公開日: 2025/03/19 (掲載号:No.611)
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〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第70回】「合同会社の社員に対する事前確定届出給与の支給」

筆者: 中尾 隼大

〈ポイント解説〉

役員報酬の税務

【第70回】

「合同会社の社員に対する事前確定届出給与の支給」

 

税理士 中尾 隼大

 

【 質 問 】

合同会社である当社は、事前確定届出給与に関する届出書を提出します。これにより、役員に対して定期同額給与以外に報酬を支給した部分を損金算入する予定です。
何か留意点はありますか。


【 回 答 】

東京国税局が、合同会社の社員に対して事前確定届出給与を支給する場合の税務上の取扱いについて、文書回答事例を公表したため、その内容を中心に解説します。

○●○● 解 説 ●○●○

(1) 株式会社と合同会社の相違

ネット上において「個人事業の法人成りは、手続き等が簡単な合同会社がお勧めです」等、合同会社のメリットを強調する内容が散見される。具体的には、合同会社の設立について、定款認証が不要であったり、登録免許税が株式会社設立の場合より低かったり、利益配分の自由度が高かったり、所有と経営が一致する形態であったりと、様々な内容が解説されている。

他方、法人成りについて株式会社を選択した場合、合同会社に比べてコストや自由度の面で劣る面があることは否めない。例えば、利益配分は原則的に株式数に応じる必要があるし、役員の選任(会社法329①)やその任期(会社法332)、そしてその職務執行の対価(会社法361①)、つまり役員報酬の額は株主総会の決議により定めなければならない。また、計算書類の承認についても定時株主総会で承認されなければならない(会社法438)。

このうち、職務執行の対価は株式総会の決議によって定めなければならないことは、いわゆるお手盛り防止と理解されている。これを前提に、定められる役員給与及び役員賞与の額は定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価であると考えられ、その職務執行の開始の日は定時株主総会の開催日となると認識されている。そして、この職務執行の開始の日は、事前確定届出給与に関する届出書の提出期限の判断に影響を及ぼすこととなる(※)。

(※)  事前確定届出給与に関する届出書については本連載【第17回】参照。

ここで、合同会社に関しては、会社法上、職務執行の対価を総会で決定すべきとする旨の規定がないため、事前確定届出給与に関する届出書の提出期限の判断に迷うこととなる。

 

(2) 国税庁による文書回答事例

この点について、令和7年2月28日、東京国税局が文書回答事例「合同会社の社員に対して事前確定届出給与を支給する場合の税務上の取扱いについて」を公表したので、その内容を確認する(以下、「文書回答事例」という)。

文書回答事例では、合同会社が事前確定届出給与の制度自体を活用できるかどうか、かつ、事前確定届出給与に関する届出書の提出期限について「社員総会の開催日から1月を経過する日」と理解してよいかを照会したものであり、東京国税局は、当該理解で差し支えない旨を回答している。

注目したいのは、照会した背景として、

法人税基本通達9-2-16によれば、・・・「職務の執行の開始の日」とは、その役員がいつから就任するかなど個々の事情によるとされており、また、会社法上、合同会社の社員については、株式会社の取締役に対して規定されている任期に関する定め(会社法332)や株主総会の決議による選任の手続についての定め(会社法329①)などが規定されておらず、定款に別段の定めがある場合を除き、社員となった者が合同会社の業務を執行することとされています(会社法590①)。
 したがって、合同会社の社員については、会社法上、「職務の執行の開始の日」を強いて定める必要がなく、社員となったときからその業務を執行することとなり、その合同会社の社員となった日の属する事業年度の翌事業年度以後の「職務の執行の開始の日」が明らかではありません。

とされていることである。

さらに照会者は、自社の状況について「前事業年度以前の決算の状況を踏まえた当事業年度の業績見込みを考慮してその決定を行うため、前事業年度の決算が確定する定時社員総会において、その役員給与及び本件役員賞与の支給日及び支給金額をその総社員の同意をもって決定することとして」おり、かつ「定時社員総会の開催日を業務執行社員の『職務の執行の開始の日』としている」ことを示している。

 

(3) 合同会社における事前確定届出給与の支給

文書回答事例では、これまで曖昧であった、事前確定届出給与に関する届出書の提出期限について見解を示したものである。

照会者と同様、上記前提であれば事前確定届出給与損金算入が認められ、かつ提出期限の起点を定時社員総会の開催日として差し支えないと示された点は、実務上参考となるものであるといえる。

 

〔凡例〕
法法・・・法人税法
法令・・・法人税法施行令
法規・・・法人税法施行規則
法基通・・・法人税基本通達
措法・・・租税特別措置法
措令・・・租税特別措置法施行令
措規・・・租税特別措置法施行規則
措通・・・租税特別措置法関係通達
所法・・・所得税法
所令・・・所得税法施行令
所基通・・・所得税基本通達
消法・・・消費税法
消基通・・・消費税法基本通達
相法・・・相続税法
相基通・・・相続税法基本通達
財基通・・・財産評価基本通達
通法・・・国税通則法
通令・・・国税通則法施行令
地法・・・地方税法
地令・・・地方税法施行令
地規・・・地方税法施行規則
(例)法法34①一・・・法人税法34条1項1号

(了)

次回は4/17に公開予定です。

〈ポイント解説〉

役員報酬の税務

【第70回】

「合同会社の社員に対する事前確定届出給与の支給」

 

税理士 中尾 隼大

 

【 質 問 】

合同会社である当社は、事前確定届出給与に関する届出書を提出します。これにより、役員に対して定期同額給与以外に報酬を支給した部分を損金算入する予定です。
何か留意点はありますか。

