法人税の解釈をめぐる論点整理
《寄附金》編
【第3回】
弁護士 木村 浩之
(前回はこちら)
5 対価性の有無等
(1) 総論
法人が行う取引のうち、対価性のない取引によって支出等するものについては、広告宣伝費等の営業経費に属するもの及び貸倒損失等の任意性のないものを除き、寄附金に該当することになる。対価性はあるとしても、それが不均衡な取引(低廉取引)によって負担することになる適正な対価との差額部分についても、それが実質的な贈与であるとみられる場合には、同様に寄附金に該当することになる。
ここでいう対価性とは、相手方からの反対給付を意味しており、取引に伴う相手方からの反対給付が何もない場合(これには反対給付の経済的価値が極端に小さい場合も含まれる)には、対価性のない取引として、自己が支出等するものの全額が寄附金に該当する。また、反対給付があるとしても、その経済的価値が自己の支出等よりも小さい場合には、その差額が寄附金に該当する。
この対価性の有無及び対価の相当性を判断するに当たっては、一般には、取引における一側面のみを切り出して形式的にとらえるのではなく、取引全体を実質的にみて判断すべきであるといえる。その際のポイントをいくつか挙げるとすれば、次のようなものとなる。
① 牽連(けんれん)関係のある取引全体を観察すること
② 実質的観点から相手方の負担や自己に対する便益(反対給付)がないか検討すること
③ 価格設定の合理性について検討すること
以下、それぞれについて解説する。
(2) 牽連関係について
単体取引でみれば、対価性のない、あるいは対価の均衡の取れない不均衡な取引であったとしても、複数の取引全体でみれば、対価の均衡が取れている場合がある。そのような場合には、それらの複数の取引に牽連関係があると認められる限りにおいては、実質的な対価性が肯定されるのであり、寄附金には該当しないと考えられる。
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