相続税の実務問答 【第47回】「相続開始から3年経過後に死亡退職金の支給が確定した場合」
私の父は、平成28年3月1日に亡くなりました。相続人は私と姉の2名であり、相続税の申告及び納付は、同年12月までに済ませました。
父は、伯父が社長を務めるA社の副社長として、長らく伯父を支えてきましたが、父が亡くなった平成29年当時、A社の業績は思わしくなく、父の死亡退職金を支給する余裕はありませんでした。伯父からは、会社の業績が回復すれば退職金も出せるので、それまで待ってほしいと言われていました。
〔失敗事例から考える〕この相続対策の問題はドコ!? 【第1回】「コロナショックの影響により株式等の損切りをしたことによる失敗事例」
「相続対策」と聞くと、多くの税理士は「相続税をどう節税するか」ということにとらわれがちで、相続対策全体を見た適切な対応ができていないケースがあるように思えます。
そこで本連載では、実際に想定される相続対策の事例を取り上げ、その対策における問題はどこなのかを税務的視点はもとより、必要とされるそれ以外の視点(経営的視点、法務的視点など)をもって解説することで、より適切な相続対策をできるようになることを目的としています。
法人版事業承継税制・個人版事業承継税制の相違点比較
非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予及び免除制度(法人版事業承継税制)が創設されて10年以上が経過し、当初は使いにくいと言われていた同税制も数次の改正を経ることで適用要件が緩和され、年間400件程度であった申請件数も平成30年においては年間6,000件程度に迫るものとなった(平成31年2月5日中小企業庁「事業承継・創業政策について」参考)。
また、令和元年度税制改正により、個人の事業用資産についての相続税・贈与税の納税猶予・免除(個人版事業承継税制)が創設された。
両税制の立法趣旨・根本思想は同じものであると考えられるが、事業体が法人組織か個人事業かという違いにより、適用要件などに相違点がある。その相違点を把握することで両制度についての理解を深めていきたい。以下、主な相違点を列挙しながらその内容を解説する。
相続税の実務問答 【第46回】「新型コロナウイルス感染に伴う申告期限の延長」
私の父が昨年の6月28日に亡くなりました。相続人は、母、兄及び私の3名です。
海外出張から帰ってきた兄に、新型コロナウイルス感染症の陽性反応が出たため、兄は、現在、隔離状態に置かれています。これまで兄が中心になって相続税の申告の準備をしており、申告に必要な資料も全て兄のところにあります。
相続税の申告書の提出期限が迫っていますが、このままでは相続税の申告書を提出期限の4月28日までに提出することができそうもありません。どうしたらよいでしょうか。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例84(相続税)】 「「農地等の納税猶予の特例」の適用を受けて相続税の申告をしたが、宅地の評価誤りにより修正申告となったため、結果として納税猶予額が過少となってしまった事例」
死亡の日まで農業を営んでいた被相続人の相続につき、農業相続人である依頼者が「農地等の相続税の納税猶予及び免除等の特例」(以下単に「農地等の納税猶予の特例」という)の適用を受けて相続税の申告をしたが、宅地の評価誤りを税務調査で指摘され、修正申告となったため、結果として納税猶予額が過少となってしまった。
これにより、相続税につき過大納付が発生し、賠償請求を受けたものである。
相続税の実務問答 【第44回】「令和元年台風第19号による被災地内の土地等がある場合の相続税の申告期限」
私の父は、令和元年5月10日に亡くなりました。相続人は母、私及び弟の3名で、3名とも東京都に住んでいます。父は、出身地である長野県N市に貸家及びその敷地を所有していましたが、10月の台風第19号により近くを流れる河川が氾濫し、甚大な被害を受けてしまいました。
現在、相続税の申告の準備をしていますが、相続財産の中にこの台風第19号により被災した土地等がある場合には、申告期限が延長される特例措置があると聞きました。私たちの場合にこの特例措置が適用されますか。特例措置が適用されるのであれば、申告期限はいつまで延長されるのでしょうか。
また、この土地を分割協議により弟が相続することとなった場合に、母や私の申告期限はどうなるのでしょうか。
相続税の実務問答 【第43回】「遺産分割協議が成立した後に遺言書が発見された場合」
平成31年2月に父が亡くなりました。相続人は姉と私の2人です。姉と私は父の遺産について、相続税の申告期限までに遺産分割協議を行い、相続税の申告を済ませました。
最近になって、父の日記などを整理していたところ、その中から「遺言書」と書かれた封筒が出てきました。家庭裁判所の検認を受け、その内容を確認したところ、そこには遺産分割協議において私が取得することとなったA銀行B支店の定期預金を従兄の甲に遺贈すると記載されていました。
私は、父の遺志を尊重し、遺言書に記載されていた定期預金を甲に渡したいと思いますが、そうすると甲に贈与税が課税されることになるのでしょうか。
《相続専門税理士 木下勇人が教える》一歩先行く資産税周辺知識と税理士業務の活用法 【第8回】「社長貸付金の解消問題に関する本質論(ビジネス的視点)」
社長貸付金の解消問題は相続税対策でしばしば挙げられる問題であるが、その解決の一手法としてDES(債務の株式化)が存在する。しかし、DES(債務の株式化)の本来の目的は「財務の健全化」にあり、相続税対策だけがフォーカスされることには違和感を覚えてしまう。
そこで本稿では、DES(債務の株式化)を実行する原因となる社長貸付金そのものに焦点を当て、社長貸付金の解消問題に関する本質論をビジネス的視点から検証する。
国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第36回】「プロベイト(probate)にかかった費用は債務控除できるか」-遺言で外国財産を取得した場合の課税上の留意点-
私の父は、外国に不動産を遺して死亡しました。この不動産は遺言により、私が取得することになっています。そこで相続の手続をしようとしたところ、「プロベイト(probate)」という手続(遺産に係る検認手続)をしなければならず、大変、お金と時間がかかることが分かりました。このプロベイトにかかる費用について、債務控除の対象にできますか。
相続税の実務問答 【第42回】「遺産分割の結果、当初申告よりも評価額が減少した場合の更正の請求」
平成25年2月1日に父が亡くなりました。相続人は私と弟の2人です。相続税の申告書の提出期限までに遺産分割が調わなかったことから、それぞれが法定相続分(各2分の1)で相続財産を取得したものとして相続税額を計算して相続税の期限内申告を行いました。その後、弟との間で遺産分割協議を続けましたがまとまらず、家事審判の手続きを経て、令和元年11月24日に取得財産が確定しました。
父の遺産は、銀行預金などの金融資産と築後40年の木造の自宅建物(固定資産税評価額130万円)及びその敷地です。この敷地は、下の図のように2つの道路に面しており、当初申告においては、1億2,285万円と評価しました。
審判の結果、銀行預金等の金融資産は2分の1ずつ取得し、宅地は面積が等しくなるように分筆し、建物の存する部分を建物とともに私が取得し、庭として使用していた部分を弟が取得することとなりました。それぞれが取得した宅地をそれぞれ評価すると、私が取得した部分は弟が取得した部分よりも低い価額で評価され、その評価額を基に私の相続税の課税価格を計算すると当初申告額よりも低くなります。そこで私が相続税の更正の請求をすることができるかどうかお尋ねします。
なお、私も弟も租税特別措置法第69条の4第1項に定める小規模宅地等の特例を適用することはできません。