公開日: 2024/05/30 (掲載号:No.571)
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わたしは税金 「クイズに当たった」-賞金と税金-

筆者: 鈴木 基史

カテゴリ:

※この記事は会員以外の方もご覧いただけます。

わたし税金

「クイズに当たった」

-賞金と税金-

公認会計士・税理士
鈴木 基史

 

クイズに当たった

「へぇー、あんたすごいじゃない。で、その車、いくらぐらいするの? 200万! すごいじゃない!」

「すごい」を連発してるのは、田中さんちのママ。妹から電話があって、ある自動車メーカーのクイズに当選し、賞品として定価200万円の車をもらったとのこと。

「でも、それって、税金かかるんじゃない?・・・そうよ、200万円ももらったら半分税金よ」

おやおや、ママの脅しで、電話の向こうの妹さんの顔が青ざめてきました。

 

たまたま受けるものは一時所得

田中さん、半分が税金というのは言い過ぎですよ。だけど確かに、クイズや福引きなどの賞金・賞品には所得税がかかります。

たとえば、プロゴルファーが受け取る賞金・・・彼らにとってこれは稼ぎだから「事業所得」、というのはおわかりですね。でも、一般の人がクイズに応募して当たるのはたまたまのことですから、こういう場合の所得は「一時所得」。たとえクイズ・マニアでしょっちゅう応募している賞金稼ぎの人の場合でも、やはり一時所得です。

 

現金正価の6掛けが収入金額

一時所得は次のように計算します。

収入金額 - 必要経費 - 特別控除(50万円)= 一時所得

一時所得は、給与所得など他の所得に加えて総合課税されますが、その際、所得金額を2分の1にして合計します。

“収入金額”は賞金ならもらった額ですが、賞品の場合はどうか? モノによりますが、妹さんのように車をもらったときは、現金正価の60%で計算します。そこで収入は、200万円×60%=120万円なり。

次に“必要経費”とは、当選するのに直接要した金額をいいます。はがきで応募すればはがき代、オートショウの会場へ足を運んだら交通費・・・ぐらいのものでしょうか。

たとえば、クイズ・マニアの人が10回はがきを出して1回当選した場合、必要経費になるのは当選した分のはがき代だけです。ご注意ください。

 

35万円を他の所得に加える

結局、クイズの賞品には必要経費なんてほとんどなし。というわけで妹さんの場合、一時所得の計算は次のとおりです。

200万円 × 0.6 - 50万円特別控除70万円一時所得

さらに、他の所得と合計して課税対象となる金額は、70万円×1/2=35万円ということになります。

 

専業主婦なら無税

妹さんに給与所得などがあれば、そこに35万円を加え、来年の3月15日までに確定申告してください。

ただし、所得税には基礎控除が48万円あります。そこで、妹さんが専業主婦で収入はないということなら、クイズの賞品で所得が35万円あっても、課税所得は差引き『0』。

よって税金はかからず、もちろん確定申告も不要です。

 

1割源泉徴収される

もう少し細かいお話もしておきましょう。賞金や賞品で50万円以上もらうとき、50万円を超える部分につき、10%(正確には復興特別所得税を加えて10.21%)の税率で所得税が源泉徴収されます。

そこで確定申告をするときは、この源泉税を税額から控除するのをお忘れなく。ちょうど配当所得を確定申告するときに、15%または20%の源泉税を精算するのと同じやり方です。

賞金ではなく賞品をもらうときは、通常、渡す側で源泉税を負担すると思います。妹さんが車をもらうとき、税額は「(200万円×0.6-50万円)÷0.9×10%」で7万7,777円。

そこで一時所得の確定申告をするときは、収入の120万円にこれを加え、127万7,777円もらったものとして計算しなければなりません。

 

