公開日: 2014/12/04 (掲載号:No.97)
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【施行前に再チェック】相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の見直し 【第1回】「平成27年1月1日から適用される改正事項の確認」

筆者: 齋藤 和助

【施行前に再チェック】

相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の見直し

【第1回】

「平成27年1月1日から適用される改正事項の確認」

 

税理士 齋藤 和助

 

1 はじめに

平成26年度税制改正により、相続財産に係る譲渡所得の課税特例(措法39)(以下「相続税の取得費加算の特例」という)について、現行では相続したすべての土地等に対応する相続税相当額が取得費に加算できるのに対し、改正後は譲渡した土地等に対応する相続税相当額だけが取得費に加算できることになる。

本稿は、本改正の施行が平成27年1月1日と目前に迫ってきたことから、【施行前に再チェック】として2回にわたり、改めて改正内容を確認し、施行前の注意点や対応方法をまとめてみた。

 

2 相続税の取得費加算の特例の計算方法の改正

(1) 改正前

相続又は遺贈により財産を取得した個人が、その相続の開始のあった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以降3年を経過する日までに、相続財産を譲渡した場合には、その納付すべき相続税額のうち、一定の金額を、その譲渡した資産の取得費に加算して、その譲渡所得の計算上、控除することができる(措法39①、措令25の16①)。

譲渡所得金額=譲渡収入金額-((取得費+取得費加算額)+譲渡費用等)

この取得費に加算される相続税額は、「土地等の場合」と「土地等以外の場合」に区分され、それぞれ以下のようになる(措令25の16②)。

① 譲渡資産が土地等の場合

② 譲渡資産が土地等以外の場合

(2) 改正後

相続財産である土地等を譲渡した場合の特例について、当該土地等を譲渡した場合に譲渡所得の金額の計算上、取得費に加算する金額は、その者が相続したすべての土地等に対応する相続税相当額から、その譲渡した土地等に対応する相続税相当額とされる。

そのため基本的には、改正前の「土地等以外の場合」の計算式と同様になる(措法39①)。

(3) 適用時期

平成27年1月1日以後の相続等により取得した土地等を譲渡した場合に適用となる。

そのため、平成26年12月31日以前の相続等により取得した土地等を、平成27年1月1日以後に譲渡しても、改正前の適用が受けられる。

 

3 所得税の確定申告書の提出期限後に相続税額が確定した場合

(1) 改正前

措置法第39条第1項に規定する資産を譲渡した場合において、当該譲渡の日の属する年分の所得税の確定申告書を提出した後に相続税の申告書の提出期限が到来し、当該提出期限内に当該相続税の申告書の提出により相続税額が確定したため、納税者から同項の規定の適用方について申出があり、かつ、確定申告書に適用を受ける旨の記載や明細書の添付があった場合には、所轄税務署長の職権等により特例の規定を適用することができる(措通39-15)。

(2) 改正後

相続財産の譲渡に係る確定申告書の提出期限後に、当該相続財産の取得の基因となった相続に係る相続税額が確定した場合(相続税の期限内申告に限る)には、当該相続税の期限内申告書を提出した日の翌日から2月以内に限り、更正の請求により本特例の適用を受けることができる(措法39④)。

(3) 適用時期

平成27年1月1日以後に開始する相続又は遺贈により取得した資産を譲渡する場合について適用となる。

 

4 改正法令の明確化

本特例の改正により、以下の租税特別措置法関係通達での取扱いが法令に規定された。これらは取扱いの明確化なので、基本的に現行と同じ取扱いであり、実務上影響はない。

(1) 適用対象者

非上場株式等についての贈与税の納税猶予の適用を受けていた個人で、当該非上場株式等の贈与者の死亡によって当該非上場株式等を相続により取得した者とみなされるものが加えられた(措法70の7、70の7の3、措法39①)。

(2) 相続税額

① 農地等について相続税の納税猶予を受ける場合の相続税額
農地等についての相続税の納税猶予等の規定の適用があった場合には、相続税の納税猶予適用後の相続税額(納税猶予額を含めた相続税額)とする(措法70の6、措法39⑥)。

② 相続税の修正申告等により相続税額が異動した場合
修正申告等により相続税額が異動した場合は、修正申告後の相続税額とする(措令25の16①②)。

(3) 相続財産

① 換地処分等により取得した資産を譲渡した場合
換地処分等により取得した資産を譲渡した場合においても、当該譲渡資産を適用対象となる相続財産に含める(措法39⑦)。

② 資産の譲渡に含まれる不動産等の貸付け
対象となる相続財産の譲渡には、譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含める(措法39①)。

③ 同一年中に複数の相続財産の譲渡をした場合
譲渡所得の金額の計算上、取得費に加算する金額は、その譲渡をした資産ごとに計算する(措法39⑧)。

(4) 適用時期

平成27年1月1日以後に開始する相続又は遺贈により取得した資産を譲渡する場合について適用となる。

*   *   *

次回(12/11公開)は、施行前の注意点や対応方法を確認してみたい。

(了)

【施行前に再チェック】

相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の見直し

【第1回】

「平成27年1月1日から適用される改正事項の確認」

 

税理士 齋藤 和助

 

1 はじめに

平成26年度税制改正により、相続財産に係る譲渡所得の課税特例(措法39)(以下「相続税の取得費加算の特例」という)について、現行では相続したすべての土地等に対応する相続税相当額が取得費に加算できるのに対し、改正後は譲渡した土地等に対応する相続税相当額だけが取得費に加算できることになる。

