公開日: 2015/08/20 (掲載号:No.132)
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多様化する『生前贈与』の選択肢~大幅拡充の平成27年度改正を受け、どういう視点で検討すべきか~

筆者: 島添 浩

※この記事は会員以外の方もご覧いただけます。

多様化する『生前贈与』の選択肢

~大幅拡充の平成27年度改正を受け、どういう視点で検討すべきか~

 

アースタックス税理士法人
税理士 島添 浩

 

平成27年1月1日以後に生じる相続について、相続税の基礎控除額の引下げや最高税率の引上げなど大増税となる改正が行われ、今後は相続税の納税義務者となる人の数が増加し、さらに相続税の納付税額も従来よりも多額となることが想定される。

【相続税の基礎控除】

(改正前)5,000万円+法定相続人の数×1,000万円


(改正後)3,000万円+法定相続人の数×600万円

【相続税の最高税率】

(改正前)50% → (改正後)55%

これら相続税の増税に対し、贈与税については納税者有利となる改正が行われ、生前に贈与した場合の非課税規定である住宅取得等資金の贈与や教育資金の贈与につき適用期限の延長、非課税枠の拡大が行われることとなった。

これらの規定以外にも、暦年贈与につき直系尊属からの贈与における特例税率の創設や相続時精算課税制度・事業承継税制の拡充が行われ、さらに平成27年4月1日からは、結婚・子育て資金を贈与した場合の非課税規定が創設されている。

したがって、従来からある贈与税の配偶者控除も含めると、生前に贈与した場合に非課税となる規定が多数存在することとなり、どの規定を選択するのかという観点から、慎重に対応しなければならない。

このように、相続税の増税規定と贈与税の非課税規定の改正がなされたことから、今後は、相続税の節税対策として各種の生前贈与規定を活用する生前贈与対策を検討することが有効的な手段となる。ただし、規定によっては、贈与者や受贈者に年齢制限があったり、贈与後の用途に制限があったりすることから、それぞれの規定の適用要件等を明確に把握した上で、顧客のニーズに合った規定を選択し、生前贈与対策を実施する必要がある。

以下では各規定の概要をまとめることとしたい。

住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税規定(概要)

【贈与者】
直系尊属(父母、祖父母)からの贈与であること

【受贈者】
贈与を受けた年の所得税の合計所得金額が2,000万円以下であり、その年の1月1日において20歳以上であること

【用途及び取得時期】
自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得(親族等からの取得を除く)又は増改築等の対価に充てるための金銭の贈与で、贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住すること

【非課税限度額】
その住宅等に係る契約の締結日や住宅用の家屋の種類によって異なり、消費税率が10%(平成29年4月1日施行)の場合には、さらに限度額が増加することとなる。
① 建物等の消費税率が10%以外の場合
住宅の締結日 省エネ住宅等 その他の住宅 平成27年12月31日まで 1,500万円 1,000万円 平成28年1月1日から 平成29年 9月30日まで 1,200万円  700万円 平成29年10月1日から 平成30年 9月30日まで 1,000万円  500万円 平成30年10月1日から 平成31年 6月30日まで 800万円  300万円
② 建物等の消費税率が10%の場合
 住宅の締結日 省エネ住宅等 その他の住宅 平成28年10月1日から 平成29年9月30日まで 3,000万円 2,500万円 平成29年10月1日から 平成30年9月30日まで 1,500万円 1,000万円 平成30年10月1日から 平成31年6月30日まで 1,200万円  700万円

教育資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税規定(概要)

【贈与者】
直系尊属(父母、祖父母)からの贈与であること

【受贈者】
受贈者の年齢は、30歳未満であること(30歳までにその資金等を使いきれないと贈与税が課税される)

【用途】
教育資金に充当することとし、具体的には、以下のようなものが該当する。

① 学校等に対して直接支払われるものの具体例
入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学(園)試験の検定料、学用品の購入費や修学旅行費や学校給食費など

② 学校等以外に対して直接支払われるものの具体例(500万円限度)
教育(学習塾、そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料、スポ-ツ(水泳、野球など)・文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)、その他教養の向上のための活動に係る指導への対価など

