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親族図で学ぶ相続講義 【第12回】「同時死亡」

親族図で学ぶ相続講義 【第12回】 (最終回) 「同時死亡」   司法書士 Wセミナー専任講師 山本 浩司   [被相続人甲野太郎 相続関係説明図] 以下、甲野太郎の相続財産(X不動産)は、誰に帰属するかを考えてみましょう。 相続関係説明図をよくみますと、甲野太郎とその子の甲野一男の死亡の年月日が同日です。 さて、仮に、この2人の死亡の前後が明らかでなかったときは、事件は、どうなるのでしょうか。 たとえば、甲野太郎と甲野一男が同一の事故で死亡したとか、片方は病院で死亡しその日時がはっきりしているが、他方が、ほぼ同時刻に事故で死亡しており、その両者の前後が不明である場合などがあります。 この場合、次の規定が適用されることとなります。 以上から、反証のない限り、この2人は同時に死亡したものとして、この相続事件を扱うべきこととなります。とすると、甲野一男は、甲野太郎を相続しません。本講座で、すでに説明したように「同時存在の原則」が存在するからです。 甲野一男は、甲野太郎と同時に死亡したので、甲野太郎の相続開始のときに生存していません。 ついでに言えば、逆も真であり、甲野太郎は、甲野一男と同時に死亡したので、甲野一男の相続開始のときに生存していません。 このように、2名が同時に死亡をしたときは、お互いがお互いを相続しないこととなります。 では、甲野太郎の相続人は誰でしょうか。 配偶者の甲野花子はすでに死亡しており、甲野桜子は甲野太郎の血族ではない(姻族一親等)から、それぞれ甲野太郎を相続しません。 とすると、相続人の候補は、甲野太郎の直系卑属である甲野イチロー(孫)と乙山花子(長女)です。 長女の乙山花子に相続権があることは当たり前ですが、では、甲野イチローはどうでしょうか。 はたして、甲野イチローは、その親の甲野一男を代襲して相続するのでしょうか? 民法から、これに関する規定を、必要な範囲に限って抜き書きしてみましょう。 さて、ここでは、この条文のうち「以前」という文言が急所となります。 もし、この部分が「より前に」と書いてあれば、甲野イチローは代襲相続しません。被相続人(甲野太郎)の子(甲野一男)は、相続開始(甲野太郎の死亡)と同時に死亡したのであり、これより前には死亡していないからです。日本語の問題として、午後1時より前といえば、午後1時を含みません。 しかし、民法は、用意周到であり、この条文には「以前」という用語を使っています。 「以前」であれば、同時の場合を含みますから(たとえば、午後1時以前といえば、午後1時を含む)、被相続人(甲野太郎)の子(甲野一男)は、相続開始(甲野太郎の死亡)以前に死亡したといえるのであり、この結論として、甲野イチローは、親の甲野一男を代襲して、甲野太郎を相続します。 というわけで、結論を言えば、被相続人である甲野太郎の相続財産であるX不動産は、甲野イチロー(孫 代襲相続人)と乙山花子(長女)が共同相続(持分は、各2分の1)することとなります。 では、最後にオマケです。 もし、本事件で、甲野太郎が、「X不動産を長男の甲野一男に遺贈する」という遺言を書いていたらどうなるのでしょうか。 仮に、遺贈の効力が生じたとすれば、X不動産はいったん甲野一男(受遺者)に帰属し、その後に、甲野一男の死亡によって、その相続人である甲野桜子(配偶者)と甲野イチロー(子)がこれを共同相続するでしょう。 しかし、そうはなりません。次の規定があるためです。 ここに、「以前」とあるのも、同時の場合を含みますから、甲野太郎(遺言者)と同時に死亡した甲野一男(受遺者)は、X不動産の遺贈を受けることができません。 では、どうなるのでしょうか。 次の条文を見てみましょう。 そのため、上記の定めによって、X不動産は、他の財産と同様に甲野太郎の相続財産となり、遺言がなかった時と同様に甲野イチロー(孫 代襲相続人)と乙山花子(長女)が共同相続(持分は、各2分の1)することとなります。 *   *   * さて、本稿の連載は、今回をもって終了といたします。 拙い原稿にお付き合いいただき、ありがとうございました。 多少なりとも、みなさまの理解のお役に立てば幸いです。 (連載了)

