公開日: 2013/03/28 (掲載号:No.12)
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「石原産業役員責任追及訴訟第一審判決」から読む会社経営者としての責任の分水嶺【1】

筆者: 中西 和幸

「石原産業役員責任追及訴訟

第一審判決から読む

会社経営者としての責任の分水嶺

【1】

 

弁護士 中西 和幸

 

1 はじめに

近年、株主代表訴訟において役員責任が認められる判決が目立つようになってきた。

本判決では、大和銀行判決(7億7,500万ドル(当時のレートで約830億円))や蛇の目ミシン判決(約580億円)に次ぐ約489億円という多額の損害賠償額が取締役に言い渡された。

しかし、その金額もさることながら、監査役が責任追及訴訟を自主的に提起したこと、株主が訴訟参加したこと等の訴訟の構造、責任が認められた取締役と認められなかった取締役の差異等、注目すべき点が複数ある。

 

2 フェロシルト事件の概要

本件は、会社が各地に販売した土壌埋戻材(商品名:フェロシルト)が環境を汚染する物質であったこと、すなわち実質的には産業廃棄物であったことが問題となり、これを販売・搬出等したことに対する取締役の責任が問題となった事件である。

会社は、主力製品である酸化チタンの生成過程において発生する産業廃棄物である汚泥(アイアンクレー)を有効活用しようと加工し、土壌埋戻材として各地に販売した。
しかし、平成13年8月頃、搬出先の依頼により検査がなされ、フェロシルトから、発ガン性有害物質である六価クロム等有害物質が土壌環境基準値を超えて検出された。そして、会社が自社で保管しているフェロシルトを検査したところ、同様に六価クロムが検出された。それにもかかわらず、担当者が検出結果を隠匿したこともあり、会社は子会社を通じてフェロシルトを顧客に販売・搬出した。

その約3年後、埋設されたフェロシルトが溶け出した赤い液体が河川を汚染するようになるなどのトラブルが発生し、平成17年7月頃、地方公共団体からフェロシルトを撤去するよう要請され、会社は何百億円もの費用をかけてフェロシルトを撤去した。

これらの行為が産業廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反に問われ、会社については罰金5,000万円、管掌取締役Y1について懲役2年の実刑、取締役ではない環境保安部長について懲役1年4月(執行猶予5年)の刑事罰が下された。

 

3 訴訟の構造

最初は、会社の監査役が、本件の直接の責任者としてフェロシルトを生産していた四日市工場副工場長(平成9年6月27日~平成17年6月29日)である取締役Y1(在任期間は平成9年6月27日から平成11年6月29日及び平成15年6月29日から平成17年6月29日である。平成11年6月29日から平成15年6月29日までは常務執行役員であって取締役ではなかった。)に対して10億円の損害賠償請求(一部請求)をした。

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「石原産業役員責任追及訴訟

第一審判決から読む

会社経営者としての責任の分水嶺

【1】

 

弁護士 中西 和幸

 

1 はじめに

近年、株主代表訴訟において役員責任が認められる判決が目立つようになってきた。

本判決では、大和銀行判決(7億7,500万ドル(当時のレートで約830億円))や蛇の目ミシン判決(約580億円)に次ぐ約489億円という多額の損害賠償額が取締役に言い渡された。

しかし、その金額もさることながら、監査役が責任追及訴訟を自主的に提起したこと、株主が訴訟参加したこと等の訴訟の構造、責任が認められた取締役と認められなかった取締役の差異等、注目すべき点が複数ある。

 

2 フェロシルト事件の概要

本件は、会社が各地に販売した土壌埋戻材(商品名:フェロシルト)が環境を汚染する物質であったこと、すなわち実質的には産業廃棄物であったことが問題となり、これを販売・搬出等したことに対する取締役の責任が問題となった事件である。

会社は、主力製品である酸化チタンの生成過程において発生する産業廃棄物である汚泥(アイアンクレー)を有効活用しようと加工し、土壌埋戻材として各地に販売した。
しかし、平成13年8月頃、搬出先の依頼により検査がなされ、フェロシルトから、発ガン性有害物質である六価クロム等有害物質が土壌環境基準値を超えて検出された。そして、会社が自社で保管しているフェロシルトを検査したところ、同様に六価クロムが検出された。それにもかかわらず、担当者が検出結果を隠匿したこともあり、会社は子会社を通じてフェロシルトを顧客に販売・搬出した。

その約3年後、埋設されたフェロシルトが溶け出した赤い液体が河川を汚染するようになるなどのトラブルが発生し、平成17年7月頃、地方公共団体からフェロシルトを撤去するよう要請され、会社は何百億円もの費用をかけてフェロシルトを撤去した。

これらの行為が産業廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反に問われ、会社については罰金5,000万円、管掌取締役Y1について懲役2年の実刑、取締役ではない環境保安部長について懲役1年4月(執行猶予5年)の刑事罰が下された。

 

3 訴訟の構造

最初は、会社の監査役が、本件の直接の責任者としてフェロシルトを生産していた四日市工場副工場長(平成9年6月27日~平成17年6月29日)である取締役Y1(在任期間は平成9年6月27日から平成11年6月29日及び平成15年6月29日から平成17年6月29日である。平成11年6月29日から平成15年6月29日までは常務執行役員であって取締役ではなかった。)に対して10億円の損害賠償請求(一部請求)をした。

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連載目次

「「石原産業役員責任追及訴訟第一審判決」から読む会社経営者としての責任の分水嶺」(全3回)

筆者紹介

中西 和幸

(なかにし・かずゆき)

弁護士
田辺総合法律事務所

・昭和61年3月 岡崎高等学校卒業
・平成4年3月 東京大学法学部卒業
・平成4年4月 住友海上火災保険株式会社に就職(平成5年3月まで)
・平成7年4月 弁護士登録(第一東京弁護士会会員となる)、田辺総合法律事務所入所
・平成19年4月 第一東京弁護士会総合法律研究所会社法研究部会部会長就任(平成23年4月まで)
・平成22年4月 CFE(Certified Fraud Examiner:公認不正検査士)資格取得
・平成24年4月 国分寺市オンブズパーソンに就任
・平成24年6月 オーデリック株式会社の社外(独立)監査役に就任

【著書等】
・『会社法関係法務省令逐条実務詳解 ─会社法施行規則・会社計算規則・電子公告規則』編集代表(清文社)
・『信託と倒産』共著(商事法務)
・『企業不祥事と対応【事例検証】』編共著(清文社)
・『〔新訂〕貸出管理回収手続双書 回収』共著(金融財政事情研究会)
・「振替株式に設定された質権と質権設定者の振替株式に対する差押え」共著『金融法務事情』No.1912
・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社)
・『【Q&A】大規模災害に備える企業法務の課題と実務対応』編集代表(清文社)
・『実践!営業秘密管理 企業秘密の漏えいを防止せよ!』編集代表(中央経済社)
・「平成24年株主総会の実務対応(6)株主総会までの準備と議事運営」『旬刊 商事法務』 No.1963
・『最新 役員報酬をめぐる法務・会計・税務』編集代表(清文社)
・「「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明内容と運用のあり方」共著『旬刊 商事法務』 No.1980 

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