【非課税限度額】
1,500万円(学校等以外については500万円限度)

【手続】
金融機関等との一定の契約に基づき、受贈者の直系尊属から信託受益権を付与された場合や書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合で、金融機関等の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となる。

結婚・子育て資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税規定(概要)

【贈与者】
直系尊属(父母、祖父母)からの贈与であること

【受贈者】
受贈者の年齢は、20歳以上50歳未満であること(50歳までにその資金等を使いきれないと贈与税が課税される)

【用途】
結婚資金及び子育て資金に充当することとし、具体的には、以下のようなものが該当する。

① 結婚資金の具体例(300万円限度)
挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用、家賃、敷金等の新居費用、転居費用など

② 子育て資金(妊娠、出産及び育児費用)の具体例
不妊治療・妊婦健診に要する費用、分べん費等・産後ケアに要する費用、子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)など

【手続】
金融機関等との一定の契約に基づき、受贈者の直系尊属から信託受益権を付与された場合や書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合で、金融機関等の営業所等を経由して結婚・子育て資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となる。

【非課税限度額】
1,000万円限度(結婚費用については300万円限度)

【留意事項】
契約期間中に贈与者が死亡した場合には、死亡日における非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額を、贈与者から相続等により取得したこととされる。

直系尊属からの贈与における贈与税の特例税率(概要)

【贈与者】
直系尊属(父母、祖父母)からの贈与であること

【受贈者】
受贈者の年齢は、20歳以上であること

【税額計算】
(贈与額-110万円)×特例税率

(※) 上記算式は、その年の贈与が直系尊属からの贈与のみである場合の計算式であり、その他の贈与財産がある場合には、別途計算することとなる。

(特例贈与財産用の速算表)
[基礎控除後の課税価格×税率-控除額=贈与税額]
 基礎控除後の 課税価格 特例税率 控除額 200万円以下 10% ― 400万円以下 15% 10万円 600万円以下 20% 30万円 1,000万円以下 30% 90万円 1,500万円以下 40% 190万円 3,000万円以下 45% 265万円 4,500万円以下 50% 415万円 4,500万円超 55% 640万円

相続時精算課税制度(概要)

【制度の概要】
この制度は、贈与時に贈与財産に対する贈与税を納付し、その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税を行うものである。

【贈与者】
贈与した年の1月1日において60歳以上の親又は祖父母からの贈与であること(改正前:65歳以上の父母)

【受贈者】
贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の子又は孫であること(改正前:20歳以上の子)

【適用対象財産等】
贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はなく、その贈与者からの贈与(適用後)をすべてこの制度により取り扱う。

【税額計算】
① 贈与税額の計算
相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円であり、前年以前に特別控除額を控除している場合は、その残額が限度額)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて計算する。
② 相続税額の計算
相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して計算する。

【住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度】
相続時精算課税制度を適用する場合において、住宅取得等資金の贈与を行うときは、贈与者(父母、祖父母)の年齢制限がなくなることに留意する。なお、この住宅取得等資金の贈与につきこの制度を適用する場合であっても、上述した「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税規定」の適用を受けることができる(重複適用可)。

【留意点】
この制度を適用する場合には、最初に贈与を受けた年の翌年3月15日までに、適用を受ける旨の届出書及び贈与税申告書を提出しなければならない。また、この制度を適用した場合には、その後この制度をやめることはできないのであるから留意する(この制度を適用した贈与者からの贈与に限定)。

非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度(概要)

【制度の概要】
後継者である受贈者(「経営承継受贈者」という)が、贈与により、経済産業大臣の認定を受ける一定の非上場会社の株式等を先代経営者である贈与者から全部又は一定数以上取得し、その会社を経営していく場合には、その経営承継受贈者が納付すべき贈与税のうち、その非上場株式等(一定の部分に限る)に対応する贈与税の納税が猶予されることとなる。

【贈与者:先代経営者】

① 贈与前のいずれかの日において会社の代表権を有していたこと

② 贈与時において会社の代表権を有していないこと(改正前:役員でないこと)

