《速報解説》
改正相続法の施行に伴い国税通則法基本通達が改正される
税理士 菅野 真美
国税庁は、平成31年3月18日付(HP公表は4月8日)で「「国税通則法基本通達(徴収部関係)」の一部改正について(法令解釈通達)」を公表した。
これは、平成30年(2018年)7月6日に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が成立し、原則として令和元年(2019年)7月1日から施行されるが、それに伴っての改正となる。
以下では新設された通達のうち、2つの項目について解説を行う。
(承継国税額のあん分の割合)
改正前の民法においては、相続財産について遺言により法定相続分以外の割合で相続分を指定することができたが、相続債務については相続分の指定があった場合でも法定相続分で按分されたものとして、債権者は債務者である相続人に対して返済を要求できるだけとされた。
しかし、現実に即した改正により、従来どおり法定相続分に応じて債権者は権利行使できるとしつつ、債権者が共同相続人の1人に対して指定された相続分に応じた債務の承継を認めた場合は、その承継による権利行使もできるとした(民法902の2)。つまり、債権者は2つの選択肢を持てるようになったといえる。
国税通則法においては、民法と異なり、従来から相続人が2人以上あるときは、承継する国税の額は、法定相続分・代襲相続人の相続分・遺言による相続分の指定の規定によりその相続分により按分して計算した額(国通法5②)とされ、例えば、準確定申告の所得税債務を遺言による指定相続分の割合によって相続人が承継することを認めている。
新設された通達によれば、遺言による相続分の指定がない限り、租税債務の承継は法定相続分によるとされた(国基通8-2)。つまり、遺言で相続分が指定されている場合でも、租税債務の承継は指定相続分だけでなく法定相続分によることもできるという意味だが、これは従来からある規定を民法の改正を踏まえて明確化したものと考えられる。
(還付金等の請求権について相続があった場合)
改正前の民法において、相続による財産の承継や相続させる遺言による財産の承継については、対抗要件を備えなくとも第三者に対して相続人が所有者として主張ができた。しかし、これでは取引相手に予期せぬ損害を生じさせることもあるため、改正により法定相続分を超える財産の取得については、対抗要件がなければ第三者に対抗できないとした(民法899の2①)。
また、債権については、法定相続分を超えて承継した相続人が遺言や遺産分割の内容を明らかにして債務者に承継の通知をしたときは、共同相続人全員が通知をしたものとみなして、第三者に対抗できるとした(民法899の2②)。なお、第三者に対抗するためには確定日付を付した通知でなければならない(民法467②)。
この民法の改正を踏まえて通達が新設され、還付金請求権の相続による承継があった場合で、法定相続分を超えて請求権を承継した共同相続人から遺言や遺産分割の内容を明らかにして承継の通知があったときは、その承継は第三者に対抗できるとした(国基通13)。
(了)