AIで士業は変わるか? 【第17回】「AIの実用化で公認会計士の財務諸表監査は消滅するのか」
AIの開発には目覚ましいものがあり、近い将来、公認会計士による財務諸表監査にも大きな影響を及ぼすことが予想される。
果たしてAIが「不正会計」の発見に有用なものか、あるいは効率的・効果的に財務諸表監査を実施するに際しての救世主となるのか、今のところ予断を許さない。公認会計士も、M&Aなどを含む会計に関連する幅広い業務を行っていることから、AIの活用場面は何も財務諸表監査に限られるものではない。
〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第9話】「年金受給権と一時所得」
「・・・死亡した人の公的年金で、その人の死亡後に支給の到来するものは、当然、その死亡した人の所得だと思っていたのですけど・・・」
浅田調査官は、中尾統括官に尋ねる。
所得税の調査報告書を読んでいた中尾統括官は、顔を上げる。
「・・・公的年金?」
AIで士業は変わるか? 【第16回】「AIで不正会計はなくなるか?」
昨年10月に行われた一般社団法人日本公認不正検査士協会のカンファレンスでは、「不正調査と人工知能(AI)」がテーマとして取り上げられた。当日は、ベーカー&マッケンジー法律事務所所属の弁護士・井上朗氏が「AIを活用した不正調査の現状と今後の課題」と題して、基調講演を行い、これまで手がけてきた国際カルテル事件におけるアメリカ司法省との戦いの中で、どのようにAIを活用してきたのか、その一端を明らかにした。
AIで士業は変わるか? 【第15回】「テクノロジーが税務サービス業界与えるインパクト」
日本には言語の壁があるので、これまでアメリカの企業が行ってきたような、付加価値の低いサービスをインド等の国外にアウトソースしてしまうオフショアリングはあまり進んでいませんでした。AIを含むソフトウェア開発についても、まずは英語圏で開発が先行する可能性はありますが、中国で滴滴出行が先に自国マーケットを抑えウーバーを追い出してしまったように、日本で開発されたテクノロジーがデファクトスタンダードになる日が来るかもしれません。あるいはドコモのiモードのように、一世を風靡しても、後から「ガラパゴスだった」と言われてしまうかもしれません。
実務家による実務家のためのブックガイド -No.5- 竹村彰通 著『データサイエンス入門』
AI(人工知能)によって将来代替される可能性の高い仕事の一つとして会計士が挙げられてから数年が経つ。現に監査業務へのAI導入が大手監査法人では真剣に研究されている。期末監査で膨大な事務量をこなす現場からは、これを歓迎する意見も聞かれるが、反面自らの将来に不安を禁じえない会計士も少なくないと思う。
AIで士業は変わるか? 【第14回】「AIの判断ミスに対する法的責任の所在」
近時、主に機械学習を利用したAI技術が急速に発展し、多くの企業がAI技術を利用したソフトウェアの開発や利用に取り組み始めている。今後もAI技術は社会に広く普及していくことが予想されるが、人間の指示を受けずに自律的な判断を行うAIの行為によって事故等が発生した場合、誰がどのような責任を負うのかといった新しい法律問題には、未解決の点も多い。
例えば、AIのコントロールする自動運転車が判断ミスにより衝突する、AIによるがん早期発見システムが検知ミスにより患者のがんの進行を許してしまう、といった例が典型的である。
AIは「人」に該当しない以上、AIによって発生した事故等についてAI自体に法的責任を問うことはできない。それでは、AIの開発や利用に関係する者(自然人や法人)のうち、誰がどのような場合に責任を負うのか、ということが問題となる。
〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第8話】「株主優待乗車証と雑所得」
「統括官は株主優待乗車券を持っていますか?」
浅田調査官は中尾統括官の背後から急に声をかけた。
「・・・株主優待乗車券?」
昼休みに新聞を読んでいた中尾統括官は、驚いたように振り返る。
浅田調査官は笑っている。
AIで士業は変わるか? 【第13回】「高度専門業務は外注される時代へ」
例えば、税務申告書を作成する税理士と税務コンサルティングを行う税理士が別々であっても構わない。売上総額という意味では前者の方が高額であるが、1時間当たりの単価という意味では後者の方が高額である。今までは、1人の税理士がすべてを行っていたために非効率であったが、分業が成立すると効率的に仕事ができるようになる。
AIで士業は変わるか? 【第12回】「税務会計の分野において、AIに『代替し得るもの』と『代替し得ないもの』」
アーサー・C・クラーク原作、スタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」(1968年)における人工知能・HAL9000型コンピュータの描写に見られるように「AIが人間に代替し得るか?」というテーマに関する議論は古くからあったが、近年になって、インターネットが普及し、コンピュータが扱えるデータ量や演算速度などが飛躍的に向上し、実際に将棋や囲碁などの対局において、コンピュータがトップクラスの棋士に勝ってしまうような事例が増えてきたことなどから、より現実的な問題として、我々が考えなければならない重要な命題へと変貌を遂げて来ているように思う。
AIで士業は変わるか? 【第11回】「AIが企業の情報開示に与える影響」
最近仲間同士集まった際に必ず話題に上がる言葉といえば、仮想通貨とAIです(仮想通貨の方は、いろいろあって若干沈静化していますが)。これらは明らかに「ブーム」と言っていいでしょう(仮想通貨の方は「バブル」?)。
新聞でAIという言葉を目にしない日はおそらくないかと思いますし、「週刊東洋経済」や「週刊ダイヤモンド」といった経済誌から「週刊ポスト」や「週刊現代」といった大衆誌まで、多くの特集が組まれ、AIの専門家や、専門家なのかどうかよく分からない評論家やコンサルタントまでが、「AIに仕事が奪われる」といった、こちらの不安を煽るようなことを言っています。