③ 贈与直前において、先代経営者及び先代経営者と特別の関係がある者(先代経営者の親族など)で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、経営承継受贈者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと

【受贈者:経営承継受贈者】

① 贈与の時において、代表権を有していること(改正前:先代経営者の親族である)

② 贈与の時において、20歳以上であること

③ 贈与の時において、役員等に就任して3年以上経過していること

④ 受贈者及び受贈者と特別の関係がある者(受贈者の親族など)で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、これらの者の中で最も多くの議決権数を保有することとなること

【納税猶予額】
後継者の贈与税額のうち議決権株式等(贈与後で発行済議決権株式等の3分の2に達するまで)に対応する贈与税の納税を猶予する。

【納税猶予額の免除】
先代経営者が死亡した場合等には、その納税猶予額が免除されることとなる。

贈与税の配偶者控除(概要)

【特例の概要】
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、最高2,000万円まで控除できる。なお、この規定は、同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができない。

【贈与者・受贈者】
婚姻期間が20年を過ぎた後に夫婦間で贈与が行われたこと

【用途及び取得時期】
国内の居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭であり、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

【限度額】
最高2,000万円

(※) 贈与税の計算
課税価格=贈与額-110万円-配偶者控除

上記のように、一言で「生前贈与対策」といっても様々な規定が存在し、どの規定を選択するのか、またはどの規定を組み合わせて適用するのかといった観点から多種多様の生前贈与対策が存在する。適用する規定によってはその対策の実施時期が重要となる場合もあるので、生前贈与対策を検討する際に注意が必要である。

また近年は、税制改正が頻繁に行われており、従来の生前贈与対策では節税効果を高めることができなくなる可能性もあることから、相続税や贈与税の改正はもちろん、他の税目の税制改正も確認した上で対策を講じなければならない。

具体的には、平成27年7月1日から施行された国外転出時課税制度や平成28年より施行されるジュニアNISA制度についても、生前贈与を前提とした規定が含まれていることに留意する必要がある。

(了)

-お知らせ-

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『生前贈与対策』はこう使う

~平成27年度税制改正にともなう4つの活用スキーム~

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9月4日(火)開催のお申込み受付中です!

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-セミナー概要-

子や孫への生前の資産移転を促進する税制上の特例措置が、これまでになく充実しているのが、まさに今現在。
したがって、今後は節税対策として、これまで以上に生前の相続税対策(生前贈与対策)を行うことが有効的な手段です。

生前贈与対策には、通常の暦年贈与を活用するスキーム以外にも、様々なものを活用したスキームなどがあります。
しかし、対策の選択肢が多くなればなるほど、その判断によっては有効な生前贈与を実行できないというリスクを生じることも考えられます。

このように多様化している生前贈与対策を有効的に活用し節税効果を高めるためには、それぞれのスキームの特徴を把握し、顧客のニーズにあったスキームを選択して生前贈与対策を行う必要があります。

そこで本講座では、相続税・贈与税における平成27年度税制改正における関連項目の解説及び有効性を検証したうえで、それらを既存の生前贈与対策と合わせて、どのような考え方でスキームを構築していくべきかを解説します。

また、今後の対策に影響するジュニアNISA制度や非居住者に対する有価証券等の贈与(国外転出時課税への対応)についても確認します。

講師は相続・事業承継関係のセミナー実績豊富な、税理士・CFP®の島添浩氏です。

■ 開催日時: 平成27年9月4日(金)14:00~17:00
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平成27年1月1日以後に生じる相続について、相続税の基礎控除額の引下げや最高税率の引上げなど大増税となる改正が行われ、今後は相続税の納税義務者となる人の数が増加し、さらに相続税の納付税額も従来よりも多額となることが想定される。

【相続税の基礎控除】

(改正前)5,000万円+法定相続人の数×1,000万円


(改正後)3,000万円+法定相続人の数×600万円

【相続税の最高税率】

(改正前)50% → (改正後)55%

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したがって、従来からある贈与税の配偶者控除も含めると、生前に贈与した場合に非課税となる規定が多数存在することとなり、どの規定を選択するのかという観点から、慎重に対応しなければならない。

