〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第35話】「泉佐野市ふるさと納税訴訟」
「・・・やりましたね。」
そう言いながら、浅田調査官は嬉しそうに、最高裁の判決文を中尾統括官に見せる。
・令和2年(行ヒ)第68号 不指定取消請求事件
・令和2年6月30日 第三小法廷判決
「この判例は、最高裁判所のホームページの新着情報から見つけたものですが・・・報道で発表された翌日に、もうインターネットで掲載されるなんて・・・早いですね。」
浅田調査官は、笑顔で言う。
老コンサルタントが出会った『問題の多い相続』のお話 【第11回】「老コンサルタントが考える「相続事案情報獲得の心構え」とは」~顧客を紹介したい税理士像とともに~
私はこれまでの仕事の中で、いろいろな方とお目にかかり、その後長くお付き合いさせていただいている方も多くおられます。もちろんすべてが仕事に関するお付き合いだけではなく、むしろ自分自身の人格形成に役立つことから、進んで交遊を広める努力を図っています。
中でも仕事柄「税理士さん」と知り合う機会が必然的に多くなっています。
特に現役の銀行員時代は、税理士の方々からの働きかけが多かった気がします。おそらく銀行の顧客の相続事案情報並びに顧客紹介を期待されていたのでしょう。
〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第34話】「オンライン税務調査」
「中尾統括官・・・新型コロナウイルスの影響で、今後の税務調査は、原則、オンラインになると思うのですが・・・」
浅田調査官は箸を持ちながら、中尾統括官に言う。
税務署の近くの蕎麦屋で、2人は対面ではなく、横並びで蕎麦を食べている。2日前まで休業していた蕎麦屋には、客は数人しかいない。新型コロナウイルスが騒がれる前は、お昼時には多くの客で店の中はごった返していた。
「なかなか客足は・・・元に戻りませんね・・・」
浅田調査官は、店の中をキョロキョロと見回している。
〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第33話】「新型コロナウイルスと給付金」
「10万円か・・・」
浅田調査官はそうつぶやくと、振り返って中尾統括官を見る。
中尾統括官は毎月の事務計画の策定で、電卓を叩いている。
「統括官。」
浅田調査官が、声をかける。
「・・・」
しばらくして、中尾統括官は、顔を上げる。
老コンサルタントが出会った『問題の多い相続』のお話 【第10回】「特殊な状況だからこそ、相続リスクに注意すべし」~災害時のコンサル経験から学んだこと~
今回のコロナ禍のように、世の中いつ災害が起こるかわかりません。同じように、高齢化に伴い、いつ認知症状態になるかもわかりません。
自筆証書遺言のリスクは「どこに保管されているのか」、また「その遺言書が最後に書かれた遺言書かどうか」がわからない点にあります。
〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第32話】「新型コロナウイルスと税務調査」
「しかし・・・大変なことになったな・・・」
中尾統括官は、新聞を見ながら、深くため息をつく。
浅田調査官は、机上にある書類を神妙な顔つきで整理している。
「こんな時に・・・税務調査などできませんよね・・・」
浅田調査官は、机の隅に積まれている確定申告書を横目で見ながら、つぶやく。