#No. 47(掲載号)
#山本 浩司
2013/12/05

常識としてのビジネス法律 【第5回】「契約に関する法律知識(その1)」

常識としてのビジネス法律 【第5回】 「契約に関する法律知識(その1)」   弁護士 矢野 千秋   1 契約の当事者について (1) 契約の当事者とは 契約当事者とはその契約から発生してくる権利や義務を取得負担する者のことであるから、法律上権利義務の主体になることができるものでなければならない。これを「権利能力」という。 権利能力を持つ者には、自然人と法人がある。 「自然人」とは我々生物である人間のことであり、「法人」とは一定の組織を有する団体に法律が権利義務の主体たる地位を認めたものである。すなわち営利社団法人たる会社や、公益社団法人、一般財団法人などを指す。 (2) 会社との契約 契約書上においては、会社を正確に特定して記載する必要がある。 そのためにはまず、会社の本店所在地、例えば「東京都港区西新橋〇丁目〇番〇号」と住所全部を記載し、次いで会社の商号を「〇〇株式会社」のように正確に記載すべきである。(株)などのような略称を用いるのは、相手方会社を特定する上で好ましくない。 さらに会社は人であるとはいえ、自然人とは異なり法律が作り出したものであるから、自分自身で行為ができるわけではない。法人の中で一定の地位を占めている自然人のことを「機関」と呼び、このうち法人を代表する権限を有している「機関の行為」を「法人の行為」と見るわけである。 この代表権限を有する機関が株式会社では代表取締役であり、特例有限会社や取締役会を設置していない株式会社の場合は代表取締役を定めることもできるが、定められていないときは各取締役が特例有限会社などを代表する。 そこで会社を相手方として契約をする場合は、本店所在地、商号に次いで、代表機関の肩書きとその機関たる自然人の名前を表記し(担当者が代理する場合は後述)、さらに代表者印を押捺するのがベストである。すなわち「上記代表者代表取締役 甲野太郎(印)」となる。 (3) 会社以外の法人との契約 一般社団法人や公益財団法人、また特別の法律に基づいて設立される学校法人、宗教法人、医療法人、各種協同組合も法人とされる。 これらでは理事が代表機関とされているので「上記代表者理事 甲野太郎(印)」という形式になる。 (4) 個人との契約 個人が単独で相手方となるときは、住民登録をしている住所地、個人名、次いで印を押捺する。 本人を確実に特定するため、住所地は住民登録をしている住所、個人名は戸籍上の氏名、捺印は実印が望ましい。 相手方が複数人の共同事業のときは、原則相手方全員と契約を締結するか、または複数人中の一人が他の個人を代理して契約する。 (5) 未成年者との契約 未成年者も権利能力は有するが、行為能力すなわち単独で完全に有効な契約などの法律行為をする能力に原則として欠けている。そこで未成年者の場合は、その法定代理人の同意を取る必要がある。 法定代理人は第1次的には親権者(原則父母が共同してなり、離婚しているときは一方が親権者と定められている)であり、次いで未成年後見人がなることになる。法定代理人の同意なく未成年者が契約などを結んだ場合は、これを未成年者は取り消すことができる。 (6) 代理人との契約 「代理」とは、本人に代わることを示して代理人が意思表示をし、その法律効果を本人に帰せしめる制度である。そして法律効果が本人に帰するのは、本人が代理人に代理権を付与したからである。 そこで、代理権の存否を「委任状」によって確認することが必要となる。 (7) 担当者との契約 担当者すなわち商業使用人も代理人(営業主を代理する権限を有する)である。支店長などはその支店に関する裁判上裁判外の包括的な代理権を有し(会社法11条)、部課長なども、その部などに関する範囲内の事項につき裁判外の包括的な代理権を有している(会社法14条)。 なお、支店長などでなくとも、担当者に契約締結の職務権限(代理権である)があれば(6)で述べた代理人となり、契約は有効に成立する。   2 契約成立に必要な要件 契約は、原則、当事者双方の意思の合致のみによって成立する(例外として消費貸借、使用貸借、質権設定契約、寄託契約、手付契約、代物弁済契約等の要物契約がある。これらは合意以外に金銭の授受等の物の交付などが契約成立に必要な契約類型である)。 すなわち契約書を作成してもしなくても、また実印を使用しようが認印を押そうが、法的効力には差異はない。契約は口頭でも有効に成立しているのである(もちろん、契約が有効に成立していても、それがひとたび争いになったときに、裁判官に相手方について契約が成立していることを解らせる力、すなわち“証明力”は異なっている)。 この意思の合致、合意は、もう少し詳しく言えば、一方当事者から契約の「申込」があり、それに対して他方当事者が「承諾」をした時に成立することになる。申込に対して条件を付けたり、変更を加えて承諾した時は、別の新しい申込とみなされる。 民法では、申込者が「拒絶の通知なき限り承諾とみなす」などの予告をしても拘束されない。商法には承諾の特例がある(後記)。 (1) 当事者双方の意思の合致(合意) これのみが原則として契約の効力要件であり、「当事者の合意」さえあれば契約は有効に成立する。そこで簡単な内容であれば、日常的には口頭や電話での契約が多い。 したがって、日頃からの社員教育の一環として、電話での売り込みに対する拒絶の言葉として、「いいです」「結構です」等の二重の意味を持つ用語(英語に直せばグッド(good)である)を避け、明瞭に「要りません」「不要です」等と答えるようにするべきである。 (2) 商人である対話者間での申込の場合 商人(会社などのように、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう)である対話者間での申込を受けた者がその場で承諾しない限り、申込は効力を失う(商法507条)。 後日承諾しても申込者の気が変わっていればもはや契約は成立しない。申込者の気が変わっていない場合は、承諾が新たな申込とみなされ、それに対して申込者が新たに承諾するという法律構成となる。 (3) 商人である隔地者間での申込の場合 承諾期間の定めがあれば、勿論それに従う(申込人の勝手、私的自治である)。 承諾期間を定めない申込を受領した場合は、取引通念上、相当期間内に承諾の通知をしなければ、申込は効力を失う(商法508条)。 相当期間の判断は、申込の内容や商慣習などから決められることになる。 また遅延した承諾は、申込者がそれを新たな申込と見ることができる。 (4) 申込に対する諾否の通知義務 商人が、日頃から取引している相手方(日頃の仕入先、納品先等である)からその営業に関する申込を受けた場合は、遅滞なく断らない限り、申込を承諾したものとされる(商法509条)。 これは商取引の迅速性から認められている特則であるので注意を要する。 (了)