宝くじは非課税

さて、ついでの話で、宝くじが当たったら税金はどうなるか。これもやはり一時所得です。でも、「当せん金付証票法」という法律があって、宝くじには税金をかけないことになっています。宝くじは、自治体などが胴元のバクチみたいなもの。当たり券に税金をかけると、お金の集まりが鈍るという配慮から、そういう扱いになっているんですね。

ただし、当たった券を誰かにあげれば贈与税の出番です。また、数人でお金を出し合って購入した宝くじが当たったときも要注意です。代表して1人が当せん金を受け取り、これを仲間に分配すると贈与税が黙っていません。

こういうときは、共同購入した全員で当せん金を受け取り、銀行が発行する宝くじの「高額当選証明書」に、各自が受け取る金額を記載してもらうことです。そうすれば贈与ではなく、宝くじの当せん金となります。

 

競輪・競馬には税金がかかる

さらについでの話ですが、競馬や競輪で当てたとき・・・これも一時所得です。こちらは宝くじのように非課税の扱いはなし。原則どおり税金がかかります。

とはいえ、『50万円』の特別控除があるので、少々もうけたぐらいなら、税金の心配はご無用です。だけど、足しげく通っている人や大穴を当てた人で、1年間の払い戻しが合計50万円を超える人は確定申告が必要。

 

他の一時所得と合計

馬券の払戻し金だけでなく、クイズの賞金など他に何か一時所得があるときは、もちろんそれも加えて年間50万円を超えるかどうかです。馬券の払い戻しの一時所得は、次のように計算します。

馬券の払戻収 入し金 -(馬券代+競馬新聞代+交通必要経費費など)- 50万円特別控除 = 馬券所得

この「馬券所得」の2分の1の金額が、総合課税の対象となります。

 

馬券所得が雑所得に?

最後に、馬券所得に関して興味深いお話を一つ、ご披露しましょう。

ある人が3年間、競馬で約1億4,000万円の利益を上げていたのに申告せず、国税局の査察を受けて所得税法違反で告訴されました。起訴された金額は、何と5億7,000万円です。追徴課税の金額が実際に得た利益の4倍にもなっているのは、馬券の払戻し金の合計額から、的中した買い目の馬券代しか控除されない計算だったからです。

この人は、市販の競馬予想ソフトに改良を加え、ネット上でJRA全競馬場のほぼ全レースの馬券を無差別に購入する、という買い方をしていました。税務当局との間で最高裁まで争われましたが、裁判所はこれを「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」、すなわち「雑所得」と認定しました。

そこで外れ馬券の購入費用や、ソフトの利用料金なども必要経費として認めたのです。その結果、脱税所得額は、一時所得であることを前提に起訴された5億7,000万円から、5,200万円に圧縮されました。

 

原則として馬券所得は一時所得

これは、払戻し金が雑所得と認められた画期的な判決です。一時所得と雑所得では、扱いがかなり違います。一時所得には50万円の特別控除と、2分の1課税という恩典があります。ただし、必要経費となる支払いは極めて限定的です。

1,000万円、2,000万円の収入ならいざ知らず。億単位の馬券収入となると、外れ馬券もすべて必要経費にカウントされる、雑所得のほうが断然有利です。

この裁判のあと、同じような訴訟がいくつも続きました。雑所得、と認められた判決も中にはあります。でもそれはよほどのレアケースで、税務当局の基本方針はいまだ、払戻し金は一時所得となっていますのでご承知おきください。

(連載了)

人生にまつわる税金ものがたり、
もっとたくさんのお話を読みたい方へ送る一冊。

『わたしは税金—ゆりかごから墓場までの人生にまつわる税金ものがたり』

  • 公認会計士・税理士 鈴木基史 著
  • 発行:2023年10月6日
  • 判型:四六判/328頁
  • ISBN:978-4-433-73933-1
  • 定価:1,650円(本体:1,500円)
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わたし税金

「クイズに当たった」

-賞金と税金-

公認会計士・税理士
鈴木 基史

 

