会社分割と自己株式の移転
税理士 竹内 陽一
1 平成18年会社法改正と自己株式の承継
会社分割とは、会社が行う事業に関して有する権利義務の承継とされ、営業の承継から事業に関して有する権利義務の承継とされた。この権利の一つとして自己株式の承継が考えられる。
分割会社が有する自己株式については、吸収分割においては、吸収分割契約書に記載することで、分割会社の自己株式が、承継会社に承継されて、承継会社において他社株として取得できることになった(会社法758条3号)。この自己株式の承継は吸収分割に限られ、新設分割では自己株式の承継に関する規定がないので、新設分割設立会社への自己株式の承継はできないと考えられる。
他方で承継会社は、交付対価として、承継会社株式を、分割会社に交付できる。仮にこの分割で、分割会社の承継資産が自己株式のみで、承継会社の交付対価が承継会社株式のみとすると、分割会社と承継会社の間で株式の交付を相互に行ったことになり、相互持合いの形成となる。
分割会社が交付を受けた承継会社株式を、剰余金の配当として分割会社の株主に交付することもできる。この場合は、承継会社においては分割会社株式を取得し、この部分について等価の、承継会社株式を、分割会社に交付し、分割会社はこの承継会社株式を、分割会社の株主に割り当てることになる。
このことは、分割会社の株主から見れば、保有する分割会社株式については、承継会社が株主に加わった分、その価値が減少し、他方でその価値減少分と等価の承継会社株式を取得したことになる。
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