#No. 47(掲載号)
#矢野 千秋
2013/12/05

会社を成長させる「会計力」 【第4回】「何をもって「会計力」と呼ぶべきか?」

会社を成長させる「会計力」 【第4回】 「何をもって「会計力」と呼ぶべきか?」   島崎 憲明   今回から2回にわたり、本連載のテーマである「会計力」というものについて、私の経験則を元に検証してみたい。 《会社の仕事に求められる「チカラ」》 会社の仕事には、あらかじめ用意された答えがない場合が多い。 マニュアルに基づき与えられた仕事を間違いなくこなすレベルから、より高い責任ある立場なればなるほど、「用意された答えのない仕事」が増えてくる。 仕事の実績こそが答えであり、それに到る道は一筋ではなく、ゆえに答えも唯一ではない。 人の能力も多様である。例えば、記憶力、理解力、整理力、説得力、決断力、推進力、指導力、創造力などがある。 私は新入社員や新任管理職への社内研修で、意識啓発のために、たびたび次のようなことを言ってきた。   《会計力とはどのような「力」か?》 会社の成長を支える会計力には、「企業が組織や仕組みとして持つ会計力」と「企業の個々人が持つ会計力」とがあるように思う。 この2つは相互に関連しており、企業の構成員である個々人が会計力を高めることにより、結果として、企業としての会計力強化につながる。個人の質的向上なくして会社の質的向上はないのである。 経理・財務・リスクマネジメントを担当する人の会計力を整理すると、次のようになる。 上記の[1]から[4]の業務は、必ずしも[1]からスタートして[4]に至るということではなく、[2]からスタートする人、[3]からスタートする人がいてかまわない。 [1]から[4]の仕事は、初めはマニュアルや過去資料に基づき従来のやり方を踏襲するレベルから、問題点や課題を発見して改善や工夫を凝らすレベルへと高まっていくことが求められる。 その過程が、それぞれの会計人としての成長なのである。   《「工夫と改善」「思考と創造」にまつわる経験談》 上記の[1][2]に掲げた経理実務の領域で、私が経験した「改善と工夫」、「思考と創造」についてご紹介したい。 私は入社5年目頃から9年間、税務業務を担当したことがある。 法人税、地方税の申告業務が最初の仕事であった。 先輩の書き残したマニュアルや前年度の確定申告書控を参考にして作業を進めた。 初めはとにかく前例通り、間違いなく実務をこなすことに集中した記憶がある。次の年、さらにその次の年と経験を重ねていくにつれ、改善点が見えてきて、今までのやり方に工夫を試みるようになった。 「なぜ、このような申告処理を行ったのか?」 こういう疑問の生じた案件については、法人税法や地方税法に照らし、改善(=節税)の余地がないかを検討した。ビジネスの実態と照らし合わせることにより、そこから節税のヒントを得て、実行した。 さらに進むと、決算の結果を法令に従って申告するというレベルから、取引が発生した段階で税務問題を検討するという税務コンサルテーション的な仕事へと発展していった。 最終的には、クロスボーダー取引での国際課税への対応など、企業グループのグローバルなタックスプランニングに関与することになるが、これは企業経営が目指す企業価値の最大化を図る上で必須の業務である。 また、経理部長職に就いていた当時、経理業務コスト20%削減を図るための方策を検討したことがある。 経理やシステム担当の課長クラス10名程とワーキンググループを作り議論を重ねた。100億円程度のコストを20億円削減するのであるから、抜本的な業務の見直しなくして実現は難しいものであった。 結論の柱は、次の2課題にチャレンジすることが必要であり、それらが実現されれば20%のコストダウンは可能であるという提言書をまとめた。 その後、これら2つの課題は実現することになる。 新経営情報システムの構築では、当時の年間利益に相当するシステム投資を行うことになるが、この話は後日あらためてお話することにしたい。 ここで取り上げた経験談は、会計業務における「工夫と改善」の一例である。 上述した[1]から[4]のそれぞれの仕事において、前例踏襲の段階から次の段階へと成長していくことが「個々人の会計力」の向上であり、それが「企業としての会計力」強化につながるということをご理解いただきたい。   《「鍛錬」と「守破離」》 会社生活10年、20年、30年の節目における職責を振り返ってみると、企業によって多少の違いはあるが、その節目ごとに主任担当者、課長、部長へと責任が重くなってくる。 宮本武蔵の「五輪の書」に という記述がある。 これを会計の仕事に当てはめてみると、入社以来30年間研鑽すれば部長職としてそれなりに会計を極めて、会計力がついているはずである。もちろん、武蔵が言うように、「鍛錬」を重ねておれば、ということだが。 何事も始めることはやさしいが、続けることは難しい。しかしながら、その継続なくして物事を究めることはできないということである。 道を究めようとするときの成長過程を示す言葉に「守・破・離」がある。 武道や茶道などの稽古事、歌舞伎などの伝統芸能の世界で語り継がれている言葉である。 初めは基本をしっかりと学び、次はそれを破って応用するレベル、そして最終的にはそれから離れて新たなものを創造する域に達するという、成長の過程を表す言葉である。 会計力を高めるためには、まずは基本を学び自分のものにして、次は従来のやり方に工夫を凝らし、改善を試みる。そのためには、自分自身でとことん考えて抜いて、新しいものを創造することへのチャレンジを繰り返すことにより、高度な会計力を持つ企業会計人が育つのである。 *   *   * 次回は引き続き「会計力」というものについて、「企業の会計力」という視点で検証を試みたい。 (了)