クイズに当たった

「へぇー、あんたすごいじゃない。で、その車、いくらぐらいするの? 200万! すごいじゃない!」

「すごい」を連発してるのは、田中さんちのママ。妹から電話があって、ある自動車メーカーのクイズに当選し、賞品として定価200万円の車をもらったとのこと。

「でも、それって、税金かかるんじゃない?・・・そうよ、200万円ももらったら半分税金よ」

おやおや、ママの脅しで、電話の向こうの妹さんの顔が青ざめてきました。

 

たまたま受けるものは一時所得

田中さん、半分が税金というのは言い過ぎですよ。だけど確かに、クイズや福引きなどの賞金・賞品には所得税がかかります。

たとえば、プロゴルファーが受け取る賞金・・・彼らにとってこれは稼ぎだから「事業所得」、というのはおわかりですね。でも、一般の人がクイズに応募して当たるのはたまたまのことですから、こういう場合の所得は「一時所得」。たとえクイズ・マニアでしょっちゅう応募している賞金稼ぎの人の場合でも、やはり一時所得です。

 

現金正価の6掛けが収入金額

一時所得は次のように計算します。

収入金額 - 必要経費 - 特別控除(50万円)= 一時所得

一時所得は、給与所得など他の所得に加えて総合課税されますが、その際、所得金額を2分の1にして合計します。

“収入金額”は賞金ならもらった額ですが、賞品の場合はどうか? モノによりますが、妹さんのように車をもらったときは、現金正価の60%で計算します。そこで収入は、200万円×60%=120万円なり。

次に“必要経費”とは、当選するのに直接要した金額をいいます。はがきで応募すればはがき代、オートショウの会場へ足を運んだら交通費・・・ぐらいのものでしょうか。

たとえば、クイズ・マニアの人が10回はがきを出して1回当選した場合、必要経費になるのは当選した分のはがき代だけです。ご注意ください。

 

35万円を他の所得に加える

結局、クイズの賞品には必要経費なんてほとんどなし。というわけで妹さんの場合、一時所得の計算は次のとおりです。

200万円 × 0.6 - 50万円特別控除70万円一時所得

さらに、他の所得と合計して課税対象となる金額は、70万円×1/2=35万円ということになります。

 

専業主婦なら無税

妹さんに給与所得などがあれば、そこに35万円を加え、来年の3月15日までに確定申告してください。

ただし、所得税には基礎控除が48万円あります。そこで、妹さんが専業主婦で収入はないということなら、クイズの賞品で所得が35万円あっても、課税所得は差引き『0』。

よって税金はかからず、もちろん確定申告も不要です。

 

1割源泉徴収される

もう少し細かいお話もしておきましょう。賞金や賞品で50万円以上もらうとき、50万円を超える部分につき、10%(正確には復興特別所得税を加えて10.21%)の税率で所得税が源泉徴収されます。

そこで確定申告をするときは、この源泉税を税額から控除するのをお忘れなく。ちょうど配当所得を確定申告するときに、15%または20%の源泉税を精算するのと同じやり方です。

賞金ではなく賞品をもらうときは、通常、渡す側で源泉税を負担すると思います。妹さんが車をもらうとき、税額は「(200万円×0.6-50万円)÷0.9×10%」で7万7,777円。

そこで一時所得の確定申告をするときは、収入の120万円にこれを加え、127万7,777円もらったものとして計算しなければなりません。

 

宝くじは非課税

さて、ついでの話で、宝くじが当たったら税金はどうなるか。これもやはり一時所得です。でも、「当せん金付証票法」という法律があって、宝くじには税金をかけないことになっています。宝くじは、自治体などが胴元のバクチみたいなもの。当たり券に税金をかけると、お金の集まりが鈍るという配慮から、そういう扱いになっているんですね。

ただし、当たった券を誰かにあげれば贈与税の出番です。また、数人でお金を出し合って購入した宝くじが当たったときも要注意です。代表して1人が当せん金を受け取り、これを仲間に分配すると贈与税が黙っていません。

