会計事務所の事業承継
~事務所を売るという選択肢~
【第2回】
「個人事務所の有償引継ぎ」
公認会計士・税理士 岸田 康雄
1 税理士業務の安定性
商品販売を行うような一般事業会社は、消費者との単発取引を繰り返さなければならないため、商品を販売する営業活動を常に行わなければならない。
また、外部経営環境が変化した場合には、事業戦略を練り直し、会社の経営資源を再構築しなければならない。
事業会社の経営者は、絶えず経営環境の変化を捉え続ける必要があり、気が休まる時がない。
これに対して、税理士業務を提供する会計事務所は、一度顧問契約を締結してしまうと、よほどの大失敗がない限り、顧客との関係が継続する。それゆえ、営業活動を継続して行う必要がない。
また、直面する経営環境が変わらないため、提供するサービスや担当する職員を変える必要はなく、そもそも事業戦略を立案する必要性すらない。
このように、会計事務所が一般事業会社と異なる点は、いったん顧問契約を結んでしまえば、キャッシュ・フローを安定的に獲得できることにある。このキャッシュ・フローの安定性は、税理士業務の特徴であり、事業価値源泉の一つといえる。
このため、会計事務所の事業承継においては、顧問契約を切られることなく引き継ぐことが重要な課題となる。
2 個人事務所の事業承継
個人事務所を前提とすれば、その税理士業務の事業承継には、以下の4つの方法がある。
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