#No. 47(掲載号)
#島崎 憲明
2013/12/05

〔知っておきたいプロの視点〕病院・医院の経営改善─ポイントはここだ!─ 【第22回】「病院における原価計算」

〔知っておきたいプロの視点〕 病院・医院の経営改善 ─ポイントはここだ!─ 【第22回】 「病院における原価計算」   東京医科歯科大学医学部附属病院 特任講師 井上 貴裕   1  稼働額重視の病院経営 病院では診療科別の稼働額はある程度把握できるものの、稼働額が多いからといって、それ以上に費用がかさむこともありえるわけであり、儲かっていることの証にはならない。このことは病院経営に関わる誰もが理解している。 しかし、病院経営層あるいは各診療科から、どの診療科が儲かっているのかを知りたい、本当の業績を知りたいという声があがることもあり、診療科別等の原価計算に挑む病院も存在する。だが、そのハードルは高い。 実際に診療科別の原価計算を実施している病院は少なく、本当の収益性は不明なのが現実であろう。また、稼働額自体も主治医の属する診療科に集計されるのが一般的であり、コンサルテーションや手術のサポートなどを行っても、実施した診療科に反映されないなど問題もある。 つまり、診療科別の経済的な実態はみえない。それが病院経営の実情である。   2 原価計算必要論者の見解 根強い原価計算必要論者も存在し、特に各診療科に対する規律付けに有効であると主張されることもある。確かに稼働額だけをみれば、循環器内科、脳神経外科、心臓血管外科などは突出して多い傾向がある。 しかし、図表1に示すように、これらの診療科の売上総利益率(入院診療収益からは売上原価を差し引いたもの。ここでは、売上原価を医薬品及び診療材料費と定義している)は低く、稼働額が多いことだけをみて収益性が高い、稼ぎ頭と考えることは妥当ではない。 図表1 診療科別 売上総利益率 また、ジェネリック医薬品や抗生剤の適正使用などを推進するためにも、診療科別の利益率を示すことは有効であるとする見解も存在する。 なお、30程度の総合的な急性期病院で実施した原価計算の結果を示すと、図表2及び図表3である。 図表2 医業収益に対する比率〔入院〕 図表3 医業収益に対する比率〔外来〕   これらは配賦計算を伴うものであり、数値の正確性は保証できない。しかし、同じ配賦基準を用いており、診療科間の相対順位などはある程度参考になるのではないかと思われる。一般的に外来よりも入院の収益性が高いなどと主張される結果とも一致している。   3  原価計算不要論者の見解 原価計算の結果に納得感をもたせることは容易ではない。その理由として、診療科間の配賦基準の問題があげられる。 費用には直接費と間接費があり、直接費は部門に直接跡付けられる費用であり、間接費は部門間をまたがる共通で発生する費用である。直接費はある診療科の患者に投与された医薬品や診療材料などであり、間接費はCTやMRIなど全診療科で共有して用いるものの減価償却費などが該当する。この際に、間接費まで各部門に割り当てようとすると、計算の妥当性に疑問が呈されることがある。 簡易な方法では、各診療科の収入で間接費を各診療科に配賦する方法が考えられる。この考え方は、収入が多い診療科は共有する機器についても使用頻度が高いのであろうから、間接費をより多く負担すべきであるという考え方である。しかし、収入が多いからといって、間接費を多く負担すべきとすれば、そもそも収入が多く声の大きい診療科から不満が湧き出てくる。配賦基準の納得感がないと強硬に主張されるだろう。 誰もが納得できる配賦基準は、使用の実態に応じた配賦ルールを設けることである。CTやMRIならば診療科別の照射枚数で配賦することも可能であろう。しかし、間接費は無数にある。手術室に係る費用は、診療科別の手術時間で配賦すべきであろうか。手術室スタッフの緊急手術に対応するための夜間の待機の給与費はどの診療科が負担するのか。そもそも手術室を利用しない診療科にはこれらの費用負担は課されないという考え方もあるかもしれない。また、事務職員の給与は配賦するのか、それともしないのか、など精緻に計算しようとすれば様々な課題が浮かび上がってくる。 さらに診療科別の原価計算を実施して、ある診療科が赤字だと言ったところで具体策は見えてこない。赤字だとレッテルを貼られた診療科の部長からは、“何をしたらいいのか、どうしたら改善するのか”を聞かれるだろう。しかし、診療科別の原価計算からはその答えは導き出せない。各診療科で考えてください、としか言えない。 また、医療機関の収入のほとんどは保険診療に関するものであり、価格決定権がないことも原価計算を実施しないことにつながっているのだろう。 製造業であれば、自社製品の価格を決めるために、ざっくりとした計算であっても何らかの原価計算を実施する必要がある。しかし、車を作るのに大まかであってもその製造原価が把握できなければ、値段の設定は困難極まるだろう。そうはいっても、診療報酬の設定額を適正化するという視点からは適切な原価を算定することは重要である。医療政策的には重要事項である。   4 DPCデータの活用 では、どのようにして原価計算を行えば、効率的で効果的なデータを提供できるだろうか。 前述したように、配賦を伴う精緻な原価計算は、手間がかかるわりには納得感が醸成できない。そこで、DPCデータを活用することを提案したい。 DPC提出データのE・Fファイルを用いることで、薬剤費と診療材料費を患者ごとあるいは診療科ごとに把握できる。これらは償還価格ベースであり、また償還対象にならないものについては把握ができないという問題もある。しかし、客観的でエクセルなどを用いてたやすく行えるというメリットは大きい。 さらに、診療科別の給与費を足し合わせれば診療科別の原価が集計でき、それを収入から差し引けば診療科別利益が算出できる。対収入比でみたときに、給与費と医薬品材料費は80%を占める。全体の80%が説明できるこの手法は、何も見えない現状と比較すれば、ある程度の有効性があると筆者は考えている。 なお、このデータはDPCにおける包括収入と出来高換算収入を比較した増減収額とは異なる。収入同士の比較では実態が把握できないことを意味する。複数の指標で診療科を評価することは複雑さを増し、混乱をもたらす危険性もある。 自院にとって妥当だと思われる方法で各診療科を適切に評価し、動機付けることが期待される。 (了)

