公開日: 2021/04/15
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《速報解説》 会計士協会、監基報810「要約財務諸表に関する報告業務」の改正案を公表~「要約財務諸表に対する報告書」及び「その他の記載」の定義・検討について示す~

筆者: 阿部 光成

《速報解説》

会計士協会、監基報810「要約財務諸表に関する報告業務」の改正案を公表

~「要約財務諸表に対する報告書」及び「その他の記載」の定義・検討について示す~

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ はじめに

2021年4月14日、日本公認会計士協会は、「監査基準委員会報告書810「要約財務諸表に関する報告業務」の改正について」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。

これは、監査基準の改訂及び監査報告に関する国際監査基準(ISA)の改訂を受けた監査基準委員会報告書の改正を反映させるためのものである。

意見募集期間は2021年5月14日までである。

文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅱ 主な改正内容

報告書は、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を実施した監査人が、監査済財務諸表を基礎として作成された要約財務諸表に関して報告業務を行う場合における監査人の責任について、実務上の指針を提供するものである(1項)。

「要約財務諸表」とは、一定時点における企業の経済的資源もしくは義務又は一定期間におけるそれらの変動に関して、財務諸表ほど詳細ではないが、それと整合する体系的な情報を提供するために、財務諸表を基礎として作成された過去財務情報である(3項(4))。

1 「その他の記載」の定義

「その他の記載」とは、要約財務諸表を含む開示書類のうち、当該要約財務諸表と要約財務諸表に対する報告書とを除いた部分の記載をいう(3項(2))。

2 「その他の記載」の検討

監査人は、要約財務諸表及び要約財務諸表に対する報告書が含まれる開示書類におけるその他の記載を通読し、その他の記載と要約財務諸表の間に重要な相違があるかどうかを検討しなければならない(13項)。

そして、監査人は、重要な相違を識別した場合には、当該事項について経営者と協議し、要約財務諸表及びその要約財務諸表に対する報告書が含まれる開示書類の要約財務諸表又はその他の記載を修正する必要があるかどうかを判断しなければならない(14項)。

13項及び14項では、要約財務諸表及び要約財務諸表に対する報告書が含まれる開示書類におけるその他の記載に関連する監査人の責任を扱っており、ここでのその他の記載には、次のものが含まれる場合がある(A12項)。

 年次報告書においてその他の記載内容として記載されている事項と同一の事項の一部又は全部(例えば、要約財務諸表及び要約財務諸表に対する報告書が年次報告書(要約版)に含まれている場合)

 年次報告書においてその他の記載内容として記載されていない事項

3 要約財務諸表に対する報告書

監査基準の改訂及び監査報告に関する国際監査基準(ISA)の改訂を受けた監査基準委員会報告書の改正に対応し、「要約財務諸表に対する報告書」の記載内容を整理するとともに、「監査済財務諸表に対する監査報告書への参照」について詳細に規定している(15項~19項)。

18項は、監査済財務諸表に対する監査報告書において、監査基準委員会報告書701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」に従った監査上の主要な検討事項の報告が含まれている場合には、その旨を要約財務諸表に対する報告書に含めることを監査人に要求している(A21項)。

しかしながら、監査人は要約財務諸表に対する報告書において、監査上の主要な検討事項を個別に記載することは要求されていない(A21項)。

報告書の19項により要求される記述は、このような事項に注意を喚起することを意図したものであり、監査済財務諸表に対する監査報告書を代替するものではない。また、この記述は、当該事項の内容を伝えることを意図したものであり、監査済財務諸表に対する監査報告書の関連する文章を繰り返して記載する必要はない(A22項)。

 

Ⅲ 適用時期等

2022年3月31日以後終了する事業年度に係る要約財務諸表に関する報告業務から適用する。

(了)

《速報解説》

会計士協会、監基報810「要約財務諸表に関する報告業務」の改正案を公表

~「要約財務諸表に対する報告書」及び「その他の記載」の定義・検討について示す~

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ はじめに

2021年4月14日、日本公認会計士協会は、「監査基準委員会報告書810「要約財務諸表に関する報告業務」の改正について」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。

これは、監査基準の改訂及び監査報告に関する国際監査基準(ISA)の改訂を受けた監査基準委員会報告書の改正を反映させるためのものである。

意見募集期間は2021年5月14日までである。

文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅱ 主な改正内容

報告書は、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を実施した監査人が、監査済財務諸表を基礎として作成された要約財務諸表に関して報告業務を行う場合における監査人の責任について、実務上の指針を提供するものである(1項)。

「要約財務諸表」とは、一定時点における企業の経済的資源もしくは義務又は一定期間におけるそれらの変動に関して、財務諸表ほど詳細ではないが、それと整合する体系的な情報を提供するために、財務諸表を基礎として作成された過去財務情報である(3項(4))。

1 「その他の記載」の定義

「その他の記載」とは、要約財務諸表を含む開示書類のうち、当該要約財務諸表と要約財務諸表に対する報告書とを除いた部分の記載をいう(3項(2))。

2 「その他の記載」の検討

監査人は、要約財務諸表及び要約財務諸表に対する報告書が含まれる開示書類におけるその他の記載を通読し、その他の記載と要約財務諸表の間に重要な相違があるかどうかを検討しなければならない(13項)。

そして、監査人は、重要な相違を識別した場合には、当該事項について経営者と協議し、要約財務諸表及びその要約財務諸表に対する報告書が含まれる開示書類の要約財務諸表又はその他の記載を修正する必要があるかどうかを判断しなければならない(14項)。

13項及び14項では、要約財務諸表及び要約財務諸表に対する報告書が含まれる開示書類におけるその他の記載に関連する監査人の責任を扱っており、ここでのその他の記載には、次のものが含まれる場合がある(A12項)。

 年次報告書においてその他の記載内容として記載されている事項と同一の事項の一部又は全部(例えば、要約財務諸表及び要約財務諸表に対する報告書が年次報告書(要約版)に含まれている場合)

 年次報告書においてその他の記載内容として記載されていない事項

3 要約財務諸表に対する報告書

監査基準の改訂及び監査報告に関する国際監査基準(ISA)の改訂を受けた監査基準委員会報告書の改正に対応し、「要約財務諸表に対する報告書」の記載内容を整理するとともに、「監査済財務諸表に対する監査報告書への参照」について詳細に規定している(15項~19項)。

18項は、監査済財務諸表に対する監査報告書において、監査基準委員会報告書701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」に従った監査上の主要な検討事項の報告が含まれている場合には、その旨を要約財務諸表に対する報告書に含めることを監査人に要求している(A21項)。

しかしながら、監査人は要約財務諸表に対する報告書において、監査上の主要な検討事項を個別に記載することは要求されていない(A21項)。

報告書の19項により要求される記述は、このような事項に注意を喚起することを意図したものであり、監査済財務諸表に対する監査報告書を代替するものではない。また、この記述は、当該事項の内容を伝えることを意図したものであり、監査済財務諸表に対する監査報告書の関連する文章を繰り返して記載する必要はない(A22項)。

 

Ⅲ 適用時期等

2022年3月31日以後終了する事業年度に係る要約財務諸表に関する報告業務から適用する。

(了)

筆者紹介

阿部 光成

(あべ・みつまさ)

公認会計士
中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂第2版〕』(編著、商事法務)がある。

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