《税務必敗法》
【第17回】
「会計ソフト・税務申告ソフトのアップデートを忘れた」
公認会計士・税理士 森 智幸
【事例】
X会計事務所では、インストール型会計ソフトを使用している。
2026年9月、税理士甲宛に、会計ソフト会社Y社からアップデート用CD-ROM入りの封筒が届いた。しかし、甲は多忙のため机上に放置し、事務所内の税務担当者に渡すことを失念した。
そのCD-ROMは、免税事業者などインボイス発行事業者以外からの課税仕入れについて、2026年10月から仕入税額控除割合が7割となることに対応するものだった。
X会計事務所には、会計ソフトや税務申告ソフトのアップデート担当者がおらず、管理表もなかった。そのため、甲以外の税務担当者は、このCD-ROMが来たことを知らなかった。
X会計事務所は記帳代行を行っており、顧問先のA社もその一つだった。A社は学者などに講演や執筆を依頼することが多く、依頼先の多くはインボイス未登録者だった。
甲がCD-ROMを放置したため、税務担当者はY社の会計ソフトを更新せず、2026年10月以降も従来の設定で記帳代行を続けた。
3月決算のA社について、甲は2027年5月、8割控除の設定で作成した帳簿を基に消費税の確定申告書を提出した。このとき、前課税期間と比べ申告額に大きな変動がなかったため、甲は税区分までは確認しなかった。
2027年9月、A社に所轄税務署の税務調査が入った。
税務調査では、2026年10月から控除割合が7割となったにもかかわらず、8割控除していたことを指摘され、消費税の修正申告を行うことになった。
修正額は多額ではなかったが、A社の経理担当者は甲に不信感を抱き、次のように尋ねた。
「2026年10月から7割控除になったことは、当然ご存じでしたよね。申告書を提出する前に確認されなかったのですか?」
そして、最後にこう付け加えた。
「先生、専門家ですよね?」
1 はじめに
本連載は、税務を行う上で「これをやったら失敗する」という必敗法を紹介するものである。今回は「会計ソフト・税務申告ソフトのアップデートを忘れた」である。
会計事務所において、会計ソフトや税務申告ソフト(以下「会計ソフト等」という)は通常業務に欠かせないものである。会計ソフト等は、税制改正や機能改善などに伴い、随時アップデートされる。これはインストール型でもクラウド型でも同様である。
しかしながら、このアップデートを失念すると、現行の税法に対応できなくなり、税務申告上の誤りが生じる可能性がある。
また、2026年9月には、国税庁の国税システムが更改された。これに伴い、一部の申告書や申請・届出書、法定調書の様式が新しくなった。
このように、税制改正への対応だけでなく、申告書等の様式変更への対応という点からも、会計ソフト等を最新の状態に保つことは重要である。
そこで、今回は会計ソフト等のアップデートの注意点と対策について説明する。
なお、本稿は私見であることにご留意いただきたい。
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