IT業界の労務問題と対応策
【第1回】
「日本のIT業界、拡大の変遷」
社会保険労務士法人スマイング 代表社員
特定社会保険労務士 成澤 紀美
本連載では、拡大を続けるIT業界においてどのような労務問題が起きているかを明らかにしたいが、第1回では、まず、日本におけるこの業界の変遷について触れておきたい。
「IT業界」というと、先進的な技術が次から次と生まれ、スピード感があり、常に世の中の先頭を走っている業界というイメージがあるのではないか。
「IT業界」はコンピュータの登場からその歴史が始まり、インターネットの普及により今では社会の多方面に影響する業界となっている。
1946年、米国で世界初のコンピュータENIAC(エニアック)が開発され、1951年、世界で初めての商用コンピュータが米国政府連邦統計局向けに納入されたのが商用ビジネスとしての普及の第一歩となる。
日本国内では、商用ネットワークは1960年代から実用化が始まっていたが、中小企業や個人向けのネットワークが登場するのは、1995年以降になる。
1980年代に個人向けコンピュータである「パソコン(パーソナル・コンピュータ)」が登場し、さらにパソコンを動かすための基本ソフトであるWindowsの普及により、中小企業や個人でのコンピュータ利用が一気に拡大していく。
1995年以降、国内でインターネットが爆発的な広がりをみせ、当たり前のようにホームページやE-mailを利用するようになった。さらにインターネットの登場で、家庭生活からオフィスでの仕事のやり方までが激変した。
また、携帯電話の普及も我々の生活を一変させる。
1996年以降、本格的に普及し始めた携帯電話は、2000年に入ると1人1台以上保有するまでに普及し、その機能も充実していく。
そして、2007年にアップル社のiPhoneが登場すると、携帯電話市場は一変する。
携帯電話からスマートフォンへと携帯電話市場の潮流は向きを変え、さらにiPadの登場で、新たにタブレット端末市場が登場した。
コンピュータに対する企業の取組みも変化し、今では、商用システムから個人向けアプリケーションと、多種多様な機種・システムが求められている。
さらに、2011年に発生した東日本大震災により、一気にクラウドコンピューティングが進み、コンピュータ産業はクラウドコンピューティングとビッグデータの時代に入りつつあるといえる。
これらの流れから生まれた「IT業界」。ひとくくりに表現されることが多いようだが、実は様々な業種・職種が混在しているのがIT業界といえる。
業界構造から見ると、主に大きく4つに分けられる。
1つ目は携帯ゲーム、SNS、ネット決済などの「インターネットサービス」に注力する業界。
2つ目にコンピュータに必要不可欠なオペレーションシステムや、ワープロ機能・表計算機能など様々な機能を実現させるアプリケーションなどを開発する「ソフトウェア開発」に注力する業界。
3つ目にコンピュータ自体や、その周辺機器などを開発する「ハードウェア開発」に注力する業界。
そして4つ目にインターネットを始めとしたネットワーク環境に必要不可欠な「通信インフラ」を取り扱う業界となる。
次回は、IT業界にありがちな労務トラブルについてお伝えしたい。
(了)