#No. 47(掲載号)
#井上 貴裕
2013/12/05

顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第26回】「原価管理のKPI(その④ 原価計算単位設定)」

顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第26回】 「原価管理のKPI (その④ 原価計算単位設定)」   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 今回は、原価管理を構成する複数のKPIから、「原価計算単位設定」から得られる情報を使って原価管理のサービスレベルを評価するKPIを取り上げる。 原価管理は、実際に発生した原価を製品・商品・サービスという原価計算単位で集計する原価計算手続によって行われる。製品別の原価の集計は、複雑な計算が伴うため、製品・商品・サービスの生成過程に関する専門知識や経験を持った人員によって担われることが多い。 そこで、今回は、原価管理の効率性や適正人員配置の判断に関する経営意思決定に役立つKPIを紹介しよう。   KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておこう。 経済産業省スタンダードでは、原価管理において、会社が担う一般的な機能として、「予算策定」と「実績管理」を挙げている。 「実績管理」は、「実績原価算定」と「実績原価分析」という機能で構成される。 今回解説するKPIは、「実績原価算定」に関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:原価管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   さらに、経済産業省スタンダードでは、実績原価算定に関連する業務プロセスを、次のように費目別集計、部門別集計、製品別原価算定、原価差異振替に分けている。 〈経済産業省スタンダード:6.2.1費目別集計〉 〈経済産業省スタンダード:6.2.2部門別集計〉 〈経済産業省スタンダード:6.2.3製品別原価算定〉 〈経済産業省スタンダード:6.2.4原価差異振替〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   費目別集計では、実際に発生した原価を、原価発生の形態に応じて費目別に集計する。すなわち、原価を材料費、労務費、経費に区分し、さらに細分化する。通常は、財務会計において費用が形態別に集計されているので、財務会計の基礎データを利用して行う。 部門別集計では、費目別集計で把握された原価を、原価部門別に集計する。まず、経営において担う機能に応じて原価部門を製造部門と補助部門に分類する。原価を、部門個別費と部門共通費に分解し、部門個別費を当該製造部門及び補助部門に賦課し、部門共通費を一定の配賦基準に従い各製造部門及び補助部門に配賦する。そして、集計された補助部門費を製造部門費へ配賦し、製造部門費を計算する。 製品別原価算定では、部門別に集計された原価を製品単位に集計し、製品単位における製造原価を算定する。生産形態の種類別に対応して、単純総合原価計算、等級別総合原価計算、組別総合原価計算、個別原価計算が採用される。 原価差異振替では、原価差異の内容に応じて、当期の売上原価と期末棚卸資産に、賦課又は配賦するか、非原価項目として処理する。 今回のKPIは、実績原価算定に関する一連の業務プロセスを前提に、原価を集計する原価計算単位の数が原価管理の業務量に比例する傾向があることに着目し、効率性の観点から、原価管理担当者1人あたり管理する原価計算単位数を問うものである。   定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 「原価計算単位数」とは、単位あたりコストを最終的に計算する原価計算対象の数をさす。通常は、原価を最終的に負担させる製品・商品・サービスの数と一致する。 そもそも、このKPIの分子には、原価計算業務量に影響を与える要素が適切である。そこで、原価計算業務量に影響を与える要素として費目数、部門数も考えられるが、原価を最終的に負担させる製品・商品・サービスの数が、原価計算や原価差異分析の業務量に対するより直接的な説明変数である点で、重要なコストドライバーと判断した。 実務では、生産形態の種類によって採用される製品別原価計算方法が異なるので、原価計算単位数を具体的に例示してみよう。 単純総合原価計算を採用している場合、1種類の製品を単一の工程において連続生産するので、原価計算単位数は1個となる。 もっとも、工程別総合原価計算のように、製造工程が2個以上の連続する工程に分けられ、工程ごとにその工程製品の総合原価を計算する場合、工程の数が原価計算単位数となる。 等級別総合原価計算は、同一工程において、同種製品を連続生産するが、その製品を形、大きさ、品位等によって等級別に区分する生産形態に適した原価計算である。製粉会社、醸造会社等に見られる。この場合、等級製品の数が原価計算単位数となる。 組別総合原価計算の場合、異種製品を組別に連続生産する生産形態に適した原価計算である。自動車メーカーや電機メーカー等に見られる。この場合、組と呼ばれる製品種類ごとに継続製造指図書が発行されるので、組や継続製造指図書の数が原価計算単位数となる。 