カウンターの真ん中あたりに銀色のネックのビールサーバーがある。
「生ください」
「あ、これやってないんですよ」
「じゃあ、ビールは何がありますか」
「普通っぽいのがよかったらハイネケンですかね」
「じゃ、それで」
コルクのコースターを置き、バックバーの冷蔵庫から冷えたグラスを出し、ビールは奥にある家庭用の冷蔵庫から持ってくる。
生ビールは、客が少ないこともあるが、ここではめったに注文されない。飲まないと古くなってしまうのでやめた。
もうひとつ理由がある。一杯出しただけでもサーバーに水を通して掃除しなければならない。掃除は面倒で、ほとんど一杯分のビールも掃除の過程で捨てることになる。
それでも「銀色ネック」はバーっぽさを演出するオブジェではある。
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