〔検証〕
適時開示からみた企業実態
【事例2】
セーラー万年筆株式会社
「代表取締役および役員の異動に関するお知らせ」
(2015.12.12)
事業創造大学院大学 准教授
鈴木 広樹
1 今回の適時開示
今回取り上げる適時開示は、セーラー万年筆株式会社(以下「セーラー万年筆」という)が平成27年12月12日に開示した「代表取締役および役員の異動に関するお知らせ」である。代表取締役の中島義雄氏が取締役に、取締役の比佐泰氏が代表取締役になるという代表取締役の異動があったため、それに関して開示している。
代表取締役又は代表執行役の異動は決定事実の一つとされており、それに関しては適時開示が必要とされる。なお、単なる取締役(いわゆる「平取締役」)や執行役の異動に関しては、特に適時開示が必要とされていない(ただし、重要性の高い社内体制の変更を伴うものであるような場合は、必要となることもある)。
2 平凡な開示かと思ったら
この開示自体は、何の変哲も無い極めて平凡な開示といえるものだった。「異動の理由」には、「経営体制の刷新を図り、業績の一層の伸展を期するものであります。」と記載されているだけであり、特に社会の注目を集める要素は含まれていなかった(「異動の理由」には、通常、「一身上の都合」や「世代交代」といった内容がごく簡潔に記載されるだけである)。
しかし、この開示の後、平成27年12月14日、代表取締役だった中島氏が、東京地方裁判所に対して、代表取締役解職の無効の申立を行ったのである。中島氏は、納得したうえで代表取締役を退任していたのではなく、取締役会によって解職されていたことが明らかになったのである。
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