事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第4回】「免震ゴムのデータ偽装事件」
2015年10月14日、ゴム会社T社が、防振ゴムでのデータ偽装を公表した。同年3月15日に公表された免震ゴムでのデータ偽装を受けて、全製品の緊急監査を行い、同年8月10日に「正規品が出荷されていることを確認」と発表した後のことであった。T社は、2007年にも、断熱パネルのデータ偽装で社長が引責辞任している。
今回は、2007年の断熱パネル事案、2015年3月の免震ゴム事案、2015年10月の防振ゴム事案をそれぞれ比較して、なぜ、異なるタイミングで問題が発覚したのか、コンプライアンス上の問題点を分析したい。
社外取締役の教科書 【第11回】「社外取締役としての法的責任(その3)」
上記の最高裁判決は、会社の業務執行に関する取締役の監視・監督義務を広く認めたリーディング・ケースであり、現在でも、広く引用される判例である。
事案を見れば、C・Dの義務違反は明白であろう。取締役でありながら、取締役会も株主総会も開かれない状態のまま放置し、Bの独断的な業務執行につき何らの監視・監督も行っていなかったからである。
同じく「株式会社」と名乗る会社であっても、一部上場企業から街場の家族的な中小企業まで、その実態は千差万別である。
養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第11回】「養子縁組の取消し」
養子縁組が取り消される原因としては、
① 養親が未成年者である縁組の場合(民804)
② 養子が尊属または年長者である縁組の場合(民805)
③ 後見人、被後見人間の無許可縁組の場合(民806)
④ 配偶者の同意のない縁組の場合(民806の2)
⑤ 子の監護をすべき者の同意のない縁組の場合(民806の3)
⑥ 養子が未成年者である場合の無許可縁組の場合(民807)
⑦ 詐欺または脅迫による縁組の場合(民808・747)
が法定されており、養子縁組が取り消されるのは、これらの場合に限られる(民803)。
社外取締役の教科書 【第10回】「社外取締役としての法的責任(その2)」
前回説明した通り、取締役が「何かをしたこと」についての法的責任が問われるケースにおいては、善管注意義務が認定されるか否かは、いわゆる「経営判断の原則」を満たしているかにより判定される。
会社運営をめぐる経営判断は、企業活動に伴い大なり小なり無数に存在する。
その中で、以下で取り上げるのは、上場企業等比較的規模が大きい会社における、法的・経済的に見ても重要な意思決定の正当性が争われたケースである。
養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第10回】「渉外離縁手続」
養親、養子のいずれかが外国人である場合に離縁手続を行うに当たっては、日本国の裁判所で解決することができるか(日本の裁判所に国際裁判管轄があるかどうか)、仮に日本の裁判所に国際裁判管轄があるとして、日本法が適用されるかどうか(準拠法が日本法かどうか)が問題となる。
そこで、以下、国際裁判管轄、準拠法に関する考え方を紹介した上で、準拠法が外国法となる場合に問題となる点についても触れる。
社外取締役の教科書 【第9回】「社外取締役としての法的責任(その1)」
社外取締役も、取締役会に出席し、取締役間での活発な議論を経て、経営戦略等を策定して経営方針を決定するなど、経営判断を行っていくことになる。
しかし、そこで決定した経営方針(たとえば、将来的な成長が見込まれる特定分野に人員と予算を集中させ、それ以外の部門は縮小・整理するといった絞込りこみ等)が、数年後、市場の時流から完全に外れてしまい、それが原因となり会社が倒産に至ってしまった場合は、その責任の所在はどのようになるのであろうか。
養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第9回】「離縁に伴う復氏・復籍」
養子は養親との離縁により、原則として縁組前の氏に復する(民816①本文)。
もっとも、(ア)婚姻によって氏を改めた者(夫の氏を称することとなった妻)が単独で養親の養子となった場合には、養親の氏ではなく、夫の氏(夫婦の氏)を称し続けることとなるので、その後の養親との離縁によっても復氏することはない(斉藤のまま)。
常識としてのビジネス法律 【第28回】「知的財産権入門(その1)」
現行法では、企業で職務として行われた発明(職務発明)に係る特許を受ける権利は、従業者に帰属し、この権利が従業者から企業に承継される際、相当の対価を受けることができると規定されている。しかし、現状では、発明の対価の額を巡って、発明者と企業が争い、訴訟に発展するケースもあり、経済界などから、日本に開発拠点を置くことのリスクにつながり、海外に開発拠点を持つ企業との競争で不利で国際競争力を削ぐとして、制度改正を求める声が上がっていた。
経産省研究会による会社法の「法的論点に関する解釈指針」のポイントと企業実務への影響 【後編】
本指針は、その第3項目として「役員就任条件(報酬・会社補償・保険料負担・提訴判断)」についての解釈指針を示している。
具体的には、①インセンティブを強化した役員報酬の導入、②役員に対する損害賠償請求についての会社補償の許容範囲、③会社役員賠償責任保険(D&O保険)の保険料負担の許容範囲、及び④会社が取締役に対する責任追及訴訟を提訴するか否かの判断プロセスの見直しの各項目について、現行法上の問題点の分析と新たな法解釈を示すものである。
社外取締役の教科書 【第8回】「社外の知見・ノウハウの取り入れ(その2)」
新卒で入社し、そのまま社内の勤務一筋で取締役へと上り詰めた場合、入社以来一貫して取り組んできた分野・経験については蓄積が著しいが、その半面「視野が狭い」、「頭がカタい」ということも避けられない傾向である。
その中で、社外から、自社の経営陣とは全く異なる経験を積んできた人材を招くことは、非常に有用なことである。その一端を示す実例が、上記である。
また、社外取締役による助言・提案が効果的に働いた事例として、以下もある。
