《速報解説》
日本監査役協会がKAMに関するQ&A集の統合版を公表
~前編・後編公表後の各所の議論を踏まえ設問の追加等を行う~
公認会計士 阿部 光成
Ⅰ はじめに
2020年6月8日、日本監査役協会 会計委員会は、「監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A集・統合版」を公表した。
2019年6月11日公表の「監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A集・前編」、2019年12月4日公表の「監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A集・後編」を統合するものである。
Q&A集の前編及び後編は、KAMに関して早期適用を行う会社を想定していたが、統合版は、公表後の議論などを踏まえ検討したものである。
文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。
Ⅱ 主な改正点
以下では主な改正点について解説する。
1 事業等のリスクとKAMの記載項目の関連性(Q1-3-9)
KAMとされた項目は、必ず、有価証券報告書に記載する事業等のリスクでも記載しないとならないのかについて、両者の整合性は求められていないものの、結果として整合することになると思われるとしている。
可能な限り、記述情報の充実が図られることが望ましいとしている。
2 監査役会等の活動状況とKAMとの関連性(Q1-3-10)
監査役会等の活動状況における記載内容に、KAMを記載しなければならないということはない。
3 KAMと監査役会等の重点監査項目との関係(Q3-2-6)
期初においてKAM候補となった項目と、監査役会等の重点監査項目を一致させる、あるいはあらかじめすみ分けるという整理は不要である。ただし、KAM候補となった項目も、監査役会等の重点監査項目も、ともに監査上の主要な論点であるので、監査役等としては、監査人の情報と執行側の見解を十分に聴取し、チェックする必要がある。
4 株主総会におけるKAMに関する質問(Q3-5-2)
株主総会におけるKAMに関する質問について、次の例示が記載されている。
① KAMとして選定された項目についての詳細
② 当該リスクが発現するトリガーは何か
③ 当該リスクが発現した場合のインパクトはどの程度か
④ 最終的にKAMに選定された事項以外に候補にあがったものは何か
⑤ KAMに選定されるような大きなリスクを生じさせた取引の意思決定プロセス
⑥ 当該取引に関する契約や支出の経緯、妥当性
⑦ ビジネスリスクを適切にマネジメントしているか
⑧ 内部統制システムの運用状況や有効性
(了)