【 回 答 】

東京国税局が、合同会社の社員に対して事前確定届出給与を支給する場合の税務上の取扱いについて、文書回答事例を公表したため、その内容を中心に解説します。

○●○● 解 説 ●○●○

(1) 株式会社と合同会社の相違

ネット上において「個人事業の法人成りは、手続き等が簡単な合同会社がお勧めです」等、合同会社のメリットを強調する内容が散見される。具体的には、合同会社の設立について、定款認証が不要であったり、登録免許税が株式会社設立の場合より低かったり、利益配分の自由度が高かったり、所有と経営が一致する形態であったりと、様々な内容が解説されている。

他方、法人成りについて株式会社を選択した場合、合同会社に比べてコストや自由度の面で劣る面があることは否めない。例えば、利益配分は原則的に株式数に応じる必要があるし、役員の選任(会社法329①)やその任期(会社法332)、そしてその職務執行の対価(会社法361①)、つまり役員報酬の額は株主総会の決議により定めなければならない。また、計算書類の承認についても定時株主総会で承認されなければならない(会社法438)。

このうち、職務執行の対価は株式総会の決議によって定めなければならないことは、いわゆるお手盛り防止と理解されている。これを前提に、定められる役員給与及び役員賞与の額は定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価であると考えられ、その職務執行の開始の日は定時株主総会の開催日となると認識されている。そして、この職務執行の開始の日は、事前確定届出給与に関する届出書の提出期限の判断に影響を及ぼすこととなる(※)。

(※)  事前確定届出給与に関する届出書については本連載【第17回】参照。

ここで、合同会社に関しては、会社法上、職務執行の対価を総会で決定すべきとする旨の規定がないため、事前確定届出給与に関する届出書の提出期限の判断に迷うこととなる。

 

(2) 国税庁による文書回答事例

この点について、令和7年2月28日、東京国税局が文書回答事例「合同会社の社員に対して事前確定届出給与を支給する場合の税務上の取扱いについて」を公表したので、その内容を確認する(以下、「文書回答事例」という)。

文書回答事例では、合同会社が事前確定届出給与の制度自体を活用できるかどうか、かつ、事前確定届出給与に関する届出書の提出期限について「社員総会の開催日から1月を経過する日」と理解してよいかを照会したものであり、東京国税局は、当該理解で差し支えない旨を回答している。

注目したいのは、照会した背景として、

法人税基本通達9-2-16によれば、・・・「職務の執行の開始の日」とは、その役員がいつから就任するかなど個々の事情によるとされており、また、会社法上、合同会社の社員については、株式会社の取締役に対して規定されている任期に関する定め(会社法332)や株主総会の決議による選任の手続についての定め(会社法329①)などが規定されておらず、定款に別段の定めがある場合を除き、社員となった者が合同会社の業務を執行することとされています(会社法590①)。
 したがって、合同会社の社員については、会社法上、「職務の執行の開始の日」を強いて定める必要がなく、社員となったときからその業務を執行することとなり、その合同会社の社員となった日の属する事業年度の翌事業年度以後の「職務の執行の開始の日」が明らかではありません。

とされていることである。

さらに照会者は、自社の状況について「前事業年度以前の決算の状況を踏まえた当事業年度の業績見込みを考慮してその決定を行うため、前事業年度の決算が確定する定時社員総会において、その役員給与及び本件役員賞与の支給日及び支給金額をその総社員の同意をもって決定することとして」おり、かつ「定時社員総会の開催日を業務執行社員の『職務の執行の開始の日』としている」ことを示している。

 

(3) 合同会社における事前確定届出給与の支給

文書回答事例では、これまで曖昧であった、事前確定届出給与に関する届出書の提出期限について見解を示したものである。

照会者と同様、上記前提であれば事前確定届出給与損金算入が認められ、かつ提出期限の起点を定時社員総会の開催日として差し支えないと示された点は、実務上参考となるものであるといえる。

 

〔凡例〕
法法・・・法人税法
法令・・・法人税法施行令
法規・・・法人税法施行規則
法基通・・・法人税基本通達
措法・・・租税特別措置法
措令・・・租税特別措置法施行令
措規・・・租税特別措置法施行規則
措通・・・租税特別措置法関係通達
所法・・・所得税法
所令・・・所得税法施行令
所基通・・・所得税基本通達
消法・・・消費税法
消基通・・・消費税法基本通達
相法・・・相続税法
相基通・・・相続税法基本通達
財基通・・・財産評価基本通達
通法・・・国税通則法
通令・・・国税通則法施行令
地法・・・地方税法
地令・・・地方税法施行令
地規・・・地方税法施行規則
(例)法法34①一・・・法人税法34条1項1号

(了)

次回は4/17に公開予定です。

連載目次

〈ポイント解説〉

役員報酬の税務

連載を収録した単行本が好評発売中!!

第1回~第50回

第51回~

筆者紹介

中尾 隼大

(なかお・しゅんた)

税理士
税理士法人中尾総合事務所 所長
https://www.nakao-tax.com

中国税理士会税務研究所 研究員

平成22年 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース(現:PwC税理士法人)入所
平成24年 税理士登録
平成25年 税理士法人中尾総合事務所設立 現在に至る

【著作・論文】
「一般社団法人を利用した租税回避スキームに関する試論」第40回 日税研究賞 税理士の部 入選
「これで万全!!2019年10月 消費増税・軽減税率対策 転嫁・インボイスはこう進める」共著(ぎょうせい・2019)
「個人版事業承継税制のポイントと有利判定シミュレーション」共著(日本法令・2019)
「ワークフロー式消費税[軽減税率]申告書作成の実務」共著(日本法令・2020)
「消費税 適用判断の原則と例外」共著(新日本法規・2021)
「精選Q&A 役員報酬の税務」(清文社・2024)

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