このように、相続税の増税規定と贈与税の非課税規定の改正がなされたことから、今後は、相続税の節税対策として各種の生前贈与規定を活用する生前贈与対策を検討することが有効的な手段となる。ただし、規定によっては、贈与者や受贈者に年齢制限があったり、贈与後の用途に制限があったりすることから、それぞれの規定の適用要件等を明確に把握した上で、顧客のニーズに合った規定を選択し、生前贈与対策を実施する必要がある。

以下では各規定の概要をまとめることとしたい。

住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税規定(概要)

【贈与者】
直系尊属(父母、祖父母)からの贈与であること

【受贈者】
贈与を受けた年の所得税の合計所得金額が2,000万円以下であり、その年の1月1日において20歳以上であること

【用途及び取得時期】
自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得(親族等からの取得を除く)又は増改築等の対価に充てるための金銭の贈与で、贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住すること

【非課税限度額】
その住宅等に係る契約の締結日や住宅用の家屋の種類によって異なり、消費税率が10%(平成29年4月1日施行)の場合には、さらに限度額が増加することとなる。
① 建物等の消費税率が10%以外の場合
住宅の締結日 省エネ住宅等 その他の住宅 平成27年12月31日まで 1,500万円 1,000万円 平成28年1月1日から 平成29年 9月30日まで 1,200万円  700万円 平成29年10月1日から 平成30年 9月30日まで 1,000万円  500万円 平成30年10月1日から 平成31年 6月30日まで 800万円  300万円
② 建物等の消費税率が10%の場合
 住宅の締結日 省エネ住宅等 その他の住宅 平成28年10月1日から 平成29年9月30日まで 3,000万円 2,500万円 平成29年10月1日から 平成30年9月30日まで 1,500万円 1,000万円 平成30年10月1日から 平成31年6月30日まで 1,200万円  700万円

教育資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税規定(概要)

【贈与者】
直系尊属(父母、祖父母)からの贈与であること

【受贈者】
受贈者の年齢は、30歳未満であること(30歳までにその資金等を使いきれないと贈与税が課税される)

【用途】
教育資金に充当することとし、具体的には、以下のようなものが該当する。

① 学校等に対して直接支払われるものの具体例
入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学(園)試験の検定料、学用品の購入費や修学旅行費や学校給食費など

② 学校等以外に対して直接支払われるものの具体例(500万円限度)
教育(学習塾、そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料、スポ-ツ(水泳、野球など)・文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)、その他教養の向上のための活動に係る指導への対価など

【非課税限度額】
1,500万円(学校等以外については500万円限度)

【手続】
金融機関等との一定の契約に基づき、受贈者の直系尊属から信託受益権を付与された場合や書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合で、金融機関等の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となる。

結婚・子育て資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税規定(概要)

【贈与者】
直系尊属(父母、祖父母)からの贈与であること

【受贈者】
受贈者の年齢は、20歳以上50歳未満であること(50歳までにその資金等を使いきれないと贈与税が課税される)

【用途】
結婚資金及び子育て資金に充当することとし、具体的には、以下のようなものが該当する。

① 結婚資金の具体例(300万円限度)
挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用、家賃、敷金等の新居費用、転居費用など

② 子育て資金(妊娠、出産及び育児費用)の具体例
不妊治療・妊婦健診に要する費用、分べん費等・産後ケアに要する費用、子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)など

【手続】
金融機関等との一定の契約に基づき、受贈者の直系尊属から信託受益権を付与された場合や書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合で、金融機関等の営業所等を経由して結婚・子育て資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となる。

【非課税限度額】
1,000万円限度(結婚費用については300万円限度)

【留意事項】
契約期間中に贈与者が死亡した場合には、死亡日における非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額を、贈与者から相続等により取得したこととされる。

直系尊属からの贈与における贈与税の特例税率(概要)