個別原価計算を採用している場合、種類の異なる製品ごとに特定製造指図書が発行されるので、製造指図書番号の数を数えて原価計算単位数が求められる。 「原価管理担当者のべ人数」とは、経理財務部門における担当者が、原価管理に費やす時間をのべ人数で表したものをさす。   KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルにおいて、このKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、原価管理業務を適正な人員で行い1人あたりの生産性を高めることが望ましいという価値判断に基づいて設定されている。 そして、原価管理という業務により最終的にどの程度の細かさでコストが管理されているのかを示す原価計算単位数を会社間で比較し、効率性のレベルを測ることにしたのである。スコアリングモデルでは、この個数が多い会社が少ない会社よりも相対的に望ましいと考えている。 なお、このKPIで原価管理の効率性を比較する場合、業種、取り扱う製商品やサービスの数、生産形態、採用する実際原価計算の種類等という要素が、原価計算単位数の増減に与えるバイアスを除くため、可能な限り条件をそろえて比較することに留意が必要である。 もし会社の中で、このようなKPIを設定した価値判断が共有されない場合、原価管理に隠れている効率性の問題が発見されず、過剰又は過少な人員配置が放置されたままになる可能性がある。   顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、生産形態に応じた製品別実績原価算定の業務プロセスが組み込まれていることを確認していただきたい。 例えば、経理規程を閲覧し、採用している製品別原価計算方法を確認する。 次に、分子となる原価計算単位数を確認する。例えば、原価管理資料や原価管理システムマスター一覧を閲覧し、BOM数、製品の品番マスター数、商品の品番マスター数を確認する。 さらに、分母となる原価管理担当者のべ人数の確認に入る。例えば、業務時間実績報告表を閲覧し、1人あたり所定労働時間で割り戻した数値を算出する。原価管理業務以外の業務を兼務している場合、合理的な比率で原価管理業務にかかるのべ人数を算出する。 最後に、分子を分母で除した個数を算出していただきたい。 さて、読者の顧問先において、原価管理担当者1人あたり管理する原価計算単位数は何個になったであろうか。 *  *  * 次回からは、「経費管理」のKPIを取り上げる。 「経費管理」を構成する複数のKPIのうち、まず「経費処理社内指導」のサービスレベルを評価するKPIから取り上げる。 (了)

#No. 47(掲載号)
#島 紀彦
2013/12/05

《速報解説》「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」 の改正(公開草案)

《速報解説》 「特別目的会社を利用した取引に関する 監査上の留意点についてのQ&A」の改正 (公開草案)   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年11月29日、日本公認会計士協会(監査・保証実務委員会)は「「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」の改正について」(公開草案)を公表した。 公開草案は、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号)をはじめとする現行の会計基準及び監査基準委員会報告書の参照箇所について所要の見直しを行ったものであり、現行実務の変更を意図するものではないと述べられている。 意見募集期間は平成25年12月19日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正事項 特別目的会社の連結及び開示として、次の会計基準等を用いている(Q2等)。 いずれも現行の会計基準等に合わせるものであり、現行実務に影響はないものと解される。 財務諸表等規則8条7項に合わせて「譲渡会社等」の用語に修正している(Q3等)。 財務諸表等規則8条7項の特則は、特別目的会社が資産を譲り受ける場合のみに適用されるので(連結会計基準7-2項、49-3項、49-5項及び54-2項)、特別目的会社の利用として物件の開発行為を行うタイプについては財務諸表等規則8条7項の特則の適用はないことになる。 これも現行実務と同じなので、影響はないものと解される。 特別目的会社に関する開示については、「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第15号)及び「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号)においてすでに規定がある。 このため、特別目的会社に関する開示に関する留意点(Q23)では、これらの会計基準等に従ってあらためて整理している。 上記のほか、監査基準委員会報告書の参照箇所について、参照先の改正等に合わせて変更が行われている(Q7等)。 従来、監査基準委員会報告書第14号「専門家の業務の利用」が用いられていたが、現在は監査基準委員会報告書620「専門家の業務の利用」が用いられているので、アップデートするように変更している。 (了)

