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会社法施行後10年経過に関する「役員変更登記」の実務 【第2回】「役員任期の確認方法と任期計算のポイント」

筆者:本橋 寛樹

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会社法施行後10年経過に関する

「役員変更登記」の実務

【第2回】

「役員任期の確認方法と任期計算のポイント」

 

司法書士法人F&Partners
司法書士 本橋 寛樹

 

前回は役員の任期管理を怠った場合に被る不利益について、3つのステージに分けて確認した。今回は役員任期の確認方法や事例を使った任期計算など、自社で行う役員改選の登記のポイントについて確認したい。

 

主な確認事項

役員の任期満了時期は「①登記記録」、「②株主総会議事録」、「③定款」によって確認する。

① 登記記録

役員が誰であるのか、及び、役員の就任日を把握する。

【役員に関する事項:登記記録例】
取締役A 平成18年6月10日就任 平成18年6月24日登記

登記記録としては、それぞれの役員につき上段と下段の2欄があるが、上段が任期計算の資料となる「就任」又は「重任」の年月日となる。任期計算の起算点は「選任時」であるため、登記記録上、選任日を確認することはできないが、選任決議の株主総会で席上就任している等、選任日と就任日が同一であることが多い。

厳密には、選任決議をした株主総会議事録を参照することで確認することができる。下段が登記申請の年月日であり、上段と下段の年月日の間が2週間以内であれば登記期間が守られていることになり、法令遵守の意識の高さを対外的に示す材料の1つとなる。

② 株主総会議事録

役員の選任日を確認する。

③ 定款

主に以下の定めにより、役員の任期満了時期を把握する。
項 目 着目ポイント □ 役員の任期 任期の年数及び増員・補欠の定めを確認する(会社法332条1項・336条1項・3項)。 取締役には増員・補欠の概念があるが、監査役には増員の概念がない。 ※「増員」:在任者の残存任期と同一であるか 「補欠」:前任者の残存任期を引き継ぐか □ 事業年度 事業年度の末日である、「決算日」に着目する。 □ 招集 最終事業年度の末日(決算日)から起算して定時株主総会開催の時期を確認する

定款の所在が不明である場合、以下の資料をもとに復元する方法が考えられる。会社を設立してから一度も定款変更していない場合、会社設立の際に定款認証を依頼した公証役場に少なくとも20年間保管されているため、同一の内容の定款を入手できる可能性が高い。

以下の資料をもっても復元が困難である場合には、株主総会の特別決議を経て、新たに定款を設けることも一案であろう(会社法466条)。

※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。
資料名 備 考 入手先 保存期間・備考 原始定款 会社設立時に公証人の認証を受けた定款 公証役場 20年(公証人法施行規則27条1号) 登記事項証明書 定款に記載される主要事項が記録 法務局 履歴事項全部証明書 3年前の1月1日前の、登記事項証明書の場合、閉鎖した登記記録に移行 管轄外本店移転の場合も旧本店所在地の登記記録は閉鎖 閉鎖事項全部証明書 閉鎖した登記記録 閉鎖日から20年 (商業登記規則34条2項) 株主総会議事録 定款変更の決議をした内容のもの 自社 株主総会の日から10年 (会社法318条) 登記申請の附属書類 定款や定款変更決議の株主総会議事録が登記添付書面 法務局 登記受付日から5年 (商業登記規則34条4号) 登記申請の定款 司法書士が登記関係書類の作成・保存している場合 司法書士 保存されている場合 許認可用の定款 許認可で官公庁に定款を提出した場合 官公庁 許認可にかかる法令

 

任期計算のポイント

①登記記録、②株主総会議事録、③定款の資料が揃ってはじめて任期管理を検討することができる。

役員の任期計算で誤解しやすいポイントとして、株式会社の役員の任期を決算期の到来した回数から判断することがあるが、決算期の到来した回数は役員の任期と関係がない。任期計算を誤ると、役員の任期満了時期を見誤ることにつながる。

そこで、これまでみてきた①登記記録、②株主総会議事録、③定款の確認事項を下記事例に当てはめ、かつ、誤解されやすい任期計算のポイントを踏まえて株式会社の取締役の任期満了時期について考察する。

事 例

① 登記記録

取締役A 平成18年6月10日就任 平成18年6月24日登記 取締役B 平成19年10月1日就任 平成19年10月10日登記

② 株主総会議事録

取締役Aは平成18年6月10日の定時株主総会で選任され、席上就任承諾した旨の記載がある。

取締役Bは平成19年10月1日の臨時株主総会で、増員のため選任され、同日付の就任承諾書がある。

③ 定款

〇任期:「取締役の任期は選任後10年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終結時まで」、「任期満了前に退任した取締役の補欠として、又は増員により選任された取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。」の定めがある。

