法人税の解釈をめぐる論点整理
《寄附金》編
【第5回】
弁護士 木村 浩之
(前回はこちら)
7 資本等取引と寄附金
法人税法上、資本等取引によって損益は生じないとされ(法法22②③)、損益取引と区別されているが、資本等取引であっても現実に経済的利益の移転の効果が生じる場合があることから、何らかの形で寄附金税制が関係する場面があり得ると解される。
そこで、《寄附金》編の最終回となる今回は、資本等取引に関係する寄附金税制の適用につき、関連する課税上の問題と併せて整理・検討することとしたい。
(1) 低額出資
株式会社が特定の株主に時価よりも著しく低い価額で株式を発行する場合には、その株式を引き受けた株主は、時価と発行価額との差額に相当する経済的利益を得ることになる。しかしながら、会社からすれば、株主に経済的利益を得させたとしても、自己にとっては株式発行という資本等取引をしたにすぎないことから、法人税法上、損益は発生せず、寄附金の問題は生じないことになる。
もっとも、株式の有利発行については、他の株主の負担において特定の株主の利益を図るものともみることができるのであり、それが著しいものであって株主間における利益移転とみなされる場合には、会社そのものではなく、その株主に対して寄附金税制の適用がなされる可能性がある。
この点、株式会社が著しく有利な価額による第三者割当増資を行った事案において、株主間の合意によって会社の資産価値という利益を移転したものとして、株主に対する寄附金税制の適用を肯定した裁判例がある(最判平成18年1月24日・判時1923号20頁参照)。
なお、いずれにしても、著しく低い価額で株式を引き受けた株主の側では、時価との差額について受贈益を認識することになると考えられる(その場合の株式の取得価額は時価となる(法令119①四参照))。
(2) 高額出資
(1)とは逆に、著しく高い価額で株式を引き受ける場合、その株主は、会社(又は他の株主)に経済的利益を移転するものとして、時価との差額の部分について寄附金税制が適用されることになる(法法37⑧。この場合も株式の取得価額は時価となる)。
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