【贈与者】
直系尊属(父母、祖父母)からの贈与であること

【受贈者】
受贈者の年齢は、20歳以上であること

【税額計算】
(贈与額-110万円)×特例税率

(※) 上記算式は、その年の贈与が直系尊属からの贈与のみである場合の計算式であり、その他の贈与財産がある場合には、別途計算することとなる。

(特例贈与財産用の速算表)
[基礎控除後の課税価格×税率-控除額=贈与税額]
 基礎控除後の 課税価格 特例税率 控除額 200万円以下 10% ― 400万円以下 15% 10万円 600万円以下 20% 30万円 1,000万円以下 30% 90万円 1,500万円以下 40% 190万円 3,000万円以下 45% 265万円 4,500万円以下 50% 415万円 4,500万円超 55% 640万円

相続時精算課税制度(概要)

【制度の概要】
この制度は、贈与時に贈与財産に対する贈与税を納付し、その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税を行うものである。

【贈与者】
贈与した年の1月1日において60歳以上の親又は祖父母からの贈与であること(改正前:65歳以上の父母)

【受贈者】
贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の子又は孫であること(改正前:20歳以上の子)

【適用対象財産等】
贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はなく、その贈与者からの贈与(適用後)をすべてこの制度により取り扱う。

【税額計算】
① 贈与税額の計算
相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円であり、前年以前に特別控除額を控除している場合は、その残額が限度額)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて計算する。
② 相続税額の計算
相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して計算する。

【住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度】
相続時精算課税制度を適用する場合において、住宅取得等資金の贈与を行うときは、贈与者(父母、祖父母)の年齢制限がなくなることに留意する。なお、この住宅取得等資金の贈与につきこの制度を適用する場合であっても、上述した「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税規定」の適用を受けることができる(重複適用可)。

【留意点】
この制度を適用する場合には、最初に贈与を受けた年の翌年3月15日までに、適用を受ける旨の届出書及び贈与税申告書を提出しなければならない。また、この制度を適用した場合には、その後この制度をやめることはできないのであるから留意する(この制度を適用した贈与者からの贈与に限定)。

非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度(概要)

【制度の概要】
後継者である受贈者(「経営承継受贈者」という)が、贈与により、経済産業大臣の認定を受ける一定の非上場会社の株式等を先代経営者である贈与者から全部又は一定数以上取得し、その会社を経営していく場合には、その経営承継受贈者が納付すべき贈与税のうち、その非上場株式等(一定の部分に限る)に対応する贈与税の納税が猶予されることとなる。

【贈与者:先代経営者】

① 贈与前のいずれかの日において会社の代表権を有していたこと

② 贈与時において会社の代表権を有していないこと(改正前:役員でないこと)

③ 贈与直前において、先代経営者及び先代経営者と特別の関係がある者(先代経営者の親族など)で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、経営承継受贈者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと

【受贈者:経営承継受贈者】

① 贈与の時において、代表権を有していること(改正前:先代経営者の親族である)

② 贈与の時において、20歳以上であること

③ 贈与の時において、役員等に就任して3年以上経過していること

④ 受贈者及び受贈者と特別の関係がある者(受贈者の親族など)で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、これらの者の中で最も多くの議決権数を保有することとなること

【納税猶予額】
後継者の贈与税額のうち議決権株式等(贈与後で発行済議決権株式等の3分の2に達するまで)に対応する贈与税の納税を猶予する。

【納税猶予額の免除】
先代経営者が死亡した場合等には、その納税猶予額が免除されることとなる。

贈与税の配偶者控除(概要)

【特例の概要】
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、最高2,000万円まで控除できる。なお、この規定は、同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができない。

【贈与者・受贈者】
婚姻期間が20年を過ぎた後に夫婦間で贈与が行われたこと

【用途及び取得時期】
国内の居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭であり、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

【限度額】
最高2,000万円

(※) 贈与税の計算
課税価格=贈与額-110万円-配偶者控除

上記のように、一言で「生前贈与対策」といっても様々な規定が存在し、どの規定を選択するのか、またはどの規定を組み合わせて適用するのかといった観点から多種多様の生前贈与対策が存在する。適用する規定によってはその対策の実施時期が重要となる場合もあるので、生前贈与対策を検討する際に注意が必要である。