〇事業年度:「毎年4月1日から翌年3月31日まで」の定めがある。

〇招集:「事業年度終了時から3ヶ月以内に定時株主総会を開催するものとする。」の定めがある。

【取締役Aの任期の考え方】

(1) 選任の年月日に任期の年数を加える

任期の期間計算については、初日不算入が原則である(民法140条)。定時株主総会で選任され、席上就任承諾をしている場合、選任の時点が1日の途中であるため、初日不算入となる。
本事例では、選任日の翌日である平成18年6月11日(0時)が期間計算上の初日となる。この日付に任期の年数「10年」を加えると、平成28年6月11日(0時=6月10日24時)となる。

(2) (1)の日付からみた最終事業年度に関する決算日を確認する

「最終事業年度」とは、言い換えると「過去に向かって直近の事業年度」を意味する。(1)の日付である平成28年6月11日(0時)からみた直近の決算日は、平成28年3月31日ということになる。

(3) 定款の招集の定めにより、最終事業年度の関する定時株主総会の開催時期を確認する

最終事業年度の末日は平成28年3月31日であり、決算期から3ヶ月以内に開催とあるため、平成28年4月1日から同年6月30日の間で定時株主総会が開催されることとなる。

【結論】

(1)(2)(3)より、取締役Aの任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終結時に任期満了退任することから、取締役の任期満了日は平成28年4月1日から6月30日の間で開催される定時株主総会の終結時に任期満了することとなる。

平成28年6月10日(金)に定時株主総会が開催され、取締役Aが選任・就任の場合、登記期間の2週間の期限は、初日不算入の関係で平成28年6月24日(金)となる。

仮に、平成28年6月30日までに定時株主総会が開催されない場合には、取締役Aは平成28年6月30日(24時)をもって任期満了退任となるが、会社法又は定款の定めによる取締役の員数を欠く場合には、権利義務を有する取締役ということになる(会社法346条1項)。この場合、取締役の選任を怠ったとして、過料制裁の対象となる(会社法976条22号)。

【取締役Bと監査役の任期の考え方(比較)】

取締役Bは選任時点である平成19年10月1日当時在任取締役Aの増員として選任されている。定款に「任期満了前に選任した取締役又は増員により選任された取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期と同一とする。」の定めが取締役Bの任期に適用されるため、在任取締役Aと同一の時期である、平成28年4月1日から6月30日の間で開催される定時株主総会の終結時に任期満了することとなる。

なお、監査役には会社法上、増員の監査役の任期短縮の定めを設けることができる規定がない。したがって取締役Bと同一日に選任されたとしても、補欠監査役に該当しない限り、任期満了時期は平成29年4月1日から6月30日の間で開催される定時株主総会の終結時となる。

取締役と監査役の任期規定は、任期伸長に関しては共通しているが、監査役の独立性の保障の観点から監査役の任期が短縮される場面は取締役と比べて限定されているので任期計算上取締役と比較して検討する必要がある。

 

任期満了に加えて検討する事項

次に、役員変更登記とあわせて行うべき登記手続や役員変更登記に関する会社法・商業登記規則の改正内容を以下に列挙する。

□ 代表取締役の住所移転

《コメント》
前回の登記手続から代表者の住所が移転している場合がある。特に役員の全員重任で入れ替わりがない場合、前回と同一の登記内容であるとして住所変更の事項を見落としやすいので注意を要する。

□ 本人確認証明書の添付

《コメント》
平成27年施行の改正商業登記規則により新設された。従来、取締役会設置会社で代表権のない取締役や監査役が新任の場合、登記添付書類で住所記載のものは求められていなかった。しかし、実在性の担保や役員の責任追及の観点から、取締役、監査役等の就任(再任を除く)による変更の登記の申請書には、当該取締役・監査役等が就任を承諾したことを証する書面に記載した氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(以下、「本人確認証明書」という)を添付することが必要となった(商業登記規則61条5項)。

例えば、住民票や戸籍の附票の原本、運転免許証の両面や個人番号カードの表面に原本に相違がない旨を署名又は記名押印したもの等が本人確認証明書の例として挙げられる。

⇒法務省webサイト「(1)取締役等が就任する場合の添付書面(規則第61条第5項)」。

□ 代表取締役の辞任

《コメント》
平成27年施行の改正商業登記規則により新設された。従来、代表取締役の辞任に添付する辞任届に押印する印鑑に制限はなかった。しかし、代表者の交代で従前の代表者は登記手続に関与しないため、従前の会社の代表者が知らないうちに虚偽の退任登記がされるということがあった。

そこで、登記所に印鑑を提出している会社代表者の辞任の登記を申請するときには、辞任届に当該代表取締役の個人の実印を押印し、市区町村長作成の印鑑証明書を添付するか、又は辞任届に登記所届出印の押印が必要とし(商号登記規則61条6項)、従前の代表者が辞任する意思表示をより慎重な手続のうえ行うこととされた。

⇒法務省webサイト「(2)代表取締役等が辞任する場合の添付書面(規則第61条第6項)

□ 婚姻前の氏の記録の申出

《コメント》
平成27年施行の改正商業登記規則により新設された。婚姻後も婚姻前の氏で活動をしている取締役や監査役等を対象に、同一人であることを登記記録上公示し、取引の安全を図るため、登記記録に婚姻前の氏を併記できる申出ができるようになった。

