IFRSの適用と会計システムへの影響
【第5回】
(最終回)
「連結会計システムへの影響」
公認会計士 坂尾 栄治
連結決算をめぐる会計システム
連結会計システムとIFRSについて記述する前に、まず連結決算とその位置づけについて簡単に記しておきたいと思います。
「連結」とは“つなぎ合わせること”です。ビジネスと離れた世界で「連結」と聞くと、列車の連結を思い浮かべるのではないでしょうか。ビジネスの世界では通常「連結」というと、会社と会社をつなぎ合わせることとなります。そして会社と会社の財務諸表をつなぎ合わせること「連結会計」といい、つなぎ合わせた会社と会社の財務諸表を「連結財務諸表」といいます。
連結財務諸表は、親会社が自社の財務諸表に子会社や関連会社の財務諸表を連結して作成したものです。ここで注意すべきは、複数の会社の財務諸表をまとめて、あたかもそれらが1つの会社の財務諸表であるかのように作成することにあります。
1991年に連結財務諸表を有価証券報告書の本体に組み入れることになるまで、連結財務諸表を作成することはほとんどなく、また2000年3月決算から単体主体から連結主体へ変更されるまで、連結が脚光を浴びることはありませんでした。また、四半期の決算のときにしか作成が求められていない連結会計と日々記帳が行われる単体会計の関係から、会計プロセスは単体会計を意識したものとなっており、連結会計を意識したものにはなっていない場合が多いのが現状です。
さらに、連結決算の処理のうち、投資と資本の消去や固定資産の未実現利益の消去などは、機械的に消去できない場合が非常に多い処理です。そのため、連結決算での連結修正仕訳は、機械的にできない部分が依然として多く存在しています。したがって、その連結決算を行う連結会計システムも、ユーザの手作業ありきで作られているものが多いように見受けられます。
連結会計システムは、乱暴にいえば子会社の財務諸表を整理して格納し、機械的に処理できるグループ間の取引や債権債務の消去といった一部の処理は自動で行うが、それ以外の処理は半自動かあるいは完全な手仕訳で連結財務諸表を作成する仕組みであるといっても決して言い過ぎではないと筆者は考えています。
連結会計システムのIFRSへの対応は
上述のように、連結会計システムが多くの仕訳や処理をユーザの手作業に依存していることから、IFRSと日本基準の会計処理の差異については、各論レベルでは修正仕訳の内容が変わるだけで、システム的な対応は必要ないケースが多いと思われます。
例えば、のれんの償却はIFRSと日本基準の差異が大きな処理の1つですが、IFRSを適用する場合にはのれんの減損テストの結果減損処理が必要となったときに減損の仕訳を投入すれば済む話で、日本基準等に合わせて作られた連結会計システムでも問題なく対応できます。
このようなことから、連結会計システムとIFRSの関係は、もっと総論的、大局的な視点で考えることが重要になります。
それでは大局な視点で見ていきましょう。
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