「平成24年版 中小企業の会計に関する指針」の主な改正点と留意点 【第4回】「各論における改正事項『貸倒引当金』」及び「チェックリスト利用上の注意点」
金銭債権について、取立不能のおそれがある場合には、その取立不能見込額を貸倒引当金として計上しなければならない。
この「取立不能のおそれがある場合」とは、債務者の財政状態や取立てのための費用や手続の困難さ等を総合的に判断することになるが、会計上、取立不能見込額の算定方法は、一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権等に区分し、それぞれの区分に応じて貸倒引当金を算定する。
実際の算定に当たっては、過去の貸倒実績率等の合理的基準により算定することが求められる等、中小企業にとってはハードルの高いものとなっている。
「平成24年版 中小企業の会計に関する指針」の主な改正点と留意点 【第3回】「各論における改正事項『固定資産・引当金』」
「平成24年版 中小企業の会計に関する指針」(以下「中小会計指針」)では、「有形固定資産の減価償却の方法は、定率法、定額法その他の方法に従い、耐用年数にわたり毎期継続して適用し、みだりに変更してはならない。」(中小会計指針34項)としている。
各企業が減価償却方法や使用期間を任意に定め、随時変更することが可能となると、一企業の事業年度間や同業他社間での比較可能性が損なわれ、債権者等の利害関係者や特に中小企業においては経営者にとって有用な会計情報を得ることができない可能性がある。
「平成24年版 中小企業の会計に関する指針」の主な改正点と留意点 【第2回】「各論における改正事項『有価証券・棚卸資産』」
有価証券は、保有目的の観点から、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式・関連会社株式及びその他有価証券に分類され、それぞれの区分に応じた評価を行うこととしている。
中小会計指針では、それぞれの区分ごとに貸借対照表に計上すべき金額(以下「貸借対照表価額」という)と評価差額が計算された場合の取扱いを規定している。
まず、有価証券を区分する場合に、注意すべきは、売買目的有価証券の取扱いであり、その具体的内容について確認する。
「平成24年版 中小企業の会計に関する指針」の主な改正点と留意点 【第1回】「改正の経緯と指針の読み方」
「平成24年版 中小企業の会計に関する指針(以下「中小会計指針」という)」が、本年2月に公表された。
中小会計指針は、平成17年8月に公表され、平成18年の会社法施行に伴う純資産の部に係る取扱いの変更をはじめ、その後のわが国の会計基準(以下「日本基準」という)の動向に呼応し、毎年改定されてきた。
ただし、その改定は、日本基準の改正等をすべて受け入れたものではなかった。それは、中小企業の規模や会計情報を必要とする利害関係者は、金融機関や取引先、そして、利害関係者とはいえないが、法人の申告内容の適否を調査する課税庁であるという実態を鑑み、精緻な日本基準を適用することが中小企業の実態に合わず、中小企業の会計の質を高め、財務体質の改善等に資すると考えられなかったからである。