行政上のサービスの一環とされており、申出は任意であるが、申出のタイミングは役員変更登記や氏の変更時に限定されている。役員の変更登記の時期に対象者の申出の意思確認をすべきであろう。

⇒法務省webサイト「役員の登記の添付書面・役員欄の氏の記録が変わります(平成27年2月27日から)

□ 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定め

《コメント》
平成27年施行の改正会社法により新設された。監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めの有無によって会社法上の規律が異なるにもかかわらず、登記記録上は当該定めの有無の区別なく「監査役設置会社」とされていた。そこで当該定めを登記事項とすることで、会社法上の規律が異なる旨を登記記録から読み取れるようになった。当該定款の定めがある場合に該当するときは、その登記申請をする必要がある。定款に当該定めが明記されている場合は該当の有無の判別が分かりやすいが、当該定めが定款に明記されていなくとも当該定めがあるものとみなされる場合があるので、定款に当該定めがないことをもって登記申請が不要であると判断すべきではない。

なお、登記申請に経過措置が設けられている。改正会社法の施行(平成27年5月1日)以後、最初に監査役が就任し、又は退任するまでの間は、当該登記申請をすることを要しない(改正法附則22条1項)。監査役の変更登記をする際にあわせて当該定めの登記をする場合の登録免許税は、監査役の変更登記に要するもので足りる。これは「役員区」として、登録免許税の区分と同一だからである(登録免許税別表第一の24号(一)カ)。したがって、当該事項の登記をすることで登録免許税の追加的な負担は生じない。

監査役の変更登記時に、当該定めの登記申請をする必要があるか否かの判別をする。必要がある場合には、監査役の就任又は退任する場合でない場合でも、取締役の役員変更登記とあわせて前倒しで当該定めの登記申請をすると、登記期間の遵守や登録免許税負担軽減の観点から有益である。当該定めの登記の申請の時期を見落としやすい点と、登録免許税の区分が役員変更登記のものと同一である点が理由である。

当該登記申請が必要であるかの判別の詳細は、下記webサイトを参照されたい。

⇒京都地方法務局webサイト「株式会社の監査役の監査の範囲について

 

-むすび-

会社法施行後、役員の任期を伸長する選択をすることができるようになり、登記費用の軽減を実現できた会社がある。一方で、登記管理に目が行き届かなくなった会社もあることだろう。

近年の商業登記は、登記必要書類の増加や新たな登記事項が設けられる法改正が相次いでいる。任期を伸長しないとすると、その分登記手続の回数が増えるが、法改正や任期管理の面からも公認会計士、税理士、司法書士をはじめとする専門家から情報を得られる機会が増える。

従来の役員任期のあり方を振り返って任期の長短の長所、短所を洗い出し、役員の任期管理の方法をあらためて検討してみてはいかがだろうか。

他方で、公認会計士、税理士、司法書士等の立場からは、能動的に顧問先の会社の任期を確認し、適切なタイミングで顧問先に役員の任期満了に伴う改選決議及びそれに関する登記手続の案内をするサービスを提供すると、顧問先の満足度の向上につながるのではないだろうか。

【参考URL】
法務省webサイト:『役員の変更の登記を忘れていませんか?(会社法施行後10年を迎えます。)

【参考文献】

・筧康夫=神﨑満治郎=立花宣男『詳解商業登記(上巻)[全訂第2版]』107-110頁(金融財政事情研究会、2015)

・佐藤真紀子「平成27年改正商業登記規則等に基づく商業・法人登記事務の取扱いについて」登記情報第55巻(2015)5号 23-37頁

・平成26・7・9民商第60号法務局長・地方法務局長宛て民事局長通達「休眠会社及び休眠一般法人の整理等について」登記情報第55巻(2015)5号135-137頁

・江頭憲治郎(2015)『株式会社法[第6版]』有斐閣 986頁

・土手敏行(2014)『Q&A商業登記利用案内』金融財政事情研究会 248、249頁

・金子登志雄(2014)『事例で学ぶ 会社法実務【設立から再編まで】』209、213、214頁

・神﨑満治郎=金子登志雄=鈴木龍介(2009)『商業・法人登記300問』195、196頁

・坂本三郎(2015)『一問一答 平成26年改正会社法[第2版]』商事法務 370-373頁

(連載了)

連載目次

「会社法施行後10年経過に関する「役員変更登記」の実務」(全2回)

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筆者紹介

  • 本橋 寛樹

    (もとはし・ひろき)

    司法書士

    東京都出身
    平成23年3月 早稲田大学社会科学部社会科学科卒
    平成24年10月 司法書士試験合格
    東京都内の司法書士法人に勤務、相続・商業登記を中心に実務経験を積む
    平成28年3月 司法書士法人F&Partners入所

    【事務所】
    司法書士法人F&Partners(京都事務所)
    〒604‐8162
    京都市中京区七観音町623番地第11長谷ビル5階
    TEL:075-256-4548
    URL:http://www.256.co.jp/

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