#No. 46(掲載号)
#阿部 光成
2013/12/03

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第10回】「内縁の妻は配偶者控除の適用を受けられるか?(その1)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第10回】 「内縁の妻は配偶者控除の適用を受けられるか?(その1)」   国士舘大学法学部教授・法学博士 酒井 克彦   1 「配偶者」をめぐる解釈 今回は、結婚により夫婦として共同生活をしているが婚姻届を提出していない、いわゆる内縁の妻について、所得税法上の配偶者控除が認められるか否かという問題について考えてみたい。 ところで、所得税法には、「配偶者」という概念についての定義規定はない。したがって、所得税法上の文脈から「配偶者」概念を理解しようとしても、その材料に乏しく、条文から意義や範囲を画することができない。 そこで、この「配偶者」という概念は、おそらく民法から借りてきた概念、すなわち「借用概念」であると思われるので、民法において理解されている意味内容を探り、そのような理解と整合させるように、所得税法上の概念を理解すべきであると考える。 これは、以前ここでも取り上げた相続税法上の「住所」の概念を民法の概念の理解に合わせようとする通説的な考え方と同じである。 このような考え方は、借用概念についての現在の通説とされる“統一説”と呼ばれるものである。 しかしながら、民法に「配偶者」という用語の定義が用意されているわけではない。 この点は、「住所」という概念について、民法22条にその定義が用意されていた武富士事件のようなケースとは異なるところである。 定義がないとなると、「配偶者」という概念を理解するには、民法における解釈によらざるを得ない。 ところで、民法では、民法が適法とする婚姻関係ではなくとも、準婚理論(婚姻関係に準じるとする考え方)を採用して、実質的な内縁の妻に対しても、貞操義務(民770①一)、同居・協力・扶助義務(民752)、婚姻費用の分担義務(民760)、日常家事債務の連帯責任(民761)、帰属不明財産の共有推定(民762)などを適用させるように解されてきている。 このような考え方が、判例(例えば、最高裁昭和35年10月7日第二小法廷判決など)や学説において承認され、内縁の妻はこれらの法律の適用によって保護の対象とされているのである。 このようなことを考えると、民法自体が「配偶者」としてその保護領域の射程としているのは、必ずしも届出婚主義に基づく婚姻関係のみではないということに気がつく。 民法上は、形式的には婚姻関係が適法に成立した場合の配偶者を法律上の「配偶者」と理解した上で、実質的には法律上の配偶者と類似の法的保護を内縁の妻にも与えているというダブルスタンダードを採っている。 所得税法上の「配偶者」を解釈するに当たって、民法のダブルスタンダードのうち、実質的なスタンダードから借用するという考え方を採用することはできないのであろうか。 ましてや、多くの法律が実質的な見地から、内縁の妻のような事実上の婚姻関係者をも配偶者に取り込んでいることを考えるとなおさらである。 例えば、健康保険法では、「被扶養者」に含まれる「配偶者」に、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むこととしており(健康保険法3⑦)、内縁の妻も包摂されているのである。   2 大阪地裁昭和36年9月19日判決 そこで、内縁の妻が所得税法上の扶養親族である配偶者に当たるかどうかが争われた大阪地裁昭和36年9月19日判決(行裁例集12巻9号1801頁)を見ながら、この点を考えてみたい。 なお、この事件の当時は、配偶者控除という所得控除はなく、扶養控除とされていた。 大阪地裁は、このように判示し、 というのである(この判決はまだ続く)。 (続く)

