公開日: 2015/06/11 (掲載号:No.123)
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養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第1回】「養子縁組の種類と成立要件・養子縁組が認められなかった裁判例」

筆者: 米倉 裕樹

養子縁組を使った相続対策と

法規制・手続のポイント

【第1回】

「養子縁組の種類と成立要件・養子縁組が認められなかった裁判例」

 

弁護士・税理士 米倉 裕樹

 

-連載開始に当たって-

平成27年1月1日に改正相続税法が施行された。改正相続税法の最大のポイントは、基礎控除額が従来の6割に縮小されることである。

その結果、これまで相続税の納税対象外であった者についても納税対象者となりえる事態が多々見込まれる。

養子縁組は、過去に、相続税対策の一環として濫用されたことから、相続税の計算の際に認められる養子の数は、現行法上、原則として、被相続人に実子がいる場合は1人、実子がない場合は2人までとされている(相法15②)。また、孫(代襲相続人を除く)を養子にしていた場合、孫の相続税が2割加算される(相法18②)。

これは、相続税の計算の際に基礎控除を増やすために、孫などを何人も養子にして節税することを制限し、かつ1代とばして財産を相続させることで2割加算の回避に歯止めをかけることを目的とする。

このように、養子縁組を利用した相続対策は、現行法制度のもとでは一定の歯止めがかけられているものの、対策次第では、養子縁組を利用することで相続税が軽減される結果とはなりえる。

ただし、あくまでも、養子縁組の法制度を潜脱しないことが大前提である。

現行養子縁組の法制度に関する正確かつ詳細な知識がないままに、相続税対策に主眼を置いた養子縁組を行うことは、かえって大きなリスクを伴うことになる。

そこで、本連載では養子縁組を使った相続対策を検討・紹介する前提として、まずは養子縁組の法制度・手続のポイントから詳細かつわかりやすく解説を行うこととする。

 

[1] 養子の種類

「養子」とは、適法な養子縁組によって養親の嫡出子としての身分を取得した子をいい、養子には「普通養子」と「特別養子」の2種類が存在する。

「普通養子縁組」とは、養子が実親との親子関係を継続したまま、養親との親子関係をつくるという二重の親子関係となる縁組のことをいう。

これに対し、「特別養子縁組」とは、養子が戸籍上も実親との親子関係を断ち切り、養親が養子を実子と同じ扱いにする縁組のことをいう。

普通養子と特別養子との主な相違点は以下のとおりである。

〈普通養子縁組〉

 養子と実方の父母及びその血族との親子関係は継続する。

 戸籍には養親及び養子の身分事項に縁組事項が記載される。

 離縁は原則として当事者の合意により自由に行える。

〈特別養子縁組〉

 養子と実方の父母及びその血族との親族関係は原則として消滅する。

 戸籍の記載はできる限り実子と同様の記載がなされる。

 離縁は養親の虐待等、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由がある場合にのみ認められる。

 

[2] 普通養子の成立要件

まずは普通養子縁組を行うに当たり必要となる要件から解説する。

普通養子の成立には、「形式的要件」と「実質的要件」を満たす必要がある。形式的要件とは、縁組当事者の意思とは離れた一定の手続・届出等を意味し、実質的要件とは形式的要件を除いた縁組当事者の意思、及び客観的事情等を意味する。

なお、いずれの場合においても、これら要件を満たさない縁組は無効である。

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養子縁組を使った相続対策と

法規制・手続のポイント

【第1回】

「養子縁組の種類と成立要件・養子縁組が認められなかった裁判例」

 

弁護士・税理士 米倉 裕樹

 

-連載開始に当たって-

平成27年1月1日に改正相続税法が施行された。改正相続税法の最大のポイントは、基礎控除額が従来の6割に縮小されることである。

その結果、これまで相続税の納税対象外であった者についても納税対象者となりえる事態が多々見込まれる。

養子縁組は、過去に、相続税対策の一環として濫用されたことから、相続税の計算の際に認められる養子の数は、現行法上、原則として、被相続人に実子がいる場合は1人、実子がない場合は2人までとされている(相法15②)。また、孫(代襲相続人を除く)を養子にしていた場合、孫の相続税が2割加算される(相法18②)。

これは、相続税の計算の際に基礎控除を増やすために、孫などを何人も養子にして節税することを制限し、かつ1代とばして財産を相続させることで2割加算の回避に歯止めをかけることを目的とする。

このように、養子縁組を利用した相続対策は、現行法制度のもとでは一定の歯止めがかけられているものの、対策次第では、養子縁組を利用することで相続税が軽減される結果とはなりえる。

