養子縁組を使った相続対策と
法規制・手続のポイント
【第1回】
「養子縁組の種類と成立要件・養子縁組が認められなかった裁判例」
弁護士・税理士 米倉 裕樹
-連載開始に当たって-
平成27年1月1日に改正相続税法が施行された。改正相続税法の最大のポイントは、基礎控除額が従来の6割に縮小されることである。
その結果、これまで相続税の納税対象外であった者についても納税対象者となりえる事態が多々見込まれる。
養子縁組は、過去に、相続税対策の一環として濫用されたことから、相続税の計算の際に認められる養子の数は、現行法上、原則として、被相続人に実子がいる場合は1人、実子がない場合は2人までとされている(相法15②)。また、孫(代襲相続人を除く)を養子にしていた場合、孫の相続税が2割加算される(相法18②)。
これは、相続税の計算の際に基礎控除を増やすために、孫などを何人も養子にして節税することを制限し、かつ1代とばして財産を相続させることで2割加算の回避に歯止めをかけることを目的とする。
このように、養子縁組を利用した相続対策は、現行法制度のもとでは一定の歯止めがかけられているものの、対策次第では、養子縁組を利用することで相続税が軽減される結果とはなりえる。
ただし、あくまでも、養子縁組の法制度を潜脱しないことが大前提である。
現行養子縁組の法制度に関する正確かつ詳細な知識がないままに、相続税対策に主眼を置いた養子縁組を行うことは、かえって大きなリスクを伴うことになる。
そこで、本連載では養子縁組を使った相続対策を検討・紹介する前提として、まずは養子縁組の法制度・手続のポイントから詳細かつわかりやすく解説を行うこととする。
[1] 養子の種類
「養子」とは、適法な養子縁組によって養親の嫡出子としての身分を取得した子をいい、養子には「普通養子」と「特別養子」の2種類が存在する。
「普通養子縁組」とは、養子が実親との親子関係を継続したまま、養親との親子関係をつくるという二重の親子関係となる縁組のことをいう。
これに対し、「特別養子縁組」とは、養子が戸籍上も実親との親子関係を断ち切り、養親が養子を実子と同じ扱いにする縁組のことをいう。
普通養子と特別養子との主な相違点は以下のとおりである。
〈普通養子縁組〉
① 養子と実方の父母及びその血族との親子関係は継続する。
② 戸籍には養親及び養子の身分事項に縁組事項が記載される。
③ 離縁は原則として当事者の合意により自由に行える。
〈特別養子縁組〉
① 養子と実方の父母及びその血族との親族関係は原則として消滅する。
② 戸籍の記載はできる限り実子と同様の記載がなされる。
③ 離縁は養親の虐待等、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由がある場合にのみ認められる。
[2] 普通養子の成立要件
まずは普通養子縁組を行うに当たり必要となる要件から解説する。
普通養子の成立には、「形式的要件」と「実質的要件」を満たす必要がある。形式的要件とは、縁組当事者の意思とは離れた一定の手続・届出等を意味し、実質的要件とは形式的要件を除いた縁組当事者の意思、及び客観的事情等を意味する。
なお、いずれの場合においても、これら要件を満たさない縁組は無効である。
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