本稿は、本改正の施行が平成27年1月1日と目前に迫ってきたことから、【施行前に再チェック】として2回にわたり、改めて改正内容を確認し、施行前の注意点や対応方法をまとめてみた。

 

2 相続税の取得費加算の特例の計算方法の改正

(1) 改正前

相続又は遺贈により財産を取得した個人が、その相続の開始のあった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以降3年を経過する日までに、相続財産を譲渡した場合には、その納付すべき相続税額のうち、一定の金額を、その譲渡した資産の取得費に加算して、その譲渡所得の計算上、控除することができる(措法39①、措令25の16①)。

譲渡所得金額=譲渡収入金額-((取得費+取得費加算額)+譲渡費用等)

この取得費に加算される相続税額は、「土地等の場合」と「土地等以外の場合」に区分され、それぞれ以下のようになる(措令25の16②)。

① 譲渡資産が土地等の場合

② 譲渡資産が土地等以外の場合

(2) 改正後

相続財産である土地等を譲渡した場合の特例について、当該土地等を譲渡した場合に譲渡所得の金額の計算上、取得費に加算する金額は、その者が相続したすべての土地等に対応する相続税相当額から、その譲渡した土地等に対応する相続税相当額とされる。

そのため基本的には、改正前の「土地等以外の場合」の計算式と同様になる(措法39①)。

(3) 適用時期

平成27年1月1日以後の相続等により取得した土地等を譲渡した場合に適用となる。

そのため、平成26年12月31日以前の相続等により取得した土地等を、平成27年1月1日以後に譲渡しても、改正前の適用が受けられる。

 

3 所得税の確定申告書の提出期限後に相続税額が確定した場合

(1) 改正前

措置法第39条第1項に規定する資産を譲渡した場合において、当該譲渡の日の属する年分の所得税の確定申告書を提出した後に相続税の申告書の提出期限が到来し、当該提出期限内に当該相続税の申告書の提出により相続税額が確定したため、納税者から同項の規定の適用方について申出があり、かつ、確定申告書に適用を受ける旨の記載や明細書の添付があった場合には、所轄税務署長の職権等により特例の規定を適用することができる(措通39-15)。

(2) 改正後

相続財産の譲渡に係る確定申告書の提出期限後に、当該相続財産の取得の基因となった相続に係る相続税額が確定した場合(相続税の期限内申告に限る)には、当該相続税の期限内申告書を提出した日の翌日から2月以内に限り、更正の請求により本特例の適用を受けることができる(措法39④)。

(3) 適用時期

平成27年1月1日以後に開始する相続又は遺贈により取得した資産を譲渡する場合について適用となる。

 

4 改正法令の明確化

本特例の改正により、以下の租税特別措置法関係通達での取扱いが法令に規定された。これらは取扱いの明確化なので、基本的に現行と同じ取扱いであり、実務上影響はない。

(1) 適用対象者

非上場株式等についての贈与税の納税猶予の適用を受けていた個人で、当該非上場株式等の贈与者の死亡によって当該非上場株式等を相続により取得した者とみなされるものが加えられた(措法70の7、70の7の3、措法39①)。

(2) 相続税額

① 農地等について相続税の納税猶予を受ける場合の相続税額
農地等についての相続税の納税猶予等の規定の適用があった場合には、相続税の納税猶予適用後の相続税額(納税猶予額を含めた相続税額)とする(措法70の6、措法39⑥)。

② 相続税の修正申告等により相続税額が異動した場合
修正申告等により相続税額が異動した場合は、修正申告後の相続税額とする(措令25の16①②)。

(3) 相続財産

① 換地処分等により取得した資産を譲渡した場合
換地処分等により取得した資産を譲渡した場合においても、当該譲渡資産を適用対象となる相続財産に含める(措法39⑦)。

② 資産の譲渡に含まれる不動産等の貸付け
対象となる相続財産の譲渡には、譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含める(措法39①)。

③ 同一年中に複数の相続財産の譲渡をした場合
譲渡所得の金額の計算上、取得費に加算する金額は、その譲渡をした資産ごとに計算する(措法39⑧)。

(4) 適用時期

平成27年1月1日以後に開始する相続又は遺贈により取得した資産を譲渡する場合について適用となる。

*   *   *

次回(12/11公開)は、施行前の注意点や対応方法を確認してみたい。

(了)

連載目次

「【施行前に再チェック】相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の見直し」(全2回)

筆者紹介

齋藤 和助

(さいとう・わすけ)

税理士
齋藤和助税理士事務所

東京都出身 法政大学卒
平成12年 税理士試験合格
平成13年 税理士登録
平成15年 東京都千代田区にて税理士として独立開業
TAC税法実務講座相続税法講師
長年にわたり税賠保険事故の調査を担当

【主要著書】
・『ケーススタディ 消費税実務における判断ミスと対応策』(清文社)
・冊子「事例で確認!消費税実務のうっかりミス対応策」(清文社)
・『税理士損害賠償請求事例にみる事故原因と予防策』(清文社)
・『税理士の専門家責任とトラブル未然防止策』共著(清文社)
・『FP技能士検定試験集中レッスン』共著(成美堂)
・『パーフェクトFP技能士入門』共著(金融財政事情研究会)
・『法人税是否認事例詳解』共著(税務経理協会)
・『相続税贈与税の実務』(TAC出版)
など

  

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