〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第74回】「外国税額控除権の行使(地判平25.11.19、高判平26.3.26、最判平26.12.18)(その2)」~旧所得税法95条2項、同条6項(平成21年改正前)~
外国税額控除制度の意義とその趣旨について、被告は、「国家は、国家主権の派生としての課税権を有しており、国際的二重課税にいかに対処するかは本来的にはそれぞれの国家の立法政策、租税政策に属する事柄であって、国際的二重課税排除のために外国税額控除を認めなければならないものではなく、これを認めるとしても、政策目的の実現のために課税を減免するという、国家による一方的な恩恵的措置にすぎない」と主張し、一方、原告は、「外国税額控除制度は、課税の公平と中立性の原則に基づき、国際的二重課税を排除し、国際取引に対する経済的中立性(資本輸出中立性)の維持を目的とする制度であり、所得課税の基本的構造の性格を有するものと解すべきであり、政策的課税減免規定や一方的な恩恵的措置であるなどとする被告の主張は誤りである。」と主張した。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第73回】「外国税額控除権の行使(地判平25.11.19、高判平26.3.26、最判平26.12.18)(その1)」~旧所得税法95条2項、同条6項(平成21年改正前)~
本件は、原告が、平成21年分の所得税について、所得税法(平成21年法律第13号による改正前のもの。以下、本稿において同じ。)95条2項に基づき、平成19年分の控除限度額を繰り越して使用することにより外国税額控除をして確定申告をしたところ、税務署長から、原告の平成20年分の確定申告書には同条6項所定の事項(「外国税額控除に関する明細書」や同控除の計算の基礎となる書類等の添付もされていなかった)の記載等がなかったから、平成21年分所得税について、同項に規定する手続要件を満たしておらず、同条2項に基づく外国税額控除をすることはできないとして更正処分等を受けた事案である。
金融・投資商品の税務Q&A 【Q94】「外貨建て未収債権を回収した際の為替差益」
私(居住者たる個人)は、保有していた米国法人A社の株式を、その関係会社である米国法人B社に譲渡しました。1年後にB社から譲渡代金(ドル建て)を回収したので、そのまま米国にある銀行口座に預入をしました。ドル建ての譲渡代金を回収し、ドルのまま銀行に預け入れただけなので、為替レートの変動による所得は実現していないものとして取り扱ってよいでしょうか。
金融・投資商品の税務Q&A 【Q93】「相続で取得した非上場株式を発行会社に譲渡する場合のみなし配当課税の特例」
私(居住者たる個人)は、相続により取得した株式を保有しています。この株式は非上場であり市場で売却することができないため、発行会社に買い取ってもらうことにしました。発行会社が自己株式を買い取る場合にはみなし配当が生じるところ、相続で取得した株式については特例があると聞きました。どのような特例ですか。
金融・投資商品の税務Q&A 【Q92】「ストックオプションやRSUで取得した株式に係る損失」
私(居住者たる個人)は、外資系の日本子会社に勤務していますが、米国の親会社からインセンティブ報酬としてストックオプションとRSU(譲渡制限付株式ユニット)を付与されています。数年前にストックオプションを行使し、また、RSUの権利確定に伴い交付されて取得した親会社株式(上場)を保有しています。残念ながら、今年になってこれらの株式の時価が下落し含み損が生じているのですが、この含み損を他の所得と通算することはできますか。
租税争訟レポート 【第78回】「所得税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分の取消請求事件~給与所得を有する社会保険労務士の相談業務に係る損失(国税不服審判所令和5年6月16日裁決/所得区分と損益通算)」
本件は、勤務先3社から給与収入を得る一方、社会保険労務士として開業している審査請求人(以下「請求人」という)が、社会保険労務士として行った相談業務に係る事業所得の金額の計算上生じた損失の金額があるとして、他の所得金額と損益通算する内容の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該業務に係る所得は雑所得に該当することから、当該損失の金額は損益通算できないなどとして所得税等の各更正処分等を行ったのに対し、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
日本の企業税制 【第137回】「所得税の基礎控除の上乗せ(特例)に係る修正案」
令和7年度税制改正法案である「所得税法等の一部を改正する法律案」は、与党による修正を経て、3月4日に衆議院を通過した。本稿公開現在、参議院での審議中である。
今回の修正内容は、2月18日に再開した与党と国民民主党との間の税制協議の中で、与党側が提示したものである。この協議自体は、与党と国民民主党による合意には至らなかった。
国会に提出された当初の税制改正法案では、いわゆる「103万円の壁」への対応として、給与所得控除の最低保障額(現行:55万円)と基礎控除(現行:48万円(最高))とをそれぞれ10万円ずつ引き上げる(これにより課税最低限は123万円へ引き上がる)こととされていた。
monthly TAX views -No.145-「「103万の壁」をめぐる議論を振り返る」
少数与党になった自公政権は、予算の年度内成立をめぐって政党間での政策協議を行ってきた。日本維新の会との間では教育無償化などの協議が整い、2025年度予算案の修正で正式に合意した。一方、国民民主党とは所得税の「103万円の壁」の引上げをめぐり協議が決裂した。本稿では、No.143で取り上げた「103万円の壁」の問題について、改めて筆者の考えを述べてみたい。
金融・投資商品の税務Q&A 【Q91】「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」
私(居住者たる個人)は、会社(非上場)を経営して役員報酬を得ていますが、将来的にはファンドに譲渡することを検討しています。多額の株式譲渡益が生じるときに、通常の株式の譲渡所得に対する課税に加えて、特別な税負担が生じる可能性があると聞きました。これはどのような措置によるものでしょうか。