#No. 46(掲載号)
#酒井 克彦
2013/11/28

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例8(法人税)】 「再生計画の認可の決定により預託金の一部が切り捨てられていたゴルフ会員権を代表者に時価で売却し、簿価と時価の差額を売却損として計上してしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例8(法人税)】   税理士 齋藤 和助   《事例の概要》 平成25年3月期の法人税につき、利益圧縮のため、帳簿価額1,500万円(入会金500万円、預託金1,000万円)のゴルフ会員権を時価の10万円で売却し、売却損を計上した。 ところが、このゴルフ会員権は運営会社が平成16年3月の再生計画の認可の決定により、預託金の一部が切り捨てられていた。これを税務調査で指摘され、結果として切り捨てられた預託金部分に係る売却損を否認されてしまった。 これにより、否認された売却損に係る税額300万円につき損害賠償請求を受けた。   《賠償請求の経緯》 平成16年3月にゴルフ場運営会社の再生計画認可の決定により預託金のうちの950万円(95%)の切捨てが確定。 前任税理士はこの事実を知らされなかったため、貸倒処理をせず平成16年3月期の法人税申告書を提出。 前任税理士は平成18年5月に上記事実を確認するも更正の嘆願等は行わず。 平成19年1月に税理士は前任税理士から業務を引き継ぐ。 平成25年3月期に利益圧縮のため税理士主導によりゴルフ会員権を代表者に時価の10万円で売却し、簿価との差額1,490万円を売却損に計上。 平成25年9月に税務調査により平成16年3月期の貸倒損失計上漏れを指摘され、売却損のうち貸倒損失部分を否認される。   《基礎知識》 ◆金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ(法基通9-6-1) 法人の有する金銭債権について次に掲げる事実が発生した場合には、その金銭債権の額のうち次に掲げる金額は、その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する。 ◆更正の期間制限(旧通法70) 法人税に係る更正については、法定申告期限から5年を経過した日以後においては、することができない。ただし、次に掲げる更正(純損失等の金額に係るものに限る。)については、法定申告期限から7年を経過する日まで、することができる。   《税理士の落とし穴》   《税理士の責任》 依頼者の所有するゴルフ会員権の運営会社は、平成16年3月に再生計画認可の決定を受け、預託金の95%が切捨てとなった。前任税理士は、この決定を依頼者から聞かされたのが平成18年であったことから、そのままとなり、上記事実が引き継がれないまま前任税理士から税理士に交代した。 そして上記事実が失念されたまま減額更正の期間が過ぎ、平成25年3月期の法人税申告において、利益圧縮のため税理士がゴルフ会員権を代表者に時価の10万円で売却することを提案し、簿価との差額1,490万円を売却損に計上した。その後、税務調査により売却損のうち貸倒損失部分を否認されることとなる。 税理士は上記事実を聞かされていなかったが、多額の売却損を計上するに当たっては、専門家として慎重に事を運ぶべきであり、ゴルフ会員権の運営会社の状況を調査すべきであったと思われることから、税理士にも責任がある。   《予防策》 [ポイント①] コミュニケーションをとる 今回の事例は、ゴルフ会員権の運営会社に再生計画の認可の決定があったことにつき通知が来ていたにもかかわらず、その重要性を認識できなかった依頼者がすぐに税理士に報告しなかったことにより起きた事故である。 税理士は常日頃から、依頼者とのコミュニケーションをとり、会社の資産の状況等に変化がある場合には、税理士にその情報が伝わるような仕組みを作っておくことが必要である。   [ポイント②] チェックリストを活用したダブルチェック体制を構築する 申告書作成時のミスは、期中処理と違い、ある程度は申告書自体をチェックすることで防げるので、固定資産の売却等の特別損益については、チェックリスト等を作成して、担当者だけでなく、所長又は有資格者等によるダブルチェック体制を構築することが必要である。 (了)

#No. 46(掲載号)
#齋藤 和助
2013/11/28

居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第8問】「区分所有に係る建物とその共有敷地(マンション)を譲渡した場合」-居住用財産の範囲-

居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第8問】 「区分所有に係る建物とその共有敷地(マンション)を譲渡した場合」 -居住用財産の範囲-   税理士 大久保 昭佳   Q X、Y及びZは、その共有(各人の持分1/3)に係る土地に共同で建物を建てて区分所有とし、それぞれの区分所有に係る建物に居住していました。 このほど、Xは建物と共にその敷地の持分の全部を譲渡しました。 この場合、Xについて「3,000万円特別控除(措法35)」の適用対象となる居住用財産の範囲はどこまででしょうか? A 建物の全部及び敷地のうち、X共有持分に相当する部分(全体の1/3)が「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができる。 〈解説〉 敷地の共有持分割合とその建物の全体床面積に占める区分所有に係る建物の床面積の割合とが概ね等しい場合には、敷地のうちその共有持分に相当する部分が、区分所有に係る建物に対応する敷地であるとして、「特例」の適用を受けることができる。 マンションや公団等の譲渡が、これに該当する。 (了)

#No. 46(掲載号)
#大久保 昭佳
2013/11/28

〔しっかり身に付けたい!〕はじめての相続税申告業務 【第10回】「土地を評価する③」~路線価方式による評価~

〔しっかり身に付けたい!〕 はじめての相続税申告業務 【第10回】 「土地を評価する③」 ~路線価方式による評価~   税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良   今回は土地評価の路線価方式について学ぶこととする。 〔路線価方式の計算〕 路線価方式による宅地評価は、基本的には で行われ、これに一定の調整計算(*)を行うこととなる。 ※国税庁ホームページより   〔宅地評価(路線価方式)による調整計算〕 宅地評価を詳細に説明することは紙面の関係上、別の機会に譲ることとし、本稿では割愛するが、宅地評価(路線価方式)による調整計算項目のみ列挙することとする。   〔宅地評価(路線価方式及び倍率方式の共通)の調整計算〕 また、宅地評価(路線価方式及び倍率方式の共通)の調整計算として主なものに、以下のものがある。 なお、財産評価基本通達には明記されていないが、利用価値が著しく低下している宅地については、10%減額できることとされている(国税庁タックスアンサー(財産の評価)No.4617「利用価値が著しく低下している宅地の評価」参照)。 (了)

#No. 46(掲載号)
#根岸 二良
2013/11/28
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