSに対応するためにシステムの更改を検討した企業が数多くあったと記憶している。 このように、ハードウエアやソフトウエアの保守切れや新制度対応のためのシステムの導入・更改をする場合には、その目的が明確であるため、方向性が大きくぶれることはあまりない(ただし、「せっかくなのでこの機会に他の目的も達成しよう」などと考え始めると、とたんに方向性がぶれるのだが)。 一方、「効率化をしたい」「経営管理のレベルを向上したい」といった目的で会計システムの更改を考える場合には、注意が必要である。 この「効率化」や「管理レベルの向上」といったものは、一見、目的のように見えるが、実はその根っこにある『明確な目的』が見えない、非常に漠とした状態なのである。 そして「目的が非常に漠とした状態」でシステムの導入を検討するのは危険であり、さらにその状態でパッケージシステムの選択を行うことは、その危険性をより高めることになる。 以下ではその理由について説明したい。   ▼パッケージシステムは既製品のシャツ▼ もし、システムを一から自社開発するのであれば、作り始めてからでもある程度の方向転換は可能かもしれない。しかし、カスタマイズができない市販のパッケージを前提とする場合には、方向転換できる幅は大幅に狭まり、導入作業が進むに従って、方向転換はより難しいものになっていく。 市販のパッケージシステムは、いうなれば、既製品のシャツのようなものと考えればよい。 例えば、首周り40センチ、袖丈82センチの人が既製品のシャツを買いに行ったとする。既製品なので首周りと袖丈の組み合わせが決まっており、首周りが40センチのシャツは袖丈が84センチのものしかないとする。この場合、首周りを40センチより小さくすると苦しくて着ることができないので、袖丈が理想より2センチ長いが我慢する(譲歩する)ことになる。このようにシャツの場合には簡単な直しができないため、そのままを受け入れ、「我慢できる部分」(袖丈2センチ部分)を我慢する。 市販のパッケージシステムを導入する場合も同様である。 つまり、「自社が譲れないところ」(目的)を明確にし、その「譲れないところ」を満たすパッケージを選ばなければならない。   ▼カスタマイズできるパッケージは既製品のズボン▼ これに対して、カスタマイズができるパッケージは、既製品のズボンと似ている。 既製品のズボンは、前提としてウエストサイズの合ったものを選ぶのが一般的であり、ウエストを測らずにズボンを購入するようなことはしないであろう。ウエストを直そうとすると大手術となり、相当なコストがかかるためである。 このように既製品のズボンを買うとき、よほどのことがない限りウエストは直さない。 ただし「裾上げ」は、当たり前のように行われている。 したがって人は既製品のズボンを買うとき、ウエストのサイズは気にするが、裾は気にしなくてよい。 カスタマイズを前提としたパッケージも同様である。 パッケージの根幹(目的)に関わる部分、ズボンで言えばウエストの部分は変更できないが、裾に当たる部分、例えば入力画面やレポートといったものは、カスタマイズすることを前提としており、カスタマイズしやすい作りとなっている。 このようなパッケージを導入する場合でも、やはりパッケージの根幹に関わる部分(いわゆるウエスト部分)が自社の要求とズレていると、そのズレを合わせるためには大手術が必要となる。 そのため、入力画面やレポートについての多少のズレは後で直せばよいのであまり気にしなくてよいが、その根幹(目的)についてはズレがないように注意しなければならない。   ▼システム導入の『目的』は時間をかけて考える▼ システムの導入や更改にはなんらかの目的があり、その目的を達成するために、既製品のシャツのように、その目的に根幹がフィットしたシステム、あるいは既製品のズボンのように、完全にはフィットしていないがその目的に合わせて修正可能なシステムを選ぶ必要がある。 当然ながらその前提として目的を明確にする必要があるのだが、よく言われるような「効率化」とか「管理レベルの向上」といったものでは、冒頭に述べたとおり、明確化されたとはいえない。 つまり、効率化といっても、膨大な量の手作業をシステム化することを指しているのか、毎夜行われる長時間のバッチ処理の効率化を指しているのか、はたまた効率化と言いながら決算の早期化を指しているのかを明らかにしなければならない。そしてその場合に必要とされる機能、非機能を明らかにしなければ、本当に適合したシステムを選ぶことはできない。 管理レベルの高度化についても同様である。そもそもどのような目的で何を管理するのかを明確にしないことには、必要となるデータの粒度(製品、組織、勘定)やタイミング、管理項目が明らかにならないため、システムに対する要求事項は導出できない。 よく、システムを選定する前に要求定義を行う期間を設けるが、それはシステムで何をしたいのかを明らかにするためである。この要求定義フェーズで目的を明確にし、それをまとめ上げ、RFP(提案依頼書)としてシステムベンダーに伝えるのである。 そこには、服にたとえるなら以下のようなことが書かれている。 こういった細かなことまであらかじめ明確にすることで、導入したけど使えないシステムや導入の途中で大きな齟齬が露見し大問題となることを回避できるのだ。 要件定義フェーズに時間と労力をかけるのはもったいないと感じるかもしれないが、システムは一旦導入したら数年間、場合によっては10数年間使い続けることとなる。 このため、目的にフィットした、不満の少ないものにするための重要なステップと捉え、長く着られる自分に合った服を選ぶように、時間と労力をかけることをお勧めしたい。 (了)

#No. 107(掲載号)
#坂尾 栄治
2015/02/19

女性会計士の奮闘記 【第26話】「聞いたことでも自分の糧に」

女性会計士の奮闘記 【第26話】 「聞いたことでも自分の糧に」   公認会計士・税理士 小長谷 敦子   ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。   ◆ワンポントアドバイス◆ お客様にとって役に立つ情報であれば、研修で教わったことでも、理解を深め、自分のものにしてお客様に説明することが必要です。 もちろん自分自身が実際経験した話の方が、重みが増すことは言うまでもありません。 チャンスがあれば、自ら飛び込んで経験を重ね、説得力を高めていきましょう。 (了)

#No. 107(掲載号)
#小長谷 敦子
2015/02/19

《速報解説》 平成27年度税制改正法案が公表

《速報解説》 平成27年度税制改正法案が公表   Profession Journal編集部   昨年12月30日に与党大綱がとりまとめられ本年1月14日に大綱が閣議決定された平成27年度税制改正について、このたび国税関係の税制改正法案「所得税法等の一部を改正する法律案」が、本日(2月18日)、財務省ホームページにおいて公表された。新旧対照表は未公表。 なお地方税関係の改正法案については総務省ホームページにおいて「地方税法等の一部を改正する法律案」として公表されている。新旧対照条文あり。 両法案は現在会期中の第189回通常国会(会期:平成27年1月26日~6月24日)において、3月末の成立を目指し審議されている。 なお、両法案共に「概要」によると、施行日は平成27年4月1日(原則) とされている。 (了)

#No. 106(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2015/02/18
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