公開日: 2013/04/18 (掲載号:No.15)
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法人税の解釈をめぐる論点整理 《寄附金》編 【第3回】

筆者: 木村 浩之

法人税の解釈をめぐる論点整理

《寄附金》編

【第3回】

 

弁護士 木村 浩之

 

(前回はこちら

5 対価性の有無等

(1) 総論

法人が行う取引のうち、対価性のない取引によって支出等するものについては、広告宣伝費等の営業経費に属するもの及び貸倒損失等の任意性のないものを除き、寄附金に該当することになる。対価性はあるとしても、それが不均衡な取引(低廉取引)によって負担することになる適正な対価との差額部分についても、それが実質的な贈与であるとみられる場合には、同様に寄附金に該当することになる。

ここでいう対価性とは、相手方からの反対給付を意味しており、取引に伴う相手方からの反対給付が何もない場合(これには反対給付の経済的価値が極端に小さい場合も含まれる)には、対価性のない取引として、自己が支出等するものの全額が寄附金に該当する。また、反対給付があるとしても、その経済的価値が自己の支出等よりも小さい場合には、その差額が寄附金に該当する。

この対価性の有無及び対価の相当性を判断するに当たっては、一般には、取引における一側面のみを切り出して形式的にとらえるのではなく、取引全体を実質的にみて判断すべきであるといえる。その際のポイントをいくつか挙げるとすれば、次のようなものとなる。

① 牽連(けんれん)関係のある取引全体を観察すること

② 実質的観点から相手方の負担や自己に対する便益(反対給付)がないか検討すること

③ 価格設定の合理性について検討すること

以下、それぞれについて解説する。

 

(2) 牽連関係について

単体取引でみれば、対価性のない、あるいは対価の均衡の取れない不均衡な取引であったとしても、複数の取引全体でみれば、対価の均衡が取れている場合がある。そのような場合には、それらの複数の取引に牽連関係があると認められる限りにおいては、実質的な対価性が肯定されるのであり、寄附金には該当しないと考えられる。

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法人税の解釈をめぐる論点整理

《寄附金》編

【第3回】

 

弁護士 木村 浩之

 

(前回はこちら

5 対価性の有無等

(1) 総論

法人が行う取引のうち、対価性のない取引によって支出等するものについては、広告宣伝費等の営業経費に属するもの及び貸倒損失等の任意性のないものを除き、寄附金に該当することになる。対価性はあるとしても、それが不均衡な取引(低廉取引)によって負担することになる適正な対価との差額部分についても、それが実質的な贈与であるとみられる場合には、同様に寄附金に該当することになる。

ここでいう対価性とは、相手方からの反対給付を意味しており、取引に伴う相手方からの反対給付が何もない場合(これには反対給付の経済的価値が極端に小さい場合も含まれる)には、対価性のない取引として、自己が支出等するものの全額が寄附金に該当する。また、反対給付があるとしても、その経済的価値が自己の支出等よりも小さい場合には、その差額が寄附金に該当する。

この対価性の有無及び対価の相当性を判断するに当たっては、一般には、取引における一側面のみを切り出して形式的にとらえるのではなく、取引全体を実質的にみて判断すべきであるといえる。その際のポイントをいくつか挙げるとすれば、次のようなものとなる。

① 牽連(けんれん)関係のある取引全体を観察すること

② 実質的観点から相手方の負担や自己に対する便益(反対給付)がないか検討すること

③ 価格設定の合理性について検討すること

以下、それぞれについて解説する。

 

(2) 牽連関係について

単体取引でみれば、対価性のない、あるいは対価の均衡の取れない不均衡な取引であったとしても、複数の取引全体でみれば、対価の均衡が取れている場合がある。そのような場合には、それらの複数の取引に牽連関係があると認められる限りにおいては、実質的な対価性が肯定されるのであり、寄附金には該当しないと考えられる。

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連載目次

〈法人税の解釈をめぐる論点整理〉

《交際費》編 (全3回)

  • 【第1回】
    1 はじめに
    2 交際費の範囲(総論)
    (1) 交際費の要件
    (2) 交際費から除外されるもの
    (3) 交際費の判定手順
    (4) 小括
  • 【第2回】
    3 飲食費の交際費該当性
    (1) 飲食費の意義
    (2) 会議費に含まれる費用
    (3) 福利厚生費と社内飲食費の区分
    (4) 接待飲食費の範囲
    4 リベートの交際費該当性
    (1) リベートの意義
    (2) 売上割戻し等の要件
    (3) 報酬と謝礼金の区分
  • 【第3回】
    5 使途不明金(使途秘匿金)
    (1) 使途不明金とは
    (2) 使途秘匿金の要件
    (3) 使途不明金の処理手順
    6 おわりに

《減価償却》編 (全6回)