ただし、あくまでも、養子縁組の法制度を潜脱しないことが大前提である。

現行養子縁組の法制度に関する正確かつ詳細な知識がないままに、相続税対策に主眼を置いた養子縁組を行うことは、かえって大きなリスクを伴うことになる。

そこで、本連載では養子縁組を使った相続対策を検討・紹介する前提として、まずは養子縁組の法制度・手続のポイントから詳細かつわかりやすく解説を行うこととする。

 

[1] 養子の種類

「養子」とは、適法な養子縁組によって養親の嫡出子としての身分を取得した子をいい、養子には「普通養子」と「特別養子」の2種類が存在する。

「普通養子縁組」とは、養子が実親との親子関係を継続したまま、養親との親子関係をつくるという二重の親子関係となる縁組のことをいう。

これに対し、「特別養子縁組」とは、養子が戸籍上も実親との親子関係を断ち切り、養親が養子を実子と同じ扱いにする縁組のことをいう。

普通養子と特別養子との主な相違点は以下のとおりである。

〈普通養子縁組〉

 養子と実方の父母及びその血族との親子関係は継続する。

 戸籍には養親及び養子の身分事項に縁組事項が記載される。

 離縁は原則として当事者の合意により自由に行える。

〈特別養子縁組〉

 養子と実方の父母及びその血族との親族関係は原則として消滅する。

 戸籍の記載はできる限り実子と同様の記載がなされる。

 離縁は養親の虐待等、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由がある場合にのみ認められる。

 

[2] 普通養子の成立要件

まずは普通養子縁組を行うに当たり必要となる要件から解説する。

普通養子の成立には、「形式的要件」と「実質的要件」を満たす必要がある。形式的要件とは、縁組当事者の意思とは離れた一定の手続・届出等を意味し、実質的要件とは形式的要件を除いた縁組当事者の意思、及び客観的事情等を意味する。

なお、いずれの場合においても、これら要件を満たさない縁組は無効である。

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連載目次

養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント
(全25回)

第1部 養子縁組をめぐる法規制と手続

【第1回】 養子縁組の種類と成立要件・養子縁組が認められなかった裁判例
【第2回】 養子縁組の効果
【第3回】 普通養子縁組の手続と虚偽縁組の回避策
【第4回】 特別養子縁組の手続
【第5回】 戸籍の記載~養子の氏と戸籍~
【第6回】 外国人との養子縁組と戸籍・国籍への影響
【第7回】 離縁の要件・離縁を認めなかった裁判例
【第8回】 離縁の手続(普通養子・特別養子)
【第9回】 離縁に伴う復氏・復籍
【第10回】 渉外離縁手続
【第11回】 養子縁組の取消し
【第12回】 離縁の無効・取消し

第2部 養子縁組を使った代表的な相続対策と留意点

【第13回】 民法上の養子と相続税法上の養子
【第14回】 養子縁組のメリットとデメリット
【第15回】 養子縁組前の養子の子が養親の直系卑属に当たる場合と代襲相続権
【第16回】 孫養子の相続税の節税効果
【第17回】 養子と法定相続人(相続税の負担が不当に減少させる結果となる場合)
【第18回】 遺言とその後の協議離縁

第3部 Q&A

【第19回】 普通養子縁組から特別養子縁組への転換
【第20回】 虚偽の嫡出子出生届と養子縁組
【第21回】 離縁と親権
【第22回】 養父母の死亡と親権
【第23回】 遺族年金と養子縁組
【第24回】 離縁と財産分与・慰謝料
【第25回】 養親の離婚と養子の相続権

筆者紹介

米倉 裕樹

(よねくら・ひろき)

弁護士・税理士

【経歴等】
立命館大学法学部卒
1999年大阪弁護士会登録(第51期)
弁護士法人北浜法律事務所 パートナー弁護士
近畿弁護士会連合会税務委員会委員長(平成27年5月~同29年4月)

【著書・論文等】
相続税 税務調査[指摘事項]対応マニュアル」(清文社2018年出版)共著
弁護士と税理士の相互質疑応答集」(清文社2017年出版)編者・共著
税理士が実際に悩んだ相続問題の法務と税務」(清文社2014年出版)
有利な心証を勝ち取る民事訴訟遂行」(清文社2015年出版)
「弁護士は民事裁判をどう見ているか(調査結果の分析)」(日本弁護士連合会「自由と正義」共著、2013年8月号)
「Doing Business in Japan」(53版改訂版以降、執筆担当Consumption Tax(消費税)共著、LexisNexis社、2013年~)
そこが危ない!消費増税をめぐる契約実務Q&A」(清文社2013年出版)等

  
 

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