公開日: 2017/06/22 (掲載号:No.223)
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〔判決からみた〕会計不正事件における当事者の損害賠償責任 【第1回】「エフオーアイ損害賠償請求事件第1審判決の特徴」

筆者: 米澤 勝

〔判決からみた〕

会計不正事件における当事者の損害賠償責任

【第1回】

「エフオーアイ損害賠償請求事件第1審判決の特徴」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

-本連載の狙い-

去る平成28年12月20日、東京地方裁判所は、株式会社エフオーアイ(以下「FOI社」と略称する)の会計不正により損害を受けた個人株主らを原告とする損害賠償事件において、同社の元取締役・元監査役のみならず、主幹事証券会社についても、金融商品取引法違反による民事上の責任を認め、損害賠償を命じる判決を言い渡した。

粉飾決算を理由とする損害賠償事件において、証券会社に損害賠償を命じる判決が出たのは初めてということで、大いに注目を集めた判決であるが、同時に、本判決は、社外監査役について損害賠償を命じている点についても、話題となっている。

そこで、本連載では、本件判決とニイウスコー事件、セイクレスト事件における裁判所の判断など、複数の判決を比較考量しながら、会計不正事件の主犯・実行犯ではない当事者の損害賠償責任について、検討したい。

連載第1回目となる本稿では、まず、エフオーアイ事件第1審判決の概要を検討したい。

エフオーアイ損害賠償請求事件の概要

1 訴訟当事者

原告

  • エフオーアイの株主

被告

  • 被告Y1(奥村裕代表取締役社長)
  • 被告Y2(上畠正和代表取締役専務管理部門長)
  • 被告Y3(河野六甲取締役営業部門長)
  • 被告Y4(ビノグラードフ・ゲオルギー取締役研究開発部門長)
  • 被告Y5(染谷良樹社外監査役・公認会計士)
  • 被告Y6(高倉正直常勤監査役)
  • 被告Y7(水上浩一郎社外監査役)
  • 被告みずほインベスターズ証券株式会社(被告みずほ証券)
    (他の証券会社・ベンチャー・キャピタル等は省略)
  • 被告株式会社東京証券取引所(被告東証)
  • 被告日本取引所自主規制法人(被告自主規制法人)

2 粉飾決算の内容

FOI社においては、平成16年3月期において、決算が大幅な赤字となって銀行融資を受けることができなくなることを防ぐため、被告Y1(奥村元代表取締役社長)、被告Y2(上畠代表取締役専務)及び被告Y3(河野取締役)ら役員が相談の上、見込生産をして製造を終了した6台のエッチング装置につき、実際には受注がなかったにもかかわらず、受注があったように装って架空の売上げを計上することにより、実際の売上高が7億1,941万328円であるのに、決算書類には売上高が23億2,799万9,328円である旨記載する粉飾決算を行った。

FOI社は、平成17年3月期以降も、平成21年3月期までの間、売上高を実際よりも水増しして計上する方法による粉飾決算を継続した。平成21年3月期の粉飾額は115億3,639万5,000円に及び、決算書類に記載された売上高の97.3%が架空の売上げであった。

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〔判決からみた〕

会計不正事件における当事者の損害賠償責任

【第1回】

「エフオーアイ損害賠償請求事件第1審判決の特徴」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

-本連載の狙い-

去る平成28年12月20日、東京地方裁判所は、株式会社エフオーアイ(以下「FOI社」と略称する)の会計不正により損害を受けた個人株主らを原告とする損害賠償事件において、同社の元取締役・元監査役のみならず、主幹事証券会社についても、金融商品取引法違反による民事上の責任を認め、損害賠償を命じる判決を言い渡した。

粉飾決算を理由とする損害賠償事件において、証券会社に損害賠償を命じる判決が出たのは初めてということで、大いに注目を集めた判決であるが、同時に、本判決は、社外監査役について損害賠償を命じている点についても、話題となっている。

そこで、本連載では、本件判決とニイウスコー事件、セイクレスト事件における裁判所の判断など、複数の判決を比較考量しながら、会計不正事件の主犯・実行犯ではない当事者の損害賠償責任について、検討したい。

連載第1回目となる本稿では、まず、エフオーアイ事件第1審判決の概要を検討したい。

エフオーアイ損害賠償請求事件の概要

1 訴訟当事者

原告

  • エフオーアイの株主

被告

  • 被告Y1(奥村裕代表取締役社長)
  • 被告Y2(上畠正和代表取締役専務管理部門長)
  • 被告Y3(河野六甲取締役営業部門長)
  • 被告Y4(ビノグラードフ・ゲオルギー取締役研究開発部門長)
  • 被告Y5(染谷良樹社外監査役・公認会計士)
  • 被告Y6(高倉正直常勤監査役)
  • 被告Y7(水上浩一郎社外監査役)
  • 被告みずほインベスターズ証券株式会社(被告みずほ証券)
    (他の証券会社・ベンチャー・キャピタル等は省略)
  • 被告株式会社東京証券取引所(被告東証)
  • 被告日本取引所自主規制法人(被告自主規制法人)

2 粉飾決算の内容

FOI社においては、平成16年3月期において、決算が大幅な赤字となって銀行融資を受けることができなくなることを防ぐため、被告Y1(奥村元代表取締役社長)、被告Y2(上畠代表取締役専務)及び被告Y3(河野取締役)ら役員が相談の上、見込生産をして製造を終了した6台のエッチング装置につき、実際には受注がなかったにもかかわらず、受注があったように装って架空の売上げを計上することにより、実際の売上高が7億1,941万328円であるのに、決算書類には売上高が23億2,799万9,328円である旨記載する粉飾決算を行った。

FOI社は、平成17年3月期以降も、平成21年3月期までの間、売上高を実際よりも水増しして計上する方法による粉飾決算を継続した。平成21年3月期の粉飾額は115億3,639万5,000円に及び、決算書類に記載された売上高の97.3%が架空の売上げであった。

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連載目次

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

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