  • 【第1回】
    1 はじめに
    2 減価償却資産の範囲
    (1) 減価償却資産の一般的要件
    (2) 棚卸資産等に該当しないこと
    (3) 事業の用に供していること
    (4) 時の経過により減価すること
    (5) 自己が保有する資産であること
  • 【第2回】
    3 固定資産の取得価額
    (1) 問題の所在
    (2) 資産の取得に付随する費用の意義
    (3) 資産を事業の用に供するための直接要した費用の意義
    (4) その他の論点
  • 【第3回】
    4 少額の減価償却資産等の判定
    (1) 問題の所在
    (2) 固定資産の判定単位
    (3) 使用可能期間
  • 【第4回】
    5 資本的支出と修繕費の区分
    (1) 問題の所在
    (2) 資本的支出と修繕費の意義
    (3) 資本的支出と修繕費の区分
  • 【第5回】
    6 償却限度額の計算
    (1) 限度額計算の意義
    (2) 近年の税制改正と限度額計算
    (3) 増加償却について
  • 【第6回】
    7 耐用年数表の適用
    (1) 耐用年数の意義
    (2) 耐用年数をめぐる基本論点
    (3) 耐用年数の短縮について
    8 除却損失の計上
    (1) 除却損失の意義
    (2) 有姿除却の要件
    (3) 除却損失と取得価額
    9 おわりに

《寄附金》編 (全5回)

  • 【第1回】
    1 はじめに
    2 寄附金の範囲(総論)
    3 隣接費用との区分
    (1) 広告宣伝費等との区分
    (2) 交際費等との区分
    (3) 役員又は従業員に利益供与がなされた場合の費用区分
  • 【第2回】
    4 貸倒損失等との区分
    (1) 総論
    (2) 事実上の貸倒債権の放棄
    (3) 債務整理手続における債権放棄等
    (4) 子会社等の再建支援のための損失負担
  • 【第3回】
    5 対価性の有無等
    (1) 総論
    (2) 牽連関係について
    (3) 実質的な反対給付について
  • 【第4回】
    (4) 価格設定の合理性について
    (5) 小括
    6 特殊の相手方に対する寄附金
    (1) 公的団体に対する寄附金
    (2) グループ法人間の寄附金
  • 【第5回】
    7 資本等取引と寄附金
    (1) 低額出資
    (2) 高額出資
    (3) 自己株式の取得
    (4) 現物配当
    (5) DES(デット・エクイティ・スワップ)
    8 おわりに

《役員給与》編 (全9回)

  • 【第1回】
    1 はじめに
    2 役員の範囲
    (1) 税法上の「役員」
    (2) みなし役員の範囲
  • 【第2回】
    (3) 使用人兼務役員の範囲
    (4) 小括
  • 【第3回】
    3 定期同額給与
    (1) 定期同額給与の意義
    (2) 3ヶ月経過後の通常改定
    (3) 臨時改定事由
  • 【第4回】
    (4) 業績悪化改定事由
    (5) 法定外の給与改定がなされた場合
    (6) その他の論点
  • 【第5回】
    4 事前確定届出給与
    (1) 事前確定届出給与の意義
    (2) 届出期限
    (3) 「確定額」の意義
    (4) 届出内容と実際の支給状況が異なる場合
  • 【第6回】
    5 過大給与
    (1) 過大給与該当性の判断基準
    (2) 実質基準について
    (3) 使用人兼務役員について
  • 【第7回】
    6 認定賞与
    (1) 認定賞与の意義
    (2) 役員の親族等に対する利益の供与
    (3) 法人役員間の取引
    (4) 使途不明金
    (5) 債権放棄(債務免除)
  • 【第8回】
    7 退職給与
    (1) 退職給与の意義
    (2) 「退職」の意義
  • 【第9回】
    (3) 役員の退職給与の損金算入時期
    (4) 過大退職給与
    8 おわりに

筆者紹介

木村 浩之

(きむら・ひろゆき)

弁護士

2005年 東京大学法学部卒業
2009年 国税庁(課税部法人課税課源泉国際係長)退官
2010年 弁護士登録
2016年 ライデン国際租税センター国際租税法上級修士課程修了
    ビューレン法律事務所(デンハーグ)に勤務
2017年 KPMGシンガポールに勤務

現 在 弁護士法人 淀屋橋・山上合同
    日本税法学会研究委員
    国際租税協会(International Fiscal Association)会員

【主要著書・論文】
新版 基礎から学ぶ相続法」(清文社・2022年)
「租税条約入門-条文の読み方から適用まで」(中央経済社・2017年)
“An Analysis of the Rules on the Taxation of Investment Income under Japan's Tax Treaties”, Bulletin for International Taxation Volume 71, No 3/4 (2017)
「税務紛争への対応―調査、処分、異議、審査、訴訟、査察、国際課税」(共著・中央経済社・2013年)
「未払い残業代請求をめぐる課税上の問題 −所得区分と帰属時期の問題を中心に−」税法学570号(2013年)
税理士のための 相続実務と民法」(清文社・2013年)

➤弁護士木村浩之の国際税務のページはこちら

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