〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第37話】「年末調整の電子化」
「浅田君は・・・今年から新しくなる年末調整の手続きを知ってるかい?」
中尾統括官は、浅田調査官に声をかける。
「年末調整・・・ですか?」
浅田調査官は怪訝そうな顔をする。
「10月に国税庁がホームページで年末調整控除申告書作成用のソフトを公表するという・・・あれだよ。」
中尾統括官は、険しそうな表情で浅田調査官を見る。
〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第36話】「コロナ禍における税理士試験」
「ほんとに・・・やれるのかな・・・」
中尾統括官は、パソコンの画面を見ながらつぶやく。
「東京オリンピックですか?」
机の上の申告書を整理していた浅田調査官は、振り向いて尋ねる。
「いや、税理士試験のことだよ。」
中尾統括官は、大きな声で応える。
〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第35話】「泉佐野市ふるさと納税訴訟」
「・・・やりましたね。」
そう言いながら、浅田調査官は嬉しそうに、最高裁の判決文を中尾統括官に見せる。
・令和2年(行ヒ)第68号 不指定取消請求事件
・令和2年6月30日 第三小法廷判決
「この判例は、最高裁判所のホームページの新着情報から見つけたものですが・・・報道で発表された翌日に、もうインターネットで掲載されるなんて・・・早いですね。」
浅田調査官は、笑顔で言う。
老コンサルタントが出会った『問題の多い相続』のお話 【第11回】「老コンサルタントが考える「相続事案情報獲得の心構え」とは」~顧客を紹介したい税理士像とともに~
私はこれまでの仕事の中で、いろいろな方とお目にかかり、その後長くお付き合いさせていただいている方も多くおられます。もちろんすべてが仕事に関するお付き合いだけではなく、むしろ自分自身の人格形成に役立つことから、進んで交遊を広める努力を図っています。
中でも仕事柄「税理士さん」と知り合う機会が必然的に多くなっています。
特に現役の銀行員時代は、税理士の方々からの働きかけが多かった気がします。おそらく銀行の顧客の相続事案情報並びに顧客紹介を期待されていたのでしょう。
〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第34話】「オンライン税務調査」
「中尾統括官・・・新型コロナウイルスの影響で、今後の税務調査は、原則、オンラインになると思うのですが・・・」
浅田調査官は箸を持ちながら、中尾統括官に言う。
税務署の近くの蕎麦屋で、2人は対面ではなく、横並びで蕎麦を食べている。2日前まで休業していた蕎麦屋には、客は数人しかいない。新型コロナウイルスが騒がれる前は、お昼時には多くの客で店の中はごった返していた。
「なかなか客足は・・・元に戻りませんね・・・」
浅田調査官は、店の中をキョロキョロと見回している。
〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第33話】「新型コロナウイルスと給付金」
「10万円か・・・」
浅田調査官はそうつぶやくと、振り返って中尾統括官を見る。
中尾統括官は毎月の事務計画の策定で、電卓を叩いている。
「統括官。」
浅田調査官が、声をかける。
「・・・」
しばらくして、中尾統括官は、顔を上げる。