「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例51(法人税)】 「「中小法人等」の範囲を誤認したため、欠損金の繰戻しによる還付請求を行わなかった事例」
平成X4年3月期の法人税につき、運送業を営む依頼者(資本金1,000万円)より「欠損金の繰戻しによる還付請求」の適用を依頼されたが、税理士は、依頼者が適用対象法人に該当しないものと誤認し、「欠損金の繰戻しによる還付請求書」の提出を行わず、発生した欠損金を翌期に繰り越す処理を行った。
しかし、実際には、依頼者はこの制度の適用が可能な法人であったこと、さらに、平成X8年5月から休眠状態となり、翌期に繰り越した欠損金は今後も損金に算入される見込がないことから、還付不能額につき損害が発生したとして損害賠償請求を受けた。
増額更正時における税額控除額の連動措置と手続の簡素化
平成29年度税制改正前、外国税額控除等については、増額更正によって税額控除額が増加しても、実際に控除できる金額は自動的に増加しない規定ぶりであったため、納税者としては別途、税額控除額を増加させる旨の更正の請求を行う必要があった。
既報の通り、今年度の改正では、納税環境整備の一貫として、自動的に税額控除額が増加する措置が講じられ、手続が簡素化された。
理由付記の不備をめぐる事例研究 【第25回】「受贈益」~新株引受権に係る受贈益を計上しなければならないと判断した理由は?~
今回は、青色申告法人X社に対して行われた「新株引受権に係る受贈益計上漏れ」に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた仙台地裁昭和53年3月27日判決(訟月24巻7号1481頁。以下「本判決」という)を素材とする。
役員給与等に係る平成29年度税制改正 【第4回】「業績連動給与に関する改正」
平成28年度税制改正下においては、「利益の状況を示す指標」に基づき支給額が算定される給与について「利益連動給与」と定義のうえ、損金算入の要件が定められていたが、平成29年度税制改正においては、指標の選択肢が拡大されたこと(下記2(3)参照)に伴い、「業績連動給与」と名称変更された。
役員給与等に係る平成29年度税制改正 【第3回】「特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)に関する改正」
特定譲渡制限付株式は、平成28年度税制改正により導入された、事前確定届出給与として損金算入が認められる株式報酬(法人税法34条1項2号・5項)をいう。
その主要な要件は以下のとおりである。
① 一定期間の譲渡制限が設けられている株式であること。
② 役務の提供期間に応じて法人により無償取得される旨定められていること。
③ 役務提供の対価として役員等に生ずる債権の給付と引換えに交付される株式等であること。
④ 市場価格のある株式(※1)であって、役務提供を受ける法人又はその関係法人(※2)の株式(適格株式)であること。
理由付記の不備をめぐる事例研究 【第24回】「雑収入(受取利息)」~受取利息の雑収入計上が漏れていると判断した理由は?~
今回は、青色申告法人X社に対して行われた「受取利息の計上漏れ」に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた京都地裁昭和54年2月23日判決(訟月25巻6号1680頁。以下「本判決」という)を素材とする。
役員給与等に係る平成29年度税制改正 【第2回】「定期同額給与及び事前確定届出給与に関する改正」
上記1の改正の趣旨は、従来、月額報酬が定額でも、源泉税等の額の変動により各支給時期の支給額が同額とならない場合に、形式的に、定期同額給与に該当しないと取り扱われてきた点を改めることにある。
実務においては、例えば、外国役員への給与について、日本における所得税や社会保険料等を法人の実質的負担とするべく、当該金額を上乗せして給与を支払う場合が少なくない。当該改正により、これらの控除後の金額が同額である場合についても、定期同額給与として扱うことが可能となる。
租税争訟レポート 【第32回】「租税特別措置法上の当初申告要件(東京地方裁判所判決)」
本件は、建物内外の保守管理・清掃業務・住宅リフォーム等を営む有限会社である原告が、平成26年3月期の事業年度に係る法人税の確定申告書の提出の際、租税特別措置法42条の12の4の規定による特別控除(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)の適用を失念していたとして、同条4項に規定する書類を添付し、上記特別控除を適用して計算し直した上で更正の請求をしたところ、所沢税務署長から、確定申告書に同条の規定による計算に関する明細を記載した書類の添付がないなどとして、いずれも更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けたことから、その取消しを求める事案である。
役員給与等に係る平成29年度税制改正 【第1回】「改正の全体像」-損金算入要件に関する横断的な整理-
平成27年6月30日閣議決定による「『日本再興戦略』改訂2015」において、経営陣へのインセンティブ付与として、株式報酬及び業績連動報酬等の導入促進が謳われ、また、コーポレートガバナンス・コードにおいても、上場会社に対して、「中長期的な業績と連動する報酬の割合」や「現金報酬と自社株報酬との割合」の適切な設定を検証することが求められる(補充原則4-2①)等、株式報酬及び業績連動報酬の導入を促進する役員報酬制度改革が急務となっている。
