公開日: 2026/09/03 (掲載号:No.684)
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《税務必敗法》 【第15回】「預かった資料の管理をしていなかった」

筆者: 森 智幸

《税務必敗法》

【第15回】

「預かった資料の管理をしていなかった」

 

公認会計士・税理士 森 智幸

 

【事例】

クリニックを営むAは個人事業者である。税務についてはX会計事務所と顧問契約を締結しており、記帳代行と税務申告書の作成を依頼している。

Aのクリニックでは、毎月、記帳のための資料は紙の状態で一式をX会計事務所に郵送している。なお、現在使用中の預金通帳はコピーを送付し、繰越済みの通帳は原本を送付していた。しかし、X会計事務所では預り証は発行していなかった。

ある月、Aから「α銀行の通帳が返ってきていないが、そちらに残っていないか? β銀行から運転資金の融資を受けようと思っているが、保有している口座の通帳すべての提示を求められているので。」という電話がかかってきた。

そこで、担当税理士の甲が、記帳代行担当の職員乙に伝えて調べてもらったが、手元にα銀行の通帳はなかった。そのため、甲は「調べてみましたが、こちらにはありませんでした。資料はすべて返却したため、そちらにあるはずですが。」と回答した。

しかし、約3週間後、乙が自宅で掃除をしていた時、机に置いた書類の中からα銀行の通帳があることを発見した。

X会計事務所では在宅勤務が可能であるが、乙は記帳代行に使用する資料の一部を自宅に持ち帰っていたのだった。

翌日、甲はAに電話をかけて「α銀行の通帳の件ですが、こちらにありました。」と謝罪した。

すると、Aは「こちらは診療の合間に、事務員全員でクリニックの中の書類を全部出して探したんだぞ。その時間はどうしてくれるんだ。β銀行からの融資も遅れてしまっている。資金繰りも大変なんだよ!」と激高した。

後日、X会計事務所の所長と甲の2名がAのクリニックを訪れ謝罪したが、「預けた資料の管理はどうなっているのか。今後の契約も考え直さないといけないな。」というクレームを受けた。

 

1 はじめに

本連載は、税務を行う上で「これをやったら失敗する」という必敗法を紹介するものである。今回は「預かった資料の管理をしていなかった」である。

近年はデジタル化が進んでいるが、記帳代行を行っている会計事務所においては、記帳のための資料を顧問先から紙で送ってもらっているところがまだ多いと推測される。また、相続税においても個人からの資料は紙で預かることが多いと推測される。

このように顧問先から紙の資料を預かったときは、当然のことながら確実に返却する必要がある。しかしながら、【事例】のように、預かった資料の管理を行っていないと返却したつもりが返却されていないといったことも起こりうる。このようなことが起こると紛議にもなりかねない。

そこで、今回は会計事務所が紙の資料を預かった場合の注意点や対策を紹介する。

なお、本稿は私見であることにご留意いただきたい。

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《税務必敗法》

【第15回】

「預かった資料の管理をしていなかった」

 

公認会計士・税理士 森 智幸

 

【事例】

クリニックを営むAは個人事業者である。税務についてはX会計事務所と顧問契約を締結しており、記帳代行と税務申告書の作成を依頼している。

Aのクリニックでは、毎月、記帳のための資料は紙の状態で一式をX会計事務所に郵送している。なお、現在使用中の預金通帳はコピーを送付し、繰越済みの通帳は原本を送付していた。しかし、X会計事務所では預り証は発行していなかった。

ある月、Aから「α銀行の通帳が返ってきていないが、そちらに残っていないか? β銀行から運転資金の融資を受けようと思っているが、保有している口座の通帳すべての提示を求められているので。」という電話がかかってきた。

そこで、担当税理士の甲が、記帳代行担当の職員乙に伝えて調べてもらったが、手元にα銀行の通帳はなかった。そのため、甲は「調べてみましたが、こちらにはありませんでした。資料はすべて返却したため、そちらにあるはずですが。」と回答した。

しかし、約3週間後、乙が自宅で掃除をしていた時、机に置いた書類の中からα銀行の通帳があることを発見した。

X会計事務所では在宅勤務が可能であるが、乙は記帳代行に使用する資料の一部を自宅に持ち帰っていたのだった。

翌日、甲はAに電話をかけて「α銀行の通帳の件ですが、こちらにありました。」と謝罪した。

すると、Aは「こちらは診療の合間に、事務員全員でクリニックの中の書類を全部出して探したんだぞ。その時間はどうしてくれるんだ。β銀行からの融資も遅れてしまっている。資金繰りも大変なんだよ!」と激高した。

後日、X会計事務所の所長と甲の2名がAのクリニックを訪れ謝罪したが、「預けた資料の管理はどうなっているのか。今後の契約も考え直さないといけないな。」というクレームを受けた。

 

1 はじめに

本連載は、税務を行う上で「これをやったら失敗する」という必敗法を紹介するものである。今回は「預かった資料の管理をしていなかった」である。

近年はデジタル化が進んでいるが、記帳代行を行っている会計事務所においては、記帳のための資料を顧問先から紙で送ってもらっているところがまだ多いと推測される。また、相続税においても個人からの資料は紙で預かることが多いと推測される。

このように顧問先から紙の資料を預かったときは、当然のことながら確実に返却する必要がある。しかしながら、【事例】のように、預かった資料の管理を行っていないと返却したつもりが返却されていないといったことも起こりうる。このようなことが起こると紛議にもなりかねない。

そこで、今回は会計事務所が紙の資料を預かった場合の注意点や対策を紹介する。

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連載目次

筆者紹介

森 智幸

(もり・ともゆき)

公認会計士・税理士

東京都出身。慶應義塾大学商学部卒。神戸の会計事務所を経て、大阪・京都の監査法人に勤務し、京都の監査法人では代表社員を務める。2019年9月に独立し、森 智幸公認会計士・税理士事務所を設立。独立後もPwCあらた有限責任監査法人(現PwC Japan有限責任監査法人)にて、内部監査などガバナンス領域のアドバイザリー業務を担当(~2025年6月)。現在は、株式会社および公益法人の会計・税務、ガバナンス強化支援、内部監査、中小企業の経営支援に従事。近畿税理士会業務対策部部員、日本公認会計士協会租税調査会・租税政策検討専門委員会専門委員、一般財団法人会計教育研修機構 実務補習協議会税務分科会委員、近畿実務補習所専門委員。

【主な著作】
・『税務の異常点の表れ方と見つけ方』(中央経済社2024年)
・『独立する公認会計士のための税理士実務100の心得』(中央経済社2023年)
・『現場で使える「会計上の見積り」の実務』(共著、清文社2022年)
・『「社会福祉充実計画」の作成ガイド』(共著、中央経済社2017年)

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