公開日: 2025/10/20
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《速報解説》 会計士協会、「倫理規則」の改正に関する公開草案を公表~サステナビリティ情報の開示と保証の制度化の議論による倫理規則の改正~

筆者: 阿部 光成

《速報解説》

会計士協会、「倫理規則」の改正に関する公開草案を公表

~サステナビリティ情報の開示と保証の制度化の議論による倫理規則の改正~

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ はじめに

2025年10月15日、日本公認会計士協会は、「倫理規則」の改正に関する公開草案を公表し、意見募集を行っている。

【参考】 日本公認会計士協会ホームページ
「倫理規則」の改正に関する公開草案について

これは、サステナビリティ情報の開示と保証の制度化の議論が進められていることを踏まえ、倫理規則を改正するものである。

意見募集期間は2025年12月15日までである。

文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅱ 主な構成

従来の4つのパートに加えて、サステナビリティ保証業務に関する規定を収めた「パート5」を新設する。

セクション5110基本原則、セクション5120概念的枠組み、セクション5390外部の専門家の作業の利用などが規定されている。

日本公認会計士協会の会員を適用対象とするものである。

会員以外の業務実施者が本会の倫理規則を遵守することを想定しているものではない。

 

Ⅲ 保証業務と非保証業務(NAS)の同時提供

会計事務所等又はネットワーク・ファームによるサステナビリティ保証業務の依頼人に対する非保証業務(NAS)の提供に関しては、監査業務の依頼人に対するNASの提供に関するパート4Aの規定と同様の内容である。

 

Ⅳ 報酬依存度と報酬関連情報の開示

R5410.21項で規定されている場合を除いて、会計事務所等は、5年連続してR5410.18項で規定されている状況が継続する場合、5年目の保証意見の表明後にサステナビリティ保証業務の実施者を辞任しなければならない(R5410.20項)。

 

Ⅴ 担当者の長期関与とローテーション

サステナビリティ保証業務の依頼人が社会的影響度の高い事業体(PIE)の場合、R5540.9項からR5540.10a項までの場合を除いて、担当者は、累積して7報告期間(監査業務に関与する場合は、会計期間を含む)を超えて、サステナビリティ保証業務執行責任者などの一定の役割(複数の役割で関与する場合を含む)で関与してはならない(R5540.7項)。

 

Ⅵ 違法行為への対応

セクション5360「違法行為への対応」は、PIEであるかどうかにかかわらず、すべてのサステナビリティ保証業務において、故意もしくは過失又は作為もしくは不作為を問わず、サステナビリティ保証業務の依頼人などの者によって行われる法令違反となる行為(違法行為)に適用される(5360.5 A1項、5360.7 A1項)。

 

Ⅶ バリュー・チェーン構成単位(VCC)に対する独立性

バリュー・チェーン構成単位に対してサステナビリティ保証業務を実施する会計事務所等又は個人に適用される規定を設けている。

 

Ⅷ 適用日等

改正規定は、2027年4月1日から施行する予定である。

各規定によって詳細な適用日が設けられている。

(了)

《速報解説》

会計士協会、「倫理規則」の改正に関する公開草案を公表

~サステナビリティ情報の開示と保証の制度化の議論による倫理規則の改正~

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ はじめに

2025年10月15日、日本公認会計士協会は、「倫理規則」の改正に関する公開草案を公表し、意見募集を行っている。

【参考】 日本公認会計士協会ホームページ
「倫理規則」の改正に関する公開草案について

これは、サステナビリティ情報の開示と保証の制度化の議論が進められていることを踏まえ、倫理規則を改正するものである。

意見募集期間は2025年12月15日までである。

文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅱ 主な構成

従来の4つのパートに加えて、サステナビリティ保証業務に関する規定を収めた「パート5」を新設する。

セクション5110基本原則、セクション5120概念的枠組み、セクション5390外部の専門家の作業の利用などが規定されている。

日本公認会計士協会の会員を適用対象とするものである。

会員以外の業務実施者が本会の倫理規則を遵守することを想定しているものではない。

 

Ⅲ 保証業務と非保証業務(NAS)の同時提供

会計事務所等又はネットワーク・ファームによるサステナビリティ保証業務の依頼人に対する非保証業務(NAS)の提供に関しては、監査業務の依頼人に対するNASの提供に関するパート4Aの規定と同様の内容である。

 

Ⅳ 報酬依存度と報酬関連情報の開示

R5410.21項で規定されている場合を除いて、会計事務所等は、5年連続してR5410.18項で規定されている状況が継続する場合、5年目の保証意見の表明後にサステナビリティ保証業務の実施者を辞任しなければならない(R5410.20項)。

 

Ⅴ 担当者の長期関与とローテーション

サステナビリティ保証業務の依頼人が社会的影響度の高い事業体(PIE)の場合、R5540.9項からR5540.10a項までの場合を除いて、担当者は、累積して7報告期間(監査業務に関与する場合は、会計期間を含む)を超えて、サステナビリティ保証業務執行責任者などの一定の役割(複数の役割で関与する場合を含む)で関与してはならない(R5540.7項)。

 

Ⅵ 違法行為への対応

セクション5360「違法行為への対応」は、PIEであるかどうかにかかわらず、すべてのサステナビリティ保証業務において、故意もしくは過失又は作為もしくは不作為を問わず、サステナビリティ保証業務の依頼人などの者によって行われる法令違反となる行為(違法行為)に適用される(5360.5 A1項、5360.7 A1項)。

 

Ⅶ バリュー・チェーン構成単位(VCC)に対する独立性

バリュー・チェーン構成単位に対してサステナビリティ保証業務を実施する会計事務所等又は個人に適用される規定を設けている。

 

Ⅷ 適用日等

改正規定は、2027年4月1日から施行する予定である。

各規定によって詳細な適用日が設けられている。

(了)

筆者紹介

阿部 光成

(あべ・みつまさ)

公認会計士
中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂第2版〕』(編著、商事法務)がある。

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