《速報解説》
東証、支配株主・支配的な株主と少数株主との間の
利害調整の在り方等について議論を整理
~指摘事例を紹介し、情報開示等の少数株主保護の枠組みを検討~
公認会計士 阿部 光成
Ⅰ はじめに
2020年9月1日、東京証券取引所に設置された従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会は、「支配株主及び実質的な支配力を持つ株主を有する上場会社における少数株主保護の在り方等に関する中間整理」を公表した。
近時、議決権の過半数を有していないものの、実質的な支配力を持つ株主(以下「支配的な株主」という)を有することとなった既上場会社を中心に、現行の上場制度のもとでは少数株主保護が十分に図られていないのではないかと指摘される事例が生じているとのことである。
そこで、支配株主・支配的な株主と少数株主との間の利害調整の在り方などについて議論を行い、今後の検討課題等を中間整理としてまとめたものである。
文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。
Ⅱ 主な内容
上場後に支配株主・支配的な株主を有することとなった場合を中心に、少数株主の正当な利益の保護のための制度整備や運用の改善が少数株主保護として適切に機能していないのではないかと指摘される事例を紹介したうえで、次の少数株主保護の枠組みを検討している。
今後、情報開示及び適用範囲に関しては、実施できるものから段階的に制度・運用の整備を進めることが望まれるとしている。
(1) 情報開示
少数株主や投資者の予測可能性を高め、十分な情報に基づいた投資判断をできるようにするため、上場会社のガバナンスに関する合意や、利益相反やその監督・コントロールの考え方・方針等を含め、情報開示の充実を図る。
(2) 手続
特別委員会に期待される役割も踏まえて、「少数株主にとって不利益でないことに関する意見」の在り方を含め、支配株主が上場子会社の非公開化を目的とした公開買付けを行う局面における少数株主保護の枠組みについて検討する。
(3) ガバナンス
独立社外取締役の選任等のガバナンスについて検討する。
(4) 適用範囲
①支配的な株主の具体的な内容、②支配的な株主を有する上場会社に適用すべき、少数株主保護に関する上場制度の枠組みについて検討する。
(了)