こういうときは、共同購入した全員で当せん金を受け取り、銀行が発行する宝くじの「高額当選証明書」に、各自が受け取る金額を記載してもらうことです。そうすれば贈与ではなく、宝くじの当せん金となります。

 

競輪・競馬には税金がかかる

さらについでの話ですが、競馬や競輪で当てたとき・・・これも一時所得です。こちらは宝くじのように非課税の扱いはなし。原則どおり税金がかかります。

とはいえ、『50万円』の特別控除があるので、少々もうけたぐらいなら、税金の心配はご無用です。だけど、足しげく通っている人や大穴を当てた人で、1年間の払い戻しが合計50万円を超える人は確定申告が必要。

 

他の一時所得と合計

馬券の払戻し金だけでなく、クイズの賞金など他に何か一時所得があるときは、もちろんそれも加えて年間50万円を超えるかどうかです。馬券の払い戻しの一時所得は、次のように計算します。

馬券の払戻収 入し金 -(馬券代+競馬新聞代+交通必要経費費など)- 50万円特別控除 = 馬券所得

この「馬券所得」の2分の1の金額が、総合課税の対象となります。

 

馬券所得が雑所得に?

最後に、馬券所得に関して興味深いお話を一つ、ご披露しましょう。

ある人が3年間、競馬で約1億4,000万円の利益を上げていたのに申告せず、国税局の査察を受けて所得税法違反で告訴されました。起訴された金額は、何と5億7,000万円です。追徴課税の金額が実際に得た利益の4倍にもなっているのは、馬券の払戻し金の合計額から、的中した買い目の馬券代しか控除されない計算だったからです。

この人は、市販の競馬予想ソフトに改良を加え、ネット上でJRA全競馬場のほぼ全レースの馬券を無差別に購入する、という買い方をしていました。税務当局との間で最高裁まで争われましたが、裁判所はこれを「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」、すなわち「雑所得」と認定しました。

そこで外れ馬券の購入費用や、ソフトの利用料金なども必要経費として認めたのです。その結果、脱税所得額は、一時所得であることを前提に起訴された5億7,000万円から、5,200万円に圧縮されました。

 

原則として馬券所得は一時所得

これは、払戻し金が雑所得と認められた画期的な判決です。一時所得と雑所得では、扱いがかなり違います。一時所得には50万円の特別控除と、2分の1課税という恩典があります。ただし、必要経費となる支払いは極めて限定的です。

1,000万円、2,000万円の収入ならいざ知らず。億単位の馬券収入となると、外れ馬券もすべて必要経費にカウントされる、雑所得のほうが断然有利です。

この裁判のあと、同じような訴訟がいくつも続きました。雑所得、と認められた判決も中にはあります。でもそれはよほどのレアケースで、税務当局の基本方針はいまだ、払戻し金は一時所得となっていますのでご承知おきください。

(連載了)

人生にまつわる税金ものがたり、
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『わたしは税金—ゆりかごから墓場までの人生にまつわる税金ものがたり』

  • 公認会計士・税理士 鈴木基史 著
  • 発行:2023年10月6日
  • 判型:四六判/328頁
  • ISBN:978-4-433-73933-1
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連載目次

筆者紹介

鈴木 基史

(すずき・もとふみ)

公認会計士・税理士
神戸大学経営学部卒業
平成15~17年 税理士試験委員
平成21~24年 公認会計士試験委員(租税法)

【著書】
わたしは税金—ゆりかごから墓場までの人生にまつわる税金ものがたり
法人税申告書作成ゼミナール
法人税申告書別表4・5ゼミナール
法人税申告の実務
根拠法令から見た法人税申告書
消費税申告書作成ゼミナール
法人の修正申告実務
鈴木基史のキーワード法人税法
相続税・贈与税の実践アドバイス』(以上 清文社)
『最新法人税法』『条文で学ぶ法人税申告書の書き方』(以上 中央経済社)
『やさしい法人税』(税務経理協会) 他

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