また近年は、税制改正が頻繁に行われており、従来の生前贈与対策では節税効果を高めることができなくなる可能性もあることから、相続税や贈与税の改正はもちろん、他の税目の税制改正も確認した上で対策を講じなければならない。

具体的には、平成27年7月1日から施行された国外転出時課税制度や平成28年より施行されるジュニアNISA制度についても、生前贈与を前提とした規定が含まれていることに留意する必要がある。

(了)

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-セミナー概要-

子や孫への生前の資産移転を促進する税制上の特例措置が、これまでになく充実しているのが、まさに今現在。
したがって、今後は節税対策として、これまで以上に生前の相続税対策(生前贈与対策)を行うことが有効的な手段です。

生前贈与対策には、通常の暦年贈与を活用するスキーム以外にも、様々なものを活用したスキームなどがあります。
しかし、対策の選択肢が多くなればなるほど、その判断によっては有効な生前贈与を実行できないというリスクを生じることも考えられます。

このように多様化している生前贈与対策を有効的に活用し節税効果を高めるためには、それぞれのスキームの特徴を把握し、顧客のニーズにあったスキームを選択して生前贈与対策を行う必要があります。

そこで本講座では、相続税・贈与税における平成27年度税制改正における関連項目の解説及び有効性を検証したうえで、それらを既存の生前贈与対策と合わせて、どのような考え方でスキームを構築していくべきかを解説します。

また、今後の対策に影響するジュニアNISA制度や非居住者に対する有価証券等の贈与(国外転出時課税への対応)についても確認します。

講師は相続・事業承継関係のセミナー実績豊富な、税理士・CFP®の島添浩氏です。

■ 開催日時: 平成27年9月4日(金)14:00~17:00
■ 開催場所: 資格の学校TAC渋谷校
■ お申込受付: 9月2日(水) 17:00まで
(※銀行振込をご利用の場合のお振込期限も 9月2日となります。)

セミナー内容の詳細やお申込方法など、くわしくは下記からご覧ください。

筆者紹介

島添 浩

(しまぞえ・ひろし)

アースタックス税理士法人 代表社員
http://www.earth-tax.com/
税理士・CFP

1991年中央大学商学部会計学科卒業。大手生命保険会社、会計事務所での勤務を経て2000年に税理士登録(島添税務会計事務所設立)。事務所の規模を拡大し、2006年アースタックス税理士法人を設立し代表社員に就任。

現在、一般企業の税務顧問業の他、企業再編や相続事業承継対策など経営コンサルティング業務にも従事し、豊富な実務経験を活かして税法実務セミナーの講演(最近では「消費税法95%ルールの見直しで変わる消費税実務」、「消費税率変更に伴う実務対応ポイント」など)や執筆も数多くこなしている。

また、1998年より資格の学校TACにて税理士講座、税法実務講座、FP講座にて税法の講師も務めており、実務に役立つ実践的な講義を行っている。2024年6月15日、逝去。

【著書・論文】
・『みんなが知りたかった! 老後のお金』監修(TAC出版)
・『税率変更後に留意すべき消費税の実務』(税務研究会)
・『Q&A 改正消費税の経過措置と転嫁・価格表示の実務』共著(清文社)
・『イギリスの住宅・不動産税制』共著(財団法人日本住宅総合センター)
・『所得税入門講義』(TAC)
・『やるぞ!年収300万円からの確定申告』(株式会社リオ)
・「所得税・住民税の税率変更」『税経セミナー』(2007年3月号)
・「消費税法における仕入税額控除の適用要件について」『国士舘法研論集』(第3号)
など

関連書籍

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公益財団法人 納税協会連合会 編集部 編

相続税実務の“鉄則”に従ってはいけないケースと留意点

中島孝一 著 西野道之助 著 飯田昭雄 著 佐々木京子 著 高野雅之 著 若山寿裕 著 佐久間美亜 著

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税理士・CFP® 徳田敏彦 著

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【電子書籍版】相続税・贈与税取扱いの手引

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生前相続対策[頻出]ケーススタディ

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